勝ち組男の異世界迷宮で奴隷ハーレム   作:Lilyala

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野良パⅥ

 

 

 モロクタウルスは恐ろしい牛の顔を持つ牛人だ。もちろん顔に見合った筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)の肉体を持っている。

 

 得意技は体当たり。見た目を裏切らないパワーファイターという訳だ。

 

 

 だが色は白と黒のブチ柄だ。

 

 

 まさかのホルスタイン種である。そりゃバラを落とすわ。むしろこの見た目で落とさない方が可笑しいまでもあるわな。

 

 

「お、それがさっき言ってた装備か」

 

「おう。さっきは人目が在ったから濁したが、凡人でも可能な迷宮攻略ってヤツを見せてやるよ」

 

「そりゃ楽しみだ」

 

 

 右手には強権のエストック。左手にはダマスカス鋼の盾。サギニの装備を使う今の俺は暗殺者。

 

 つまり石化だ。石化しか勝たん。麻痺も良いが、魔物には石化だ。石化は良いぞ!──決めれば即死と変わらんし。

 

 

「じゃ、そろそろ行くか。一応、人目は避けた方が良いか?」

 

「出来ればで良いぞ。真似出来るなら、それはそれで迷宮探索が進むだけだしな」

 

 

 出回るスキル付き装備の少なさを考えると、かなり絶望的だと思うが。

 

 

「了解。それじゃ行くか」

 

「あいよ」

 

 

 百獣王の先導に従い、迷宮をゆっくり進む。低層の頃は狭い範囲に魔物がひしめき合う事もあるが、上に進めば進むほど一層が広くなる関係上、この階層まで来るとモンスターハウスは殆んど見掛けない。

 

 代わりに探索に二日掛かったりするが。原作でも四十層以降は二日から三日掛かっていたし、五十を越える頃には五日掛かりそうだ。

 

 

「敵だな。この先にスライム三、牛二」

 

「牛は俺が貰う。他は何時も通りだ」

 

 

『『『了解』』』

 

 

 返事と共に百獣王が駆け、一番左のスライムを蹴り飛ばす。さらに追撃を仕掛けて奥の空いてる空間(スペース)まで進んだ。

 

 次にレッジが牛へ剣を振り下ろし、魔物の注意を自分に集める。二匹目は浮いているが、立ち位置を工夫する事によって敵の動きを上手く制限しているな。

 

 少なくともレッジが吹き飛ばされるなんて事が起きない限り、二匹目の牛がこちらに来る事は無いだろう。

 

 

「魔法来るぞ!」

 

「いや、そこなら止められる」

 

 

 魔法を放とうとしていたスライムをエストックで突くと、なんとそのまま石化した。今日は運が良いらしい。

 

 

「え、は?」

 

「まだ戦闘中だぞ。しっかりしろ」

 

「いや、お前、流石にこれは……」

 

 

 困惑するレッジを無視して、沙門と禰宜の二人が抱えるスライムへ強襲。初手は博徒のスキル(状態異常耐性ダウン)。次手はエストックによる通常攻撃(石化添加)

 

 たぶん、これが最強だと思います。

 

 

「よし、石化した。牛を固めて最後のスライム行くわ」

 

「おいおい……俺は夢でも見てるのか?」

 

「残念だが現実だ」

 

 

 博徒のスキル!石化添加!……流石に三回目は無理か。まぁ、それなら敵の攻撃を回避して、避けきれない攻撃を盾で捌くだけなんだが。

 

 

「ホントに多芸だな……!盾まで使えるのか!」

 

「師匠のお陰だ」

 

 

 嘘だが。

 

 牛へ四回目の石化添加攻撃。……よし、石化した。

 

 

「スライム固めてくるわ」

 

 

 博徒!石化!……駄目か。でも敵が狙っているのは百獣王。つまり、俺は好きなだけ殴れる。

 

 それから程なくしてスライムが石化し、最後に牛も石化させて戦闘終了。お疲れ様でした。

 

 

「後は防御貫通で殴っても良いし、魔法で処理しても良い。所謂()()()()()()()って奴だ」

 

 

 本来なら処理に困る石化状態も、防御貫通と魔法があるなら話は変わる。吸精装備があるならリカバリーも完璧だ。

 

 

「何時もこんな狩り方をしてるのか?」

 

「いや、迷宮ボス対策の為にやってない」

 

「ボス対策?」

 

「回避の練習だよ。雑魚はご覧の通りどうにでも出来るが、装備を壊してくる迷宮ボス相手には無力だからな。装備を担保に安全を確保して、グロリア達に練習させてるんだ」

 

 

 嘘は言ってない。嘘はな。

 

 

「……なるほど。何となく貴方が貴族になった時にやりたい事が分かりました」

 

「姫様?」

 

「貴方は分業しようとしてるのですね?通常の探索は普通の人間でも行える様に簡略化を目指し、迷宮ボスにはレッジさんの様な才能のある人間をぶつける。これが可能になるだけで領地の維持は格段に楽になりますから」

 

 

 これだから天才は……!

 

 見抜くのが早すぎるだろ!グロリア達にも伝えてないんだぞ……!

 

 

「ミツル、そうなのか?」

 

「秘密だ。手札は親にすら明かさないのが探索者だろう?」

 

 

 七割的中されてるから隠す意味も余り無いが、残る三割は隠したい。だからこんな返答になった。

 

 

「……そうだな。これに関しては俺達が悪かった」

 

 

 ペコリと頭を下げたレッジに頭を上げる様に手振りで促す。

 

 

「気にするな、と言いたいところだが、これはレッジにとっても他人事じゃないからな。真面目に考えておいた方が良いと思うぞ?」

 

「どういう事だ?」

 

「貴族はゴールでは無くスタートだ。そして貴族となった者には迷宮討伐の義務がある。お前らが現役の間は良いが、引退した後に没落したくは無いだろう?その為の手段をちゃんと考えているか?」

 

「それは……」

 

 

 まぁ、今はまだ自分の事だけで精一杯だろうな。

 

 

「とあるエルフの貴族は一族で結束して迷宮攻略に当たっていると聞いた。パラーにいるドワーフの貴族は鍛冶師になれないドワーフを全て奴隷に落とす覚悟を以て、常に安定して迷宮攻略を行える様に手を打っている。俺は未だ貴族になるどころか迷宮ボスにすら辿り着けていないが、()()()後の為に安定して攻略出来る手段を常に探している。お前らはどうだ?考えていたか?」

 

「……恥ずかしい話だが、そこまで深く考えた事すら無かったよ」

 

「だろうな。考えていたなら何としてでも鍛冶師を確保していた筈だ」

 

 

 貴族にとってお抱えの鍛冶師の有無は死活問題だ。

 

 スキル合成だけの話じゃない。高位装備を自前で作成出来ないと、迷宮ボスを討伐する度に武具の代金が嵩んでいき、いずれ資金難から没落の道を歩んでしまう可能性が高い。

 

 それに──高位装備には他の使い方もある。

 

 

「何故そう断言出来る?」

 

「迷宮討伐で活躍した人間への報酬。他の貴族に世話になった時の御礼。嫁入り、婿入りする際の結納品。高位装備が市場に出回らない理由を考えると、間違いなく貴族同士のやり取りに使う()()になってるぞ。毎度オークションなんて不安定な物に頼れるのは大貴族だけだ」

 

 

 原作のハルツ公爵とかな!オリハルコンの剣をあれだけ確保してるのは素直に凄いと思う。あれだけで白金貨何枚分になるのやら。

 

 流石にここまで言えばレッジにも通じたらしく、少しだけ考え、俺の望む答えを口にする。

 

 

「……なるほど。つまりあれか。ミツルは俺達に探索者気分で遊んでないで、さっさと貴族の地位に相応しい準備をしろって言いたいんだな?」

 

「まぁ、端的には。別に一代限りで終わらせるなら問題ないが、お前はともかく姫様は貴族として活躍するつもりなんだろ?だったら人を育て、使う事を考えておかないと苦労するぞ?人材は畑から採れる訳じゃないからな」

 

 

 そのタイミングでレッジが百獣王に視線を動かした。

 

 

「お前は気付いていたのか?」

 

「まぁ、半分ぐらいは?」

 

「半分?」

 

「おう、半分だ」

 

 

 そこで一旦言葉を区切り、石化した魔物にエストックを突き刺す。全く無意味なその行動に仲間達は首を捻るが、姫様だけはその動きの意味に気付いたらしく、弱点属性のボールをスライムに放つ。

 

 

「最初は幾ら竜人族とはいえ隻眼の奴隷(お荷物)を抱えてる事が不思議だった。奴隷に貸し与えてる装備を見れば、金に困ってる様には見えなかったしな」

 

 

 語りながらもザクザクと魔物にはエストックを突き刺し続け、ついには魔物がドロップを残して倒れた。……お、三角バラだ。こっそり貰っちゃ駄目かねぇ。

 

 

「その考えが変わったのは、レッジから話を聞いた時だ」

 

「俺から?」

 

「ミッチーはいずれ貴族になるつもりらしいって酒の肴に話してただろ?俺はそれを聞いて自分の考えが間違ってる事に気付いた」

 

「……()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そう。姫様の言った通り、ミッチーは俺やレッジの様な存在を必要としてないんだ。最低限、戦えるだけの才能があれば良い。だってミッチーが重視をしたのは──」

 

 

 才能よりジョブだろう?と、俺に問い掛けてきた百獣王から続きを引き受ける。

 

 

「竜騎士、鍛冶師、魔法使い。俺はこの三つが貴族になる為に必要なジョブだと考えている。騎士は貴族の配下にしかなれず、戦士は騎士ほど盾役に向いていない。だからこそ俺は竜騎士を──グロリアを一番奴隷として選んだ」

 

「だが彼女は隻眼だ。それを欠点とは思わなかったのか?」

 

 

 問い掛けてきた沙門の方に視線は動かさない。代わりに周囲の光景を見る様に促す。

 

 

「俺が欲したのは()()()()()()()()()()()()だ。才能が無いなら無いで、大盾二枚持たせて耐えさせる事も考えていた」

 

「……成る程。それなら確かに隻眼でも問題ないな」

 

 

 何故か両目が見えているかの様に動くし、気配を感じるなんて言い出した時は驚いたが。

 

 

「鍛冶師の娘がその武器を作り上げたのは分かる。俺達も世話になったしな。だが、それならあの狼人族の女性はどんな役割なんだ?その武器はあの奴隷に使わせていた物だろう?」

 

「もちろんこの光景を作る役だ。流石に俺ほどでは無いが、サギニも一、二戦に一体は石化させるぞ」

 

「……あの娘は暗殺者なのか」

 

 

 レッジの呟きに答えは返さない。情報源が俺だけというのも問題だし、何よりここで先程の会話が生きてくる。

 

 

「レッジ。ここから先の情報が知りたいならスキル武器かオリハルコン装備が必要だぜ?」

 

「……なるほど。こういう風に使われると」

 

 

 納得してくれた様で何よりだ。

 

 

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