勝ち組男の異世界迷宮で奴隷ハーレム   作:Lilyala

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──春の季節 十七日目

 

 

「世話になったな」

 

「長期逗留ありがとよ。またよろしく──って言いたいところだが、ここに家を構える予定なんだっけ?」

 

「おう。温泉に浸かれる生活に慣れると他に行こうとは思えん」

 

「確かにな」

 

 

 六泊七日お世話になった宿屋を出て、グロリアと共に街を歩く。

 

 この一週間、ひたすら迷宮に潜る毎日だったな。

 

 当初の予定通りにはいかなかったが、商人と盗賊と賞金稼ぎのLvが30に届き、無事に博徒、武器商人、防具商人、奴隷商人のジョブを手に入れ、念願の遊び人も手に入れた。ついでに探索者のLvも33になり、フィフスジョブを付けられる様になったぜ。

 

 グロリアの竜騎士も20になったし、これで上の階層に行っても戦える準備は整ったと思う。金の方は余り増えてないが。

 

 

「あの、主様。何処へ向かっているのですか?」

 

「んあ?そういや言ってなかったか。上流の方で世話役を探そうと思ってな」

 

「なるほど。家を借りられるのですね」

 

「宿暮らしは楽で良いが、迷宮踏破を狙う以上、これからも仲間を増やす必要がある。それに俺には秘密が多いからな。それを踏まえて考えると、家を借りた方が何かと楽なんだ」

 

「確かに主様のお力は注意深く秘さねば、余計な輩に狙われかねませんか」

 

 

 たぶんグロリアは迷宮から出る時に使ってるワープとジョブ変更の事を言ってるのだと思うが、それは俺の持つ力の一端であり、本当にヤバい力はキャラクター再設定の方だ。

 

 ポイントという制限こそあるが盗賊のジョブを外せるし、スキルスロットも見える。何より経験値ボーナスが可笑しい。

 

 15歳から24歳まで探索者をやっていたグロリアですら探索者のLvは18までしか上がっていないのに、たった一週間で20まで上がるのだ。これ以上にオカシイスキルは無いと思う。

 

 暫く歩いていると、ポツポツと豪邸の立ち並ぶ町並みに変わった。どうやらこのエリアは貴族の別荘地らしく、守衛が胡散臭そうにこちらを見ている。

 

 その直前にあった他の店より一回りほど大きい店に入ると、石を切り出していた男がこちらに気付き、近寄ってきた。

 

 

「いらっしゃい。客──って訳じゃなさそうだな?」

 

「家を借りる為に世話役を探していてな。教えてもらえないだろうか」

 

「そりゃ運が良い。この辺りの家は俺が世話役だ」

 

「成る程。確かに運が良いみたいだ」

 

 

 まさか一発で引けるとは。本当に運が良い。

 

 

「それで?どんな家を探してるんだ?」

 

「五万ナールぐらいで借りられる温泉付きの物件はあるか?」

 

「温泉付きは基本的に七万ナールからだ──と言いたい所だが、(にい)ちゃんは不便を楽しめる口かい?」

 

「景観がよけりゃ幾らでも」

 

「それは良かった。それならオススメの家があるぜ。ちょっと待ってろ、準備してくる」

 

 

 部下と思わしき男と言葉を交わし、世話役が奥に引っ込んだ。大方、暫く家を空けることを告げたのだろう。

 

 

「よし、準備出来た。ついてこい」

 

 

 戻ってきた世話役に連れられ、別荘地を突っ切る形で歩く。道中、守衛に挨拶されている所を見るに、目の前の男の人望は確かな様だ。

 

 

「これから案内する場所は元々皇族が囲った庶民の女を押し込む為に建てられた家でな。外壁の内にこそあるが、市場から遠く離れた場所にひっそりと建ってんだ」

 

「それだけなら買い手は居るんじゃないか?冒険者なら関係無いだろう?」

 

「普通ならな。暫く使う機会が無かったんで、時の皇族がお抱えの錬金術師に貸し与えてな?で、ソイツがやらかした」

 

「……遮蔽セメントか?」

 

「おう。家を囲う壁どころか家の壁にもべったり使いやがってな。お陰で家から少し歩かないとフィールドウォークが使えねぇってんで人気が無いんだよ」

 

 

 別荘地を抜けた先には所々雪の残る草原が広がっていた。ポツポツと見えるのは放牧中の家畜だろうか。遠目からでは家畜の種類まで分からないが、それなりの数が居るらしい。

 

 目的地はまだ先の様で、この文明レベルでは珍しい石畳の道を男の先導に従って歩く。グロリアに硬革のブーツを与えておいて良かったな。冬の残り香に冷やされた石畳を裸足で歩くのは苦行だったろう。

 

 それから数分ほどして漸く目的地に着いた。

 

 大きな滝の側に立つ、石の壁に覆われた小さな家。だが通ってきた豪邸が比較対象として可笑しかっただけで、地球なら二世帯住宅ぐらいの大きさがありそうな家だった。

 

 

「ここが兄ちゃんにオススメする家だ。ちょっと待ってろ。今、鍵を開ける」

 

 

 鍵を外された鉄の門がギギギと音を立てながら開かれる。左右の庭を見渡しながら先を歩く男についていくと、程無くして黒に近い茶色の扉が見えた。

 

 男が門を開いた鍵とは別の鍵を差し込み、扉を開く。内装を見た直後の感想としては──古びた洋館みたいな印象を受けた。

 

 

「どうする?俺が案内しても良いが、自分達だけで見てくるか?」

 

「んー……グロリア。お前は部屋を見てきてくれ」

 

「側に控えてなくてもよろしいのですか?」

 

「ああ。俺は説明が必要そうな設備の話を聞いておく」

 

「かしこまりました」

 

 

 足音を立てない様に注意しながらグロリアが館の奥に消える。それを見送った後、俺は再び男と向き合った。

 

 

「じゃ、説明が必要そうな設備を重点的によろしく」

 

「おう。まずはこっちだ」

 

 

 最初に案内されたのは、一階の東側にある(かまど)付きの部屋だった。

 

 

「調理場か?」

 

「いや、俺も詳しく知らんが、錬金術師が実験室と呼んでいた部屋らしい。その関係でこの部屋は防火仕様になってるし、そこの扉を抜けた先に井戸があるから水汲みも楽な設計になってるって話だ」

 

「何か随分曖昧だな?」

 

「直接管理を任されたのは先代の世話役なんだよ。俺が管理を任されるまでの間に何度か借りる奴は居たらしいが、やはり遮蔽セメントが邪魔らしくてな。すぐに出て行っちまうんだ」

 

「成る程。確かにここは町外れにあるし、買い物すら一苦労か」

 

「ま、だからこそ備え付けの設備の割に安く貸せるんだけどな。じゃ、次に行くぞ」

 

 

 次に案内されたのは家の西側、滝に面している方だ。入ってすぐ左手側に個室のトイレがあり、その先には小さな脱衣場が。その奥へ進むと重厚な木製の扉が静かに佇んでいた。

 

 

「ここがアンタの望む、この家の売りである温泉だ」

 

 

 開かれた扉から硫黄の臭いが漂ってきた。内側だけ丸みのある、雑に加工された岩の湯船。掛け流しらしく溢れる温水が部屋の隅へと流れ、外の川へと運ばれている。

 

 軽くしゃがんで手を突っ込むと、返ってきたのは少し熱めの良い温度。加水無しでも平気とは凄いな。日本でもそうそう無いぞ、そんな温泉。

 

 

「端の金網はなんだ?」

 

 

 というか、あれはダマスカス鋼か?温泉に触れてるのに錆が浮いてないし、チタンと同等かよ。ファンタジースゲーな。

 

 

「あれは『浄水石』っつートータルタートルの上位種から取れる石を入れる場所だ。それを入れておくと、温泉内の汚れを吸い取ってくれるんだ*1

 

「へぇ。そりゃ便利だ」

 

「一つ千ナールするし、この広さでさえ一ヶ月しか持たんがな。だから貴族でもなきゃ常用するもんじゃねえ」

 

「なるほど」

 

 

 そりゃそうか。原作でも川の溝掬いをしてたんだ。投げ込んでおくだけで綺麗になるなら、クーラタルの川に投げ込まれてるわな。

 

 

「案内するべき施設はこんなところだ。後は錬金術師の使ってた部屋に固定された金庫と机があるぐらいだな」

 

「金庫の鍵は?」

 

「見付かってねぇ。だからインテリアだと思ってくれ」

 

「くくっ。了解」

 

 

 使えない金庫か。デュランダルで開けられるかね?

 

 二人揃って入り口に戻ると、グロリアがすでに待っていた。軽く手を上げ、報告を受ける。

 

 

「二階には部屋が全部で四つありました。暖炉のある部屋が二つありましたので、主様の自室と寝室に相応しいと思います」

 

「残り二つはどうだった?」

 

「一つは倉庫として使われていた場所だと思います。もう一つは普通の部屋でしたので、たぶん奴隷用の部屋かと」

 

「皇族に貸し与えられる立場なら、そら奴隷も居るか」

 

 

 土を金に変える研究でもしてたのかね?もしくは賢者の石か。不老長寿の薬の可能性もありそうだが──そっちは薬師の領分な気がする。

 

 

「一階は東側に一部屋、西側にトイレと温泉、北側に台所と居間があるみたいだ。俺はここで良いと思うが、グロリアはどうだ?」

 

「町まで少し歩きますが、買い物は私が行きますので良い家だと思います」

 

「じゃ借りるか」

 

「毎度あり。それじゃ一旦、騎士団の詰め所に向かうぞ」

 

 

 原作通り、騎士団にインテリジェンスカードのチェックをしてもらうらしい。盗賊や博徒持ちという事は知られないので落ち着いて左手を差し出し、無事に終える。

 

 その後は石屋?に戻り、契約書の作成を行った。もちろんグロリアに代筆を頼む。

 

 

「あ、家賃と合わせて浄水石もくれ」

 

「毎度あり。そんじゃ新たなる住人のこれからを祝して三万五千七百ナールで良いぞ」

 

 

 三割引様々だぜ。

 

 金貨三枚と銀貨五十七枚を支払い、家と門の鍵に加えて浄水石を受け取る。見た目は何というか漬け物石にしか見えんな。楕円形の丸い石だ。

 

 手に持っていても仕方ないのでアイテムボックスに突っ込み、そのまま町へ繰り出した。

 

 戸棚やベッド、机や椅子、調理器具や洗濯に使う桶などの生活に必要な最低限の物を購入していく。手持ち出来る物はワープを駆使して運び込み、残りは馬車で運んでもらう。

 

 他にも細々とした作業を行っていると、気付けば日が沈み、月が出る時間になっていた。

 

 

「今日の夕飯は手抜き料理だな」

 

「お手伝いします」

 

 

 野菜のスープ、野菜炒め、そしてパン。竈の火力調整に苦労したが、初日ならこんなもんだろう。

 

 それらが並ぶ食卓でワインを開ける。自分への御褒美に買っておいたのだ。

 

 

「飲むか?」

 

「いえ、大丈夫です」

 

 

 遠慮──って訳じゃないか。それなら一人で楽しむとしよう。

 

 その後は二人で温泉を楽しみ、ベッドの上でグロリアの双子山を攻略して終わった。

 

 所持金も心許ないし、明日は盗賊狩りにでも行くかね?

 

 

 

 

*1
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