白蛇は月の夢を見る   作:金色のくじら

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あけましておめでとうございます♡
相変わらず亀更新ですみませんm(._.)m

今年は巳年ですね!
巳年の内には完結出来るように頑張りますので、これからもよろしくお願いします♡

私は沖縄出身じゃないので、調べながら書いてます。
適当な部分もあるので、変な所があっても多めに見てください(泣)
たまに過去の自分の書き方が気に入らなくて、シレッと修正してたりしますがご了承くださいm(_ _)m

匿名感想箱作りましたので、コメントいただけると嬉しいです(*´`)

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以下本文ネタバレ







緑黄色社会さんの「花になって」は某アニメの主題歌でしたが、初めて聞いた時に鶴見中尉→愛4、もしくは鶴見中尉→夢主に対して歌に当てはまるな(私の解釈です)と思ったんです。
芥子の花をぶわっと背負って甘い嘘(でも全てが嘘じゃない)をついてる鶴見中尉が思い浮かんでしまいました。

偶然知りましたが、雪椿は新潟県の県の木だそうですよ。変わらない愛、私の運命はあなたの手にが花言葉だそうで悶絶しております。





第五話

 

 

私達が吹雪で足止めを食らっていた日、火事で私と月島さんの部屋がある棟は全焼した。

なので兵営に帰って来たその日の夜は、被害を受けなかった医務室で休むことにしたが、下山で体力を使い果たした私は兵舎に着くと気が抜けて、廊下の床に倒れ込んでその後の記憶が無い。

 

 

目が覚めると昼過ぎだった。

 

いつの間にか寝台に横になっていたが、自分で動いたのだろうか?

・・・そういえば月島さんは?背中の傷は大丈夫かな?

と重い腰を上げて辺りを見回すと、机の上に大きなおにぎりと角張った字の書き置きがあった。

 

 

「食べたら隣にある兵舎に来い」

 

 

 

素直で正直な私のお腹は切なげな音を奏でる。

いただきますと引っ掴んで口いっぱい頬張ると、いつもより塩っぱくてそれが身体に染み渡った。

月島さんが作るおにぎりは世界一美味しいと思うし、優しい味がした。

 

 

 

 

 

 

一番端にある兵舎の横、垣根に植わっている木の葉を見ると所々に穴が空いてしまっている。

 

・・・ここまで火の粉が舞ったのか。

 

どうして火事なんかになったんだろ?

 

可哀想にと木に近寄って葉に手を伸ばせば、葉がカサついた音を立てて落ちていった。

ごめんねと心の中で呟くと、びゅうっと乾いた風が吹いて落ち葉を巻き上げてゆく。

 

 

 

 

 

あぁ、気付かなかったな。

 

風が通り過ぎ目を開けると、先程落ちた葉に隠れていた硬い蕾が春を待ち望んでいるかのようにゆれていた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「あぁ結月!本当に無事で良かった!!」

 

鶴見さんは私が部屋に入った途端駆け寄って来て、自然な流れで肩を抱くと、私の顔を胸元へぎゅうっと押し付けた。

 

 

「捜索隊を向かわせようとしたんだが、こちらも不測の事態が起きてね・・・」

 

そのまま鶴見さんの顎で頭をスリスリされるが、押し退ける気力も無いので、なすがままになっていた。

・・・いつから私は愛玩動物になったんだろう。

しかも結月呼びになっている。

 

 

すると背筋に寒気が走り、刺さるような視線を感じてそれを辿る。

その先で同担拒否過激派の宇佐美さんが、肩をワナワナと震わせて血走った目をこれでもかとかっぴらき、歯を剥き出しにして嫉妬に狂いに狂いまくっていた。

 

 

・・・あ、これ死ぬやつだ。

今度こそ二人っきりになれば確実にヤラれる。

 

その横に立っている月島さんに助けを求めたが、少し険しい顔でこちらを見つめた後、むんと口を結ぶと顔をふいと逸らしてしまった。

 

・・・私はお世話係に見捨てられたらしい。

 

せめて護身術とか教えてくれ。

とは言え奴に普通の攻撃が通用するとは思えないし・・・金的の練習とかしてみようかしら。

後で月島さんに言って練習相手になってもらおう。

 

宇佐美さんの時重くんを確実に狙えるようになるまでは、月島さんの傍を離れないようにしようと決めた。

お便所とお風呂以外ついて行ってやるからな。

 

とりあえず宇佐美さんは見なかった事にして、未だ私を抱き締めている鶴見さんの方を向いて『何があったんですか?』と聞くと、やっと腕を離して近くの椅子に座らせてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

「ある男を追っていたんだよ。逃げられてしまったがね」

 

 

 

・・・その日、"不死身の杉元"という尾形さんに傷を負わせた男を捕まえたが、二階堂兄弟の片割れを殺して逃げたそうだ。

そして何者かが火を放ち、兵舎の一部が燃えたらしい。

何とも物騒な話だ。

 

しかし、不死身の杉元とやらはよくここから逃げ出せたな。

私もその場にいたらどさくさに紛れて逃げられたかもしれないのに。ちきしょう。

 

 

そんなことを考えている私を横目に、鶴見さんは「奴らも刺青囚人を追っている」と呟いた。

 

 

『・・・刺青囚人?それって宇佐美さんが言っていた"囚人狩り"に関係あるんですか?』

 

ヒグマやら火事やらで結局聞けず仕舞いだったな。

 

「・・・そうだ。我々はアイヌが北海道の何処かに隠した金塊を手に入れるために、その場所の手掛かりとなる暗号を集めている。それが網走監獄を脱獄した囚人、二十四名に彫られた入れ墨だ。・・・結月はアイヌと関わったことがあるそうじゃないか。金塊の話を聞いたことはあるかね?」

『・・・いえ』

 

金塊ねぇ・・・冗談でそんなこと言う人ではないと思うけれど、そんな夢物語みたいな話が本当にあるのだろうか。

まぁ、付喪神連れてる私も大概だが。

 

怪訝な顔をした私の心を見透かしたように「与太話に聞こえるかね?」と口角を上げるとゆっくり立ち上がり、目の前で肋骨服を脱ぎはじめた。

 

雇い主がいきなり脱ぎはじめたので困惑した。

私は何を見せられるのだろうか。

思わず手で目を覆って指の間からチラリと見ると、現れた不自然な肌色の"それ"には、交差した線と丸の中に漢字が描かれていた。

 

囚人狩り・・・人皮ってまさか・・・

 

 

『剥がしたの・・・?』

 

想像してしまい、全身にぶわっと鳥肌が広がった。

 

鶴見さんはこちらの目線までしゃがみ込むと、私の両手を取って刺青人皮に触れさせる。

 

私の手を覆う鶴見さんのひやりとした掌。

そして自身の指先に触れるざらりとした感触。

 

 

 

「どうだ結月、これを着ると暖かいぞぉ。寒がりな君にも同じモノを作ってあげよう」

 

私が恐怖で目も逸らせず、何も言えずにいると「なに、極悪人の囚人の皮だ。君が悲しむ必要はない」と目を細めた。

 

「薬、武器、それらを作る人や土地・・・戦争をするには金がかかる。だが金塊が見つかれば軍資金に充てることが出来る」

『で、でも・・・アイヌが集めたのならアイヌの物でしょう?』

「和人を殺すための軍資金さ・・・汚れた金だよ。アイヌが金塊を隠した後に仲間割れをして殺し合い、その内の一人が独占しようとしたのが事の発端だ。その思考は危険だろう?」

 

そう言って私の手を離して服を着ると、立ち上がりこちらを見下ろした。

 

「私は軍事政権をつくりその上に立ちたい。君も知っているだろう?日露戦争では無能な上層部が指揮した攻略戦のせいで、失われずに済んだ多くの命が消えていった・・・。私はそんな悪習を変えたいのさ」

 

きっと鶴見さんのような指導者が指揮を執っていれば、もっと被害を抑えられただろう。

それは鶴見さんを見ていれば分かる。

 

・・・だからと言って軍事政権には賛同出来ない。

だって、戦争が生み出すのは破滅しかないから。

いつだって犠牲になるのは若者と女、子供達だ。

 

『北鎮部隊が国を守ってくださった事には感謝しています。・・・でも軍事政権には賛同出来ません。戦争は犠牲になるものが多すぎます』

「犠牲か・・・目的の為なら多少は、と思うのは君からしたら非道に見えるのだろうね。まぁいいさ、結月は今まで通り薬を作り続けてくれるだけでいい」

 

逃げられないのだからどうせ断る事など出来ない。

結果、私は協力せざるを得ないのだ。

本当にタチが悪い。

 

そして鶴見さんは鋭い目つきでこちらを見た。

 

「・・・人は目的も無く大金を手にすると本性が出る。君の父君もそうだったのだろう?私は金塊を私利私欲のために使おうなどとは思っていないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・どうして父のことを知っているの?

 

 

 

 

『・・・調べたんですね、私のこと』

 

思わずハハッと乾いた笑い声が漏れる。

 

そうか、そうだったのか。

 

北海道から遠く離れた離島の小さな村のことなど調べないとタカをくくっていたのだ。

 

「君の薬が初めて売られた場所から聞き込みをして調べたんだ。どうしても君の事が気になってね」

 

鶴見さんが"情報将校"と呼ばれている事を最近になって知ったのだけど、こういう事か。

 

「薬を売っていた男は当時十歳あまりの娘に薬を作らせ高額で売付け、稼いだ金は湯水の如く博打や酒に使っていたと近隣の住民から聞いたよ。妻と娘はそれはそれは酷い暮らしをしていたと・・・・・・そしてある日、男と妻がお互いを刺し殺して死んでおり娘は消えた、とね」

『こっそり辺鄙な場所まで行って私の事を調べるなんて、随分熱烈ですね』

「ふふふ・・・私は君に夢中なんだよ結月」

 

鶴見さんは私の髪を一束掬うと、そこに口付けた。

どうやら本気で逃がす気が無いらしい。

 

 

 

 

そして射抜くような眼差しで告げたのは、予想外の言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・父親を殺したのは君だろ、結月」

 

ギュッと心臓を掴まれたような感覚に陥り、冷や汗が吹き出た。

 

 

「君は各地を転々としながら身分の低い人々に薬を渡していたそうじゃないか。それが君の身代わりで死んだ母君への罪滅ぼしだと思っているからだ。違うかね?」

『・・・』

 

 

そうだ。

私のせいで死んだ母。

それに対しての罪悪感。

 

私は動揺しているのを顔に出さないように努めて声を張った。

 

『何が言いたいんですか?私を警察にでも突き出します?』

「・・・いいや、そんなことはしないさ。悪いのは君の善意を利用した父君だよ。君じゃない」

 

私が父の言うことを素直に聞いていれば、母は死ぬことはなかった。

その罪悪感がずっと心に住み着いている。

そしてそれを誰にも言えずにいたこと。

 

『そうですよ、鶴見さんの言った通りです。私が父を殺しました。逃げようとした私達ともみ合って父が母を刺したんです。私は気が付いたら何度も何度も父を刺していました』

「・・・」

『父から逃げずにいれば母は死ななかったかもしれない。そう思った私に死ぬ間際、母が言ったんです"私が力を授かった事にはきっと意味がある。生きてそれを見つけなさい"って』

「母君はきっと、君を庇った事を後悔していないよ」

『・・・それでも罪悪感は消えないんです』

「もう自分を赦してあげなさい。それでも赦せないなら私が一緒に背負うよ」

 

鶴見さんは優しく微笑み、頭を撫でてくれた。

 

こうやって心にするりと潜り、私が欲していた言葉を注ぎ込む。

あぁ、この人は甘美な言葉で何人も誑し込み、惑わしてきたのだろう。

 

 

きっと月島さんもその一人。

 

 

・・・でもね、そんな言葉だけであなたの虜になるほど女は甘くないのよ。

きっとそれもお見通しなんでしょうけど。

 

それに、これは私の問題だ。

私だけの業。

 

 

 

 

そして鶴見さんは私の肩を掴み、真っ直ぐ目を見つめて言った。

 

「君の力が必要なんだ。私に協力して欲しい」

 

 

そして優しく抱き締め、耳元に口を近付けた。

 

 

「・・・結月のもう一つの能力を教えてくれるかい?」

 

甘く囁く声に思わずクラっとした。

 

 

 

・・・いいさ、今まで通り協力はする。

でも、信じる人間は自分で見極めて決める。

 

女は強かな生き物なのだ。

 

 

 

 

『・・・・・・はい』

 

鶴見さんは「いい子だね」と私の鼻にそっと口づけた。

 

私は窓の外を差し、覚束無い足でゆっくり立ち上がり、鶴見さんの手をとって部屋を出た。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

七海は俺達に『ここで見ていてください』と言って少し焦げた垣根の根元に座り、蕾にそっと触れた。

 

先程までの弱々しい顔と打って変わって、凛々しい顔つきの七海。

 

鶴見中尉殿はいつの間に彼女について調べていたのか。

相変わらず食えない人だ。

 

七海は・・・鶴見中尉殿に欲しかった言葉を掛けられたのだろう。

あぁ、甘い言葉が彼女の心を少しずつ蝕んでいくのだと哀れに思う。

 

昨日、床に転がっていた彼女を抱き上げた時に見たまつ毛の長さ、艶のある黒曜石の色の髪、腰に回した手から感じる肌の柔らかさ・・・食めば甘美であろう果実の様な唇。

 

何故か・・・七海の心を少しでも満たしたのが自分では無いと思うと、胸が苦しくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

七海が両手で印を組むと柘榴が現れて彼女の細い首に巻き付いた。

そして、三線は眩い光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

~♫

 

『綺麗にされた花瓶も

肥やしも何もいらない

その姿で咲き誇れ』

 

 

次第に小さかった蕾が膨らんでいく。

 

 

『花になって ほらニヒルに笑って

その顔にぞくぞくして 目が離せない

味見して 君の毒は私の薬って

包んであげるから

楽にして 君の闇は私の光って

愛してあげるから 笑って』

 

 

 

大輪の椿の花が開き、彼女の座っている地面から春の草花が一斉に咲いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隣に立つ鶴見中尉殿は、その花達のように艶麗に笑うと「見事だな」と呟いた。

 

 

 

 

 

 

歌い終わるとそのままゆっくり倒れていく七海に駆け寄って受け止めた。

 

あぁ、この身体に触れるのが俺だけの役目であればいい。

どろりと心に張り付く"悋気"という感情に気付いてしまった。

 

 

 

 

 

 

木からは深紅の首が落ち、七海の身体を飾った。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「まさか呪術が使えるとは・・・美しくも恐ろしい力だな。益々手放せん」

 

月明かりを背負い執務室の椅子に座る上官は、椿の枝を持ち薄い花びらを空に翳して目を細めている。

 

 

「・・・」

 

 

アイヌの金塊の話から七海の過去に話をすり替え、彼女の欲しい言葉を掛ける。

 

 

・・・つくづく恐ろしい人だ。

 

 

恐怖で支配するより、蜜のように甘美な愛で誑し込むのがこの人のやり方なのだ。

彼女は気付いていないかもしれないが、そうやって蜘蛛の糸で絡め取り少しずつ動けなくする。

そして、じわじわと弱らせて全て食い尽くされてゆく。

 

 

俺は、それを見ている事しか出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「月島ぁ、結月を気に入ったなら嫁にどうだ?」

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・は?」

 

 

いきなり何を言い出すんだこの人は。

 

 

「子でも孕ませてしまえば此処を出て行くこともないだろう。まぁ、お前が気が進まんと言うなら宇佐美上等兵で・・・「検討させていただきます」

 

 

鶴見中尉の言葉に被せて口から出た言葉に、自分でも驚いた。

俺こそ何を言っているんだ。

 

 

目の前の死神はニヤリと笑うと、花弁に齧り付いた。

 

・・・きっとこの気持ちも全て思惑通りなのだろう。

 

 

 

 

解けた花がはらはらと舞って、静かに床に落ちた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

七海 結月

つるちゅに協力し続けることにした。

言うこと聞いてれば優しいもんね。

でも、自分の信念は曲げない強かなタイプ。

 

鶴見

わざと七海にベタベタしてつきちまに妬かせて楽しんでる。鼻へのキスの意味は愛玩。

椿の花言葉(完全な愛、理想の愛)を知っていてにんまり。

男どもと違って七海が心酔してくれないことには気付いていて、ちょっと残念。

地道に頑張るかな〜。

 

月島

背中の傷は気合いで治した。気合いじゃ負けない鬼軍曹。

まんまとつるちゅに嫉妬したよ。かわいいね。

結月が俺の子を・・・?と色々妄想しちゃった。

 

宇佐美

つるちゅに抱き締められてる結月を見て新たな扉を開いた。

呪術に関しては、ふーん程度。

 

尾形

ちゃっかり医務室から一部始終を見てた。

アイツ、花咲かじいさんだったのか。

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