白蛇は月の夢を見る   作:金色のくじら

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サボっていた分ペース上げて更新しました。
月島さんと距離が近付く回です( 'ω')
ここは全年齢対象なので、えっちいバージョンを別シリーズで作りました。

次回はやっとアシㇼパ陣営と対面する予定です!

匿名感想箱作りましたので、コメントいただけると嬉しいです(*´`)

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以下本文ネタバレ







tuki.さんの「地獄恋文」は明るいテンポですが、地獄で会いましょうと約束する深い曲です。
阿鼻地獄行きの二人にはもってこいの曲だと思いました。
地獄には色々と種類があるそうですが、一番業の深い人が行く場所が阿鼻地獄だそうです。
沢山の罪を重ねた人が行く場所ですが、親殺しは無条件で阿鼻地獄行き。
この二人は2000年かけて堕ちてゆくのでしょう。





第六話

 

───私の呪術の能力は、生き物や物体の強化と持続だ。

 

三線を奏でることで発動する。

 

 

雪山では火の持続、椿の開花は生命力を強化した。

強化と持続は同時に出来るが、ものすごーーく疲れる。

最近じゃ兵営から出られないから旅をしていた頃と違って体力も落ちてしまい、片方使うだけでも眠くなる。

気は進まないけど兵士の訓練にお邪魔してみようかと考えている今日この頃。

 

 

・・・もちろん宇佐美さんがいない日に。

 

 

 

八年修行してやっと扱えるようになったこの能力。

他にも使える力はあるのだろうが、柘榴は身の丈にあった術しか教えてくれない。

 

 

 

 

 

 

 

・・・そして、この術を扱うのに重要なのは"想像力"だ。

 

 

『だから術をかけたい対象だったり、効果に因んだ唄で想像力を膨らませるんです』

「なるほど・・・実に美しい歌声と能力だね。君には驚かされてばかりだ」

『術が使えるようになるまで苦労しましたよ。最初は柘榴の実体化も一時間と持ちませんでしたから』

 

『懐かしいね』と心の中で呟くと、柘榴が三線から離れて首に巻き付いてきた。

 

 

長いこと相棒をやっているので、柘榴の思ってることは何となく分かる。

こちらが思っていることも大体伝わっているし。

普段は喋ってくれないが、何か伝えたい時だけ言葉を使ってくれる。

 

・・・気まぐれにしかしてくれないけど。

こちらの都合などお構い無しなのは神様らしいなと思う。

 

 

「努力したんだね」と鶴見さんは私が作ったタンナファクルーを食べながら、にこりと笑った。

 

以前故郷のお菓子の話をしたら鶴見さんがわざわざ黒糖を取り寄せてくれたので、師団の皆に振る舞うと意外と好評だった。

 

月島さんは無表情だけど、三個目に手を伸ばしている。

たくさん作っておいて良かったなぁ。

 

 

 

嗅ぎつけた宇佐美さんが炊事場に乗り込んで来た時は追い払うのに苦労したけど。

 

宇佐美さんも流石に私に金的されるとは思わなかったらしい。

悔しいことに当たらなかったが。ほんと悔しい。解せぬ。

 

急所を狙われたのにも関わらず宇佐美さんの時重くんが興奮し始めたので、もうどうしていいか分からなくなってきた。

 

 

 

遠い目でそんな事を考えていると、鶴見さんが「さて」と真剣な顔で話を切り出した。

 

 

「これから本格的に敵対勢力とやり合うのだが・・・そのためにある人物に接触したくてね。協力してくれるかな?」

『はい・・・私に出来ることなら』

 

断る事なんかさせない癖に。

 

「そう言ってくれて嬉しいよ。・・・ある剥製屋に刺青人皮の偽物を作ってもらおうと思っていてね。結月の三線は珍しい白蛇の皮で作られているだろう?興味を引くかもしれん。なんせ軍人だけで近付くと一般人は警戒するからな」

 

 

 

分かる。

最初本当に怖かったもん。

 

 

 

・・・相変わらず鶴見さんは凄いことを思い付くなぁ。

偽物で惑わせる事が出来れば、かなり有利に立てるもんね。

ほんと、油断ならない。

 

 

この三線は逸品だし、価値が分かる人なら関心を持つだろう。

会話のきっかけとしては十分なはず。

 

 

 

 

 

村の外れにある"御嶽"に祀られていたこの三線。

いつの時代から存在するのかは分からないけど、付喪神が宿るくらいだからとても大切に使われていたはずだ。

 

私と過ごす時間なんて柘榴からしたら刹那の出来事なんだろうが、この命が尽きるまで唯一無二の相棒を大事にしたい。

 

その思いが伝わったのか、柘榴は私の頬を長い舌でちろりと舐めた。

 

 

 

 

 

「・・・その前に、私は諸用があるから少し留守にするよ。月島軍曹、結月を頼むぞ」

 

二人は知らされていなかったが、鶴見はこの後鰊御殿へ向かう。

 

 

 

鶴見さんは立ち上がって部屋を出ようとしたが、「あぁ、そうだった」と何かを思い出したように振り向いた。

 

「君の部屋が焼けてからしばらく医務室の隣で寝泊まりしていたね。怪我人とはいえ兵士が何人もいる場所に女性を寝泊まりさせるのは宜しくない。だから新しい部屋を用意したんだ」

 

そう言って月島さんを見てニヤリと笑った。何故か月島さんは気まずそうな顔をしている。

 

 

『・・・?』

 

 

 

「ただ、残念な事に部屋数が足りなくてね・・・・・・そこで月島と同室で頼むよ」

 

 

『えッ・・・?!』

 

「月島軍曹なら安心して任せられるからな。ささやかだが贈り物を置いておいたから、今から見に行くといい」

 

鶴見さんは満面の笑みで私にウインクすると、颯爽と立ち去ってしまった。

 

私は訳が分からずしばらく言葉を失っていたが、沈黙を破るように月島さんが咳払いをした。

 

 

「・・・すまんがそういうことだ。部屋に案内する」と軍帽を深く被り直し、私の顔を見ないままどんどん歩いて行ってしまう。

 

 

えー・・・、絶対部屋余ってるよね?

監視強化するって事なのかな。

月島さんなら安心って・・・どういうこと?

 

 

『待ってくださ〜い』と追いかけながら、彼の何が安心なのかを考えてみる。

 

 

 

 

・・・そして、一つの答えを導き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────月島さんて、男色だったのかッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

確かに鶴見さんと私が話してる時、険しい顔してたりするもんね!

 

ほぉーん、そういう事だったのかぁ。

 

鶴見さんの美しさは人を狂わせるな〜。

 

何故か宇佐美さんの恋する乙女の顔が頭を過ぎったので、思わず吐きそうになる。ヴェッ。

 

 

 

 

 

あれ?・・・って事はもしかして私、月島さんに泥棒猫だと思われてる?!

やだぁ、誤解だよッ!!

 

 

 

 

 

 

部屋の前まで来てやっと止まった月島さんの前に回り込み、肩をポンポンと叩いた。

 

 

『私はそういうの理解ありますから!!』

 

 

 

 

 

月島さんはいつも以上にグッと眉間に皺を寄せた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

・・・こいつ、何か勘違いをしてないか?

 

よく分からんが誤解を解かないといけない気がする。

 

 

 

七海を案内した部屋には寝台が二つ置いてあり、上官の言うことが冗談ではなかったと頭を抱えた。

 

彼女はふんふーんと鼻歌を歌いながら、鶴見中尉殿からの贈り物を解いている。

 

・・・何故そんなに能天気なんだ。

 

 

確かに医務室で寝泊まりさせるのはどうかと進言したのは自分だ。

 

この状況は先日、鶴見中尉殿に七海を嫁にどうかという話からお膳立てをしているのは間違いない。

 

しかし、何がどうなって同室になるのだ。

 

 

 

 

 

『見てください!着物にウチナースガイまで!!』

 

彼女は鮮やかな色の着物を身体に当て、姿見鏡の前でくるくると回っている。

 

『ウチナースガイは故郷の民族衣装なんですよ〜』とこちらを向いて無邪気に笑った。

 

 

・・・俺の気苦労も知らないで。

良く似合っているのがまた腹立たしい。

 

 

南の出身の人間が楽観的というのは案外的を射ているのかもしれん、と喧しく若い上官を思い浮かべて更に頭が痛くなった。

 

 

 

 

『泡盛なんて久しぶり〜!今夜は酒盛りですねっ!月島さん!!』

 

 

 

 

・・・誰かこいつを止めてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして結局、酒盛りに付き合ってしまっている。

 

 

『月島さん、泡盛美味しいですか?』

「あぁ、美味いが強い酒だな。お前平気なのか?」

『沖縄の女は酒に強いんですよ。蟒蛇ってやつです!蛇女だけに!!』

 

そう言って残り少ない酒を盃に注ぎ、最後の一滴まで残さないようにと酒瓶を逆さにして振っている。

 

 

こいつ、一人で一升瓶開けやがった。

 

上機嫌でクツクツと笑っている七海の褐色の肌は少しだけ赤らんでいる。

 

それで微醺程度とは・・・恐ろしい奴だな。

 

 

「全く、程々にしておけよ」

 

七海は『はぁい』と不満げに返事をして頬を膨らませた。

 

・・・こうして見るとまだまだ子供だな。

 

「若いうちから酒を覚えると陸な事にならんぞ」

『あー!子供扱いしましたね!二十三歳は立派な大人ですよ!!』

 

「・・・は?」

 

十代くらいだろうと思っていたので、驚いた声がつい出てしまった。

女性の年齢は見た目で分からんな。

 

それでも俺と十も離れているじゃないか。

 

『うふふっ、もっと若いと思ってました?』

「あぁ、子供じみてるから余計そう見えるぞ」

『酷いッ!!』

 

そう言いながらも楽しそうにケラケラ笑っている。

 

 

・・・不思議だ。

彼女の屈託のない笑顔を見ていると、親を殺し毒蛇を従え呪術を使うとはまるで思えない。

その能力と引き換えに、普通の女性のように生きられず苦労したのは容易に想像出来る。

 

 

 

『月島さん?』

 

無意識に見つめてしまっていたのだろう。

慌てて顔を逸らすと七海が首を傾げていた。

 

 

 

 

 

 

・・・七海の心の奥底に触れてみたい。

 

どうしてその能力を授かったのか。

彼女も俺と同じように大切なものを捨ててきたんじゃないだろうか、と。

 

 

 

・・・こんな事を考えてしまうのは酔いが回ったせいだろう。

俺は全てを酒のせいにして、ついに言葉にして吐き出した。

 

 

 

「その・・・能力が疎ましいというか・・・そういう様に思ったことはないのか?それが無ければ普通に生活して、いい人と結婚したり・・・なんと言うか別の道もあったんじゃないか?」

『・・・そうですね。初めはなんでこんな事になんて思ったりもしましたよ』

 

そして七海は目を伏せて『少し昔話をしてもいいですか?』と呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『柘榴と出会ったのは"御嶽"でした』

「御嶽?」

『聖域のような場所です。沖縄では村ごとに御嶽があって、絶対に入ってはいけない場所なんです。・・・でも病気の母に薬を作りたくて、そこに生えている薬草を摘むために御嶽に入ってしまったんです。そこに祀られていたのがこの三線でした。三線から柘榴が現れて話しかけられた時は腰抜かしましたよ。御嶽に勝手に入ったから祟られるんじゃないかと思ったし』

 

そう言って七海はクスクスと笑った。

そりゃあそう思うだろうな。

 

『だけど呪われたりそういったことはなくて、柘榴は長いこと御嶽に祀られて誰にも弾いてもらえないことを嘆いてました。気の毒に思って三線を弾いたんです。そしたら柘榴に気に入られたみたいで・・・連れて行ってくれるのなら力を授けてやるって言われたんです。私は母の病気を完治させる薬が作れるようになりたいとお願いしました。それが始まりだったんです』

 

自分の為じゃなく母親の為か。

自分より他者を優先する七海らしい理由だった。

 

『柘榴の力で母の病気もすっかり良くなって・・・幸せでした』

 

 

 

 

 

『父が・・・薬が高値で売れることに味を占める様になるまでは』

 

七海は急に険しい顔をした。

 

『父は元々浪費癖はありましたが、非道な人では無かったんです。でも薬の価値を知ってからどんどん歯止めが利かなくなっていって・・・私に毎日大量の薬を作らせました。何度も何度も逃げようとしましたが、薬は私の血を使っていたので逃げる体力も気力も無くなってしまって・・・それに薬を作れない日は折檻されて母にも会わせてもらえなくて、幼かった私は従うしかありませんでした』

 

下衆め。

父親が子にする事じゃない。

 

『それでも地道に母と逃げる計画を立てていて、それまで我慢しようと励まし合っていたんです。でも、決行の日に母と待ち合わせしていた海岸に現れたのは、母を拘束して首元に刃物を突き付けた父だったんです。そうして揉み合っているうちに・・・・・・私は怒りに任せて何度も父を刺しましたよ。それから逃げるように故郷を出て、今まで旅をしていたんです』

 

「・・・そうか」

 

その殺意を俺はよく知っている。

 

 

 

『これ、見てください』

 

そう言って七海は着物の裾を上げ、細く柔らかな足首を晒した。

 

「なっ、何してる?!」

 

 

すると足首には不思議な模様の入れ墨が彫られていた。

 

『これは"針突"と言って琉球に伝わる入れ墨です。本来なら手の甲に入れるんですが、私が入れる年頃に政府から禁止令が出されて・・・それでも針突を入れた女っていうのは憧れだったから、ここにこっそり入れてもらったんです』

「これは、五芒星か?」

『そうです。この模様を入れると極楽に行けるって言われてるんです。・・・皮肉ですよね、私は親殺しだから阿鼻地獄行きなのに』

「・・・俺もお前と同じだ。親殺しをしたから阿鼻地獄行きだ」

 

そう言って自身の過去・・・駆け落ちしようとしたあの子のこと。

あの子を使って鶴見中尉殿が手間のかかった芝居をしていたことを打ち明けた。

 

 

『そう、だったんですね・・・。その人は今どうされているんですか?』

「さぁな」

『月島さん、私達阿鼻地獄行き仲間ですね。そこでも私のお世話係、してくれますか?』

「勘弁してくれ」

『それでも先に逝ったら待ってますね、月島さん』

 

そう言って七海は俺の右手を握った。

 

「俺が先に逝ったらどうするんだ?」

『お世話係がいないと困るんで全力で探しますよ。それに、世界一のおにぎりが食べられなくなっちゃうじゃないですか』

「何だそれ」

『私ね、自分でもう一つ別の場所に入れ墨彫ったんです。飛んで行って戻って来ない弓矢の形。・・・進み続けるって意思表示です。母が言ったようにこの力を授かったのにはきっと意味があるはずだから・・・私はそれを見つけたい』

 

もう一つの入れ墨は何処に彫ったのだろうか。

知りたい。俺に全てを見せて欲しい。

思わず口から出そうになった言葉を飲み込んだ。

 

「・・・入れ墨、七海に似合ってる。綺麗だ」

『そう言われたの初めてです。月島さんって変わってますね』

 

そう言って七海は目を細めて笑った。

 

 

『一曲、聴いてくれますか?』

「あぁ、聴かせてくれ」

 

 

~♫

 

『地獄で会いましょう 貴方も私も悪い人だ

ひとつになんてさ なれないけど愛してる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先に逝って欲しくなんかない。

逝く時は一緒に堕ちたいと告げたら、お前はどんな顔をするんだろうか。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

いつの間にか眠ってしまった七海を抱き上げて、寝台にそっと寝かせた。

 

ギシッと七海が沈んだ音が静かな部屋に響く。

 

あどけない顔に吸い寄せられた指が、彼女の柔らかい肌をなぞって唇へ向かった。

 

 

・・・七海に笑顔を向けられ触れる度、どんどん欲深くなっていく。

 

願わくば、この気持ちに気付いて欲しい。気付かないで欲しい。

このまま彼女の身ぐるみを剥がし、思うままに食い尽くしてしまいたい。

そんな身勝手な感情に突き動かされて、月島は七海に跨った。

 

『んぅ゛・・』

 

苦しげに呻いた七海の声に引き寄せられ、味わうように唇を食んだ。

 

はだけた胸元を見やると、もう一つの針突が心臓の位置にあった。

彼女の胡桃色の肌に良く似合う漆黒の印。

鏃は内側へ向き、射れば彼女の胸に突き刺さるだろう。

 

・・・これが彼女の覚悟の証か。

 

 

美しいそれに唇を重ねて呟いた言葉が、行く宛てもなく彷徨う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・結月、好きだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それを聞いているのは、窓から覗く月だけだった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

七海結月

勘違いした人。

金的の練習を月島に付き合わせて渾身の一撃をモロに当てた。

 

月島

勘違いされた人。

金的はなかなか痛かった11位の男。

 

鶴見

えっ、そっちに勘違いしちゃったの?

この後、七海が会う度に月島と交互に自分を見て頬を染めるので焦った。

 

宇佐美

金的されそうになった人。

それはそれでヒヒンッとなっている。

隠れてタンナファクルーを5個持ち去り、尾形の前でこれ見よがしに全部食べた後、おまるで殴られた。

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