勝ち組男の異世界迷宮で奴隷ハーレム   作:Lilyala

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大人

 

 

 帰宅する前に服屋へ寄り、絹布に包まれた下着を受け取る。代金は全額先払いだ。どうせこの店から受け取った金だしな。

 

 受け取った荷物はそのままグロリアに渡した。その際にグロリア達から()()を受けたが、断腸の思いで断った。

 

 俺の年齢が今より十歳ぐらい若ければ、このままベッドインでも良かったのだが、残念ながら肉欲に身を任せるには老いすぎた。

 

 大人は自身の楽しみより、終わっていないタスクを優先してしまう生き物なのだ。シンプルに仕事が残っていると楽しめないというか、やるべき事に対して無責任ではいられないというか。

 

 そんな訳で手に入れたカードを使い、先にスキル合成を行う。新たなスキルを入れるのは、グロリアの額金とメローの金砕棒だ。

 

 

耐毒のダマスカス鋼の額金 頭

スキル 毒耐性 麻痺耐性 空き 空き

 

強権の金砕棒 鎚

スキル 詠唱中断 HP吸収 防御貫通 空き

 

 

「これでグロリアの麻痺対策は出来たな」

 

「はい。これであの様な不甲斐ない姿を主様に見せずに済みそうです」

 

「あれは俺の準備不足だと言っただろうに」

 

「だとしても、ですよ。私は主様の盾です。それが守られる側になるなんて許される筈がありません」

 

 

 そう断言したグロリアの瞳には決意が宿る。人数が足りないまま潜ってるのは俺だし、そのせいでグロリアに負担がいってるのだが、本人はそれを認めず、頑なに自分の責任だと言い張っている。

 

 その向上心は主として嬉しいのだが……やる気が空回りしそうで少し怖い。

 

 

「あの~……御主人様?メロー様がピクリとも動かないのですが、よろしいのでしょうか?」

 

 

 心配そうにメローとこちらに視線を動かしながら尋ねてきたのはサギニだ。

 

 

「鍛冶師特有の病だからそっとしておいてやれ」

 

「鍛冶師特有の病……ですか?」

 

「そうだ。一つの装備に複数のスキルを付ける事は鍛冶師にとって心労が凄い行為らしくてな?壊れてもやらせた依頼者や主人の責任なんだが、そう簡単には割り切れないらしい」

 

 

 今までは零から一、一から二だったが、今回は二個付けた金砕棒に三つ目を付けたからな。俺が想像していた以上に心労が祟った様だ。

 

 とはいえこの程度で手は緩めん。最終的に属性と状態異常は二部位に纏めるつもりだし。

 

 ちなみに金砕棒に付けるスキルは防御貫通と攻撃力二倍で迷っていた。最終的には二つとも付ける事は確定しているのだが、どちらを優先するか迷った末にスライム対策を優先したのだ。

 

 石化した魔物にも通るので、腐る事がまず無いのが決め手になったのは言うまでも無い。

 

 

「なるほど。ですが、これからも今回の様な付与は増えますよね?御主人様は耐性系スキルを纏めると仰っていましたし」

 

「おう。そのつもりだぞ。だから早いとこ慣れて欲しいんだが……見ての通り、まだまだ経験が足りんらしい」

 

 

 三個目でこの反応だと、五個付与する予定のオリハルコンの剣や聖剣の時はどういう反応になるのやら。

 

 それが楽しみでもあり、不安でもある。まぁ、どうなろうとやらせるんだが。迷宮攻略の為には必須だし。

 

 

「……御主人様が語った事が確かならば、経験は全く関係ないですよね?」

 

 

 ムクリと起き上がったメローが疲れた様に溜め息を吐き出し、御茶を飲んでクッキーに手を伸ばす。

 

 その姿に前世の許嫁の面影を感じ、思わず頬が緩んだ。

 

 ()()()徹夜明け(疲れた時)は糖分を求めていたな。追い込み中はブラックコーヒーばかり飲むせいで頭が糖分を求めているんだ!と力説していた記憶がある。

 

 今頃、何をしているのかねぇ……自重を投げ捨てて宇宙に飛び出してないと良いんだが。

 

 

「……主様?」

 

「あぁ、悪い。何でもない」

 

 

 軽く首を振って意識を現実に戻す。あちら側に未練は無い。目の前に降って湧いた僅かなチャンスを見逃す様な、甘い人生を送ってきたつもりも無い。

 

 それに俺の両親も、許嫁も、仲間達も。最初こそ俺の失踪を悲しんでくれるだろうが、すぐに立ち上がって歩き始める人ばかりなんだ。

 

 想像上とはいえ、その誇り高い姿を汚す様な真似はしたくない。

 

 

「メローの言う通り、スキル合成は誰がやろうと結果は変わらん。大切なのは武具を製造した時の出来だからな。その証拠にメローは一度も失敗した事が無いだろう?」

 

「そういえば、確かにメローさんは一度も失敗した事がありませんね?スキル合成の成功率はかなり低いと聞いていたのですが」

 

「その認識は正しいと思います。私も御主人様と出会うまでスキル合成は運次第だと思っていましたから」

 

「お前の祖父は朧気ながら気付いていたけどな。……いや、この知識はドワーフという種族の切り札になるし、隻眼に伝わる口伝かも知れん」

 

 

 隻眼にならないと分からない()が絡む話だし、推測は間違いじゃない気がする。──そこまで考えて、ふと気付く。

 

 

「この話は他言無用な。ドワーフを敵に回したくない」

 

 

『『『かしこまりました』』』

 

 

 貴族を目指しているのにドワーフを敵に回すのは勘弁だ。

 

 

 

 

 異世界の休日は、休日という名の準備時間だったりする。

 

 いや、休もうと思えば何時でも休んで良いし、少なくとも上司から電話が掛かってきて休日なのに出社しなければならない、なんて事は起こらない。

 

 そういう意味では地球より楽なのだが、残念ながらスーパーやコンビニなんて便利な物は無いので、サボればサボるだけ日常生活が不便になっていく。

 

 例えば石鹸。休日の度に小まめに作っておかないと、探索で疲れきった体を酷使して作る羽目になる。

 

 グロリア達も昔は気にする余裕の無かった体臭を気にする様になってきたので、必然的に石鹸の消費量が増え、油断するとすぐに無くなるのだ。

 

 これに関しては素手で洗うことを楽しんでる俺も悪いが。後悔はしてないし、改めるつもりは無いけどな!

 

 他にも塩や胡椒や砂糖といった調味料、ウドウッドが落とす薪なんかも優先的に集める必要があり、これを怠ると迷宮探索を中止して稼ぐ日を設ける必要が生まれてしまう。

 

 鏡作りや錫を加工しての食器製作、浄水石の買い出しや科学的な機材の作成など、時間が必要な作業も全て休日だ。

 

 というか、それ以外の日にやってる余裕が無い。

 

 こちとら三十路近いオッサンやぞ。若さを武器に出来る道夫くんとは違うのだ。

 

 徹夜をすれば翌日に響き、肉ばかり食べれば胃もたれする。疲労は一日では抜けず、軽く運動すれば筋肉痛──いや、これに関しては地球に居た時から無かったわ。

 

 日頃からジムに通って適度な運動はしていたし、研究が詰まった時は全力で動いてストレスを発散したい派だった。

 

 それにスポンサーとの付き合いでゴルフや乗馬、釣りにBBQ辺りは鉄板だったしな。その時の経験が今に繋がっているのだから、何がどう役に立つのか本当に分からん。

 

 

 閑話休題。

 

 

 そんな訳で、俺の休日はとても休日とは呼べない一日となっている。その事に後悔は無いが、たまには自分の本能に従いたくなる日もあるんだよな。

 

 だから全ての用事を最速で終わらせて夕食を済ませ、温泉でグロリア達を磨いた後、下着を着用してベッドに来る様に指示した俺は悪くない。

 

 逆の立場ならやるだろ?男なら。

 

 

 

 

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