勝ち組男の異世界迷宮で奴隷ハーレム   作:Lilyala

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理想と現実

 

 

──春の季節 五日目

 

 

「キャラクター再設定よし、ジョブよし、装備よし。そんじゃいきますか」

 

 

 宿の店主に鍵を預け、人目から逃げる様にワープで移動。向かう先はダルの迷宮。今日から二層探索だ。

 

 二層に出現する魔物はエスケープゴートと前層のニートアントの二種。この内、弱点が存在するのはニートアントの水だけ。

 

 つまり、ウォーターストームを連打しながら鉄の剣を振り回す事が最適解という訳だ。

 

 

「お、居た」

 

 

 二層初遭遇の獲物はエスケープゴート二匹。取り敢えずウォーターストームを発動して斬り掛かる。

 

 

「硬ッ!」

 

 

 粘土に麺棒を叩き付けた様な感触と言うべきか。デュランダルの時には感じなかった確かな手応えが返ってくる。

 

 二匹を視界の内に入れつつ突進を受け流し、再びウォーターストームを発動。原作では確か四発必要だった筈だ。案の定、二発目では沈まず、再び突進される。

 

 

「……これ、ソロだとデュランダル安定じゃないか?」

 

 

 少なくとも仲間が居ない現状、MP消費が激しすぎて連戦は無理だ。いちいちデュランダルに持ち替えるぐらいなら最初から使った方が良い気がする。

 

 三発目のウォーターストームを発動。英雄のジョブ補正のお陰か一匹沈んだ。そして残る一匹がこちらに向かって突進してきた。

 

 事前動作が読みやすいお陰で難なく躱す事に成功したが、俺の横を駆け抜けたエスケープゴートは勢いを止めず、そのまま走り去ろうと直進したので、トドメのウォーターストームを放つ。

 

 

「設定の見直しが必要だな。割りに合わん」

 

 

 ドロップしたヤギの糸を二つ拾い、軽く溜め息を吐き出す。今の戦闘での消費は体感的に四割ぐらい。魔法使い取得時の経験から言えば、かなり不味い。

 

 原作主人公がキャラクター再設定をコロコロ変える訳だ。少なくとも現状は横着を許してくれないらしい。

 

 

「外す訳にはいかないキャラクター再設定で1、ジョブ設定で1、ワープで1、デュランダルで63、フォースジョブで7、詠唱短縮3で合計76は確定。残り38か……」

 

 

 選択肢がある様で無い。というか必要経験値五分の一と獲得経験値五倍の計30、残りは結晶化八倍で7使えば終わる。

 

 

「レベル上げだな。そうすれば全部解決する」

 

 

 幸いな事に原作主人公が六層突破時点で30まで上げている。探索者のレベルが30になれば使えるBPが128まで増えるのだ。

 

 いや、その前に探索者がLv24になったら獲得経験値十倍に出来るのか。結晶化は消えるが。

 

 

「頑張ろう、うん」

 

 

 奴隷までの道が遠いな、本当に。

 

 

 

 

「おかえり」

 

「ただいま」

 

 

 換金を終えて宿に戻ると、店主が声を掛けてきた。鍵を受け取った後、そのまま雑談に移る。

 

 

「迷宮探索の進捗はどうだ?」

 

「取り敢えず二層のパーンは倒せたぞ」

 

 

 オーバーホエルミングウォーターストームラッシュを脳死で連打するだけで終わった。やはりデュランダルは最高だ。

 

 

「お、おめでとう。ヤギの肉ならギルドより高く買い取るから気軽に持ち込んでくれや」

 

「言ったな?肉だけで破産させてやるよ」

 

「その意気だぜ。ま、流石に破産する量を持ち込まれるのは困るがな」

 

「その時はギルドにでも売るさ」

 

 

 その後も少しだけ言葉を交え、適当な所で雑談を切り上げる。お湯を貰う時に宿泊延長する意志があるか聞かれたが、悪いとは思いつつもハッキリと断った。

 

 そろそろ俺も異世界迷宮で奴隷ハーレムを作りたいからな。その為にはこの街から出ていく必要がある。

 

 何時も通り自室で身体を拭き、装備の手入れと洗濯を終わらせる。今日はキャラクター再設定の必要は無い。

 

 代わりに行うのは、本日の稼ぎの確認だ。

 

 

「ヤギの肉はボスドロップだから除くとして。ヤギの毛が一つ二十ナール、毒針が十五ナール。倒す労力は同じと考えると三層の方が稼げるか?」

 

 

 戦闘自体は適当なデュランダルで一撃なので、特に苦労はしていない。ニートアントが二体出現した時にはオーバーホエルミングを使って速攻を仕掛けているしな。

 

 

「ダルの四層はニードルウッド。薬草採取士を狙えるし、ブランチは毒針と同じ価格だが……四層から敵の数が三体になるのがネックか」

 

 

 いや、逆に一回の稼ぎが増すかも知れない。原作知識だと九層までデュランダル一振りだけで仕留められる。

 

 七層に湧くのはコボルトだし、そう考えると──

 

 

「キャラクター再設定があるなら悪い迷宮じゃないのかもな」

 

 

 初っぱなから毒持ちを相手にする羽目になった恨みは、死ぬまで忘れるつもりは無いが。

 

 

 

──春の季節 六日目

 

 

 今日が宿に泊まる最後の日になる。次の寝蔵(ねぐら)の候補は原作にも登場した『ターレ*1』よりさらに北、未だ雪が残る街『トロムソ*2』の予定だ。

 

 正直、街としての規模はそこまで大きくない。場所は帝国領の最北端に近く、原作の舞台となっている最古の迷宮『クーラタル』も遠い。

 

 だがこの街には俺が愛してやまない物があった。

 

 

 そう──温泉だ。

 

 

 皇族や貴族達の湯治の地としてひっそり存在していたこの街は、近くに迷宮が現れた事によって発展を余儀無くされ、今ではお金に余裕のある人間達の観光地化しているらしい。

 

 もちろん俺もその恩恵を受けた。銀貨五枚も掛かったが、公衆浴場に入れたのだ。久々の温泉は格別だったなぁ……。

 

 しかも、少し割高だが物件によっては個人温泉が付属してる家もあるらしい。それを聞いたら止まれないのが日本人。

 

 家を借りるならあそこ一択だ。その覚悟も決まった。冬場も温泉が街の至る所を流れているお陰で雪が降っても積もりにくいらしく、雪掻きの労力が少なそうなのも決め手だ。源泉は和歌山の川湯温泉並に熱かったしな。

 

 現代日本の価値観をベースに考えると人口過多による水質汚染が心配になるが、ここは地球の中世に近い世界だ。ワープ解放ついでに見てきた印象としては、街と呼ばれる場所でも千人から五千人、大きくても一万から二万人しか居ないだろう。

 

 村に至っては基本三十人前後、多くても五十人に届かない場所が多い。食料があっても、医療技術の低さや魔物や盗賊による被害で数が減るのだ。原作でも滅びた街が幾つかあったし。

 

 ちなみに帝都は別格となっている。軽く見ただけでも十万人は超えていると思う。もしかしたら中世のパリ並に(十五万人)居るかも知れない。

 

 現代のパリには215万人居るらしいが。そりゃゴミが問題になるし、セーヌ川も汚れるわ。

 

 

「後は奴隷か」

 

 

 いい加減、一人が恋しい──という訳でも無いからこそ悩む。ぶっちゃけ、レベル上げが楽しくて性欲に困ってない。戦力的にも七層まで困らないし。

 

 一階層から十一階層までに出現する魔物の中で気を付けるべきは『ニートアント』『スパイスパイダー』『グリーンキャタピラー』の三体。

 

 前から順に毒持ち、毒持ち、拘束技持ちだ。逆に言えば、これ以外ならデュランダルのHP吸収でごり押せる程度の魔物でしか無い。

 

 そういう意味ではダルの迷宮も優秀な部類なんだよな。四層からニートアントが出現しなくなり、七層でコボルトが出てくる事が確定している。つまり五層と六層が先に挙げた魔物以外だった場合、デュランダルで無双出来る迷宮なのだ。

 

 

「今日の狩りついでに入り口の探索者に聞いてみるかね?」

 

 

 まずは三層を越えてからの話になるが。

 

 

*1
ハルツ公爵領にある主人公が物資を届けた村の名前。原作時間軸で迷宮が発見されるので、たぶん今は存在していない。

*2
独自設定。街の名前はノルウェー北部の都市から借りた。

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