白蛇は月の夢を見る   作:金色のくじら

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フォゼ再販!!歓喜(´;ω;`)♡♡
とりあえず全部予約しました(いぬしまさんは2つ♡)

新規のファンなので、再販を心待ちにしてました。
感謝すぎる(*´д`*)ハァハァ

お迎えしたら思う存分ぬい活しようと思います♡




第三話

 

 

 

───遠くで起床ラッパの音が聞こえる。

 

まだ夜明け前じゃん。

軍人って大変だなぁー・・・と布団を深く被って目を瞑る。

 

するとカツカツと足音が近付き、扉を叩く音が響いた。

それを無視して更に布団に潜ると、扉を開けた音の直後「起きろ」と思いっ切り布団を引っペがされた。

えぇ、もう起きるの?・・・と目で訴えるが、無言で眉間に皺を寄せた月島さんに見下ろされ、流石に観念した。

 

 

『・・・・・・おはようございます』

 

 

 

月島さんは、朝食におにぎりを渡してくれた。

大きくて歪な形をしている塊を頬張ると、米の甘みと塩味が口いっぱいに広がる。

朝から白米が食べられるなんて贅沢過ぎる!!

と歓喜の涙を流して『美味しい!ありがとうございます!』と心からの感謝を伝えると、月島さんは顔を逸らし「そうか」とだけ呟いた。

 

「今日は鶴見中尉殿が不在だ。医務室に案内するように言われている。着いてこい」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

視線が刺さって痛い。

 

月島さんに連れられ兵営内を歩いていると、兵士からは奇妙な目で見られる。

そりゃそうだよね、よく分からん女が軍曹に連れられてうろちょろしていれば誰だっておかしく思う。

なるべく月島さんの影になる様に隠れながら歩くと、ようやく目的地に着き安堵のため息をつく。

 

一通り部屋を案内されたので、川で拾った兵士の様子を見たいと月島さんにお願いした。

 

『あの状況でしたし外傷も酷かったので、割と強い薬を使ったんです。少し気になって』

「手術をしたばかりで眠っていると思うが」

『それならそれでいいんです。治癒を早める薬があって、彼の様子次第ですが使えたらと』

「・・・いいだろう」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

月島は尾形上等兵が眠っている傍らで『これなら大丈夫そう』と投薬している七海を見つめていた。

彼女が肌身離さず持っている楽器・・・昨晩は風呂にまで持って行っていた。

仕込みが無いかどうかは、気絶している間に調べたので問題ないはずだが・・・白い蛇の皮が張られているそれは三味線なのだろうか。

すると視線に気付いた彼女が『あぁ、これですか。三線ですよ』とにこりと笑う。

 

「三味線とは違うのか?」

『似ていますが別物です。私の故郷では三線の方が馴染みがありますが、こちらでは見かけませんね』

「故郷は?」

『沖縄です。こことは真逆の暖かい島国ですよ』

 

だから褐色の肌をしているのか。

暖かい場所で育ったのなら、北海道の厳しい寒さは堪えるのだろう。

彼女は着膨れするほど厚着でいる。

 

「俺は行ったことはないが、独特の文化があって海が美しいと聞いた」

『そうですね・・・アイヌに会ったことがあるのですが、似たようなものを感じました。海はこちらとはまた違った青い色をしていますね。月島さんの故郷に海はありますか?』

「ああ、新潟の佐渡島だ」

『新潟には立ち寄りましたが、佐渡島には渡らなかったなぁ。日本海は荒々しくて惹き込まれしまいそうで・・・気を悪くしたらすみません』

「・・・いや、いいんだ」

 

あの子の髪と佐渡島の荒々しい海が頭をよぎる。

もう、足を踏み入れることはないのだろうな。

 

無意識に険しい表情をしていたのだろう。

俺の顔を見た七海が慌てて話題を変えた。

 

『えっと・・・新潟のお米、すごく美味しかったです!何度もおかわりしてお店の方が困ってました!』

「七海に食い尽くされると思ったんだろ。その店が気の毒だ」

『もう!月島さん意地悪だなぁ〜』

 

七海が安心したように微笑んだ。

 

・・・彼女は悪い人間ではないのだろう。

軍人にいきなり囲われて、怖い思いをしただろうに。

こちらを気遣うような素振りまでするのだから。

 

これを狙ってやっているなら、とんだ魔性だ。

 

「色々とすまなかった・・・」

『脅したことですか?・・・分かってますよ。忠告してくれたんでしょう?』

「大人しくしていれば傷付けなくて済む」

『まだ自分の足で歩いていたいので大人しくしてますよ。ふふっ、すごい怖い人かと思ってましたけど、意外と優しいんですね』

 

俺は別に優しくなんかない。

お前を懐柔するためだ。

 

「・・・何か要望があればなるべく応えられるように善処する」

『じゃあ、月島さんにお願いがあります!』

「?」

『部屋でひとり、ご飯を食べるのは寂しいんです。たまに一緒に食べてくれませんか?』

「俺と飯食って楽しいか?」

『少なくとも今、楽しいですよ』

「・・・そうか。なら夕食はなるべく部屋でとるようにする。三線も弾きたければいつでも弾いていい。あそこは離れだから他の兵士の部屋にはあまり音が届かないだろう・・・俺は特に気にしない」

 

すると心底嬉しそうな顔で『ありがとうございます!』と言うもんだから面食らってしまった。

 

 

 

 

~♫

 

 

 

彼女を部屋へ送ると、独特な音色と共にやわらかな唄が聞こえてくる。

 

それを美しいと感じる心と彼女への罪悪感が混ざり合い、身体の奥底に沈んだ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

後日、鶴見さんと細かい取り決めを行った。

 

私の立ち位置としては、腕の良い薬屋を雇ったので医務室に勤務させる・・・ということになった。

そして情報漏洩を危惧しているのか、毒を使って薬を作っている姿は特定の人以外見られてはならないということ。

 

・・・一体誰に知られたくないんだか。

 

意外だったのは、兵営内であれば好きに過ごして良いということだった。

まぁ、見張られてはいるんだけどね。

 

 

そして目の前の男は、この間とは別人みたいに優しいので戸惑ってしまう。

 

「甘いものは好きかね?」

『・・・好きですけど』

「小樽の花園公園名物の串団子だ。私はこれが好きでね」

 

目の前の甘味は魅力的だが、不気味過ぎる・・・と思いながらもいただくことにした。

 

あ、美味しい。・・・じゃなくて!

 

『何か他に聞きたいことでも?』

「そう警戒しないでくれ・・・と言っても難しいね。私はただ美しいお嬢さんとお茶を楽しみたいだけなんだ。君の故郷は沖縄だったね。あちらにも美味しい甘味があるのかな?」

『タンナファクルーという黒糖を使ったお菓子が私は好きです。・・・よく母と一緒に作りました』

 

懐かしい・・・不器用で生地が上手く丸められない私の手に、少し冷えた手を重ねて「美味しくなぁれ」と微笑んだ母。

 

・・・もう戻れない遠い記憶。

 

「なるほど、母君との思い出の菓子か・・・年頃の娘がひとり旅とは、ご両親もさぞ心配しているだろう?」

『・・・心配している家族はもういませんよ』

「どうしてだい?」

『言葉の通りです。みんな死にましたよ』

「そうか、辛いことを聞いてしまってすまなかったね。ここは君と同じく故郷を出てきた者達の集まりだ。帰る場所が無くなってしまった兵士も少なくない。月島もその一人だ。初めこそ好奇の目にさらされるかもしれないが、時間が経てば皆受け入れるだろう。ゆっくりでいい、君の居場所になれば嬉しいよ。これから長い付き合いになるのだから」

 

ここで私は異分子だ。

受け入れてもらおうなどとは思っていない。

 

『・・・』

「ふふ、つれないなぁ。それもまたいいがね。今度は是非君の唄が聞きたいなぁ。気が向いたらまたここに来るといい」

 

そして「いつかタンナファクルーを私にも食べさせておくれ」とウインクした。

この人、自分の顔が良いと分かってやってるな。危険だ。

 

・・・この状況に納得はしていないが、鶴見さんと上手くやっていく方が利口なのは分かる。

どうせ今は逃げられないのだし。

 

『お団子ご馳走様でした。歌って欲しい唄、考えておいてくださいな。また来ます』

 

私は出来るだけにこやかに笑って部屋を出た。

 

 

あの人と話していると、いつの間にか心の奥底を覗かれている気がしてゾワゾワする。

 

 

 

 

「・・・・・・やっと手に入れた私の可愛い毒蛇姫。じっくり距離を詰めて行こうじゃないか」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

────医務室での勤務十日目。

 

『あ!起きた!具合どうですか尾形さん?』

「・・・」

『あぁ、話せないんだった。ほらお薬ですよ〜』

 

尾形さんの口に無理やり流し込むと、苦いと言わんばかりに睨みつけてくるが気にしない。

 

『そんな怖い顔しないで〜。お粥も持って来たのでちゃんと食べてくださいね。はいあーん!』

 

心底嫌そうな顔をしているが、差し出した匙を口にしてくれた。かわいい。

目が覚めた日に思いっきり無視されたのが懐かしいなぁ。

今も警戒はされているけど、猫ちゃんみたい。

経過も良いし、薬が上手く効いているみたいで一安心だ。

 

『もう少しすれば話せるようにもなれますよ。まだしばらく安静にしてくださいね〜』

「・・・」

 

食事を終え横になった尾形さんが三線を指差すので、『弾きましょうか?』と声を掛けると頷いた。

ここは娯楽もないし暇なのだろう。

好みが分からないので、故郷の唄を歌う。

 

〜♫

 

尾形さんが横になってゆっくり目を閉じた。

歌い終えてしばらくすると寝息が聞こえたので、医務室を出た。

・・・早く良くなりますように。

 

 

今日は月島さんもどこかへ出掛けると言っていたな。

医務室の隣の部屋でせっせと薬を作り部屋に戻る途中、遠目に訓練中の兵士に会釈すると返してくれた。

最初こそ奇妙な目で見ていた彼らも、鶴見さんから「大切な同胞だ」と紹介があってからは雰囲気もいくらか柔らかくなり、世間話くらいはしてくれるようになった。

 

 

 

 

 

 

・・・ただ一人、こいつを除いては。

 

「七海〜」

 

この男、宇佐美時重である。

 

鶴見さんに紹介された日、両頬にホクロのある兵士がドス黒い気を放って「気に食わない殺す」と言わんばかりの目で睨みつけてきた。

間違いなくコイツはやばい。

なるべく関わりたくないのだが、月島さんの不在時には何故か奴が監視役をしている。

 

『う、宇佐美さん・・・今処置が終わって部屋に戻ろうかと』

「あはっ、そんなのずっと見てたから知ってるよ。あのハナタレ小僧の寝かしつけまでしてただろ」

 

全然気配感じなかったけど。こっわ。

 

「お前、薬草摘みに行きたいって言ってたよな?今度僕がついて行ってあげるよ」

 

他の兵士に言ったことなんで知ってるの??

やだやだ。兵営内ならまだしも、外で完全に二人っきりになったら何されるか分かんないし!!

 

「心配するなよ〜、殺すなって言われてるから。鶴見中尉殿に♡」

 

うげっ、何で恋する乙女の顔になるんだよ。

 

「でも、お前を殺して鶴見中尉殿に叱られるのもいいなぁ♡想像しただけでもイッちゃいそうッ!!ヒヒンッ!!」

 

私をダシにして妄想を捗らせないでいただきたい。

宇佐美さんが自身の妄想に夢中になっている隙にゆっくり離れようとすると、恋する乙女の表情から一転、無表情で右肩を鷲掴みにされた。

『何するんですか』と抗議の言葉を口にする前に、足を払われ後ろに倒されて尻餅をつく。

 

『・・・いったぁ』

 

痛みに顔を顰めて宇佐美さんを睨むが、奴は無言で胴に股がってきた。

私の目をじっと見つめると喉に手を伸ばしてくる。

そのまま少しずつ力を込めてくるので、慌てて抵抗するが微動だにしない。

 

・・・ゔぅ゙、苦しい。

胸元に隠れている柘榴が反応しているが、抑えて飛びかからないように鎮める。

面倒を起こさないという月島さんとの約束は守りたい。

 

「お前、鶴見中尉殿がお優しいからって薬作るだけでいられると思うなよ?囚人狩りにお前もその内駆り出されるんだ!せいぜい駒として役に立てよ、この毒蛇女!!」

 

・・・囚人狩り?何のこと??

 

宇佐美さんは鼻息を荒くして、更に首を絞めてきた。泣きたくないのに生理的な涙で視界が滲む。

 

『ぐっ・・・ぅ・・・』

「ふふっ、イイ顔するじゃん。涙浮かべちゃってかわいいなぁ♡」

 

謎に上機嫌な宇佐美さんは私の耳を食み、生暖かい舌先でなぞった。

 

『ひゃっ!!』

 

へ、変態に犯される!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめろ!宇佐美上等兵!!」

 

声のした方を見やると、物凄い形相の月島さんが走って来た。

そのまま宇佐美さんの頭を思いっきり殴り、ごんっと鈍い音がする。

 

「痛ってぇ!!」

 

宇佐美さんは頭を擦り痛そうにはしているものの、すぐ人好きのする顔に戻ってにっこり笑う。

丈夫すぎない??

 

「・・・なぁんだ、月島軍曹殿。帰って来ていたんですね〜。・・・ちょっと遊んでいただけですよ。ね、七海?」

『ちょっとじゃありません!貞操の危機でした!!変態に犯される趣味はありませんけど?!』

 

月島さんが私に近寄り「大丈夫か?」と背を撫でると、外套を掛けてはだけた着物を隠してくれた。優しい。

 

「変態だなんて失礼だな〜。善がってた癖に」

 

善がってないし!こいつ最低!!

思いっきり宇佐美を睨みつける。

 

「宇佐美、いい加減にしろ」

「はいはい。月島軍曹殿はお優しいですね〜。僕はもう必要なさそうなんでお暇しますよ。またね七海〜」

『もう今世では会いたくないので、来世があれば!!!』と思わず立ち上がって叫んだ。

 

宇佐美さんは何故か楽しそうに、手をひらひらさせて去っていった。

 

 

「部下が酷いことをしてすまなかった。やはりあいつに七海の世話はさせられんな」

『もう宇佐美さんだけは勘弁してください。あと少し月島さんが来るのが遅ければ、柘榴が宇佐美さんに噛み付いてましたよ。抑えてたの褒めて欲しいです』

「ははっ、威勢がいいな。・・・本当に無事で良かった。我慢して偉かったな」

 

月島さんのカサついた大きな手が私の頭を撫でる。

 

「今日のお風呂は大浴場じゃなくて、銭湯がいいです」

 

少しくらい我儘を言わせてくれ。

 

月島さんは『分かったよ、連れて行ってやる』と少し口角を上げた。

笑うんだな、この人。

 

その日、月島さんは夕飯を一緒に食べた後、約束通り銭湯へ連れて行ってくれた。

帰り道に「風邪ひくぞ」と言って乾ききらなかった私の髪を、ガサガサの手ぬぐいで拭いてくれるのが何だかくすぐったかった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「私がいない間、宇佐美上等兵に任せるんですか?殺してしまうかもしれませんよ」

「殺すなと警告してある。宇佐美上等兵は兄弟も多く面倒見が良いからなぁ・・・それに"何か"あったとしても加減くらい出来るだろう」

「しかし、わざわざ奴でなくとも」

「・・・その後お前が優しくしてやれば懐くだろう?飴と鞭は上手く使い分けろ、月島軍曹」

「・・・・・・はい」

 

 

 

 

 

 

彼女に知られてしまえば、ふたりきりで飯を食うことも無くなるのだろうな。

 

・・・それでいい。俺と同じく死神の甘い嘘で何処へも行かせないように出来るのならば。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

七海 結月

襲われた次の日に宇佐美の長靴にしいたけを入れておいた。ざまあ。

 

鶴見

宇佐美はいいスパイスになるなぁ。

月島が七海に執着するのを見て楽しんでる悪いイケおじ。

 

月島

七海の濡れた髪にちょっとドキドキ。意外と柔らかいんだな。

 

尾形

七海と月島の会話はバッチリ聞いてるよ。

お粥の熱さに不満がある猫ちゃん。猫舌だもんね。

おい、もっと冷ましてから寄越せ。

 

宇佐美

七海をいじめるのが最近の楽しみ。

来世も会いたいって?←脳内変換

かわいいとこあるじゃん。

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