白蛇は月の夢を見る   作:金色のくじら

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やっと江渡貝邸まで追いつきました!
次回八話はハーメルンのみ掲載しますよ〜。
ぜひ見てください 
◇ハーメルン
https://syosetu.org/novel/366303/

黒はんぺんを美味しいですよね。明治時代にはあったのかしら?
美味しいので食べる機会があればぜひ食べて欲しい!!
フライも美味しいですよ(*´༥`*)♡

匿名感想箱作りましたので、コメントいただけると嬉しいです(*´`)

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第七話

 

 

 

幾分か寒さも和らぎ、寒がりな七海が常に巻いていた襟巻きを外した今日この頃。

七海は始業前に、医務室の窓を開けて暖かな日差し感じていた。

 

褐色美女が目を閉じて緩やかな風に髪を靡かせている姿は、さながら少女世界に登場する主人公の様だった。

 

 

 

 

 

 

それは、五秒後に台無しになる。

 

『・・・ギャッ!!』

 

目を開けたら目の前にホクロが二つ。

 

七海がとても年頃の女とは思えない声をあげたのを横目に、窓から侵入してきたのは宇佐美だった。

 

 

 

 

 

 

 

「お前、月島軍曹と寝たの?」

 

朝っぱらから何言ってんだ、この同担拒否過激派変態男め。

 

 

七海は最近、宇佐美に敬語を使うことをやめた。

 

 

『・・・同じ部屋だから、一緒の部屋で寝たことにはなるけど?』

「そういうんじゃない。〇〇〇とか〇〇〇〇したかって聞いてるんだけど」

 

とても全年齢の読者様に聞かせられない単語が出てきたので、時重くんを目掛けて足技を繰り出す。

それをひょいっと交わされてしまったので地団駄を踏んだ。

 

『キイイイィー!!!』

「ふーん、その分じゃ寝込み襲われただけか。こんなにいっぱい痕付けられちゃって・・・」

『あぁ、これね。なんか朝起きたら虫に刺されてたみたい。ダニかもしれないから防虫剤作ろうと思って』

 

 

 

 

 

そう言って、七海は今朝の月島との会話を思い出した。

 

 

──────今朝

 

「七海、起きろ」

『あれ?いつの間に布団に・・・月島さんおはようございます〜』

「酔っ払って床に転がっていたから運んだ」

『さっすが、みんなの母!ありがとうございます!!』

「せめて父にしてくれ・・・」

『すぐ支度しますね〜』

 

ぼやいている月島を華麗にスルーした七海は、姿見の前で髪をゆった。

 

『・・・あれ?首元、虫に食われてる。月島さんは無事ですか?』

 

心当たりしかない月島は、七海の声に一瞬ビクッとした後、サッと顔を逸らした。

 

「あー・・・、俺は平気だ。酒の匂いに釣られて悪い虫でも出たんだろ。目立つから今日は髪を下ろしておいた方がいい」

『むぅ、そうですね。・・・はぁ、せっかくの新しい部屋なのに。防虫剤作らなきゃ』

 

 

そういえば、心無しか今日の月島さんの起こし方はいつもより穏やかだったな。

基本、起床ラッパと共に布団を剥がされていたので。

 

鬼軍曹も二日酔いには勝てないのか。

 

 

 

 

──────回想終了

 

 

 

 

『・・・・・・っていうか月島さんがそんなことする訳ないじゃん。だって・・・ほら、女の人に興奮しないっていうか・・・なんていうか・・・』

 

・・・確かに駆け落ちしようとしたのは女の人だけど。

鶴見さんの美貌や諸々に狂わされて、男の魅力に気付いちゃったという七海の妄想は止まらない。

寧ろ捗っている。

 

「あはっ!何それ、そんな面白いことになってんの?月島軍曹殿も気の毒だね〜」

『え?男色じゃないの??』

「まぁいいや」

 

いつの間にか至近距離にいた宇佐美にツゥーっと首筋を撫でられて、身体が小さく跳ねた。

 

「馬鹿でかわいいね、お前」

 

目を細めた宇佐美は、首筋から滑らせた手で七海の後頭部をがっしり掴み、ゆっくり顔を近付けた。

そして、ちゅっと短い音と共に唇に何かが触れて離れた。

 

 

 

え、あっ・・・いまなにされた??

 

「僕以外にちょっかい掛けられないようにね。鶴見中尉殿からお前を娶る様に言われてるんだから」

 

七海は、宇佐美の満面の笑みで何をされたのかやっと理解し、耳まで真っ赤に染めた。

 

『ちょッ!何すんのよ!!』

 

金的二発目は風を切っただけであった。

 

「あはは!ご馳走様〜」

 

 

爽やかに去って行く後ろ姿をぼーっと眺める。

 

この歳でカマトトぶるつもりは無いが、アッサリ奪われた初めての口吸いに驚きを隠せない。

初めては良い雰囲気の中、手を繋いで・・・とか憧れてたんだぞ。

こんなでも一応、女子なので。

 

 

実際に初めてを奪ったのは月島だが、七海がそれを知る由はない。

 

 

 

『娶るってなに・・・』

 

 

 

行き遅れとしても意地がある。

顔しか好みじゃない奴と結婚するのはやめておけ、と母から散々言われていた。

そして、私にじゃじゃ馬過ぎる宇佐美は乗りこなせない。

 

端的に言うと無理。

 

 

 

 

 

・・・奴を選出した鶴見さんに金的を食らわせる日は近いぞ。

七海はきつく拳を握り締めた。

 

 

 

 

鰊御殿からの帰り道、鶴見は謎の悪寒に身震いしていた。

 

「今日は何だか冷えるな・・・」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

私は今、墓地で耳を狙われている。

何を言っているのか分からないと思うが、私にも意味が分からない。

 

「七海の耳はちっさすぎるし色も違うなぁ・・・。でも、焼いた黒はんぺんみたいで美味しそう」

 

あれ美味しいよね。

七海は以前静岡に立ち寄った時、焦がし醤油を絡めた黒はんぺんの虜になった。

 

・・・って、そんな黒くないわ。失礼な。

 

そして二階堂さんは「いただきま〜す」と口を開けて、私の右耳に近寄って来た。

 

『ちょッ!』

「やめろ二階堂」

 

月島さんが、二階堂さんの手をパシンと払ってくれた。

 

 

「軍曹酷い!食べたかったのに・・・。う〜ん、洋平の耳はやっぱり鶴見中尉殿かな?そっくりなんですよ。鶴見中尉殿の左耳いただけませんか?片っぽじゃ可哀想です!」

「わかったわかった、私が死んだらくれてやる」

 

靴下片っぽちょうだいみたいに言わないで??

自分の耳が食べられなくて安心したけども。

 

 

・・・少し前に、二階堂さんは造反者として捕らえられた。

耳が削ぎ落とされていて酷い出血をしていたが、「裏切り者に貴重な薬をくれてやるつもりは無い」と鶴見さんがキッパリ言ったので、私が作る薬を使う事を禁じてモルヒネを使い続けている。

 

・・・やはりそのせいで弊害が出ているようだ。

幼い言動を繰り返して会話が成り立たない事も多い。

モルヒネ使用前は取っ付き難い印象だったが、使用後は「七海〜、みかん一緒に食べよ〜」なんて甘えてくるので、私の指先は度々黄色くなっている。

けれどたまに正気に戻ると「スギモトぶっ殺してやるッ!!」と暴れ出すので、抑えるのには苦労していた。

 

『二階堂さん、月島さんの耳の方が弾力あって美味しそうだよ?』

「俺を売るな。・・・ん?!鶴見中尉殿・・・!」

 

月島さんが何かに気付いたらしく、前を向いた。

 

「ホントですか?鶴見中尉」

 

二階堂さんは、鶴見さんの耳を予約出来たのが嬉しかったのか動いてしまい、パキッと足元の枝を踏み付けて墓荒らしに気付かれてしまった。

 

『あっ!逃げちゃう!』

「追え」

「殺すなよ二階堂ッ!」

 

走り出した二人の方へ向かおうとしたが、何かを踏んだ感触がして足元を見る。

 

『?・・・鶴見さん、何か落ちてます』

 

それは、不思議な手触りの手袋だった。

 

「・・・落し物だ。届けてやろう」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「江渡貝剥製所・・・ここだな」

 

鶴見さんが戸を叩くと、爽やかな青年が顔を出した。

剥製屋としか聞いていなかった七海は、もっとおじ様を想像していたので驚いた。

 

「はい・・・何か御用ですか?」

「お早うございます。こちらで剥製を扱っていると聞いてやってきたのですが・・・江渡貝弥作さん?」

「・・・ええ、そうです。あ・・・では中へどうぞ!たくさんありますので」

「失礼、申し遅れました。私は陸軍第七師団二十七聯隊中尉の鶴見篤四郎です。彼女は第七師団専属薬師の七海結月です」

『はじめまして。七海結月です』

 

いきなり軍人が来たら怖いよね。

少しでも警戒心を解くことが出来たら、と七海はにこりと笑った。

 

「第七師団の迎賓館に飾る剥製を探すのと、その余興に彼女がこちらの楽器を使うのですが、なんせ年代物でして・・・張られた蛇皮の手入れ方法を聞きたくてお邪魔したのです。・・・噂通り素晴らしい出来栄えで目移りしますな」

 

二人は目の前に広がる剥製の数々に目を見開いた。

 

『すごい、シロクマまで!私、初めてです!』

「皮だけ輸入してこっちで作った"芯"に被せたりもしますよ」

『へえぇ〜!工夫して作られているんですね!!』

「へへ、ありがとうございます」

 

そう言って、江渡貝さんは照れた様子で他にも剥製を紹介してくれた。

 

「この楽器・・・三線ですか?一度見たことがありますが、茶色いニシキヘビが一般的だったような・・・こんなに美しい蛇の皮は初めて見ますよ!」

 

だって、良かったね。

心の中で呟くと、嬉しかったのか柘榴は私の懐でモゾモゾと動いた。

 

『うふふ、私の自慢の相棒なんです』

「作り方が丁寧だ。腕の良い職人の作品ですよ。きっと音も素晴らしいんでしょうね。是非後で聞かせてください!」

『もちろんです!流石、芸術家の目は肥えていますね』

「こういう作品に出会うと感性が刺激されて嬉しいですよ。そうだなぁ・・・手入れは油を薄く塗るといいです。乾燥と湿気は大敵なので気を付けて。・・・でも使い込まれている割に状態が良いですね?不思議だな・・・何年くらい使っているんですか?」

 

傷一つない三線を見て、江渡貝さんは訝しげな顔をしている。

やべっ、付喪神の付いた物は使えば使う程状態が良くなる。

どうしたものか。

 

 

 

 

「ん猫ちゃん!猫ちゃん!!」

 

いきなり鶴見さんが声を上げたので、びっくりして机の上を見ると、髪の毛を生やしたような模様の猫ちゃんがいた。

 

・・・今の内に話逸らそうっと。

 

『かんわいい〜!』

「ああ、そいつはネズミ対策で飼ってるんです」

『優秀な猫ちゃんなんだね。よしよーし』

 

顎を撫でると手にスリスリとしてきて悶える。

きゅんっ。

 

 

この子を見ていると、嫌味ばかり言う天邪鬼な猫ちゃんを思い出す。

はぁ・・・尾形さんもこのくらい懐いてくれたら可愛いのに。

 

二階堂さんと共に造反者となり、行方が分からない尾形さん。

 

一体、何処で何してんだか。

 

裏切り者と言えばそうなんだけれど、病室で唄に聞き入っていた彼を思うと無性に寂しくなった。

 

・・・顎の傷、ちゃんと治してあげたかったのにな。

 

そんなことを考えて湿っぽくなっている内に、鶴見さん達は奥の部屋に行ってしまったらしい。

慌てて奥の部屋に進んで行くと、衝撃的過ぎる光景が目の前に広がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「江渡貝くぅぅん!!」

 

 

ゔえぇ〜。

刺青人皮を見慣れてこういうのにも多少耐性がついてきたけど・・・今にも動き出しそうな人間の剥製がいちにーさんしぃ・・・・・・やっぱ数えんのやめよ。

 

そして、刺青人皮を披露している鶴見さん。

宇佐美がよくする表情で鶴見さんを見る江渡貝さん。

 

んんんッ!情報量が多い!!

 

江渡貝さんが鶴見さんの着ている刺青人皮をサワサワし、珍衣装お披露目会が始まったところから考えるのをやめた。

 

 

うん、私要らなかったみたい!

散歩でもしてこよーっと!!

 

こっそり魔窟を抜け出して、外の新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込んで歩き出した。ふう。

 

そうして、近くの空き家で待機していた月島さんに声を掛けられたので、先程の事を話すと同情の目を向けられた。

 

 

 

『わぁ、鶴見さん達踊ってる〜。・・・私達も踊っときます?』

「やめろ、七海までおかしくなるな・・・」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

それから、江渡貝さんの偽物作りを見守る日々が続いた。

彼は、心酔している鶴見さんに会えないことで度々癇癪を起こすので、励ましているが中々思うように進まない。

 

「くそうッ!出来ないッ!僕には出来ないようッ!!」

『そんなこと無いって!こんなに素敵な剥製作れるんだからきっと出来ますよ!私、フクロウの翼広げた剥製とか好きだなー!めちゃくちゃ格好良いし!!』

「そうだぞ、がんばれよ江渡貝くん。集中集中!」

 

そう言って無表情で手をパンパンする月島さん。

 

・・・いや、励ますの下手か。

 

 

月島さんの耳元に口を寄せて『もっと褒めてあげてください』と小声で言うと、何故か月島さんの耳が赤くなった。

 

えー・・・、まさか江渡貝さんも好みなの?

鶴見さんという者がいながら、この浮気者めッ!!

 

『月島さん、余所見は良くないですよ』

「・・・何の話だ?」

 

 

「そこの二人!イチャついてないで鶴見さんを・・・よん、でき、てッ!うわあああん!!」

 

 

 

イチャついてないし。

はぁ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ねぇねぇ、江渡貝さん。鶴見さんのお髭はもうちょいクルンってしてますよ』

「流石七海さん!鶴見さんの事ちゃんと見てますね!・・・こうかな?」

『うんうん!いい感じ!!』

 

 

 

唄と剥製。

ジャンルこそ違えど、"表現をする者"という括りの二人は、意外にも馬が合っていた。

 

 

 

七海が江渡貝の扱いに慣れた頃『気分転換に鶴見さんの剥製でも作っちゃう?』なんて提案したら爆速で作り始めた。

 

とりあえず、鶴見の話題を振っておけば機嫌が良くなるので、それに加えてしっとりとした唄を歌って癇癪落ち着かせるのが最近のあやし方である。

 

 

「江渡貝くん・・・そんなの作ってないで仕事しなよ」

 

ちょっとおぉぉ?前山さん?!

あやした傍から何言っちゃってんの?!?!

 

「酷い!せっかく作ったのにッ!鶴見さんに!!あや、まってッ!!わああんッ!!」

 

ああ〜!もう〜ッ!!

 

七海はやっと赤ん坊を寝かしつけた後、夫が物音を立てて起こしやがる現象を想像して、心底苛立った。

 

故郷で近所のおばちゃん達が、この話題でよく愚痴をこぼしていたが、こういう事だったのか。

・・・そりゃあ腹立つわ。

 

『ちょっと前山さん?!せっかく江渡貝さんのやる気が出てきたのに、余計なこと言わないでくださいッ!!』

「あっ・・・ごめんね・・・」

 

前山さんはしまったというような顔をしたが、もう遅い。

 

『もうっ!責任とって江渡貝さんのやる気装置を探してくださいよ!』

「分かったよぅ。七海さんはお風呂行きたいんでしょ?先に行ってきていいよ」

 

七海は単純なので、お風呂と聞けば機嫌が良くなった。

 

『ふんっ・・・・・・じゃあ遠慮なく。月島さんもちょーーっと香りがアレなんで、一緒に行きましょ!』

 

七海は月島をグイグイ引っ張って、歩き出した。

言うまでもなく、月島の耳は真っ赤である。

 

「こら七海、そんな引っ張るな」

『月島さん早く〜!』

 

 

 

 

 

 

「・・・前山さん、あの二人は恋仲なんですか?」

「そうじゃないらしいんだけど・・・怪しいよねぇ」

 

その後、前山は江渡貝と恋のお話で盛り上がっていた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

『月島さん、お饅頭売ってるよ!帰りに江渡貝さんに買ってってあげましょうよ〜。そんでついでに私にも買ってください!』

「ついでじゃなくて自分が食べたいだけだろ」

『あ、バレました?』

「人を財布にしやがって。・・・・・・む、しまった。財布忘れた。七海、小銭持ってるか?」

『持ってませんッ!!』

「自慢げに言うな。お前、最初から強請る気でいただろ?」

『えへっ☆』

「はぁ・・・銭湯の前で待っててくれ、すぐ戻る」

『はぁい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、しばらくしても月島さんは帰って来なかった。

 

遅いな〜〜。

早く風呂入りたいな〜〜〜。

 

待ちぼうけて暇すぎた七海は、月島に似た犬の絵を地面に描き始めた。

 

 

・・・やばい、私天才すぎる。

(七海は絶望的に絵が下手です)

 

 

 

 

「母ちゃん見てあれ!シロクマがいる!」

 

七海が自身の絵に芸術性を見出して震えていると、子供の声が聞こえてきて顔を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

シロクマ?

・・・って江渡貝さん?!

 

遠くでシロクマの剥製を着た江渡貝さんが、炭鉱の方へ走って行くのが見えた。

 

なんでシロクマ??

 

とりあえず追いかけると、誰かに銃を向けられた江渡貝さんを、トロッコに乗った月島さんが救出していた。

そのまま坑道に入って行くので、どうしようかと困惑していると、これまた二人組がトロッコに乗って後を追いかけて行った。

 

あれって敵対勢力ってやつ?

それなら結構マズいんじゃ・・・

 

そして、また後ろからトロッコに乗った男が一人通り過ぎて行った。

 

 

あれ?

あの後ろ姿って・・・

 

 

 

 

と、とにかく私も追いかけなきゃ!

すぐさま空いているトロッコに乗り込んで坑道に入ると、金属が焼けた臭いがした。

 

「・・・?」

 

 

「嬢ちゃん危ねぇぞッ!!」

 

 

 

炭鉱のおじさんの叫ぶ声が聞こえたが、走り出したトロッコを止められない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────バアアアァァン!!!

 

 

 

 

『あ"あッ!!』

 

凄まじい轟音と共に身体が吹っ飛ばされた。

地面に叩きつけられて、あまりの痛みに頭がクラクラする。

 

 

 

 

ゔぅ・・・からだ、い"だぃ・・・

 

痛みに耐えていると、柘榴の声が聞こえてきた。

 

"急げ、またハレツが来るぞ"

 

何とか腕を動かし、手探りで懐から気付け薬を口へ放って全身に力を入れた。

片足の骨逝ってる。

庇いながら這って前に進むと、瓦礫が傷と擦れて痛みが走るが、気合いで外に出た。

息を整えながら震える手で印を組むと、柘榴が現れて心配そうな顔をしていた。

 

 

 

・・・月島さん達はきっとまだ中にいる。

 

無理矢理立ち上がろうとすると、柘榴に制された。

 

"その身で行くのはやめておけ"

 

『でもッ!!』

 

"代わりに身体を貸してやる"

 

そう言って柘榴が私と額を合わせると、自身の身体からスーっと力が抜けて、視界が低くなった。

 

もしかして・・・と胴体を見ると、艶やかな鱗がキラリと光り、上を向くと私が目を閉じていた。

 

 

えっ?!こんな能力あるならもっと早く教えて欲しかった!!

 

・・・と思う反面、幽体離脱的な感覚は何だか気持ち悪い。

そして自身の身体から離れるのは、少々勇気がいるなと思った。

不思議と蛇の体を動かすのは問題なく、スルスルと前に進んだ。

 

 

 

・・・気合いじゃ負けない鬼軍曹だもん。絶対に生きてる!!

そう鼓舞して坑道の奥に向かった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「これを・・・鶴見さんに!!」

 

岩盤に足を潰された江渡貝は、持っていた鞄を差し出してきた。

 

「僕を初めて肯定してくれた鶴見さん。鶴見さんが僕に与えてくれた役目・・・ムダにしないでくださいね、月島さん」

 

役目・・・七海も言っていた自身の生きる意味。

江渡貝はそれを全うした。

死ぬ事が分かっているはずなのに、覚悟を決めた顔をしている。

 

「そしてこれは七海さんに・・・彼女は母と違って僕を否定しなかった。嬉しかったんです」

「・・・分かった。必ず渡す」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゲホッ・・・ゲホッ!」

 

早く出なければ・・・

 

 

這って出口を目指していると、前からスルスルと動くものが見えた。

 

 

あれは・・・柘榴・・・?

 

「ゴホッ・・・・・七海は、無事なんだな?」

 

柘榴は頷き、着いて来いと言うように俺の腕に尾を巻き付けて引っ張ってくる。

そのまま出口へ誘導されて無事に外に出たが、スーっと意識が遠のいてゆく。

最後の力を振り絞って、柘榴に江渡貝から預かった物を渡した。

 

「七海に渡してくれ・・・江渡貝から預かった・・・」

 

柘榴は冷たい体を俺の頬に擦り付け、細い牙で腕に噛み付くと、渡した物を口に咥えて立ち去った。

 

「待ってろ七海・・・すぐ行くから・・・鶴見中尉殿にもこれを渡して伝えねば・・・・・・」

 

しかし段々と瞼が重くなり、そのまま意識が落ちていった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

月島を外に誘導し、口に含ませておいた回復薬を牙を使って直接腕に流し込んだ後、七海は自身の身体の元へ向かった。

 

"長い時間自身の身体から離れると、そのまま死ぬぞ"

 

・・・なんて後出しで柘榴から言われたので、月島さんを置いていくのは後ろ髪を引かれる思いだったが、急いで戻った。

 

この術、柘榴が教えたがらなかった理由が分かったわ。

 

 

坑道で月島さんを探している途中に江渡貝さんの死体を見つけ、巻き込んでしまったと罪悪感に苛まれた。

彼は、金塊を追っていた訳でも囚人でも無い。

私達に関わらなければこんな事にならなかったのに・・・

 

私は今まで敵対勢力と直接やり合って無かったから、何処か他人事だったのかもしれない。

善良な一般人の命まで引き換えにして、貫かなければならない"大義"。

 

鶴見さんに協力すると決めたはずなのに・・・。

 

それがブレてしまう程、江渡貝の死は七海の心に傷を齎した。

 

 

 

 

自身の身体に戻り、月島さんから渡された物をよく見ると、それは指先の無い手袋だった。

素材は何を使っているのか分からないが、手首だけはフクロウの羽が縫い付けられていて、フワフワしている。

 

・・・フクロウ、格好良いって言ったから付けてくれたのかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

───────「江渡貝さーん。素麺茹でたから食べましょ!」

「ありがとうございます。・・・七海さん、手があかぎれになってますよ。楽器扱うなら手は大事にしないと・・・手袋とか持ってないんですか?」

「持ってないなぁ。指先使うこと多いし、いちいち外すの面倒だから・・・あかぎれなんてしょっちゅうですからね。ほら、早く食べましょ!」

 

 

 

 

 

 

そのやり取りを思い出して、涙が零れ落ちた。

だから、指先無いんだ・・・

 

ありがとう・・・江渡貝さん。

ごめん、ごめんね・・・。

 

冷たい手袋をギュッと握りしめて、月島さんの所に行かなきゃと立ち上がろうとするが、七海の疲労困憊の身体は意識を手放した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「ははぁッ!これは思わぬ拾い物だな」

 

尾形が坑道の外に出ると、トロッコの影に七海が気を失って転がっていたのだ。

ペチペチと頬を叩くが目を覚まさない。

 

しょうがねぇなと俵担ぎで抱き上げると、牛山達を見つけたので「そいつら連れてついてこい」と言って剥製屋の家に向かった。

 

「お前は確か鶴見中尉のとこの・・・なんで牛山と?ていうかその子誰?」

「そのかわい子ちゃん、さっき坑道の入口にいたぜ〜」

「別嬪な嬢ちゃんだな。胡桃色の肌が煤で汚れて可哀想だぜ。おい尾形、お前の女か?」

「違ぇよ。第七師団専属の薬師だ。鶴見中尉が攫って囲ってた」

「・・・?!・・・・・・って結月じゃないか!」

「アシㇼパさん、知ってるの?」

「あぁ!杉元に出会う前だったな・・・薬草を探している所を見つけたから、私が案内していたんだ。コタンにしばらく住んでいたんだぞ。最近見かけなくなったから、本州に帰ったと思っていたんだが・・・第七師団に捕まっていたんだな」

「コイツは連れていく。説明は後だ。第七師団が来る前にずらかるぞ」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「おい、兵隊さん大丈夫か?」

「結月ッ!!結月は何処だ!?三味線に似た楽器を持った、褐色肌の女性を見ませんでしたかッ!?」

「・・・その子なら外套着た兵隊さんが担いでったよ」

「尾形か・・・くそッ!!」

 

 

連れ去られた。

俺が七海を置いて行ってしまったせいだ。

彼女と離れるべきではなかったのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「月島、戻りました」

「御苦労。芸術家の本懐は作品を世に残すことだ。彼の命と引き換えた贋作の刺青人皮五枚。決して無駄には使うまい。・・・・・・で、結月はどうした?」

「炭鉱事故に巻き込まれて見失いました。・・・恐らく尾形が連れ去ったかと」

「厄介だな。あの能力に気付かれたらこちらが不利だ」

「申し訳ございません」

「取り返してこい。然もなくば・・・・・・・・・分かるな?月島」

「・・・・・・・・・はっ」

 

 

 

 

取り返せないなら殺してしまえ、という意味だろう。

俺にそんなことが出来るのか?

いや・・・今まで鶴見中尉殿の命令は、躊躇うこと無くこなして来たじゃないか。

今更・・・引き返せるほど俺は・・・・・・

 

目をギュッと瞑ると『月島さん』と微笑んだ七海の顔が浮かぶ。

 

 

 

・・・まずは七海を連れ去った男、尾形を殺す。

 

 

結月は渡さない。

俺と一緒に阿鼻地獄へ堕ちるのだから。

 

 

目を開き、叩きつける雨の中帰路についた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

七海結月

リアルに蛇女になった。

まだまだ力に伸び代があるジャ〇プの主人公のような夢主。

鶴見に金的をする前に、色々貢がれたから思いとどまった。

 

月島

まだまだ勘違いされている男。

江渡貝宅近くの銭湯は混浴だったのを知ってて着いて行ったスケベ軍曹。

七海を連れ去られて激重感情大爆発。

 

鶴見

金的される前に手を回して生きながらえた12位の男。

七海盗られちゃった・・・まだリクエスト曲歌ってもらってないし、ピアノとセッションもしたかったな(´・ω・`)

 

宇佐美

月島がいない時を見計らって、七海をおちょくって楽しんでいる。

七海を娶るのはやぶさかでない。だって鶴見中尉殿に褒められるから。ヒヒンッ!!

 

尾形

七海をゲット。

ここからは俺のターン!!(遊〇王)

 

二階堂

故郷の話が出来て嬉しくて七海に懐いている。

みかんのスジは取らないで食べる派。

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