勝ち組男の異世界迷宮で奴隷ハーレム   作:Lilyala

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棚からぼた餅

 

 

 明日のオークションに全てを賭ける事を決め、気持ちを切り替えて冒険者ギルドに飛ぶ。

 

 二人には家事を頼んだ。出るときにチラッと聞いた話によると、草木が生えっぱなしの庭の整備をするらしい。

 

 鍬は買ってあるし、好きにやるだろう。種を買うぐらいなら財布の銅貨で間に合うだろうし。

 

 頭の片隅でそんな事を考えながら、まず始めに俺が向かったのは『セルディカ*1』だ。

 

 帝都と獣人領の間にあるこの街は形式としてはクーラタルに近く、街の真ん中にはそれなりに成長してしまった迷宮があり、追加で東側に最近現れたばかりの迷宮と獣人領主が攻略中の迷宮が存在している。

 

 風の噂では帝都の貴族や皇帝の配下がレベル上げの為に訪れる街らしく、繋がりを求めて多くの冒険者がやって来ている活気ある街だ。

 

 

「魔物の出現情報はあちらに貼り出されています。その他、分からないことがあればお気軽にお聞きください」

 

「ありがとう」

 

 

 受付嬢に感謝の言葉を述べ、掲示板の近くの机を借りて見たまんまを書き写していく。

 

 ちなみに未だにブラヒム語は読めないし、書けない。だがトロムソの出現情報を十一層まで書き写した経験があるので魔物の名前だけは分かったりする。

 

 それを日本語に当て嵌めると、セルディカの迷宮はこうなる。

 

 

1Fミノ2Fニードルウッド
3Fスパイスパイダー4Fチープシープ
5Fニートアント6Fコラーゲンゲル
7Fナイーブオリーブ8Fグリーンキャタピラー
9Fスローラビット10Fコボルト
11Fエスケープゴートメモセルディカ中央

 

 

1Fコボルト2Fスローラビット
3Fコラーゲンゲル4Fナイーブオリーブ
5Fチープシープ6Fニードルウッド
7Fスパイスパイダー8Fエスケープゴート
9Fミノ10Fグリーンキャタピラー
11Fニートアントメモ新迷宮

 

 

1Fチープシープ2Fグリーンキャタピラー
3Fニートアント4Fコボルト
5Fスパイスパイダー6Fニードルウッド
7Fスローラビット8Fミノ
9Fエスケープゴート10Fコラーゲンゲル
11Fナイーブオリーブメモ獣人領側

 

 

 セルディカ中央は最高だな。今の俺が望んでいる通りの場所だ。

 

 獣人領側は序盤に新人殺しが固まっている代わりに、上の方に比較的楽な獲物が固まっている感じか。

 

 獣人領だからエスケープゴートを楽に狩れる獣戦士も多いだろうし、人気はありそうだな。

 

 新迷宮は新人向けだが、調子に乗ると十一層で死者が出そうな構成だ。というかニートアント、グリーンキャタピラー、ミノの編成は駄目だろう。魔法使いが居なきゃ普通にキツ過ぎる。

 

 そんな感想を抱きながら書き写したパピルスと羽根ペンを鞄に仕舞ってギルドを出る。

 

 

 歩きながら考えるのは、これからの動き。

 

 

 セルディカ中央の迷宮はこれから向かい、探索者に十一層まで案内してもらえば良い。それで明日から問題無く使える。

 

 俺の頭を悩ませているのは、その後の行動だ。コボルトが十一層に湧く迷宮を探しても良いし、十二層以降の情報を集めても良い。石鹸を量産しておきたい気持ちもある。

 

 明日に備えて早めに寝るのも、それはそれでありだ。

 

 時計なんて砂時計しか存在しない世界だし、時間に余裕を持って行動する事は決して悪い事じゃない。

 

 

(……ここは初志貫徹だな)

 

 

 コボルトが十一層で湧くという事は、四十四層で再び上位種を狩れるという事だ。

 

 全属性弱点で尚且つ最も弱いコボルトを四十四層で狩れるメリットは計り知れない。レベル的に考えてもグロリア達のレベルを五十まで上げる事も可能だろう。

 

 

「そうと決まれば十一層の登録をしてきますかね」

 

 

 銀貨十一枚を高いと見るか、安いと見るか。

 

 年齢によって答えが変わる問いだろうな、これは。

 

 

 

 

 冒険者ギルドから冒険者ギルドへ梯子する。近くの迷宮に現れる魔物の一覧を貼り出してる場所もあれば、受付が教えてくれる場所もある。

 

 その際に金を取るところもあれば、無料のところもある。

 

 そしてもちろん、()()()()()()が情報を独占してる場所もある。つまり、場所によってバラバラだ。

 

 これが領主の方針なのか、ギルドの方針なのか知らんが、俺としては統一しろと言いたい。いちいち確認するのは面倒なんだが。

 

 とはいえ文句を言ってても望む迷宮が見付かる訳でも無いので、地道に情報を聞き出し、または貼り付けられている一覧表を書き写していく。

 

 その甲斐あって七ヶ所目で〝当り〟を引いた。場所は獣人領の北側、エルフ領とは山に隔たれた中規模の街『タルノヴォ*2』だ。

 

 流石、獣人領と言うべきか。様々な獣耳がピコピコ動いていて眼福──と言いたいところだが、剥げたオッサンが猫耳なのはやめろ。しかも器用に尻尾を動かすな。

 

 おばちゃん体型の狼人族とか誰得なんだ。ロクサーヌとは言わないが、せめてバラダム家のお嬢*3ぐらいの奴を出せ。

 

 内心でそんな事を考えながら、その事をおくびにも出さずに街を突っ切り、街の近くにある一つ目の迷宮を無視して森の中を進む。

 

 人通りが全く無い訳ではないが、主流からは外れている道。そんな印象を受ける道を進むと、暇そうに欠伸している狼耳の探索者が立っていた。

 

 

「十一層まで頼む」

 

「おう。パーティーに入れてくれ」

 

 

 銀貨十一枚を手渡し、呪文を唱えてパーティー編成を使う。そして導かれるままに黒い渦を通り抜ければ、そこは俺にとっての楽園だ。

 

 

「アンタも物好きだね。こんなコボルトが出る階層を求めるなんてさ」

 

「知り合いの貴族にカードを頼まれちまってな。出るかどうか分からんが、一週間ぐらいは()()()()()が必要なんだよ」

 

 

 まぁ、嘘だが。

 

 

「なるほど。ドロップ品があれば努力の成果を見せられるって訳か」

 

「おう。本当は一層で楽に稼ぎたかったんだが何処も素人ばかりで混んでるし、それならいっそって訳だ」

 

「貴族付きも大変だな。それじゃ頑張れよ」

 

「ありがとな。助かったぜ」

 

 

 後ろを向いたまま手を振った探索者を見送り、パーティーから除名。ついでにキャラクター再設定を弄り、経験値二十倍をデュランダルに変える。

 

 一度、試してみたかったんだよな。メテオクラッシュとデュランダルの組み合わせ。

 

 本当ならグロリア達を連れてきた方が安全なんだが、幸いな事にこの階層には状態異常を使う敵が居ない。

 

 慎重に動く必要こそあるが、いざとなったらオーバーホエルミングでどうにかなるだろう。たぶん。

 

 そんな訳で一人で迷宮を徬徨っていると、遠くの方から足音が聞こえてきた。

 

 念のために来た道を一度戻り、小部屋の中に身を隠す。

 

 

「くそっ!ツイてないぜ!」

 

 

 小部屋の外から聞こえてきたのは男の声だ。足音は五人分。一人分足りてない気がするが、魔物に殺られたか?

 

 

「良いから走れッ!あの人数に追われたら死ぬぞ!」

 

「分かってるッ!あ~くそっ!なんでこんな人気の無い迷宮に──」

 

 

────盗賊が居るんだよ!

 

 

…………ほう?

 

 

*1
ブルガリアの首都ソフィアのローマ時代の名前から借りた。アレクサンドル・ネフスキー大聖堂が観光地として有名だが、作者はボヤナ教会の方が好みだったり。

*2
ブルガリア北東部にある田舎街。正しくはヴェリコ・タルノヴォ。第二次ブルガリア帝国の首都として栄えた歴史ある街で、画像を見るだけでファンタジー好きならワクワクすると思う。

*3
原作でも最後まで名前が出てこなかった。

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