勝ち組男の異世界迷宮で奴隷ハーレム   作:Lilyala

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暗殺者

 

 

──春の季節 三十一日目

 

 

「よし。そろそろ前に出て良いぞ」

 

 

 先日の宣言通り、暫くセルディカ中央でコボルト狩り。サギニのレベルを30──と言いたいところだが、20まで上げるつもりだ。

 

 本来なら年単位掛かる筈だが、経験値二十倍は伊達じゃない。すでにレベル12まで上がったし。

 

 

「かしこまりました。事前の指示通り、石化させたら次の魔物に向かいますね」

 

「頼む。とはいえこの階層だと石化する前に戦闘が終わると思うが」

 

「私もそんな気がしてます」

 

 

 泣いてスッキリしたのか、サギニの精神が前向きになった気がする。少なくとも虐げられてきた人間特有の自信の無さは消えた。

 

 やはりグロリアの双子山は素晴らしい。マイナスイオンが出ていても不思議じゃない。

 

 そんな馬鹿な事を考えていると魔物の群れが現れた。ヤギ、ヤギ、コボルト、コボルトの編成だ。

 

 

「石化したらどうなるか見たい。悪いがちょっと耐えてくれ」

 

『『『分かりました!』』』

 

 

 そんな舐めプな指示を飛ばしたからか、三人の抱える魔物がスキルの発動兆候を見せる。──だが強権三本は伊達じゃない。

 

 

「ハァッ!」

「フッ!」

「やぁッ!」

 

 

 グロリアは豪快に。メローはスマートに。サギニは素早く斬り込み、スキルを止める。魔法使いのいないパーティーだと火力偏重になるのは仕方ないが、やっぱりぶっ壊れだよなぁ、詠唱中断。

 

 それから暫く戦っていると、サギニの相手していたコボルトがナイフを振り上げた姿で固まった。別に灰色に染まる訳でも無く、色合いそのまま剥製になった様な固まり方だ。

 

 

「石化状態になると、確か防御力が異様に高まる代わりに魔法に弱くなるんだったか」

 

「そうですね。私達には御主人様がいますので関係ありませんが、普通のパーティーにとって石化はあまり良い状態異常とは言えず、好まれません。それがそのままサンゴのカードの価値に繋がっています」

 

「こんな優秀なのにな──っと、二匹目か」

 

 

 グロリアが抱えていて一匹が石化した。残るは二体。

 

 とはいえ数で有利になったら負ける筈が無い。三匹目のコボルトはグロリアの一撃によって煙に変わり、四匹目のエスケープゴートは三人に囲まれて袋叩きにされた末にアイテムに変わった。

 

 

「残りはどうしましょう?」

 

「あー少し待て」

 

 

 キャラクター再設定を弄り、デュランダルを取り出す。

 

 

「剣で倒すのですか?魔法で倒した方が早いと思いますが」

 

「敵が動かないなら好きなだけ回復出来るだろ?」

 

「……成る程。確かにそうですね」

 

 

 取り敢えず全体回復を三回ほど使い、全員のHPを最大まで回復。その後MPが全回復するまでデュランダルを振り下ろす。

 

 

「ヤギよりサンゴを優先した理由はこれなんだ。安全に回復出来る状況を好きに作れるなら、迷宮探索は間違いなく楽になる。俺はそれにヤギより上の価値を見出だした」

 

 

 原作でその強さを証明してる戦法なのだから、縛りプレイでもしていなければやらない理由が無い。博徒の状態異常耐性ダウンと合わせて使えばボスにすら通るし。

 

 

「確かに。ある程度の運要素はありますが、安全に回復出来る利点は大きいですね」

 

「回復を終えたら魔法で処理すれば面倒な思いをせずに済みますからね。理に適ってるかと」

 

「えっと、頑張りますね」

 

 

 三人の納得を得られたのでデュランダルを振り下ろし、エスケープゴートに止めを刺す。

 

 戦闘した筈なのにMP含めて全快してるのはバグ技みたいな動きだよな。俺は好きだが。

 

 

「よし。有用性も確認も出来たし、何時も通りの狩りに戻すぞ。サギニ、案内を頼む」

 

「かしこまりました」

 

 

 ここからは魔法も解禁だ。ちょっと散財し過ぎたし、四千ナールぐらい稼げないかねぇ。

 

 

 

 

 午前の稼ぎは三千五百ナールだった。稼ぎが増えた理由は単純に戦闘回数が増えたため。石化した魔物の魔法防御力低下は想像以上で、弱点なら一撃で仕留められる事が判明したのだ。

 

 そのせいでストームに巻き込まれ、回復するつもりの魔物が勝手にアイテムに変わった事には思わず苦笑い。最後の一匹が石化しないとMP回復する暇すら無かった。

 

 MP回復したい時はボール系を使わないと駄目だな。面倒だが。

 

 

「さて、午前の狩りで暗殺者の利便性は証明出来たと思うが、獣戦士とどちらが良いと思う?」

 

『『『暗殺者ですね』』』

 

「だよなー」

 

 

 言葉は悪いが、獣戦士の代わりは幾らでも見繕える。だが暗殺者はスキル武器を託す事も含めて、それなりに信頼出来る奴じゃないと駄目だ。

 

 ただ、そうするとミリア枠を拾う必要が無くなるのが問題と言えば問題か。猫人族は海女か漁師が種族限定ジョブなので、そこまで欲しい職業でも無い。

 

 だからこそ原作でも暗殺者になった訳だし。

 

 

「次の奴隷はどうするかねぇ。個人的には竜騎士二人編成とかやってみたいが」

 

「悪くは無いかと。ただ竜人族の奴隷は希少な存在なので、探すのに苦労しそうですね」

 

「えっと、グロリアさんは自分と同じ種族の方がいても納得出来るのですか?私なら少し嫉妬しちゃいますけど……」

 

「無いと言えば嘘になりますが、主様の目的を考えれば選択肢に上がる事は必然だと思ってます」

 

「貴族になる為の三種の神器みたいなもんだからな。竜騎士は」

 

「サンシュノジンギ……ですか?」

 

 

 サギニの問いに答える前に御茶で喉を潤す。

 

 

「俺の故郷で絶対に必要な物を例えるときに使われる言葉だ。今回の場合は竜騎士、鍛冶師、魔法使いの三つ。鍛冶師は外注でも行けるが、残る二つは成り上がりを狙うなら必須なんだわ」

 

 

 夢も希望も無いが、これが現実だ。

 

 

「確かに俺の力は探索を有利にしてくれる力だ。けど、それでも()()()()()()()()()()()()()って訳じゃない。恵まれた俺ですらこうなんだ。一般的な探索者の大半が踏破出来ないまま終わる理由が分かるだろ?」

 

 

 迷宮の性質上、いずれパーティーを組める上限人数より敵の数の方が多くなる。実際はもっと前から盾役が二匹以上抱える場面が出てくるだろう。後衛は敵を抱えられないしな。

 

 そんな時、探索者や冒険者が盾役を担えるかと言うと……まぁ、厳しいと言わざるを得ない。

 

 誰でも転職可能な盾役である騎士は前提条件が重い上にレベルダウンがネックだ。ロクに意思疏通が出来ず、転職直後に稼ぎを落としたくない等の理由で今までと同じ階層へ行った人間の末路は語るまでも無い。

 

 そこらへんの理解があるのはやはり貴族だが、彼らはすでに勝者。わざわざ成り上がりを手伝うとは到底思えん。自分の領地を守らないといけないしな。

 

 まぁ、大前提として騎士に転職=貴族の部下になるので、野良の探索者は幾ら盾役として頼りたくとも騎士と組めない不具合が発生してるが。

 

 その派生前の戦士はどちらかというと劣化獣戦士、アタッカー寄りのジョブだ。グロリアの様に二体抱える事は出来るだろうが、援護ありでも三体目は厳しいと思う。

 

 一般的な探索者の最強装備は鋼鉄だからな。グロリアが硬革装備で耐えられているのは、俺が付けてる複数ジョブと竜騎士のお陰だ。

 

 それを外したらグロリアですら三体は厳しい。ロクサーヌが居れば話は変わるが。

 

 

「確かに騎士以外で重装備の方は中々見掛けませんね。それこそ同じ竜騎士の方ぐらいですか」

 

「騎士になるつもりの戦士の方が辛うじて、と言ったところですね。あと御主人様のお話を念のために補足しますと、魔法使い抜きで貴族になった方は居ます。運良く攻撃力二倍やダメージ逓増、防御貫通やHP吸収などが複数付いた武器を作れたり、伝世の品として親から受け継いだ方だけですが」

 

「……なるほど。だから御主人様は鍛冶師も三種の神器の一つに含めた訳ですね」

 

「ま、そんなところだ」

 

 

 どれハを読んで、属性剣、攻撃力二倍、防御貫通、HP吸収を付けた武器を振り回す妄想を何度した事か。

 

 ただ、ここまでやっても魔法使い&遊び人の組み合わせに勝てない。魔法使いゲーと言われても反論のしようが無いぐらい全体魔法が強過ぎる。

 

 それにカードの入手難易度を甘く見積もり過ぎていた。魔法使い抜きのルートだったら途中で心が折れていたと思う。

 

 

「おっと、そろそろ午後の時間か」

 

 

 ふと目を向けた窓の先で、燦然と輝く太陽が午後の部の時間だと教えてくれた。太陽の位置で現在時刻が分かる様になると、この世界に馴染んだ気になるのは錯覚かね?

 

 

「急いで準備して参ります」

 

「おう。俺もすぐ行くわ」

 

 

 さて、午後も頑張りますか。

 

 

 

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