白蛇は月の夢を見る   作:金色のくじら

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私はダイビングが趣味で、ちょっと前に沖縄に行きました。
そこでクジラの親子と泳いで、船にはイルカの群れが着いて来てくれるという奇跡が起こりました。

本当に素敵な場所ですよね。
またあんな奇跡に出会えますように。


以下ネタバレ







今回のイメソンは、King Gnuさんの「カメレオン」です。
姿を変える術というのと、『記憶の中の君と 今の君はどちらも真実で』とか『伝えたいこの想い それすら叶わないけど』という歌詞が夢主から月島さんへの心情の様で刺さりました。



第九話

 

 

 

樺戸に向かう途中でコタンを見つけ、少し休ませてもらうことにした七海達は、アイヌの作法を杉元から教えられてやっと家の中に通された。

 

 

 

 

 

 

「オソマ行ってくる!!」

『え、今〜??』

「もうオソマが出口まで来てる!!」

「んまぁ〜!下品ッ」

 

あらら、行っちゃったよ。

・・・家に入る前の様子が気になるなぁ。

便乗して行っとこ〜、と立ち上がろうとした七海の腕をグイッと尾形が引っ張った。

 

「蛇を出しておけ」

 

そのまま七海の耳元に口を寄せた尾形は、低声でボソリと呟いた。

七海は誰にも気付かれない様に後ろで印を組み、アシㇼパの後を追って外に出た。

 

尾形もアシㇼパの様子がいつもと違う事に気が付いたのだろう。

狙撃手として有能な彼は、性格も相まって少しの変化も見逃さず、用意周到だ。

それに対して、簡単に第七師団や尾形に連れ去られてしまった自身の注意力の低さに、嫌気がさす。

 

相手は第七師団だけじゃない。

刺青囚人は何処に潜んでいるか分からない。

そうなれば、これから戦闘に加わる事も多々あるだろう。

第七師団に囲われていた時とは違い、望んでアシㇼパといるのだから守ってもらってばかりではいけない。

私が出来る事と言えば、毒薬や柘榴を使っての後衛になるが・・・近接(金的以外)には自信がない。

柘榴を一日中出している力は無いし、呼び出すのは印を組まなくてはならないので、瞬時に反応出来ない。

 

・・・アシㇼパを守る力をつけなくては。

 

 

 

 

 

 

 

 

『あれ?アシㇼパは?』

 

こっちの方に歩いて行った気がしたんだけど・・・

 

『柘榴、何処にいるか分かる?』

 

柘榴はシュルシュルと奥にある家に向かった。

 

・・・何だか嫌な予感するな。

大体こういう時は当たるのよね。

 

すると突然、杉元達のいる家の方向からこの世のものとは思えない声が聞こえてきた。

 

「ゔぇろろろろごうろろろあ"あ"ッッ!!!」

 

あ、耳長お化け。

 

「アシㇼパさんをどこへやった!!」

 

杉元さんであろう怒号に、木々から鳥達が飛び立っていった。

 

ひぇっ、怖すぎ〜

近くで聞いたら漏らしちゃう。

 

と、とりあえずあちらは彼らに任せるとして・・・まずはアシㇼパの安全の確保が優先だ。

 

急いで柘榴の入って行った家へ向かうと、そこにはアシㇼパとちょび髭のおっさんがいた。

 

『アシㇼパ!無事で良かった!!・・・誰?このおっさん』

「結月!来てくれたのか!!コイツは私達が探していた熊岸長庵。この村にいる男達は、アイヌのフリをした囚人だ!!」

『例の贋作師か。で、集団で村の乗っ取りって訳ね・・・アシㇼパ、早く逃げよう!』

「待ちなさい、まだ見張りが・・・」

『大丈夫、毒で動けなくしたから』

 

入口から外を覗くと、頼もしい男達が偽アイヌらをバッサバッサと倒していく。

 

すごい・・・この人達が第七師団とやり合えるのは、圧倒的な強さなんだ。

今度稽古つけてもらおう。

 

・・・兎に角、今は私に出来る事をしなきゃ!

 

『今外に出ても巻き込まれる・・・助けを呼んでくるから、アシㇼパはここで待ってて!』

 

七海は、熊岸がアシㇼパに害を加えない様に手首を拘束して外に出た。

 

私だけじゃアシㇼパを守ってあげられない。

誰か呼んでこないと。

 

「待てッ!結月!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『杉元さんッ!アシㇼパは無事だから!こっち!!』

 

七海は近くにいた杉元に安堵し、声をかけて駆け寄ろうとした。

その瞬間、視線を感じて振り向いた先に、キラリと光る何かが見えた。

 

『?、杉元さ・・・・・・?!危ないッ!!』

「!!」

 

咄嗟に杉元を押し倒して庇った七海の太腿には偽アイヌが放った矢が刺さり、もう一本は熊岸の腹に刺さった。

 

『ゔあ"ッ!』

「ううッ!」

「結月!熊岸!」

「お、おい!大丈夫かよッ?」

「見せろッ!毒矢か?!」

 

杉元が矢筒に残っている矢を確認すると、矢尻には毒が仕込まれていた。

 

「・・・アシㇼパさん、これ毒矢だ」

「急いで矢尻を肉ごと取るんだッ!熊岸は腹に入ったか・・・」

 

杉元が銃剣を取り出し、七海の太腿に突き立てようとしたが、七海が震える手でそれを制した。

 

『だ、大丈夫・・・毒なら私には効かないから・・・それに杉元さん指先怪我してるし、毒が付いた矢尻には触らない方がいいよ。ゔっ、自分で取れるから・・・・・・』

 

そう言った七海は、懐から回復薬を取り出し飲み干した。

 

「何で・・・」

「どけ、一党卒」

 

尾形は杉元を押し退けて七海の着物の裾を捲り、躊躇なく矢尻を抜き取った。

 

『い"っだぁッ!!・・・っ・・・ゔぅ・・・、ありがとうね』

「・・・」

『熊岸は?』

「死んでしまった・・・結月に刺さったのも毒矢だったはずなのに・・・何故平気なんだ?」

『効かないのよ、毒』

「コイツが鶴見中尉に囲われていた理由がそれだ。回復薬は蛇毒と抗体のある七海の血を混ぜて作っていたらしい」

『薬飲んだからすぐ血も止まるし、大丈夫よ。・・・ていうかそれ、尾形に言ってないはずなのに誰から聞いたの?』

「宇佐美」

 

口軽いなぁ〜

 

「毒が効かない人間が存在するのか・・・だが、幾ら毒が効かないと言っても足をやられたんだ。少し休め」

『ありがとう、そうさせてもらおうかな』

「・・・七海、手ぇ出せ。持ち上げるぞ」

 

手を地面について立ち上がろうとすると、意外にも杉元が買って出たので七海は驚いた。

それと同時に、庇ったことで気を遣わせてしまったかと心苦しく思った。

不死身の杉元だもんね、私が焦って突っ込んで行かなければ避けられたかもしれない。

 

余計な事・・・したかも。

 

『ありがとう。杉元さん』

 

そのまま担がれると思ったが横抱きされたので、美丈夫にお姫様扱いされた経験など無い七海は、逞しい腕から伝わる体温の高さに動揺し、恥ずかしいやら情けないやらで杉元の顔を見ることが出来なかった。

 

「・・・何で俺を助けた?」

 

しばらく黙って大人しくしている七海に、杉元がこちらを向かないまま問いかけた。

 

『咄嗟に体が動いちゃって・・・邪魔しちゃったよね、杉元さんなら一人で倒せただろうし』

「ちげぇよ、そういうんじゃねぇ。・・・疑ってたろ、アンタのこと」

『鶴見さんの所にいたんだもん、しょうがないよ。・・・それで杉元さんのこと嫌いにならないよ?アシㇼパをちゃんと守ってくれてるんだなって思うし』

 

黙ってしまった杉元が気になってチラリと上を向くと、彼は小さい声で何か呟いていた。

初めて会った時は、ギラリと光る蜂蜜色の瞳と逆立つ髪に体がすくんだが、今の彼には敵意を感じない。

 

「・・・・・・・・・悪かった」

『えっ?』

「嫌な態度とって悪かったよ。でも、まだ完全に信用は出来ない」

 

杉元は村の女性が案内した家の布団に、荒い口調とは裏腹に七海を優しく寝かせた。

 

・・・非道になり切れない人なんだろうな。

 

『ふふっ・・・杉元さん、チョロくて心配だなぁ』

「うるせー、早く寝とけ」

 

『はいはい』と七海はニコニコしながら布団をかぶった。

 

「・・・アシㇼパさんが悲しむから、あんまり怪我とかしないでくれ」

 

顔を背けてそう呟いた杉元は、スッと立ち上がってそのまま出て行こうとした。

 

あぁ、アシㇼパがこの人を信用している理由が分かった気がする。

お節介で、強さの中の奥底に柔らかな心がある人なんだ。

 

偽アイヌの残骸を蹴散らしながら戦う、彼の容赦ない殺し方にゾクッとしたのに・・・不思議な人。

 

『待って、杉元さん』

 

振り向いた杉元は、七海の真剣な眼差しに息を呑んだ。

そして、いつも飄々としている彼女とは打って変わった凛々しい雰囲気に、魅了されて目が離せなくなってしまった。

 

「どうした?」

 

動揺したのを気付かれないように、平然を装って問いかける。

 

『毒が効かないのもそうだけど、アシㇼパ達にまだ言ってない事があるの』

「・・・何だよ?」

 

七海はアシㇼパだけに伝えようとしていた事を、信じようとしてくれている杉元にも伝えたい、と思ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

『・・・・・・私ね、呪術が使えるの』

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

『いただきまーす!』

「結月嬢・・・もう平気なのか?」

「そうだぞ、あまり無理するな」

 

アシㇼパと牛山は心配そうに声をかけたが、七海は振る舞われた料理を次々と口に運び、ニッと満面の笑みを浮かべた。

 

『大丈夫、回復薬飲んだし!せっかくのヒンナなご馳走を前に、寝てなんかいられないでしょ!!』

 

七海の食欲はブレなかった。

 

「相変わらずよく食う奴だ」

「結月はコタンでもよく食べて、よく飲んでいた!」

「穀潰しじゃねぇか」

『ひっどいな、ウサギとかリスとか捕まえて材料は調達してたよ?・・・・・・・・・柘榴が』

 

貢献していたのは蛇だろ、と皆が思った。

 

とは言え七海は、アシㇼパのコタンに居た頃にせっせと作っていた大量の薬を渡していたので、とても感謝されていた。

そして、此処でもアイヌの女達に薬を幾つか渡したので、喜ばれていたのだった。

 

「スギモトも沢山食べろ!」

「ありがとう、アシㇼパさん。これ、とぉ〜ってもヒンナだね!!・・・このままでも美味いんだけど、味噌つけたら絶対合うんじゃない?」

 

そう言って杉元が味噌を取り出すと、アシㇼパがすごい勢いで飛びついた。

その光景に、アイヌの女達は"オソマ"とドン引きしている。

 

『え・・・オソマってうんこの事なんじゃなかったっけ?』

「ちげぇよ、アシㇼパさんが勘違いしてるだけだ」

 

あぁ、良かった。

うんこ食べさせてるなんて、とんだ変態過ぎるわ。

 

・・・本当に違うよね?味噌だよね??

 

冷めた目で杉元を見ていると、隣に座っていた尾形が近付いてきて、耳元に口を寄せねっとりと耳から脳に響く様な低い声で囁いた。

 

「上手く杉元を誑し込んだじゃねぇか」

『人聞きの悪い、助けるのに理由なんか無いでしょ』

「フン・・・誰にでもしっぽ振りやがって、この阿婆擦れが」

『そんなことばっか言うから、尾形は私と宇佐美くらいしか友達いないのよ』

「宇佐美は友達じゃねぇ」

『あ、私は友達認定してくれるんだ?』

「・・・・・・チッ」

尾形は舌打ちすると「お前には借りがあるだけだ」とぶっきらぼうに呟いて、筋子ダレをつけた団子を口ヘ放り込んだ。

 

それが何だか可愛く思えて、わしゃわしゃと頭を撫で回すと、尾形は目を猫のように細めて固まり、我に返ると「やめろ」と一蹴りした。

 

 

ふふ、照れてやんの〜。

 

 

キャッキャウフフと食事の席は盛り上がり、皆のお腹も満たされた頃、詐欺師の鈴川聖弘の処遇について話し合った。

 

さっさと殺して皮を剥いでしまえ、と言った尾形の意見が通されると思ったが、意外にも杉元が連れて行くと言い放ったので少し驚いた。

アシㇼパの「無抵抗の人間まで殺すのか?」という言葉に踏みとどまったのだろう。

 

彼の中でアシㇼパの言葉は、これ程に効力があるのか。

 

 

 

 

 

 

アイヌの女達が見送りの時、口を揃えて「チンポセンセイ」と言うので「子種だけ置いていけないだろうか」と牛山が渋っていた。

 

『チンポ先生引っ張りダコだぁ。強くて女に優しい良い男だもんねぇ〜』

 

「ゔお"ぉぉー!女ああぁぁ!!」と叫ぶ牛山を引きずる跡には、三本線が残っていた。

 

はて?と何の跡か一瞬考えて、七海は深く頷いた。

 

 

・・・ご立派なんですね、チンポ先生。

 

 

 

 

『きっとこのコタンは大丈夫だよね、アシㇼパ』

「あぁ、アイヌの女は強かなんだ。弱くなんかない」

 

どんなに文化が違っても女が強かなのは変わりない、か。

 

「さぁ、先を急ごう!」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「シライシが捕まったぁ?!」

 

あちゃー。

白石さんてあんなんだけど、刺青囚人の一人なんだよね。

それを聞いた時には、あのタコぼ・・・見た目から想像出来なくて驚いたけど。

 

脱獄王と異名を持つ彼なら、その内逃げられるんじゃ・・・と思うが贋作の見分け方が分からない以上、白石さんは重要人物だ。

 

そう思ってはいるものの、皆が白石の顔を浮かべて「まぁ・・・いいか・・・・」と諦めようとした時「助けたい」と杉元だけが名乗りを上げた。

 

彼は、鈴川を使うと言っているが・・・

 

『このおっさん使えるかなぁ〜?』

「そうだ!俺にどうしろっていうんだ!!」

「詐欺師なんだから頭使え」

「何のための詐欺師だよ」

 

鈴川は次々に責め立てられている。

最終的に杉元から、協力しなきゃ皮を剥がすし、バレたら第七師団に皮を剥がされる、と脅されていた。

尾形の二千メートル先からも逃げられない鈴川は、従うしかないだろう。

 

・・・あーヤダヤダ、この人達本当に物騒。

 

そして見事に網走監獄典獄の犬童四郎助に化けた鈴川は、策を練っておくと言ってゴロンと横になった。

 

人間の心理を利用する詐欺師。

鶴見さんとはやり方が違うが、見た目や話術で相手の心を操作する鈴川には脱帽する。

素直ですぐ嘘がバレる七海は、心理学とやらを習っておきたいかも・・・と鈴川の肩をちょんちょんと突いて『人を騙す極意、他にも教えてよ〜』と強請ってみたが「門外不動だ」と断られてしまった。ちぇっ。

 

そうしている内にアシㇼパがカクンッ、と土方にもたれかかった。

そろそろおねむの時間らしい。

 

「やれやれ、この子は大物だ・・・」

 

そう呟いてフッと笑った土方の色香に吸い寄せられ、七海も土方の肩にピタっと頭を寄せた。

 

「おや、薬売りのお嬢さんまで。私もまだまだ捨てたものではないらしい」

『素敵なおじ様には弱いんですぅ〜。かの有名な土方歳三さんは薬売りをされていたとか。私の薬、試しに使ってくださいな』

 

普段とまるで違う、しおらしい七海の様子に周りはドン引きしていた。

 

「おい、それよりも大事な話があるだろうが」

『・・・・・・・・・アシㇼパは寝ちゃったけど、いいの?』

「まず、俺が確認してからアシㇼパさんに話す」

『分かった。・・・鈴川には眠ってもらっていた方がいいよね。はい、入眠!!』

 

七海は柘榴の牙を鈴川の尻にブスっと刺して、強制的に落とした。

 

「なんだ、嬢ちゃんの得意の唄でも披露してくれるのか?」

「ちげぇ。七海が・・・呪術が使えるとかほざいてたんだ。冗談にしてはタチが悪いぜ」

「・・・ほぉ。眉唾物の話だが、お嬢さんの目は嘘をついている様に見えんな」

 

そう言って皆七海の顔を見たが、誰一人彼女が冗談を言っている様には見えなかった。

 

『実体化させているから皆さんにも見えますが、柘榴はこの三線の付喪神なんですよ』

「このちっこい白蛇がか?嘘だろ?!」

 

キロランケがそう言ったので、柘榴が怒って噛み付こうとしていた。

 

『柘榴、およしなさいって』

 

七海が宥めると、柘榴はチロチロと舌を出し入れしてから渋々着物の合わせに戻った。

 

「驚いた・・・言葉が分かるんだな」

 

キロランケが感心していると、静観していた尾形が口を開いた。

 

「呪術かどうかは知らんが・・・鶴見中尉の前でソイツの楽器が光って、辺り一面に花を咲かせるのを見たぜ」

『ありゃ、見られてたんだ』

「信じがたいが・・・呪術とはどんな事が出来るんだ?」

 

永倉が髭を撫でながら尋ねた。

 

『私の呪術は、この三線を奏でる事で生き物や物体の強化、そして持続が出来ます』

「あら、強化というのは若返りも出来るのかしら?」

 

そう言って、舌なめずりをした家永が妖しく笑った。

 

『やった事はありませんが、出来るのかな・・・』

 

七海は柘榴をチラリと見て様子を伺うと、ゆっくり頷いた。出来るんかい。

 

「それなら、私をもっと若く美しく・・・!!」

「やめろ、家永」

 

迫り来る家永さん、怖すぎる。

永倉さんから彼女(彼)が、美しさを保つ為に人を殺しまくって同物同治していたと聞いて、七海は更に震え上がった。

 

一度やったら何度でも若返りを迫られそうなので、家永さんに術をかけるのはやめとこ、と丁重にお断りした。かなり渋られたが。

 

お世話係の月島さんがいない今、寝込みを襲われたら堪らないので、尾形の傍から離れない様にしようと決めた。

私に借りがあるって言ってたし。

 

 

 

『では、いきますね』

 

 

~♫

 

『記憶の中の君と 今の君はどちらも真実で

鮮やかに色めく君は もう僕の知らない色』

 

『伝えたいこの想い それすら叶わないけど

口にすれば単純な強がり 隣に僕が居なくても』

 

『心変わり色変わり 軽やかに姿を変えたのは

悲しいほどの夕暮れ 僕の知らない君は誰?』

 

 

 

土方に光が集まって消えていくと同時に、みるみる白髪は艶やかな黒髪へ、皺の無い肌へと変化していった。

 

『きゃあっ♡若い姿の土方さんも素敵すぎる♡』

 

土方を選んだのは、完全に七海の私情である。

 

「身体が、軽い・・・」

 

若々しく透明感のある声で呟き、思わず立ち上がった土方に一同は目を見開いた。

 

「間違いなく、若い頃の土方さんだ・・・」

「驚いた、こりゃあ浦島太郎もびっくりだぜ」

「いい男・・・食べちゃいたいわ。七海さん、やっぱり私にもその術かけてくださらない?」

『家永さんは絶対ダメ!!とりあえず信じてもらえた様で・・・・・・ふわぁ、もう・・・』

 

倒れ込む七海を、若く逞しい腕が受け止めた。

 

「せっかくの若い身体だ、このまま攫って抱いてしまいたいが・・・残念だ」

 

ギラリと光る土方の目を見て、この人が言うと洒落にならん、とこの場にいる誰しもが思った。

 

そして土方は、七海の髪を優しく撫でながら「白蛇を使者とする女神、か・・・まるで弁財天だな。私にも漸くツキが回ってきた様だ」と不敵に笑った。

「財運と音楽の女神か。結月嬢のお陰で金塊を手に入れられる気がしてきたぜ」

「アシㇼパが言っていたアイヌの言う蛇の神・・・ホヤウカムイは人間に襲いかかる荒ぶる神でもあるんだろ。果たしてその蛇女がどちらか見物だな」

 

 

「・・・」

 

杉元だけは黙り込んで、スヤスヤと眠る七海をじっと見つめていた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

────むくり。

 

真夜中に目を覚まして起き上がった七海は、近くの川へ向かった。

 

軟禁生活から抜け出して歩く事が多くなったせいか、七海の体力は一人旅をしていた頃に戻りつつあり、呪術を使った後の気を失う時間も短くなっていた。

 

 

『はぁ・・・、そうは言っても怠さは残るなぁ』

 

そう独り言ちて帯を解き、纏っている服をパサりと脱ぎ捨てて川辺の岩に掛けた。

 

 

 

 

 

・・・風呂好きな七海は限界だった。

 

真冬程の寒さではないが、北海道の夜の川で全裸になり水を浴びるのは、中々に頭がおかしい。

それでも、第七師団にいた頃の毎日風呂に入れる贅沢から一変、身体を拭いて清めるだけの日々は耐えられなかったのだ。

 

鼻歌を歌いながら、久しぶりの水浴びに感動している七海に近付く影が一人。

 

 

ガサガサガサッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あっ』

「あっ」

 

音のした方を見て固まった七海。

そして、それ以上にカチコチに固まって全身真っ赤に染め上げた男は「きゃあー!!」と手で顔を覆って叫んだ後、慌てて後ろを向いた。

 

 

"きゃあー!!"はこっちなんだが。

 

「ごごご、ごめんっ!!夜中に出て行くから怪しいと思って、まさか水浴びしてると思わなくて!!」

『え、あっ、うん・・・』

 

自分以上に恥ずかしがっている男・・・杉元を見て途端に冷静になった七海は、そのまま水浴びを続けた。

 

「すぐ出て行きたい所なんだけどっ、言いたい事があって・・・。その・・・・・・呪術が使えるの、冗談だろって馬鹿にしてごめん」

 

ヒグマかと思った彼は、どうやらワンちゃんだったらしい。

背を向けて項垂れている杉元に、しゅんと垂れた耳としっぽが見えた気がして、七海は目をクシクシと擦った。

 

『気にしてないよ。いきなりそんなこと言われて"はい、そーですか"なんて無理よね。・・・蛇女って怖がられるよりずっとマシだよ』

 

その言葉を聞いた杉元の胸が、キュッと締め付けられた。

 

「約束して欲しい。その力はアシㇼパさんに危害を加える様な事に使わないでくれ」

『もちろん。アシㇼパにそんな事は絶対にしない‪』

 

キッパリ言い切った彼女がザバッと川から上がる音がして、杉元の心臓は跳ね上がった。

月明かりが照らす中で見た、彼女の濡れた胡桃色の肌とそれに張り付いた艶やかな黒髪が忘れられず、更に赤面した。

 

頭の隅に追いやろうとギュッと目を瞑って、白石の控え目なチンポを想像する。

 

バクバクと激しく脈打つ自身の心臓の音が少しマシになったところで、そういえばと偽アイヌの村で見た彼女の足首に彫られた入れ墨を思い出した。

あの時は自分を庇った七海に動揺してそれどころではなかったので、聞く機会を逃していたのだ。

 

「・・・足から矢尻を抜く時に見えちゃったんだけど、足首に入れ墨があるよね?あれって何?」

 

七海が服を着終わって『もうこっち向いて大丈夫よ』と言い振り向くと、杉元がモジモジしながら尋ねてきたので思わずクスッと笑ってしまった。

 

『私の故郷に伝わる"針突"って入れ墨だよ。五芒星の形は極楽に行けるおまじないなの。・・・・・・私は行けないんだけどね』

「どうして・・・?」

『親殺しだからだよ。だから阿鼻地獄行きなの』

 

普段ヘラヘラとしている七海が、遠い目をして思いもよらない言葉を口にしたので、杉元の蜂蜜色の瞳が揺れた。

アシㇼパさんから聞いた話だと、彼女は遠い遠い故郷から一人で旅をして此処へ流れ着いたと言う。

 

・・・彼女に一体何があったのだろう。

 

そう考えるのと同時に、あぁ・・・この子も俺と同じ場所に行くのか、と何とも表現し難い気分になった。

 

「それなら、今まで何人もぶっ殺してきた俺は・・・・・・地獄の特等席だ」

 

杉元がそう言うと、七海がクツクツと笑った。

 

『私の周りは地獄に行く人ばっかり。閻魔様が過労死しちゃうね』

「はは、違いねぇ」

『私の故郷ではね、死んだ人間は"ニライカナイ"って言う海の彼方の天国でも地獄でもない場所に行って、またこの世に生まれ変わるって言われてるの。ずっとそう信じて来たけど、父を殺してからは自分が清い人間と同じ場所に逝けると思わなくなって・・・』

「そっか・・・」

『・・・でもね、アシㇼパを見てるとまだ自分にも清い部分が残ってるんじゃないか、って勘違いしてしまいそうになるの』

「俺も、そう思う時があるよ」

『アシㇼパだけは、ずっと綺麗なままでいて欲しいね』

「あぁ、そうだな・・・」

 

 

 

◆◆◆

 

七海結月

弁財天やらホヤウカムイやら好き勝手呼ばれている人。

ちっぱいを気にしている。

剣も柔道もセンスが無さすぎるのが悩み。

 

尾形百之助

こっそり着いて行って七海と杉元の会話を聞いていた。

七海の裸は双眼鏡でバッチリ見ていた。尻派。

 

杉元佐一

おっぱいが小ぶりなのがまたいいな、と思ったスケベの杉元。

しばらくは七海を見て赤面and悶々としている。

 

白石由竹

控え目なチンポのみ登場。

 

アシㇼパ

結月のトカプは小さいので、お尻をもにもにしながらくっついて寝るのが好き。

コタンにいる時に見た結月の針突に、密かに憧れている。唇に入れ墨を彫るよりいいかも。

 

キロランケ

七海をもっと太らせたい。

とにかく餌付けしている。

 

チンポ先生

七海に稽古をつけたが、近接が壊滅的に下手くそでお手上げ。

その時に見た針突がエロいなと思っている。

 

土方歳三

七海が慕ってくれるのは満更でもない。

また若返りをして、七海とあんなことやこんなことをしたいと思っている現役セクシーおじ様。

剣の指導をしたが、これまた壊滅的で頭を抱えた。

 

家永

若返りを虎視眈々と狙っている。

取引か拷問か・・・じゅるり。

 

永倉新八

何だかんだ七海がカワイイ孫みたいに思えて、こっそりお小遣いをあげている。

家永を見張ってくれている。

 

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