「ん?今日は随分早いな?」
「人が多過ぎてロクに狩りが出来なくてな。明日は休みにするつもりだし、今日は別の迷宮へ行ってくる」
「あ~……そりゃ仕方無いな」
未だにコボルト階層を引いてないから、カード買取の為に金策したい懐事情もあったりするが。
「取り敢えず俺らが探索した場所の地図を渡しておく。役立ててくれ」
「そりゃ助かる──と言いたいところだが残念なお知らせだ。つい数分ほど前にボス部屋は突破されたぜ」
「まじか。それなら八層に頼めるか?」
「おう。──それじゃ送ってやってくれ」
「ういっす」
何時もの探索者の開いてくれた門を潜り、八層に到着。まずは何時も通り、この階層の魔物の確認だ。
「うげ、キャタピラーか」
しかもウサギ、アリ、芋虫の並びだ。束縛から毒のコンボの流れが見える見える。
「どうしましょう?流石に私達も参戦した方が良いですか?」
「頼む。数が多過ぎて俺一人だと事故りそうだ」
流石に十匹同時に糸を吐いてくる可能性は低いと思うが、四匹程度なら同時に来る気がする。
サギニの鼻を頼りに迷宮を進む。俺達以外の匂いは合計で十八。つまり、三パーティ潜っている。
逆に言えば、分岐二つで完全に分かれられる訳だ。そういう意味でも帰還は英断だったな。
「この先ですね」
「了解。取り敢えずファイヤーウォール張るから、切れたら突っ込むぞ」
「「「かしこまりました」」」
という訳で戦闘開始。それと同時にグリーンキャタピラーが三匹ほどスキルの発動兆候を見せた。
「やっぱりかッ!」
遊び人枠でファイヤーウォールを張って粘糸を防ぎ、余った枠でファイヤーボールを叩き込む。そのまま突っ込んで、まずはアリを切り捨てた。
「続きます!」
宣言と共にグロリアが突撃。その後ろに二人が続く。
左右は任せて大丈夫そうだ。ならば俺は正面の敵だけを切り捨てるとしよう。
次々と魔物をアイテムに変えながら奥へ奥へと進んでいく。普通なら乱戦の影響でアイテムが破損しても可笑しく無いが、迷宮産のドロップを覆う膜は何故か割れないし、魔法で燃やせない。
ある意味、この膜が一番ファンタジーだ。
そんな事を考えていると、最奥の芋虫がスキルの発動兆候を見せた。
俺の位置からは届かない。故にグロリア達も届かない。止めるのは不可能と判断し、落ち着いてファイヤーウォールを展開。粘糸を防ぐ。
「させませんっ!」
俺の右側に居たアリのスキルをサギニが止め、そのまま石化させた。その石像に向かってファイヤーボールを放ち、すぐさま火葬する。
ドロップが転がりすぎて足場が悪いのだ。邪魔な物は出来るだけ省きたい。
「ハァァァァッッ!!」
「そこです!」
グロリアが片手で切り上げたウサギをメローがビリヤードの様に槍で突いて遠くへ吹き飛ばす。
敵の隊列を強引に入れ換えるスキルっぽい挙動を眺めつつ、目の前に居る芋虫にデュランダルを振り下ろす。
残りは十か。これぐらいなら行けるだろう。
魔法使い枠でファイヤーストームを発動。纏めて火葬し、生き残りにデュランダルを振るう。
そこからはいつもの掃討戦だ。全体魔法を組み込んだので戦闘自体はすぐに終わった。
「お疲れ。カードはありそうか?」
「残念ながら無さそうです」
「そっか」
いい加減、身代わりのミサンガを作りたかったんだが。そんな都合の良い話は無かった。くそう。
ドロップを集めて貰ってる間にリュックを漁る。取り出したのは──ここ最近ずっと育てている魔結晶。
それを迷宮の僅かな明かりに照らし、頬を緩める。
「ようやく
白魔結晶は魔物百万体分の魔力が込められたアイテムだ。
売値は──
「主様……それって……」
「他言無用な」
何も言わずコクリと頷いた三人に頷き返し、アイテムボックスの黒魔結晶と入れ換える。
白まで粘るより黄色で売った方が楽で良い。白魔結晶を実際に作って、それを強く感じたな。
◇
新たな黒魔結晶は早々に緑に変わった。これで金貨一枚、魔物一万体分の魔力が宿った事になる。
この魔力はギルド神殿の燃料として使われるらしいが、原作で説明されていなかったので詳細は不明だ。
転職機能や貯金機能が魔力を回復するまで使用不可になるのか、アイテムごと異次元送りになるのか。
興味はあるが、自分の領地のギルド神殿でやりたくはない。
「おーう、お疲れ。ボス部屋は引けたか?」
「残念ながら空振りだ。たぶんボス部屋は俺達のルート以外の場所だ」
「根拠は?」
「ほれ」
最初の分岐を左、次の分岐も左に進んだ先を全て埋めた地図を手渡す。
「あっちゃ~……ここまで探索して外したのか。お前さん、運ねぇな」
「ほっとけ」
最近その事実を実感してる身としては耳が痛い。日頃の行いは悪くない筈なんだが。
美食に舌鼓を打ち、美女を囲い、金にがめつく生きているだけなのに。……役満でアウトな気がするが気のせいだ。俺は悪くない。
「あ、そういやコボルトがそろそろ出てくると思うんだが、売り希望の探索者から買い取っておくか?欲しいんだろ?」
「お、マジか。一枚六千なら無制限、さらに一枚ごとに百ナールの御駄賃なら出すぞ」
コボルトのカードにはその価値がある。本気と書いてマジと読むぐらいにはな。
「まいどあり。安く仕入れて差額分も頂くとしよう」
「コボルトなら大歓迎だ」
ニヤリと笑い合い、そのまま別れを告げて帰宅──する前に。
「グロリア。夕飯の買い出しは任せて良いか?俺はちょっくら野暮用を済ませてくる」
「お供は不要ですか?」
「不要だ。例の
「……なるほど。分かりました。お早いお帰りをお待ちしております」
「おう。それじゃまた後で」
グロリア達と別れた後、その足で冒険者ギルドへ向かう。
そのタペストリーを借りてワープを使い、立地も迷宮も地味過ぎて記憶から消えかけていた街へ飛んで今日の稼ぎと共に換金。もちろん三割増しだ。
「お待たせしました。こちらが報酬になります」
「ありがとう」
受付から金貨と銀貨の山を受け取り、そのままアイテムボックスに流し込む。すると
百万ナール、ゲットだぜ。