勝ち組男の異世界迷宮で奴隷ハーレム   作:Lilyala

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再構築

 

 二十八層と二十九層を攻略した事を案内人に報告すると、周囲で待機していた探索者達が一斉に動き出した。

 

 余りにも大変そうだったので手伝う事を告げ、探索者達を何度か三十層に送り届けてから帰宅する。

 

 

『『『おかえりなさいませ』』』

 

「ただいま」

 

 

 出迎えてくれたグロリア達に装備の手入れを任せ、着替えを持って温泉へ。手早く頭と身体を洗えば、後は温泉に浸かるだけだ。

 

 

「あ゛ぁ゛ぁぁぁ……」

 

 

 魂の叫びが心の底から漏れる。それを吐き出しながら温泉に身を任せて本日の疲れを溶かしていく。

 

 露天風呂じゃないのは残念だが、維持する事を考えると今の人数じゃどうしようも無い。

 

 貴族になった時の楽しみだな。将来に希望があるのは良い事だ。

 

 

「……とはいえ、新しい奴隷の事を真剣に考えないと駄目か」

 

 

 六人で探索した感想は、想像以上に楽だった。これに尽きる。

 

 一緒に探索したレッジ達が上澄みの中の上澄みなのは理解している。新しく奴隷を買ったとて、いきなり楽になる訳では無い事も。

 

 だがそれ以上に衝撃的だったのは、レッジ達の実力でも()()()()()()()という事だ。

 

 案内人をやっていた探索者の実力は分からんが、少なくとも沙門と禰宜の二人はグロリア達を軽く超えている。レッジと百獣王は比べるまでもない。

 

 転職を行い、グロリア達よりステータスが落ちている事を含めて考えても、磨きあげた経験から来る動きが違いすぎるのだ。

 

 そんな熟練者の装備を容赦なく壊せるのが高層の迷宮ボスだとしたら、今の俺達では勝てない。無駄死にするだけだ。

 

 素直にそれを認められるぐらい、一緒に探索したレッジ達の実力は本物だった。

 

 

「せめて壊してくる魔物の種類さえ分かれば……」

 

 

 迷宮ボスとは言っても、別に特別な姿形をしている訳じゃない。あくまでも迷宮のルールに則り、出現する魔物の一体に過ぎない。

 

 だから石化もするし、スキルも止められる。

 

 それだけ聞くと勝てそうな気もするだろう?残念、世の中そんなに甘くない。

 

 いや、たぶん五十五層までなら普通に勝てる。原作でもあっさり倒していたし、ミリアの石化も決まっていた。

 

 ロクサーヌさんがいない点は不安要素だが、そこは装備の力でどうにでもなる。

 

 問題なのは五十六層以降のボスなのだ。

 

 

「第三ランクは装備破壊しそうな種族が固まってるんだよな」

 

 

 スライムの上位種がアシッドスライムみたいな酸系だった場合、間違いなく装備破壊の力があるだろう。

 

 他にも怪力自慢のサイクロプスやタウルス、ゴーレムといった魔物に加え、ドラゴンとかいう特大の爆弾も居るのが第三ランクだ。

 

 それ以降の階層なら溶解液を吐き出す奴も警戒対象に入る。具体的にはアント系とサラセニア系。怪力系ならミノ系も怪しい。

 

 そんな奴等を二匹、階層によっては三匹同時に相手する事を考えると、原作に登場する貴族達のように、スキル無し装備で迷宮討伐を行うのは理に適っているのかも知れない。

 

 

「……のぼせる前に出るか」

 

 

 明日レッジに聞いてみるかな。守秘義務とかなければ良いが。

 

 

 

 

 風呂上がりに酪をイッキ飲み。うーん、この一杯の為に生きてる気がするぜ!

 

 夢見心地の気分で居間に戻ると、すでに夕飯が並べられていた。

 

 今日はミートパスタもどきか。後はサラダと野菜のスープ。それとパン。

 

 食前の挨拶の後に食事を始める。まずはフォークでパスタを絡めとり、口へ運ぶ。──なんて事は残念ながら出来ない。

 

 何故ならパスタでは無く、マカロニだから。刺して食べるか、パンに挟んで食うしかないのだ。

 

 

「主様。お味はどうですか?」

 

「トマト多めで俺好みの味だ」

 

「それは良かったです」

 

 

 実はグロリア達の作る料理は同じレシピでも微妙に味が違う。

 

 メローの作る料理は、とにかくレシピに忠実だ。何度作らせても同じ味が出てくるというか、食材の品質による()()はあっても、調理法によるブレが無い。

 

 逆にサギニはレシピの基本を守りつつ、計量せずにパパッと作る。だから上振れも下振れも普通にするが、とにかく早い。

 

 グロリアは最初こそ戸惑いながら作っていたが、今では俺の味覚に合った料理を良く作る。

 

 このトマトの味強めのミートマカロニもそうだし、野菜炒めに使う塩コショウの量も俺と似てきた。

 

 そのうち、これがアカギ家の味になりそうだ。肉じゃがもカレーも味噌汁もこの世界じゃ作れないけどな!

 

 

 

 

「新しい奴隷……ですか」

 

 

 穏やかな雰囲気で夕飯を終え、いつもの食休み。御茶を片手に切り出したのは、温泉で考えていたこれからの方針だ。

 

 

「そうだ。レッジ達と探索したお陰で気付けたんだが、俺達の実力じゃ開かれたばかりの迷宮以外は厳しい。領地として得られる場所は大抵年代物だし、このままだと貴族に成れそうになくてな」

 

「そんなに凄かったのですか?」

 

「凄かったぞ。切り札を切った時の俺の動きを普通に出来ると言えば、その凄さが伝わるか?」

 

「…………!」

 

 

 俺の言葉に尋ねてきたグロリアが絶句する。メローは納得した様に頷き、サギニはお茶請けのクッキーに手を伸ばす。

 

 

「そんなレッジ達ですら装備を壊された事を考えると、今の俺達じゃどう考えても無理だろ?だから当初の予定を破棄して新たに組み立て直す事にしたんだ」

 

「という事は、御主人様はまだ貴族になる事を諦めていないのですね?」

 

「ああ。大切な()()もあるしな」

 

 

 今のメローには伝えられない男と男の約束だ。それを破棄するという選択は許されていないし、するつもりも無い。

 

 破るとしたら貴族に成れないまま死んだ時だけだ。

 

 

「新たに購入予定の奴隷は決まっているのですか?」

 

「理想は竜人族。ただ竜人族は高値が付く奴隷オークションに回されるだろうし、正直期待してない。だから騎士経験者かベテラン辺りを探してくるつもりだ」

 

「なるほど。盾役を揃える感じですか」

 

「いや、欲しいのは経験の方だ」

 

 

 もちろんレッジ達を参考にしたのは言うまでも無い。装備が破壊される事を必要経費と割り切り、新たな装備を取り出すまでの時間を全員で稼げる様にしておく。

 

 才能が無いなら無いなりに戦う方法は幾らでもあるのだ。掛かる費用については考えたくないが。

 

 

「あの、元騎士は訳ありが多くなりそうですし、奴隷落ちする様なベテランも主様の秘密を漏らす危険がありませんか?」

 

「グロリアの懸念も分かるんだが、それを言ったら奴隷を買う事すら出来なくなるんだ。ゼロから育てる事も考えたが、漏らされる可能性が変わらんなら経験者を買う方が早いと判断した」

 

「なるほど……」

 

 

 キャラクター再設定はチートと呼ぶに相応しい能力だが、読心系や洗脳系みたいな裏切りをゼロに出来るチートじゃない。

 

 だから何処まで行っても情報漏洩の危険があるし、漏れる事を前提にして教える情報を選ぶ必要がある。

 

 それにもしチートがあったとしても、俺が使いこなせるかと問われればノーと答えるだろう。

 

 ぶっちゃけ人間不信になるか、反逆されて殺される気がする。チートを使うにはチートを使う才能がいるのだ。

 

 

「えっと、難しい話は分かりませんが、私の様な年齢の奴隷を買えば良いのではないでしょうか」

 

 

 小動物の様にポリポリクッキーを齧っていたサギニが顔をあげ、ポツリと呟く。頬に付いたカスを取ってやりながら真意を尋ねると、返ってきたのはサギニらしい答えだった。

 

 

「その心は?」

 

「ご主人様が与えてくださる環境を自ら捨てる奴隷はいないと思います。特に私の様な劣悪な環境で生きてきた奴隷なら間違いなく不可能です」

 

 

『『あー……』』

 

 

 グロリア達が納得の声をあげたところを見るに、ある程度の信頼は出来そうだな。

 

 

「じゃ、その方向で探してみるか」

 

 

 自慢できそうな美貌まで求めるのは──我儘かねぇ。

 

 

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