勝ち組男の異世界迷宮で奴隷ハーレム   作:Lilyala

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エストック

 

──春の季節 三十日目

 

 

「──他に居ませんか?……では、そちらの方が四千二百ナールで落札です」

 

 

 これで六枚目。今日は良い日だ。地球ではよくあった事だが、こっちに来てから久々に()()()()に事が進んだ。相変わらずヤギのカードは手に入らないが。

 

 

「こちらが牛人のカードになります。鑑定なさりますか?」

 

「頼む」

 

 

 商人から受け取ったカードをそのままギルド員に渡し、金を渡してギルド神殿で鑑定してもらう。無駄な出費だと思うかも知れないが、ギルドにも金を落とさないと後が面倒なのだ。

 

 

「確認した。また良いカードが手に入ったら頼む」

 

「こちらこそまたの取引をお待ちしております」

 

 

 商人と別れ、前回も居たギルド員に残りの出品物を尋ねると、本日はカードの出品はありませんとの解答が。

 

 ならば、もうこの場所でやる事は無い。礼を伝え、そのままギルドを出て冒険者ギルドに向かい、壁を使ってワープを発動。

 

 目的地はヤギが一層に現れる迷宮近くの町。ここでヤギのカードが手に入れば色々楽なんだが。

 

 鑑定しつつ市を回る。売られている物は市の日で無くとも帝都で買える代物ばかり。中には贋作を高々と本物の様に売り込む商人の姿も見える。

 

 純金を謳って黄銅のアクセサリーを売りつける辺り、世界が違っても人のやる事は変わらぬらしい。

 

 錬金術師は暫く詐欺師扱いされる時代になりそうだ。

 

 一つ目の町は外れだったので二つ目の町に飛ぶ。湖畔の側にある綺麗な町だ。ただ近場に迷宮が四つもあり、破棄まで秒読みな気配が漂っている。

 

 その証拠に市の日にもかかわらず町に活気が無い。温泉は無さそうだから領地として狙うつもりは無いが、ギルド神殿狙いで攻略するのはアリだな。

 

 カードを売る様な探索者の姿すら見付けられなかったので、諦めて三つ目の町へ飛ぶ。

 

 ここは少し特殊な町で、切り立った崖をくり貫いて作られた町がある。

 

 町全体が洞窟の中にあると言えば分かりやすいか。個人的にはファンタジーっぽくて好きだが、暮らすとなると遠慮したい。

 

 崖の下で洗濯物を洗い、崖の上まで運ぶのは辛いだろう。だから奴隷を至るところで見掛けるんだが。

 

 

「おにーさん、おにーさん。こんな辺鄙な場所に何しに来たのー?」

 

 

 市を回っていると普人族の女に絡まれた。首には奴隷の証が付けられているが、身なりはそれなりに整っている。

 

 上手く介護奴隷の枠にでも滑り込めたのかね?サギニがつい最近まで纏っていた鬱屈した雰囲気が無い。

 

 

「聞いてるー?無視は良くないなー?」

 

「何の用だ?」

 

「お、漸くこっち見てくれたね♪」

 

 

 嬉しそうに笑みを浮かべるが、果たして表情通りの感情なのかね。怖いお兄さんが角から現れそうだ。

 

 

「いやさー、見掛けない人が居たら気になるじゃん?だから声を掛けてみたのよー」

 

「そうか。騒がせたな」

 

「あっ!ちょ、ちょっと!酷くない!?」

 

 

 無視して歩き去ろうとする俺の前に回り込み、尚もしつこく付いてくる女。面倒なのに絡まれたな。

 

 

「見たところかなり高位の冒険者さんに見えるけど、もしかしてこの町の迷宮を攻略してくれたりするの?」

 

「いや?ここには掘り出し物を探しに来ただけだ」

 

「そっかー残念──」

 

 

 背後に蹴りを叩き込む。ついでにデュランダルを抜き、俺のリュックを漁ろうとしていた男の首を刎ねた。

 

 

「…………ちっ。逃げたか」

 

 

 振り向いた時には女は逃げていた。周囲が騒がしくなったが、気にせず盗人の左手を切り落とし、インテリジェンスカードを確保する。

 

 鑑定って本当に便利だよな。あの一瞬でも職業の看破が出来るんだから。

 

 

「散れッ!散れッ!──そこのお前ッ!町の中で堂々と殺人を犯すとは良い度胸だな!」

 

「お前らは職務を全うしろや。ソイツ、盗賊だぞ?」

 

「ふんッ!本当かどうか怪しいもんだ!来いッ!詰所で問い詰めてやるッ!」

 

 

 伸ばされた手をひらりと躱す。

 

 

「一応、宣言しておく。俺は自由民だ」

 

「…………チッ!」

 

 

 舌打ちと共に連行するのを諦め、代わりに部下と共に俺を囲む。次の手としては悪くない。柄は悪いが、騎士として失格という訳では無いらしい。

 

 

「左手から出てくるカードが盗賊だと証明してくれる事を祈るんだなッ!もしかして違ったら騎士の誇りに掛けて成敗してやろうッ!」

 

「その時は全力で抵抗するから遺書は書いておけよ?」

 

「減らず口を……!」

 

 

 それから睨み合ってる間に三十分が経ち、盗賊のカードが出たので投げ渡す。

 

 

「換金よろしく」

 

「…………チッ。ついてこい。どうせ懸賞金は懸かってないだろうがな」

 

 

 まぁ、所詮はこそ泥だ。最初から期待はしていない。

 

 大事なのは俺が無実だって事を周囲の人間に知らしめる事だ。貴族を目指してるのに濡れ衣なんてゴメンだぜ。

 

 

 

 

「────って事があったせいで回りきれなかったわ」

 

「それは災難でしたね……」

 

 

 居間で三つ目の町の出来事を語ると、グロリアが代表して慰めてくれた。やっぱり自分の味方になってくれる美女が居る生活は最高だ。

 

 それぞれ状態の良い古着や櫛を帝都で買ってきたらしく、何時もより衣装が華やかなのも加点ポイントだ。サギニは全体的に黒っぽく纏まってるので未亡人感が半端無いが。

 

 

「ところでオークションの方はどうだったのですか?あまりヤギのカードに固執していないところを見るに成果は良さそうですが」

 

「くく。良い目の付け所だ。──ほら」

 

 

エストック 片手剣

スキル 空き 空き 空き 空き

 

 オークションに出品されていた品──では無く、わざわざメローの故郷まで行って買ってきた品だ。三割引の為にスロット付きミサンガも買ったので、身代わりのミサンガも何時でも作れるぜ。芋虫のカードは無いが。

 

 

「えっと、カードを買いに行ったのでは?」

 

「もちろん買ってあるぞ」

 

 

 アイテムボックスから取り出したのは六枚のカード。左から順にコボルト、ウサギ、鯉、サンゴ、ハーブ、牛人だ。

 

 まさか望んでいた物が全部手に入るとは。自分の運に恐れを抱いたのは久々だ。

 

 

「……大量ですね」

 

「おう。ヤギのカードが手に入らなかったのは残念だが、サギニが暗殺者になった以上、状態異常武器が無いと勿体無いからな。そういう意味では大幅なプラスと言えるだろう」

 

 

 所持金は金貨五枚まで減ったが。次の奴隷を買えるのは何時になるやら。

 

 ちなみに原作では石化、毒、麻痺、睡眠で埋めていたエストックだが、睡眠は大技を使わない俺達だと余り相性が良くない。

 

 だから代わりに強権を突っ込む予定だ。これならスキルが腐る事はまず無いし。

 

 

「さて、それじゃスキル合成を頼む。まずはコボルトとウサギからだ」

 

すぅーはぁー……分かりました」

 

 

 覚悟を決めてメローが詠唱する。それを見届けた後、間髪いれずにサンゴとコボルトのカードを差し出す。

 

 

「失敗したら私も一緒に謝りますから」

 

「……その時はお願いしますね」

 

 

 そして再びスキル合成。で、完成したのがこちら。

 

 

強権のエストック 片手剣

スキル 詠唱中断 石化添加 空き 空き

 

 

 うーん。どれハの世界と言えば、やっぱこれだよな。着実に俺の考えた最強のスキル構成になってるのを見ると頬が緩む。

 

 

「お疲れ。ちゃんと出来てるぞ」

 

「よ、良かった……!」

 

「お疲れ様です」

 

「ぐろりあさぁん……!」

 

 

 スキルを使った疲労もあり、メローがグロリアを抱き締め、その大きな胸に顔を埋める。それをぼけーっと眺めるサギニ。

 

 

「サギニ」

 

「は、はいっ。なんでしょうか?」

 

「明日からこれがお前の武器になる。だから責任持って手入れしろよ?」

 

「えっと、スキル付きの武器ですが、私でよろしいのでしょうか?」

 

「よろしいも何も暗殺者(お前)の為に作った武器だぞ」

 

「わ、私、こんな凄い武器を使わせて頂けるのは初めてです……!」

 

「その内、全身スキル付きになるさ。俺が貴族を目指す以上はな」

 

 

 強権は取り敢えず三つあれば十分。次のコボルトはヤギの為に取っておく。

 

 今回手に入れたカードも悪くないんだが、ヤギと比べると実感出来る類のスキルじゃないんだよな。

 

 後はグロリアの防具をダマスカス鋼にしなきゃ駄目か。ますます奴隷を買ってる余裕は無さそうだ。

 

 上を目指すのも楽じゃない──

 

 

「…………あの時、御主人様に拾われて良かったです。私は……たぶん今が人生の中で一番幸せです……!」

 

「泣くなよ。俺はまだ貴族になってないし、お前の人生もこれからだ。()()()()の幸せで満足してたら泣き疲れるだけだぞ?」

 

「そうですよ、サギニさん。私達はもっともっと幸せになれます。だから今は泣き止みましょう?どうせならもっと幸せな時に泣いた方が、きっと素敵ですから」

 

「ぐろりあさぁん……!」

 

 

 うーむ、これは見事な百合空間。異物感が半端ねぇ。

 

 軽くグロリアと視線で言葉を交わし、ひとり居間を出て書斎に向かう。

 

 自室を作っておいて良かったわ、本当に。

 

 

 

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