勝ち組男の異世界迷宮で奴隷ハーレム   作:Lilyala

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餌付け

 

 

「出来たぞ~」

 

 

 鍋ごと机の上に運び、鍋敷の上に乗せる。ついでにトマト?と卵の炒め物を皿に盛り付け、グロリアに持たせた。

 

 これで足りなかったら後はパンを多めに食べて貰おう。今から作るのは面倒過ぎる。

 

 

「席はどうしましょう?」

 

「適当で良いだろ」

 

 

 一番近い角席に陣取り、シチューを木の器によそって配っていく。……木の器を使うとシチューが数段美味しそうに見えるこの現象は何だろうな?

 

 ちなみに俺の隣にはグロリアが陣取り、対面をメローが確保。サギニは床にペタンと座った。……うん?

 

 

「サギニは何で床に座ってんだ?」

 

「えっ?ど、奴隷ですから」

 

「メロー?」

 

「す、すみません。他言無用のルールを教えただけで食事の説明はしていませんでした。サギニさん、御主人様は奴隷を椅子に座らせて食べる事を好みます。ですから私の隣にどうぞ」

 

「は、はい」

 

 

 おっかなびっくりサギニが席に座ったので、シチューをよそって目の前に置いてやる。

 

 

「熱いから気を付けろよ」

 

「えっと、私も食べてよろしいのでしょうか?」

 

 

 そういえば原作でもこんなやり取りあったな。グロリアの時は面倒だったから即座に座らせたし、メローはグロリアに促された後に俺の顔色を見てすぐに着席した。

 

 そういう意味ではサギニは奴隷らしい奴隷だな。今までの扱いの悪さが垣間見えるのはムカつくが。……ま、これも御主人様の仕事か。

 

 

「お前が俺の役に立つなら生活の質で差別するつもりは無い。調子に乗ったら叱るけどな」

 

「は、はい」

 

「おかわりは自由だが、食べ物を粗末にするのは許さん。そこら辺の匙加減は自分で見極めろ。それじゃ飯にするか」

 

 

 両手を合わせて頂きますと呟き、シチューを掬って口へ運ぶ。……こんなもんか。

 

 

ほいひぃ(美味しい)!肉と野菜の味がまろやかな白いスープに溶け込んで一つになってま()!」

 

 

 グロリア、お前は何処へ行くんだ。

 

 

「じ、実家で似た料理を食べた時より美味しいかも知れません……!」

 

 

 メロー、それはたぶん火加減の調整に失敗したか、煮込む時に混ぜることをサボって焦げただけだ。素材的には貴族以下だぞ、これ。

 

 

「…………!…………♪」

 

 

 サギニ、お前は食べるのに必死すぎる。もうちょっと落ち着け。

 

 明日の朝食の分なんて知るかというレベルで食べ進める三人に軽く溜め息を吐き出し、気持ちを切り替えてパンをシチューに浸けてから齧る。

 

 やっぱり(牛乳)が少し多かったか。シチューというよりシチュー風牛乳煮込みになってる気がする──

 

 

『『『………………』』』

 

「…………なんだ?」

 

 

 無言のままこちらを見つめていたので問い掛けると、三人は視線で言葉を交わし始めた。

 

 時間にして数秒だろうか。その僅かな沈黙の後に、奴隷を代表してグロリアが口を開く。

 

 

「えっと、私達も真似してもよろしいでしょうか?」

 

「火傷しない様に気を付けろよ」

 

「はいっ!」

 

 

 嬉しそうにパンをシチューに浸けて口へ運ぶグロリア。メローはパンを千切り、スプーンの上に乗せてからシチューと一緒に口へ運んでいる。

 

 サギニは二人の間で迷った結果、今回はグロリアと同じ食べ方を選んだ。ここらへんは教育の差かね?

 

 そんな事を考えつつ俺はパンを半分に割り、そこへ具材とシチューを投入。

 

 

『『『………………!!』』』

 

 

 いや、その手があったか……!みたいな顔で驚かれても困るんだが。

 

 

「やるなら服や机を汚さない様に気を付けろよ」

 

『『『はいっ!』』』

 

 

 いそいそとパンにシチューを詰め込み始めた三人を眺めつつ、作ったシチューパンを口へ運ぶ。

 

 明日の朝食は一から作り直しか。絶対余らんだろ、これ。

 

 

 

 

 食事を終え、食器洗いは奴隷に任せて一足先に食休み。これを終えたら後は風呂に入って寝るだけだ。

 

 サギニは二回目の入浴になるが、一回目は温泉で汚れを落としただけだからな。次は石鹸を使って洗ってやらねば。

 

 とはいえ、それはもう少し未来の話。三人が来たら今日の成果の報告だ。

 

 

「────ってのが今日の成果だ。だから明後日から十一層で戦う事になる」

 

「「はい」」

 

「は、はい。頑張ります」

 

 

 返事が揃う頃には新しい奴隷を買ってそうだ。

 

 

「ところで主様。サギニさんは私達の様に職業を変えなくてよろしいのですか?」

 

「少し悩んでる。獣戦士でも良いんだが、巫女や暗殺者も捨てがたくてな」

 

「暗殺者?」

 

「戦士を極めた者がごく稀に成れる事のある職業ですね。状態異常に強く、また状態異常攻撃を得意としているらしいです」

 

「良く知ってるな」

 

「ドワーフはスキル合成が出来る唯一の種族ですから。状態異常攻撃が出来る武器を求めて、一度だけ両親を訪ねてきた事があるんです」

 

「成る程」

 

 

 ちなみに暗殺者の転職条件は戦士Lv30、毒で魔物に止めを刺した事があるの二つだ。

 

 だから戦士を極めたと言えるLv50にする必要は無いんだが……たぶん中途半端な時に転職なんてしないからだろう。

 

 もしくはエレーヌ神殿でのみ転職出来る稀少なジョブと認識されているか。帝都にギルドがありそうだが。

 

 

「あ、あの……私、獣戦士に成れなかった落ちこぼれなんです。ですから獣戦士には……」

 

「そうなんですか?」

 

「いや?転職条件は満たしてるぞ?──ほれ」

 

 

 キャラクター再設定で俺のジョブの一つを騎士に、サギニの職業を獣戦士に変えてからインテリジェンスカードを取り出す。

 

 

「…………えっ?えっ?」

 

「「他言無用です。分かりましたか?」」

 

「は、はぃ!」

 

 

 うーん、一々説明しなくて良いから楽だ。

 

 

「ま、そういう訳で、巫女にしろ暗殺者にしろどうにでもなる。……だからこそ迷ってるんだが」

 

「主様のお力があれば巫女は不要そうですし、獣戦士か暗殺者がよろしいのではないでしょうか」

 

「いえ、グロリアさん。一人は巫女か僧侶を入れておかないと、外部の人間からパーティー構成が変に思われてしまいます。御主人様はそこを気にしているのかと」

 

「なるほど。外の視線を気にしなければなりませんか」

 

 

 うーん、楽だ。最終的な判断を下すのは俺だが、討論自体は任せても良さそうだ。

 

 

「サギニさんはどう思われますか?」

 

「わ、私ですかっ!?」

 

「御主人様の下で共に戦う仲間ですから。遠慮無く意見を言ってください」

 

「そ、そうですね……」

 

 

 眉を少し寄せ、何とか意見を言おうと考え込むサギニを全員で待つ。こういう時に急かす奴は子供の教育に関わるとロクな事にならないから注意しておくと良い。

 

 そういや俺がまだ向こうに居た頃、スマホを弄るのに夢中になり、子供の話を真剣に聞かない親が増えているという話を聞いたな。

 

 そのせいで会話が苦手な子供が増えたという統計結果を何処かの大学が発表していた記憶がある。

 

 ぼんやりそんな事を考えていると、漸く自分の意見が纏まったサギニがこちらを向いた。

 

 

「えっと、これは私もそう思っていた事なのですが、ワンドを差しておけば勝手に僧侶だと思ってくれると思います」

 

「「……あっ」」

 

 

 これは俺が悪い。インテリジェンスカードをチェックしない限り、職業は基本的に装備から判断するしか無かったわ、この世界。

 

 

「御主人様の御力を当然の物として考えてました。そうですよね、戦闘中でも無ければ職業は装備から判断するのが普通です。そんな事にすら気付けなかったなんて……」

 

「私も竜騎士にしてもらった時の記憶に引っ張られ過ぎました。私も昔はサギニさんの様に考えていたのに……」

 

「え、えっと?ごめんなさい?」

 

 

 落ち込む二人に戸惑うサギニ。何と言葉にするか迷うが、これから仲良くやって行ける事だけは間違いなさそうだ。

 

 

「……こほん。取り敢えず外部からの視線は気にしなくて良さそうですね。えっと、主様。ワンドを用意する事は可能ですか?」

 

「盗賊からパクった戦利品の中にあるから大丈夫だぞ」

 

 

 アイテムボックスを開き、ワンドを机の上に置く。処分し忘れていた品なのは秘密だ。スロット無いし。

 

 

「後は私かサギニさんのどちらが持つかになりますか」

 

「私では駄目なのですか?」

 

「グロリアさんは両手剣を二本使うので、誰が見ても竜騎士だと分かるかと」

 

「…………そういえばそうですね」

 

 

 見た目だけでも竜人族って分かるしな。竜騎士に成れなくても、僧侶にするぐらいなら戦士として使うのが普通だろう。

 

 

「主様。どちらに持たせますか?」

 

「メローで。鍛冶師のアイテムボックスに入れておけば使わない時も邪魔にはならんだろう」

 

「かしこまりました」

 

 

 ワンドを手に取り、メローが滑らかな詠唱でアイテムボックスを開く。

 

 ちなみにメローを選んだ理由は単純だ。狼人族にデッドウェイトは勿体ない。ただ、それだけ。

 

 

「これで外からの視線は気にしなくて済みますね」

 

「そうですね。ただ残る二つの職業はどちらも魅力的なので悩みます」

 

「聞いた感じだと一撃の重さを取るなら獣戦士、戦闘を楽にするなら暗殺者という印象を受けるのですが、この認識で大丈夫でしょうか?」

 

「問題無いかと。本来なら暗殺者用の武器を用意する事はかなりの難題なのですが……御主人様には他言無用の御力がありますからね。問題ありません」

 

「スキル合成はメローの仕事だけどな」

 

「…………も、問題ありません」

 

 

 本当に問題無いから早いところ自信を付けてくれると楽なんだが。

 

 それから暫くグロリアとメローが言葉を交える。ボス相手には獣戦士が良く、雑魚相手には暗殺者が良い。

 

 この世界の人間はそういう風に考えるらしい。これは異世界人の俺には無い考え方だ。

 

 興味深い二人の討論をじっと黙って聞いていると、同じく黙って聞いていたサギニが終止符を打った。

 

 

「あ、あの……獣戦士には何時でもなれる?訳ですし、暗殺者になってから決めれば良いのでは無いでしょうか……?」

 

 

 そういう事になった。

 

 

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