勝ち組男の異世界迷宮で奴隷ハーレム   作:Lilyala

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二人っきり

 

 

「元気なお爺様でしたね」

 

「ホントにな」

 

 

 来た道を戻り、二人で表通りをゆっくり歩く。メローの装備がタダになったお陰で、サギニの竜革のジャケットとカチューシャも買えた。ついでにダマスカス鋼の盾も。

 

 これで奴隷の装備は揃った。後はカード集めだな。

 

 硝子があるとはいえ外に展示出来るほど治安が良いとは言えず、殆どの店が看板を表に出しているだけの悲しい光景。

 

 探せばあるのだろうが、少なくとも表通りに屋台の姿すら影も形も見付からず、カフェの様な洒落た店も無い。

 

 デートする場所としては最低に近く、地球だったら評価☆1で終わると思う。帝都以外はそもそも見所すら無いが。

 

 

「あんな形の剣もあるんですね。どう使うのでしょう?」

 

 

 グロリアが見付けたのは、看板に取り付けられている両手剣。あの形状は──

 

 

「フランベルジュか」

 

 

 フランス語の『炎の形』を意味する言葉から作られた、刀身が波打つ少し短い両手剣。

 

 パイクの穂先を切り落とす為に使われたり、決闘でレイピアの替わりに使われたり、斬りつけた相手を破傷風で殺したり、殺意の高さと辿った歴史が凄まじい武器でありながら美術品としての価値もある武器だ。

 

 名前に関しては気にしてはいけない。レイピアやシミターがある以上、今更の話題だし。

 

 

「対人向けの両手剣だった筈だ。波打つ刀身のお陰で傷口が荒れて治りにくいらしい」

 

「なるほど。盗賊が持っていたら気を付けねばなりませんね」

 

「どうだろう。盗賊が手に入れるのは厳しい気がするが」

 

 

 店先の看板に書かれているフランベルジュのお値段は金貨十枚。ダマスカス鋼の武器と同額だ。

 

 そんな額を出せるなら盗賊なんてやってないだろうし、奪うにも警備の人間は良装備で身を固めている奴ばかりだ。銅の剣ではダメージを与えられるかすら怪しい。

 

 

「確かにこの値段の品を買えるなら盗賊落ちする理由がありませんか」

 

「探索者崩れ──いや、このレベルの装備を持ってるなら崩れる理由が無いな。可能性があるとしたら人生に一度の幸運を何度も積み重ねた盗賊ぐらいか?」

 

「それだけの幸運があるなら、そもそも盗賊に落ちない気がします」

 

「確かに」

 

 

 二人で笑みを浮かべていると、冒険者ギルドに着いた。そこで壁を借りてワープを繰り返す。

 

 途中で迷宮を挟んでMP回収も忘れずに。これを怠ると冗談抜きで死ぬ。いや、マジで。

 

 

「あれ……?ここは帝都、ですか?」

 

「せっかくの休日を潰した補填みたいなもんだ」

 

 

 頭に疑問符を浮かべているグロリアの手を引き、冒険者ギルドを出る。

 

 まず始めに向かうのは服屋だ。

 

 

「いらっしゃいま──ミツル様!?」

 

「おう。店主はいるか?」

 

「す、すぐに呼んで参ります!──君、案内を!それとお客様に御茶を御出しして!」

 

「は、はいっ!!──こ、こちらへどうぞ」

 

 

 案内されるがまま個室へ向かい、明らかに上客用の茶葉で淹れられた御茶で喉を潤す。

 

 

「何をなさったんですか?」

 

「俺の故郷の知識を放出しただけだ」

 

 

 ブラジャーとショーツという偉大な発明をな!

 

 それから少しして店主が急いでやって来た。両手に抱えてるのは、()()()()か。

 

 

「お待たせしました」

 

「邪魔して悪いな」

 

「滅相もございません。本来ならこちらからご連絡すべきところを御来店いただいて大変申し訳ない気持ちでいっぱいです」

 

「そこらへんは連絡先を告げなかった俺にも非がある事だ。だから気にするな」

 

「恐縮です」

 

 

 俺とは反対側の席に座った店主が始めに行ったのは、布袋をこちらへ差し出す事だった。

 

 

「こちらが先月の売り上げになります。お納めください」

 

 

 受け取った布袋を軽く開く。中には無数の金貨が見える。

 

 

「予想通り需要があったか」

 

「話を聞いた時から売れると確信していましたが、実際に結果が出ると驚きを隠せません。すでに他店で真似をした商品が出ているほどの人気商品となっております」

 

「まぁ、そうだろうな」

 

 

 人口や流通に違いがあるので一概には言えないが、日本の国内出荷額だけで四桁億円を超える市場まで成長する事が分かっているのだ。

 

 人類の半分が女性な以上、決して外れない商品であり、さらに言えば一つあれば満足出来る品では無く、衣類と同様に流行り廃りが存在する消耗品。

 

 これほど当たる事が分かってる品もそう無いだろう。

 

 ちなみに男性を狙い撃ちにする場合はT字剃刀がオススメだ。

 

 これは世界で数十億()()規模の売上があるので間違いなく売れる。どっかの投資王もコカ・コーラと剃刀会社二社の株は決して売らんしな。

 

 それぐらい信頼度の高い商材だ。

 

 

「計測方法の流出には気を付けろよ?それさえ押さえておけば暫くは安泰の筈だ」

 

「もちろん理解しております。構造自体は簡素な物ですからね」

 

「それを理解してるなら大丈夫か。ならば本題に入らせて貰おう」

 

「お聞きしましょう」

 

 

 敢えて御茶を飲んで一拍置き、表情を真面目な物に変える。これから大事な話をしますよ、と無言で伝える為にも必要な間だ。

 

 

「そろそろ奴隷達の下着をお願いしたい。可能か?」

 

「もちろんです。最優先で取り掛からせていただきます」

 

「そうか。それなら明日の昼頃に奴隷を連れてくる。それと次から過度な歓待は不要だ。他の客と同じ扱いで良い」

 

「承知しました。部下にも伝えておきます」

 

 

 横入りする様なもんだし、他の貴族に睨まれるのは御免だ。

 

 

 

 

 幾つかの新たなデザインと住所を置き土産として渡し、店を後にする。

 

 無言のまま聞いていたグロリアにしてみれば意味不明な会話だったろうが、金を稼いだ事だけは理解出来たらしく、先程から尊敬の視線を向けられている。

 

 明日になったら呆れた視線に変わりそうだ。いや、感動するか?胸が大きい人の悩みは太古の昔から変わらないだろうし。

 

 そんな事を考えながら道中の屋台でカルメ焼きを買い、近くの広場に腰掛けて食べる。

 

 

「甘いですね」

 

「甘いな」

 

 

 それ以外の感想は無い。グロリアもクッキーを食べた経験があるからか、そこまでの感動は無い様だ。

 

 近くに寄ってきた子供達に二人揃って余りを渡し、帝都をぶらり歩く。古着屋や小物屋に寄っては冷やかし、時には購入しながらふらりふらりと歩いていると、貴金属を取り扱う店を見付けた。

 

 

「せっかくだし入るか?」

 

「いえ、大丈夫です。入ったら欲しくなりそうですから」

 

「んー……それなら最後に適当なところ寄って帰るか」

 

 

 どうせ明日も来るし、その時に寄れば良い。

 

 それから適当なカフェの様な場所で異世界果実ジュースを飲み、自宅へ帰還。

 

 メローには装備を買えた事だけを伝え、祖父の話はしなかった。グロリアも空気を読んで口を閉ざしている。

 

 原作だと夏頃には一度目の迷宮討伐を完遂したし、俺もそれまでに攻略したいもんだ。

 

 

 

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