ハッキリ言ってダルの迷宮はクソだ。少なくとも新人向けの迷宮では無い。ベテランすら面倒だと思うタイプの迷宮だと断言出来る。
何せ一層に現れるのが毒持ちの『ニートアント』で、二層は『エスケープゴート*1』となっている。三層すら『ミノ*2』であり、どう考えても新人を殺しに来ている迷宮だ。
さらにクソさは加速する。原作でも死者が初めて書かれた八層手前の七層で現れるのは『コボルト』であり、足止めを食らう探索者達に対して経験値的に美味しくないと思われる一つ下の階での狩りを強制する。
黒魔結晶や薬を購入するついでに探索者ギルドの受付で聞いた時は唖然とした。そりゃ俺以外の探索者を見掛けない筈だよな。入口の探索者も騎士団以外の人間を見掛けたのは久々だと言っていたし。
「お陰で人目を気にしないで済むから有り難いがね」
毒針の売価は原作で明かされていない。勝手な予想だが、たぶんコボルトのドロップ品と同じか少し上程度だろう。
一本十ナールと仮定すると、1日35体狩れば宿屋から追い出される事が無くなる。デュランダルのお陰で余裕だが……普通の探索者じゃ無理だな、これ。
頭の中でそんな事を考えつつサクサクと『探索者』のレベルを上げる。ちなみに現在のジョブ構成はこれだ。
探索者Lv 10 英雄Lv 7 戦士Lv 5
剣士Lv 5 商人 Lv 5
装備 デュランダル 硬革の帽子 硬革の鎧
硬革のグローブ 硬革の靴
村人はレベル5で捨てた。奴はこの先の戦いについてこれそうに無いからな。
原作と取得条件が同じなら戦士は村人レベル5と魔物を倒す事が取得条件だ。たぶんトドメを刺す必要もある。剣士も殆ど同じで村人レベル5と剣で魔物を倒す、だった筈だ。
商人は村人レベル5と売買の経験がある事だと原作主人公は予想していたが、俺は値切り成功が条件だと勝手に思ってる。
ちなみに探索者のレベルが8になった時点で『必要経験値五分の一』を取っておいた。僧侶を始めとする他のジョブも取りたい所だが……まずは探索者のレベル上げだ。
原作では春の五日目の時点で探索者が21まで上がっていた。魔法使いとなり、デュランダルを使わなくなったお陰でもあるので完全な参考にはならないが、ベイルの二層でそこまで上がった事に間違いは無い。
主人公と違って焦る理由も無く、人が居ないお陰でボスを連戦しても良い。20ぐらいすぐだろう。たぶん。
「問題は敵と出会いにくいって事なんだよな」
原作でも嘆いていたぐらい迷宮は広く、敵と会えない。会いにくい。
ロクサーヌが居るだけで稼ぎが増える訳だ。少なくとも無駄に考える時間はたくさんあり、たまに見付けても一撃で仕留められる。
時間を無駄にしてる感じが凄い。こりゃさっさとボス周回に行くべきかね──っと。
「なんとまぁ都合の良い事で」
小部屋の先にはボス部屋である事を知らせる扉が見えた。やはり誰も居ないらしく、見事に門は開いている。
「ジョブ良し、デュランダル良し」
入って速攻オーバーホエルミングを使い、ラッシュとスラッシュを連打するゲームの始まりだ。
広間に入った瞬間、背後の扉が閉まり、煙が集まって魔物が姿を現す。
ニートアントは全長一メートルぐらいの魔物だ。ハントアントは、それより二回り大きい。どちらも現実で出会ったら卒倒する自信がある──
「チッ!やっぱりかッ!」
予想通り、と言うべきか。原作でもボスは開幕から青く光る魔法陣を展開し、スキルを放ってきた。
ハントアントのスキルは毒攻撃。呑気に食らいたい技じゃない。なのでオーバーホエルミングを発動して周囲の時間より早く動き、ハントアントへデュランダルを振り下ろす。
「──よしッ!止まったッ!」
デュランダルに付いているスキルは合計六つ。攻撃力五倍、HP吸収、MP吸収、詠唱中断、レベル差補正無視、防御無視。敵のスキルを止めたのは、この内の詠唱中断になる。
やはりデュランダルこそ正義。この剣は何時も奴隷ハーレムを築く主人公に力を貸してくれる。
その後は消化試合だった。
敵の攻撃をデュランダルで受け流し、ラッシュとスラッシュを交互に叩き込む作業。やばくなったら
ハントアントのドロップ品は透明な膜に包まれた薄桃色のビー玉?の様な物だった。後で換金ついでに受付に尋ねたところ、どうやら害獣から畑を守る為に使われる物だそうだ。*3
日本でも昔は狼の糞尿の入った革袋を吊るして害獣避けに使っていたと聞くし、この世界ではその代わりにこれが普及しているのだろう。
迷宮資源が生活の根幹に根差している世界らしいアイテムだな、本当に。