数時間前まで
「早朝と昼の狩り場を入れ換えて、人が居ない時間に迷宮攻略しようと思うんだが大丈夫か?」
「私は構いませんが、グロリアさんは大丈夫です?」
「そうですね……朝一からボス戦は流石に怖いので、数戦ほど身体が暖まるまで待ってもらえると助かります」
「了解。サギニもそれで良いか?」
「はい。大丈夫だと思います」
「よし。それなら明日はまたダルの迷宮からだ。そのつもりで準備しておいてくれ」
『『『はい』』』
流石に一時間近くぼけーっと待つのは時間を無駄にしてる感じが凄かったからな。その間に狩りに行けば千ナールぐらい稼げたと思うと余計にだ。
原作でも語られていた通り、上に行けば魔法使いを得られない冒険者達は詰むのだろうな。グミスライム辺りからすでにキツそうだが。
「ところで主様。良い機会なのでお聞きしたいのですが、新たな奴隷はお決まりですか?」
「んあ?どうした急に?」
「十六層から敵の数が五体になりますから。出来るだけ頑張るつもりですが、もしかしたら主様の方へ敵を通してしまうかも知れません」
「あー……」
迷宮は二、四、八、十六、三十二、六十四層で出現する魔物の最大数が増える。計算上は百二十八層も増加対象だが、百を越える迷宮はクーラタルぐらいだから除外する。セルディカも怪しいが。
直近で俺達に関係する十六層から現れる敵の最大数は五体。グロリアが三体抱えなければ俺の方に一体来る計算になる。
ぶっちゃけると心配してないが。というか無意味だ。
「ダルの迷宮の十六、十七、十八層に現れるのって、コウモリ、蜂、蝶だからなぁ。最初から抜けてくる前提で考えてたぞ」
何時だって飛行ユニットは強力なのだ。全員揃って風が弱点なので、狩るのに苦労はしないが。
「なるほど……それでしたら急な増員は必要ありませんね」
「いえ、それはどうでしょう?上を目指すなら早い内に仲間を集めた方が良いと思いますが」
「と言いますと?」
「私達が現在戦ってる階層に新人を連れてきても死ぬだけです。主様のお力なら何とかなるかも知れませんが、それでも迎え入れるなら早い方が良いと思います」
「確かにメローの言う通りなんだが、グロリアの装備をダマスカス鋼に変えたい気持ちもあるんだよ」
竜革装備もダマスカス装備も、素材を取るだけなら二十三から三十三層のボスから取れる。流通量から考えると、これが鍛冶師の作れる最高品だろう。これより上は隻眼からだ。
原作を基準に考えるならレベル的にも装備的にも今の俺達で行ける。……と思うのだが、ロクサーヌの存在が俺の計算を狂わせる。
全く被弾しないのだ。最前列に立ち続けているにもかかわらず。魔法すら避けるし、作中で被弾したのは睡眠状態にされた時と、必中の全体魔法だけという無敵っぷり。
そのせいでグロリアが敵の攻撃に耐えられるか分からない。敵を舐めて養分になった奴等を見たばかりだし、出来れば慎重に行きたい。それが偽らざる俺の気持ちだ。
「確かに何時も二匹以上抱えて下さるグロリアさんの装備は大切ですね。スライムとコボルトのカードで全て頑強にしたいぐらいです」
「俺もそう思うわ」
牛とコウモリも悪いカードでは無いが、それでも他のカードより優先度は下になる。
戦闘時移動速度上昇を付ければ強権が生きるし、コウモリの回避率上昇を付ければ被ダメを減らす事が出来る。
ただスライムの物理ダメージ減少ほど体感出来ないし、ひもろぎの火力アップほど劇的な変化は望めない。
良くも悪くもそんなカードなので、必然的にコボルトを使う機会は後回しになる。だからタンスの肥やしになってる訳だ。
「あ、あの、皆様。時間は大丈夫ですか?」
サギニのその声で我に返り、木窓から外を見ると、帰って来た時は辛うじて残っていた夕日が完全に沈み、三日月が庭を照らしていた。
「今日はここまでだな」
「そうですね。お風呂の準備をしてきます」
「あ、私も行きます」
「わ、私も行きますっ」
パタパタと三人が居間を出て行くのを見送り、俺は石鹸を取りにひとり実験室へ向かう。今夜も隅々まで磨いてやらねばな。
◇
多くの人間が魅了される、ある日突然、異世界へ転移、転生する物語。
魅了された理由は人それぞれだろう。剣と魔法の物語に惹かれた人間もいれば、楽に生きられるチートに憧れた人間もいる。
獣耳美少女と触れ合いたい人間もいれば、合法ロリを求めた人間もいる。
巨乳美女とイチャイチャしたいという欲望もあれば、女帝として名を馳せている女を自分の物にしたいという征服欲もあるだろう。
イケメンに囲まれてちやほやされたい。そんな気持ちを心の奥底に秘めたまま物語を読んでいた人間もいるかも知れない。
そんな諸君に俺は答えを授けよう。
「えっと、今日もよろしくお願いしますね」
恥ずかしそうにはにかむ赤髪の美女を丹念に石鹸で洗っていく。布なんて無粋な物は必要無い。男なら親から貰った両手だけで勝負だ。
頭から足の指まで丁寧に洗った後、最後に満足するまで双山を楽しむ。丁寧に、丹念に、念入りに。
最後はお湯で石鹸を流して終了。カメリアオイルがあったら
「わ、私の番ですか。よろしくお願いします」
小さな体に大きな胸。魅力的なその肢体を胡座をかいた足の上に座らせ、後ろから抱き締める様に洗っていく。
こんな小さな身体なのに、俺より力があるのだからファンタジーは不思議に満ち溢れている。嫌いじゃないが。むしろ大好きだが。
ごわごわだった髪はさらさらとまでは行かずとも、それなりの柔らかさになった。ここから先はコンディショナーの様な物が必要だ。
つまり、知識チートのお時間だ。
石鹸系シャンプーは常用すると髪をアルカリ性に傾けてしまう。端的に言えば、男の様なゴワゴワな髪質になる訳だ。
そんな奴隷の髪を美しくしたい!という異世界在住の諸君にオススメするのが──石鹸シャンプー用コンディショナーだ。
作り方は簡単。洗面器にお湯を入れ、お酢かレモン汁を大さじ一杯入れる。これだけだ。
頭皮や髪になじませたらすぐに洗い流すのが大切だ。馴染ませたまま放置し過ぎると、頭皮へのダメージになってしまうからな。
お酢は穀物酢だと匂いが残りやすいので、りんご酢がベターだ。面倒なら絞った後のレモンを洗面器に投げ入れれば良い。
ちなみにグロリアにもちゃんとやっているので心配性な諸君は安心してほしい。奴隷の待遇に差を付ける時は罰を兼ねている時だけだ。
「よ、よろしくお願いします……」
最後は蜂蜜色の髪の未亡人っぽい妖艶さを漂わせるサギニだ。
自分に自信が無く、常に俺の顔色を窺う彼女だが、それにはちゃんとした理由がある。
グロリア程では無いが、サギニの身体には無数の傷があるのだ。それも背中に集中して。
まぁ、奴隷という言葉を都合良く解釈して馬鹿な事をやった奴がいるのだろう。
全く、馬鹿な奴だ。この世界は奴隷の扱いを人間の法では無く
まぁ、そんな使用済みティッシュよりどうでも良い話は投げ捨てる。今はサギニの身体を洗わねば。
まずは前に座らせたサギニの背中を優しく撫でる様に洗う。いずれエリクシールで消すが、それまでは俺の力ではどうしようも無い。
せめて俺の顔色を窺わずに済む様に優しく洗う。
洗い終えたら次はメローの様に丁寧に髪のケアだ。注意点は狼人族には背中と尻尾にも毛があるので、そちらの方もしっかり洗う事。髪も尾も美しくないと片手落ちだからな。
──そして最後はお楽しみの身体だ。
グロリアやメローほどのサイズでは無いが、現実なら間違いなく男の視線を集める双丘を隅々までもみ洗い。
満足したらお湯を掛けて石鹸を流し、温泉に向かわせる。そして手早く自分の身体を洗って温泉へ。
「ふぅ……極楽極楽」
温泉に浮く六つの球体を愛でながら今日の疲れを溶かしていく。今日も良い一日だった。明日も頑張ろう。