狩ってる間に夜が明けたらしい。そのお陰でインテリジェンスカードの回収は楽だった。
装備を剥ぎ、遺体をすぐそこの迷宮へ投げ込む。迷宮にとって人間が餌である以上、成長を促してしまうが、そこは必要経費と割り切る。
全ての作業を終える頃には完全に朝と呼べる時間だった。残す問題は──慰み
「近くの町までは送ってやる。盗賊の遺品も分けてやろう。そこから先は個人で頑張れ」
「あ、あの。貴方様についていくのは駄目ですか?」
「俺は奴隷以外いらん。これでも貴族を目指しているんだ。信頼出来ない奴を受け入れるのはまだ先だ」
「……そうですか」
唯一ブラヒム語の分かる商人の女が代表として尋ねてきたが、ハッキリと断っておく。
寄生は面倒だしな。容姿が優れているなら少し考えるが、傷ありのグロリアを超える女ですら居ない。
この場に居る者達に皮装備一式と銅の剣を一人一本ずつ渡し、さらに銀貨を十枚渡す。兇賊の着ていた装備や高Lvの盗賊が着ていた装備は渡さない。
何せ前者は竜革混じりの装備であり、後者は硬革装備なのだ。そこまでの施しをする程、俺の懐は暖かくない。
「よし、渡ったな。それじゃ行くぞ」
冒険者ギルドで耳コピした詠唱を唱え、ワープを開く。繋げた先は近くの町の冒険者ギルドだ。
一人、また一人と黒の渦を潜り抜けていく。足取りが暗いのは、この先の未来が見えないからか。
この先どうなるかは知らんが、自助努力がこの世界の基本だ。強者の庇護下に置かれるのは奴隷だけ。
原作でも自由民は公的権力に守られないしな。同じ立場の俺も、自身を守るには力が必要だ。
最後の一人が潜り抜けたのを見送り、俺も通り抜ける。何か言いたそうに助けた女達が視線を向けるが、無視してギルドを出る。
向かう先は騎士団の詰所だ。インテリジェンスカードで持ってる意味もあんまり無いしな。
「盗賊の換金を頼む」
「分かりました」
差し出した俺の左手からインテリジェンスカードが飛び出る。それを確認すると騎士は受け取ったインテリジェンスカードを持って奥へ消えた。
金貨四十枚は欲しい。そうすれば手持ちの金貨が六十枚を超える。
ドワーフを購入さえ出来れば、スキル付きの装備を市場に流して稼ぐことも出来る。
原作でも吸精のスタッフが推定二十万ナールを超える聖槍と等価交換出来たぐらいだ。スキル付きオリハルコンの剣ならもっと高く売れるだろう。
売るタイミングや人を選ばないとならないが、それでも金策に困る事は無くなる。
「お待たせしました。こちらになります」
「ありがとう」
ずっしり中身の詰まった袋は良いな。転移前のデジタル数字とは違い、稼いだ感が自尊心を満たしてくれる。
「この近辺を荒らしていた名のある兇賊を討ち取るとは……お若いのにお強いのですね」
「まぁ、いずれ貴族になるつもりで努力は積んできたからな。そういや盗賊の拠点に管理されてない迷宮があったんだが、報告だけで大丈夫か?」
「少々お待ち下さい。上の者を呼んで参ります」
再び奥へ騎士が消える。あ、そういや金目の物は全部頂いたが、食糧庫は手付かずだった。報告を遅らせれば良かったな。次からは気を付けよう。
それから少しして、初老の騎士が現れた。レベルは42か。中々だ。
「貴殿が未発見の迷宮を見付けた者か?」
「おう。案内するか?少し遠いが」
「頼む。馬は乗れるか?」
「大丈夫だ」
馬は
騎士団から馬を借り、先頭を走る。着いてきたのは騎士団所属の冒険者と初老の騎士の二人だけ。
それから少しして盗賊のアジトへ繋がる見付けた獣道の前で降りる。近くの木に手綱を結び、軽く馬を撫でて宥めた。
馬でも一時間掛かった辺り、中々この世界も広い。
「ここから先は徒歩になる。盗賊達が使っていたからそれなりに歩きやすいが、山道だから覚悟してくれ」
「了解した」
そこから徒歩で十五分ほど歩くと、今朝の狩り場に着いた。冒険者の男が迷宮に入り、すぐに出てくる。
「間違いないですね」
「分かった。貴殿の協力に感謝を」
初老の騎士から渡された金貨を受け取る。道案内だけで金貨一枚は中々な稼ぎだ。逆に言えば、それだけ迷宮が脅威なんだろうが。
「あ、あそこの家に盗賊の食糧庫があるぞ。俺も少し貰うが、残りは回収してくれ」
「それは助かるな」
三人で適当に食糧庫を漁った後、街に戻って馬を返却。
「また迷宮を見付けたら近くの詰所へ報告を頼む」
「了解。それじゃまたな」
騎士と別れ、町をふらふら歩く。奴隷商の下へ行くか、武具を探しに行くか。一旦、拠点に戻っても良い。
少しだけ悩み、取り敢えず奴隷商の下へ向かう。だが女ドワーフどころか男のドワーフすら居らず、見事に空振り。
やはり鍛冶師という固有職業を得られるドワーフが奴隷にまで落ちる事は少ないらしい。
人間なんて色魔なのにな。エルフは容姿で生き残れるが、この二種族は固有職業が外れだと思う。
それから武具屋を梯子したが、残念ながらそちらも空振りだった。
原作に影響が出そうなので避けていたが、これは帝都や作中最強の奴隷商人が居るベイルに向かうべきかね。
そんな事を考えながら俺は自宅に繋がるワープを潜り抜けた。