勝ち組男の異世界迷宮で奴隷ハーレム   作:Lilyala

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マーブリーム

 

 

──春の季節 二十八日目

 

 

「十四層に現れる魔物はマーブリーム。通常は白身、レアドロップで尾付きを落とす魔物だ。見た目は……まぁ、一度見れば忘れん姿をしている、とだけ言っておこうか」

 

 

 魚にひょろ長い()()()()生えているんだよな。手が無いせいで余計に印象に残るというか。

 

 

「攻撃方法は蹴りとヘッドバット、それと水魔法だ。クラムシェルやピッグホッグと同時に現れた場合、基本的にピッグホッグが残ると思ってくれ」

 

『『『はい』』』

 

「よし。それじゃ行くぞ」

 

 

 サギニに索敵を任せて数分。第一魔物を発見した。構成は──魚、魚、貝、貝か。

 

 朝の内に切り替えておいたサンドストームを二連発で放つと同時にグロリア達が交戦開始。

 

 

「クラムシェルより柔らかいですね」

 

「クラムシェルはランク2の魔物群の中では最も硬い敵ですから」

 

 

 二人が会話しながら敵の攻撃を受け流す。そして即座に反撃。その横でサギニが受け持っている魔物がスキルの兆候を見せるが、グロリアがダマスカス鋼の剣で黙らせる。

 

 眺めている内にクールタイムが明けたので再びサンドストームを二連発。……まだ生き残ってるか。と思ったら、グロリアの攻撃でマーブリームが沈んだ。

 

 クラムシェルは中身を攻撃しないと厳しかったが、マーブリームなら前衛の攻撃でも大丈夫そうだ。

 

 下手すりゃクラムシェルより狩りやすいかも知れん。

 

 

「やはり詠唱中断のスキルは素晴らしいですね。魔法を恐れずに戦えます」

 

「ですね。もう手放せません」

 

 

 自分の担当している貝が見せたスキルの兆候を丁寧に潰すと、メローはそのまま中身に槍を差し込んだ。

 

 それが止めの一撃になった様で、クラムシェルがドロップを残して煙に変わる。残るはサギニが担当するクラムシェルとグロリアが抱えているマーブリームだけか。もう魔法を撃つ必要は無さそうだ。

 

 それから程なくして戦闘終了。ドロップは白身二個とシェルパウダー二個だった。料理人を付けたくなるが、神官と薬草採取士も育てたいから悩ましい。

 

 

「ダメージはどうだ?」

 

「魔法を食らわなければ十発以上耐えられると思います」

 

「二人は?」

 

「低く見積もっても八発は耐えられますね。魔法さえ食らわなければ、まず死ぬことは無いかと」

 

「わ、私もメロー様と同じ意見です」

 

 

 んー……無理をしてる様子は無し。竜騎士のダメージ軽減のお陰かね?

 

 

「戦闘後に全体回復を使ってるが、足りなければ手持ちの回復薬を個人の判断で使ってくれ。乱用は困るがな」

 

『『『かしこまりました』』』

 

 

 ドロップをアイテムボックスに投げ込み、再び迷宮探索を再開。現れる敵は基本的に魚プラス貝だが、豚が混じると少し面倒臭い。

 

 魚や貝なら五匹編成でもすぐに仕留められる。だが豚が混じると、ウォーターボールを追加で何発か撃つ必要があるのが怠い。

 

 貝or魚三体の豚二匹の編成は最悪だ。サンドストームを五回撃った後にウォーターストームを二回撃つ必要がある。

 

 そのせいで、次の戦闘では確定でデュランダルを抜く破目になるんだよな。俺の経験値が!

 

 

「豚バラは嬉しいですが、豚自体は獲物として微妙ですか」

 

「御主人様が剣を抜く回数が露骨に増えますからね……。ただ、探索だと避けようが無い場合もあるので悩ましいところです」

 

「えっと、一応豚を避けて案内する事は可能です。ビッグホッグの匂いは覚えましたので」

 

「残念ながらコボルトの様に数を稼ぐ狩りならともかく、私達はボス部屋を探していますからね。避けた先にあったら目も当てられません」

 

「ですね。それが一番怖いです」

 

「わ、分かりました。それでは端から埋められる様に案内しますね」

 

 

 俺が何も言わずとも方針が決まるのは良い事だ。

 

 再びサギニに先頭を任せて探索を再開する。強権武器が二つあるお陰で、今まで敵がスキルを使えた事は一度も無い。

 

 多少の被弾を覚悟して強引に止めに行くグロリアのお陰だ。HP吸収を付けておいて本当に良かった。

 

 それから二時間ほどばかり迷宮を徬徨い、午前の部は終了。カードは無し、稼ぎは五千ナールを超えた。

 

 銀貨換算で五十枚か。二日で金貨一枚と考えると中々の稼ぎだ。

 

 ちなみにランク1のドロップは十ナールから三十ナール、レアドロップのリーフには八十ナールの価値がある。ボスドロップはもっと高値が付くが、雑魚はこの程度の価値しか無い。

 

 対してランク2のドロップは豚バラやシェルパウダー、白身は三十ナールで売れる。*1レアドロップの(はまぐり)は八十ナールだ。

 

 階層を上げた割に稼ぎが増えてないのは買取価格自体が控えめだから。たぶん、この世界を作った神様はインフレに苦しめられた経験があると思う。

 

 余談だが、蛤は店で買うと売値の四倍、三百二十ナールになる。

 

 安いと思うかもしれないが七ナールの柔らかいコッペパンが高級品扱いになる世界だ。それを踏まえて考えると、迷宮探索しない人間が気軽に食べられる代物では無い。

 

 

「主様?どうかなさいましたか?」

 

 

 俺の視線に気付いたグロリアが火から目を離して不思議そうな顔でこちらへ振り向く。

 

 

「いや、奴隷の値段と昼食費の落差に驚いただけだ」

 

 

 良くもまぁ七十万ナールも稼げたよな、俺。

 

 

「なるほど。ですが食事に掛かる費用まで高くなってしまうと、迷宮攻略に支障を来たしますからね。それは国にとっても避けたい事態なのでは無いでしょうか?」

 

「まぁ、そういう面も確かにあるだろうな」

 

 

 ランク3のケープカープが落とす『寄生ワーム』には豊穣を約束する力がある。下手すれば荒れ地を農地に変える事すら可能で、しかも迷宮が存在する以上、理論上は無限に手に入れる事が出来る。

 

 それと労働力として安売りされる奴隷を組み合わせれば、安価でも利益を出せる農作物を大量生産する事は可能だ。それこそ機械(地球)と比べても。

 

 見た目が悪かったり、所謂『売れ残り』の末路が気になっていたが、たぶん農業奴隷や鉱山奴隷なのだろう。

 

 もしくは娼館経営者が安く買い取り、利益優先の使い潰し辺りか。竜人族やエルフなら繁殖奴隷の線も普通にあり得る。

 

 つまり、至上の命題として迷宮攻略を掲げており、それ以外は些事として割り切っている。人権なんて考えは最初から存在していないし、最低限の保証こそあれど、この世界の住人は奴隷(それ)を当然だと考えている。

 

 

────これがこの世界の本質か。

 

 

 人権活動家とか呼んだら楽しそうだな。ついでに主人公のスタンスは正しかった。下手に触れれば国が滅ぶ。

 

 

 奴隷は奴隷として扱い、個人規模で扱いを変える。

 

 

 この世界で生きるにはこういう風に考えないと駄目だ。じゃないと食料の価格が跳ね上がり、人類が迷宮との闘争に敗北する。

 

 過去の欧州の様な人口爆発を常に起こし続けて迷宮を抑える楔として使い、一部の優秀な人間が人類の生存圏を守る為に踏破する。

 

 奴隷はその過程で生まれる落伍者のセイフティーネットであり、罪人の行き着く先であり、安価な労働力。

 

 それが文明の土台になってるからな。下手に弄れば崩壊するだけだ。

 

 

「で、出来ました」

 

 

 サギニの声で我に返り、顔を上げてみれば食卓に昼食が並んでいた。

 

 白身を焼いた物(マーブリーム)豚バラを焼いた物(ピッグホッグ)。それにパンとサラダ。

 

 ダルの迷宮十四層定食とでも名付けるかね?長すぎるか。

 

 

「じゃ、さっさと食って午後に備えるか。──頂きます」

 

『『『頂きます!』』』

 

 

 初白身のお味は──これは(タイ)か?いや、(ヒラメ)の様な気もするし、(カレイ)の様な気もする。

 

 つまりファンタジー白身だ。想像以上に美味い。

 

 

「この味付け、酒が飲みたくなるな」

 

「お飲みになりますか?」

 

「……………………いや、良い」

 

 流石に命の危険のある場所へ飲酒して行く勇気は俺に無い。でも白ワインと凄く合いそうなんだよなぁ。……よし、決めた。

 

 

「夕飯の時にまた作ってくれ。夕飯の献立が決まってるなら俺の分だけで良いぞ」

 

「かしこまりました。……良かったですね、サギニさん。主様はお気に召した様ですよ」

 

「は、はい。良かったです」

 

「後で私達にもこの味付けを教えてくださいね。御主人様好みの味を作れる様になっておきたいので」

 

「わ、分かりました」

 

 

 和気藹々と会話する三人を尻目に、無言のまま焼かれた白身を口に運ぶ。

 

 この味なら多めに確保しておくのも悪くない。メローのアイテムボックスが空いてるし、保管させるのもアリかねぇ。

 

 

*1
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