勝ち組男の異世界迷宮で奴隷ハーレム   作:Lilyala

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旅立ちの時

 

 ダルの迷宮はやはりクソだった。入り口の探索者に銀貨一枚渡して聞いたところ、五層でスパイスパイダー、六層でグリーンキャタピラーが出現するらしい。

 

 つまり、七層で対峙する事になる魔物は上記二種に加えてコボルトになる訳だ。そら誰も寄り付かん。

 

 

「お陰で出ていく事に何の躊躇いも無くなったけどな」

 

 

 バランスの悪すぎるミノを仕留め、返す刃でウォーターストームに巻き込んでおいたエスケープゴートを切り捨てる。

 

 デュランダル万歳。BP63の性能は伊達じゃない。

 

 スキルや魔法を連打しても消費が気にならないというのは素敵だ。俺個人の問題でMP切れが死に繋がる以上、もう手放せないかも知れない。

 

 原作でもこの剣以上の武器は出てないし。

 

 

「とはいえ何時までも頼る訳にはいかないのが難点か」

 

 

 原作では早々に仲間を揃え、主人公は武器を杖に持ち替えていた。経験値二十倍のスキルを取る為だ。

 

 俺もそうしたいのは山々だが残念ながら金が無い。

 

 いや、一人か二人ぐらいなら盗賊狩りで確保出来るとは思う。三十パーセント値引きを使えば三人目までは何とかなるだろう。

 

 ただ奴隷自慢する為に一人頭六十万ナール以上の美女奴隷を覚悟するとなると、五、六人目の資金繰りに苦しむ事が目に見えている。

 

 

 家を借り、装備を整え、奴隷を集め、迷宮に潜る。

 

 

 原作ではアッサリ手に入れたこの環境を得る事は、簡単な様でとても難しいのだ。

 

 原作主人公は『ペルマスク』の鏡をハルツ公爵に渡す事でミリアやベスタの資金を得ていたが、残念ながら俺にはそんな美味しいイベントが起きる気配も無いし。

 

 

「盗賊の数と値段次第だな。無理そうなら結晶化促進六十四倍でコツコツやるしか無い」

 

 

 一年前に設定した過去の自分に『いいね!』しておく。中途半端に一ヶ月前とか選択していたら後輩にすら成れなかったかも知れん。

 

 生きるだけなら物凄く楽なんだけどな、この世界。

 

 ある程度の展望が見えてきたので狩りに専念する。とは言っても魔物と中々会えない事に変わり無く、会えたとしてもすぐに終わってしまう。

 

 そして、そんな状況にトドメを刺すかの如くボス部屋に辿り着いてしまった。

 

 

「ミノ階のボスはハチノスだったか」

 

 

 ドロップ品が原作では明かされていない敵だ。ミノは十ナールで売れる『皮』なんだが、その上位に当たる『革』はシザーリザードのレアドロップという扱いだった。

 

 

「何となく牛肉な気がする」

 

 

 というか朝食で食べたあの肉の出所だろう?間違いなく。

 

 若干、空腹を感じつつ扉を潜ると、煙が集ってハチノスが現れた。見た目は大きくなってバランスの取れたミノ。元々強面だった分だけ迫力がある。

 

 初手でオーバーホエルミングを発動。遅くなる時間の中を何時もの速度で駆け抜け、近距離でファイヤーボールを叩き込み、そのままラッシュを発動する。

 

 もちろん敵も三階層のボスだけあり、一連の攻撃では倒れない。即座にその巨体に見合わぬ転身を見せ、こちらに突撃してきた。

 

 壁が高速で迫ってくる様な、体格を十全に生かした攻撃。ほんの僅かでも動き出しが遅ければ、俺はそのまま撥ね飛ばされていただろう。──だが、こちらには魔法がある。

 

 

「前方には御注意くださいってな」

 

 

 発動したファイヤーウォールを目の前に置き、そのまま右へ全力で跳躍すると、数秒前まで俺の居た場所をハチノスが通り過ぎた。

 

 ウォール系は突進する魔物と相性良いな。正直、これを置いてるだけでも勝てる気がしてきた。

 

 そんな油断を嗜める様にハチノスが青い魔法陣を展開。即座にオーバーホエルミングを使って斬りかかり、詠唱を止める。ついでにラッシュを叩き込む。

 

 どうやらそれがトドメになった様で、ハチノスの体が煙に変わった。残された()()()()()()()()()を拾い、一息つく。

 

 

「予想は外れたが、後はウドウッドからリーフを奪えばここでやる事は無くなるな」

 

 

 これで薬草採取士を取れば、基本ジョブと初級ジョブはコンプリート。後は戦士、探索者、盗賊のレベルを30まで上げれば遊び人だ。

 

 

 

 

「おかえり。無事で何よりだ」

 

「ただいま。八百(やお)千五百(ちいほ)のお宝を 収めし蔵の掛け金(かけがね)の アイテムボックス オープン。土産だ」

 

 

 薄い透明なフィルムの様な膜に包まれているアイテムを取り出し、受付の机の上に置く。わざわざ詠唱したのは、原作の主人公もやっていた誤魔化しも兼ねている。

 

 

「お、その皮を持ってるって事は三層を越えたのか。おめでとう」

 

「おう、ありがと。ただソロだとこれぐらいが限界だな」

 

「そらそうだ。というか普通はパーティを組んで越えるもんだぞ?」

 

「訳ありでな。奴隷以外と組む訳にはいかないんだよ」

 

 

 嘘だが。

 

 

「なんだそれ?部族か何かの習慣か?」

 

「そんな所だ──っと、そうだった。今日の深夜に出ていくつもりだ。世話になった」

 

「おう、分かった。たぶん起きてると思うが先に言っておく。元気でな」

 

「そちらこそ」

 

 

 お湯と鍵を受け取り、自室に戻る。有り難い事にお湯は二つ分貰えた。別れの餞別らしい。

 

 何時もの様に諸々の作業を終え、キャラクター設定を開く。次の宿はトロムソで取る事を決めているが、道中に盗賊狩りを行い、資金集めを並行して行うつもりだ。

 

 現在の所持金は約十八万ナール。税金や家を借りる代金も含めて考えると、盗賊だけで六十万ナールは稼ぎたい。

 

 

「購入する奴隷はどうしようかね。美人なら誰でも良いが、一番奴隷なんて仕組みがあるし」

 

 

 金を出せば原作のロクサーヌみたいな奴隷が手に入ると考えるのは早計だ。容姿だけなら、能力だけなら手に入る可能性はあると思う。

 

 だが両方を兼ね備えた奴隷と巡り会える確率は、残念ながら高いとは言えないだろう。暇な時に街を散歩した時に見掛けた奴隷の大半は、荒くれ者か見た目だけ良い村人(アクセサリー)。そのどちらかしか居なかったのだから。

 

 

「……取らぬ狸の皮算用だな。まずは資金集め、その為に早めの就寝。今は盗賊狩りに専念する」

 

 

 クローゼットに押し込んだ地球の衣類はリュックに詰め込んだ。歯ブラシは迷宮に投げ込んで処分した。

 

 装備は着ていくので出しっぱなし。キャラクター設定も対人に尖らせてある。

 

 確認完了。それではおやすみなさい。

 

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