道中でカエル肉が必要数集まったという事もあり、最短距離で迷宮を進み、昼頃には無事にボス部屋へ辿り着いた。
そこで軽く休憩を取り、会議して──突撃。
ブラックフロッグのボスであるフロックフロッグは、食欲を暴走させた
二体湧くようになった雑魚なんてお構い無しに石化させたからな。やる気と石化率は関係ない筈なんだが。
ちなみにボスを担当したグロリアは文字通りのゴリ押しでボスを潰した。
元々レベル差があり、回避を意識しなければごり押せるのだ。デュランダルとダマスカスの剣を二刀流したグロリアならば、殴り合いに負ける筈が無い。
ちなみにフロックフロッグのドロップ品はこれだった。
まさかのニスだ。膜に包まれた小瓶に入っており、用途は地球と同じで木材の保護に使われているらしい。
メローが言うにはエナメルのハイヒールブーツを作る時に使われる鍛冶素材でもあり、買取お値段もそこそこ。
その関係で魔法使いの居ないパーティーにカエルは人気な獲物だそうだ。
「あの、主様?どうかしましたか?」
カエル肉を調理するという現実から目を逸らしていると、グロリアに現実へ引き戻された。
目の前には一人二本づつ集めたカエル肉──の内の一本。背後には目を輝かせるグロリアとサギニ。
横にはいつもの様にメローがレシピを残す為に待機しており、逃げられそうに無い。
とりあえずパッと思いついた言い訳を口にして時間を稼ぐか。
「いやな?美味しく食べる為のレシピは時間が掛かるんだ。今日は予定もあるし、どう調理しようか迷ってる」
本気で
逆に焼くだけなら俺がやる必要が無い。扱いは鶏肉と大差無いので塩と胡椒を振ってオリーブオイルで焼けば良いだけだ。
「悩ましいですね。主様の料理は楽しみですが、本来の目的を疎かにしてまで作って貰うのも違いますし」
「焼くだけならば私達でも出来ますからね。今回は私達がやりますか?」
ふと視線をサギニへ向ければ、耳がへにゃりと曲がり、表情が悲しそうに歪んでいた。
「そ、そうですよね。我儘は駄目ですよね……」
んー…………少しだけ手間かけて誤魔化すか。
「よし、決めた。グロリア、カエル肉は任せた。サギニはサラダを作れ。俺はソースを作る」
「「かしこまりました!」」
グロリアが竈に火を起こしている内に材料を準備する。
材料はトマト四個、玉ねぎ一個、にんにく二欠片、オリーブオイル25ml、バジル?6枚、塩小さじ2/3、胡椒適量。
面倒な奴はトマト缶を使うと良い。生のトマトから作る場合、品種によっては水分が少なく、加水しないと焦げる場合があるぞ。
材料を全て用意したら調理開始。まずはトマトのヘタを取り、皮を向いておく。玉ねぎとにんにくはみじん切り。これで準備完了だ。
火加減を
弱火で大体十五分から二十分ぐらい煮込み、全体的に濃度が濃くなってオレンジ色っぽい赤色になったら完成だ。
「そっちはどうだ?」
「もう少し掛りそうです」
一度に焼ける数は二個。俺達は四人。
大人の手のひらサイズのカエル肉だと、フライパン全体を使っても一度に二本が限界か。本当にこの世界は食べ物に困らんな。
「冷めたら美味いもんも不味くなるし、先に食うか?」
「さ、流石にそれは……」
「別に気にしなくても良いぞ?俺は食べたことあるし」
ついでに言えば好きな時にいつでも作れる。レシピは偉大なのだ。
「………………そ、それでも最初は主様が食べるべきです!」
「……そうか。それじゃ先に貰うわ」
誘惑を打ち払ったグロリアの努力を無駄にしない為、焼いたカエル肉を一本貰い、適当にトマトソースを掛けて机へ運ぶ。
そしてナイフとフォークを使って切り分け、一口パクリ。
「ど、どうですか……?」
「まぁ、こんなもんだろう」
期待した視線を俺に向けているサギニには悪いが、味は発展途上国で作られる鶏肉のトマト煮込みだ。
トマトの味にばらつきがあり、狙った味とは少し外れたというか。
せめて酸味か甘味かどちらかに偏るなら作りやすいのだが。
「ご主人様が
目を輝かせ、期待に胸いっぱいと全身で表現するサギニ。判断の基準が謎だが、そんな事が気にならないぐらい嬉しそうに笑っている。
「確かにそうですね。御主人様の
「ですね。漂ってくる匂いから分かっていましたが、これは期待出来そうです」
グロリアとメローの二人も嬉しそうに笑い、じわじわ焼けていくカエル肉をそわそわしながら見守っている。
正直この程度でこんな反応をされると、本気で材料を厳選したトマトソースを食べさせたくなる。
帝国は広い。国内を巡れば、日本人の舌に合ったトマトを探す事も不可能じゃ無い。地域によって味が変わるのは普通だしな。
問題はそんな事をしている暇が無いって事か。早いところ一回目の迷宮踏破をしたいもんだぜ。
◇