勝ち組男の異世界迷宮で奴隷ハーレム   作:Lilyala

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新たな狩場

 

 

──春の季節 二十六日目

 

 

「今日から十一層での狩りになる。案内はサギニ、メインはグロリアで行く。連携に関してはお前らで決めてくれ。何か質問は?」

 

 

 少しだけ間を空けて問い掛けたが、誰からも質問は上がらない。

 

 

「よし。それじゃ行くぞ」

 

「「はい!」」

 

 

 サギニの鼻を頼りにセルディカ中央の迷宮を進む。現れる敵はエスケープゴート、コボルト、スローラビットの三種類。弱点は無し。最大出現数は四。

 

 ドロップ品はウサギの毛皮と肉、ヤギの糸、コボルトソルト()の三種類。塩以外はそれなりの値段になるので、生活費以上は余裕で稼げるだろう。

 

 毛皮は百単位で帝都の服屋にでも売るか、それとも面倒を嫌ってギルド売りするか迷ってる。服屋にはこれからも世話になりそうだし、恩を売っておくべきかね?

 

 

「敵です」

 

 

 サギニの報告と共にグロリアが走り、凪ぎ払う様に剣を振るう。さらにそこへメローが駆け付け、現れた魔物を一匹受け持つ。

 

 俺はファイヤーストームを二連打だ。

 

 

「えっ、えっ?」

 

「サギニ。一匹受け持ってやれ」

 

「は、はいっ!」

 

 

 慌ててサギニが走っていき、グロリアが抱えていた魔物に切り掛かる。だがレベル差もあり、簡単にはグロリアから剥がれない。

 

 そこへ俺の全体回復、ファイヤーストーム、ファイヤーストームの脳死作業が直撃し、コボルトが死亡(リタイア)。残るはヤギとウサギのみ──いや、グロリアがエスケープゴートを沈めたな。

 

 残るウサギは三人に袋叩きにされて戦闘終了。お疲れ様でした。

 

 

「十一層でも余裕を持って戦えそうですね」

 

「カードを手に入れる為には数をこなす必要がありますし、余裕がある事は良いことです」

 

「あの……御主人様は魔法使いだったのですか?」

 

「「他言無用ですよ」」

 

 

 そういやサギニを助けた時は見えづらいブリーズ系を使ってたな。そりゃ戸惑うのも当然か。

 

 

「ま、俺達の狩りはこんな感じだ。だから遠慮無く魔物のところに案内してくれ」

 

「わ、分かりました。次はこちらです」

 

 

 再びサギニを先頭にして迷宮を歩く。するとすぐに魔物の姿が見えた。

 

 

「敵で──」

 

「ハァァァッ!!」

 

 

 サギニが言い切る前にグロリアが突撃。メローが続き、俺の魔法が発動。慌ててサギニが走り、敵に切り掛かる。

 

 ひもろぎのスタッフなら一巡で落とせるのかね?労力的には大した違いじゃないが、一巡と二巡では効率が違う。

 

 MP的にはまだまだ余裕はあるんだが……乱獲は効率的に行わないと時間が勿体無い。これも全部カードが落ちないのが悪い。

 

 

「えっと、お二人がすぐに走る事には何か意味があるのですか?」

 

「敵のスキルを止める為ですね。私は主様に前衛を任された奴隷なので、壁になる意味もありますが」

 

「私も強権のダマスカス鋼の槍を預けられていますし、その期待に応える為に走っています」

 

「パーンの時にスキルを止め損なって全体魔法を食らった経験があってな?上の階層に行けば全体魔法を食らう機会は多いだろうし、その練習の為に走らせてるんだ」

 

「な、なるほど……やはり上を目指す方々は意識から違うのですね。私も頑張らなければ」

 

「一緒に頑張りましょう。私達は良き主の下に来れたのですから」

 

 

 台詞だけ聞くと宗教の様だ。いや、悪い事じゃないんだが。

 

 それからもサギニ先導の下に迷宮探索を続け、午前の部は終了。カードのドロップは無かったが、サギニ効果で稼ぎが三千ナールに届いた。

 

 ウサギの毛皮を抜いてこれなのだから、やはり狼人族は凄い。無料で良い拾い物をしたな。

 

 

 

 

 昼食はメローとサギニに任せ、その隣の竈でグロリアと仕込みを行う。

 

 作るのはクッキーだ。竈焼きで作ってやるよ……!

 

 

「という訳でグロリアはバター作りを頼む」

 

「かしこまりました」

 

 

 魔導師になったら氷魔法で氷室とか作れるんだが、残念ながら五十は遠すぎる。必要な分だけ毎回作るしか無いのは面倒なんだが……美食の為にグロリアには頑張ってもらおう。

 

 気を取り直してクッキー作りに使う素材を用意する。

 

 

 材料は異世界小麦粉、酪、コボルトスクロース(砂糖)、卵だけ。

 

 酪はバターに少量使い、余った奴を牛乳代わりに使い、それでも余ったらクッキーを食べる時のドリンクに使う。

 

 最初から全部一緒でも良い気もするが、料理は科学。レシピ通りに作らないと事故った時に泣きを見る。

 

 なのでグロリアの腕が楽になる事は無い。早く氷が欲しいな。

 

 バターが出来上がるまで暇なので、その間は昼食作りの手伝いだ。サギニは料理を任せられる事が多かったらしく、作業は淀み無く進んでいる。というか三人で一番火の扱いが上手かも知れん。

 

 

「あ、そうでした。御主人様、パピルスを追加でお願いしてもよろしいでしょうか?」

 

「もう無くなったのか?」

 

「まだ残っていますが、時間の問題かと。迷宮の情報やスキル合成した武具の詳細を書き残していますが、料理のレシピが……その……」

 

「あ~……それは仕方ないな」

 

 

 毎回自分で作るのは面倒なので、口頭でレシピを伝えて書かせているし、それを基に作らせてもいる。そら、無くなるのはあっという間だわ。

 

 

「分かった。銀貨三枚渡しておくから明日の買い出しついでに買ってきてくれ」

 

「畏まりました」

 

 

 コーラルゼラチン()もあるし、紙でも作るかね?……いや、流石にそれは手広く広げ過ぎか。

 

 

「主様。こんな物でどうでしょう?」

 

「んー……よし、それぐらいで良いぞ」

 

 

 氷が無い以上、高望みせずに割り切る精神が大事だ。

 

 材料は異世界小麦粉240g、コボルトスクロース120g、手作りバター120g、(牛乳)大さじ二杯。これが四人前の分量なのだが……異世界で計れるか!

 

 という訳で、ある物を使う精神で行く。

 

 ニンジンの重さは一本辺り150gから200gだった筈だ。この情報を信じて一番重いキュピコ*1を200gと仮定して使う。

 

 余りにも大きすぎたり、小さ過ぎるキュピコは除外だ。あくまでも地球の野菜売り場に置いてある人参をサイズの基準とする。

 

 余談だがリンゴは200gらしい。覚えておくと異世界転移した時に役立つかもな。

 

 天秤はメイドイン俺だ。切断と調整に使ったのはデュランダル。水平は迷宮で取った。神様がいい加減でなければ、あそこが世界で一番水平だろうし。

 

 石畳の敷かれた迷宮を探すのは手間だったが、まぁ、頑張ればどうにでもなる。バケツとホースさえあれば水平を計るのは簡単だったんだが。

 

 天秤の上に重い方のキュピコを乗せ、皿に小麦粉を乗せていく。気持ち二割ぐらい小麦粉の方を重くすれば、たぶん240gだと信じよう。

 

 同様の方法でコボルトスクロースを乗せて調整する。こちらは六割ぐらいキュピコの方に傾ける。

 

 これで計量終了。誤差は気にしない。

 

 

「さて、それじゃ始めるぞ」

 

「はい」

 

 

 まず最初にコボルトスクロースをバターを作らせたボウルに入れ、練り込む。この役目はグロリアにそのまま頼んだ。

 

 その間に卵を割り、殻を使って黄身だけ取り出す。白身はメローに渡して昼食の材料行きだ。

 

 溶いた卵を二、三回に分けて入れ、なめらかになるまで混ぜてもらう。

 

 それが終わったら異世界小麦粉と酪を大さじ二杯投入。ひたすら混ぜてもらう。

 

 後は汲んできた冷えた井戸水の上に三十分から一時間ほど置けば生地の完成だ。

 

 冷蔵庫という強い味方が居る奴は、迷わず使う事をオススメする。俺も氷魔法があればなぁ!

 

 

「よし、それじゃ飯にするか。火は落とさないでくれ。焼くのに使うから」

 

「かしこまりました」

 

 

 昼食は野菜と卵のスープ、塩と胡椒で味付けしたウサギの肉を焼いた物、買ってきたパンだった。

 

 味は結構俺好み。というかレシピが俺の舌をベースに作られている訳だから、必然的にそうなるか。

 

 食事の合間もちょくちょく火が消えない様に様子を見ておき、場合によっては延命処置を行う。

 

 竈内部で調理をする場合、織火を近付ければ強火、離せば弱火で焼けるので、灰を掃除したら左右に寄せてフライパンごと突っ込む予定だ。

 

 どうなるかは知らん。そして、これ以上は竈の改造をしなければ無理だ。

 

 食事を終えたら冷やしておいた生地を予め洗っておいたまな板の上に乗せ、メローに作らせた棍棒をデュランダルで切り落とし、調整を重ねたお手製麺棒で伸ばす。

 

 型抜きは無いので薄く伸ばして格子切り。後は丸めて手で潰せば大丈夫だ。

 

 その間に灰を掻き出させて置く事を忘れずに。これを忘れると灰がクッキーに付くからな。

 

 後は織火となった薪を左右に寄せ、良い感じになるまで焼けば完成だ。二度とやらん。

 

 肝心の味の方は──こんなもんか。

 

 

「こ、これは危険です……!食後なのに幾らでも食べられてしまいます……!」

 

「酪との相性が素晴らしいですね……!これは店に出しても売れます……!買います……!」

 

「…………!…………♪」

 

 

 凄まじい勢いで消えていくクッキー。常温でも四日ぐらい持つんだが、この様では残らないだろう。

 

 

(……ま、喜んでくれたなら良いか)

 

 

 緩んだ頬を締められぬままパクパクと食べる三人を眺めながら、俺は一人御茶で喉を潤した。

 

 

*1
どれハ世界の甘い人参?らしき異世界野菜。いや、果実?一メートルぐらいの高さの茎に赤いニンジンがぶら下がってるらしい。

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