異世界でいっちょ噛みするだけ。   作:ゴリラプリン

50 / 82
第48話 半神討つべし(中)

キルエがキレた。

 

いや、最初から激怒してはいた。

だが敵対するアルキュオードはあまりにも強大。

何しろ手刀で大地を割るほどの怪物なのだ。

 

力の差をハッキリと理解したキルエは、どうにか助かろうと命乞いをする。

しかしアルキュオードの発言で、自身がお尋ね者になったのは彼らネネル一派の仕業である事を知った。

それがキルエの媚びの仮面を引き剥がした。

 

「がッ…!!こ、この技は…!?」

 

【命を殺す法】―別名【死滅転生(モーラ・ヴィジャ)】。

先祖の怨霊を降ろし、肉体の性能を上げると共に技量を再現する降霊術。

ある程度の耐性はついたとはいえ、危険なこの術をためらいもせず発動する。

 

「無駄なのは…テメェらの存在そのものだよ」

 

そして術を発動したこの少年の速度は…アルキュオードの反応を超えていた。

 

「俺に捉えられぬ速度だと…!?」

 

独楽のような高速回転で、脇腹を切り裂く。

 

「こ、れは…!」

 

ウーシエとの修行によって無意識に身に着けた気功の操作。

ジェト族の始祖ドルグとの死闘で覚えた体捌き。

本来キルエ程度の経験と能力では行使できない高度な技術を、肉体の強化と降霊によって無理やり再現しているのだ。

 

「どうしたよ、ノロマァ!

見下してた雑魚に蹂躙される気分はァ!キャハハハッ!」

 

「チョロチョロと…まるでネズミだな!」

 

アルキュオードの災害めいた拳をかわし、受け流しながら跳躍して心臓を貫く。

 

「ぐぅお…ッ」

 

「なんだっけ、戦士?ハッ!

たかが足が速いだけのガキにいいようにされて?笑わせる!」

 

「驕るな小僧!なるほど身のこなしは敬服に値するが…」

 

両手を祈るように組んで頭上に掲げる。

キルエは素早く距離を取った。

 

「ただそれだけだ!!」

 

組まれた両手が地面に衝突した瞬間、衝撃波がキルエを追って地を駆け抜けた。

キルエの蛇行に合わせて、衝撃波は無限に追尾してくる。

 

「ちょっと待てっそれはどういう仕組み…」

 

「爆ぜろ!!」

 

キルエが跳躍した1秒後、足元が爆散して直径10mほどのクレーターが出来た。

 

「ひえ~ッ…」

 

「先ほどの、心臓を穿つ一撃。見事だった。

だからこそ理解したはずだ」

 

分厚い胸板に刻み込まれた深い傷跡は、既に消えていた。

 

「貴様に、俺は、殺せない。

対して貴様はどうだ?」

 

「っ…」

 

アルキュオードが指差すのは、キルエの青黒く変色した左腕。

 

「自慢の速度で俺の攻撃はかわせるだろう。

だが俺に攻撃するため近づく時だけは不可能だ。この距離なら確実に当てられる。

宙に舞う羽毛のごときその動きも、全ての威力を受け流しきれるものではない」

 

キルエが必死になって攻撃を受け流してなお、流しきれぬダメージがその身体を蝕んでいた。

しかも、かすり傷程度のダメージではない。

 

「貴様が攻めれば攻めるほど、貴様自身が傷つく事になる。

そして俺は傷つかん。不死身だからな。

そういえば貴様、【不死公】を討つ戦に参加しておったのだろう?今度も見事に不死のからくりを暴いてみせるがいい!」

 

「……」

 

キルエは言葉が切れるのも待たず、更に間合いへ踏み込んでいく。

 

「馬鹿者が…我が力を理解せずしてまだ挑むか。

不死身の俺に攻撃は通用せん!!」

 

繰り出した拳を受け流して斬りかかるが、もう一本の腕に阻まれる。

 

「邪魔くせぇんだよ…!」

 

「俺が2本の腕を使えば、それだけでお前は攻撃できなくなる。

そして今の攻撃を受け流した事で、あばら骨にダメージが行ったようだが?」

 

脇下にも、青黒い内出血が発生していた。

 

「ただ無謀に斬りかかるだけとはな。

少々期待したが、所詮は数多いる虫ケラの一匹に過ぎぬか」

 

「グチグチうるせぇな…友達いねぇだろ、お前」

 

「まぁ…なんだ。この期に及んでそんな口が利けるのは褒めてやるがな。

根拠のない自信だけでは俺は殺せんぞ」

 

根拠はあった。皆さんもご存じのはずだ。

【命を殺す法】は、祖先たちの編み出した13の戦闘舞踊を再現できる。

この13の舞を、1から順に流れを切らず当てていくと、13番目を命中させた時点で即死させられるのだ。

 

(でもアレだな…やっぱ無理ゲー臭いなコレは。

相手がマジで強い奴だと、全然当たる気がしねぇ。

ミスったらまたコンボ切れて最初っからだし…)

 

もっとも、彼に諦める選択肢は無かった。

 

(俺は楽して生きたいんだよ…こんなカスに怯えて逃げ暮らす人生なんて御免だ。

ゴミクズの分際で俺の事舐めやがって、武人気取りで偉そうに添削しやがってよ。

他人に迷惑しか掛けられねぇ社会不適合者が…)

 

どうあっても、この目の前の人間を殺す。それ以外の結論はもはや無い。

今や、飽きる事も諦める事も不可能になった。

 

(クソ、なんでこんな事になっちまったかなぁ…!

考えてみりゃ俺ぁ前世(むかし)からそうだった…。

喧嘩どころか運動もできない、知能もコミュ力も欠如した出来損ないのくせに、沸点だけは低かった。

おかげでいつもイライラしながら、キレる事もできずに俯いて過ごしてたっけな。

あ゛ぁ~そういやバイト先でやらかしたの思い出した…テンション下がるわ~…)

 

意気消沈したキルエを見て何を思ったか、アルキュオードはため息をついた。

 

「…底が見えたな。もういい、貴様は殺す。

俺の全力で葬られる事を名誉に思って死ね」

 

「…へ?あ、待っ…」

 

左拳を地面に打ち付けると、キルエの背後の大地が隆起した。

キルエの逃げ場は奪われた。

 

「ヤベっ…!」

 

右の巨腕が大きく後ろに引かれ、拳から暴威が雷光となって溢れ出る。

地鳴りがし始めた。

 

「俺はまだ一度も、技を使ってはおらぬ。

これから出すのが、俺の技だ」

 

大地が揺れる。

 

「…【鉄拳地震(てっけんじしん)】…【主要動(しゅようどう)】!!」

 

「あわわわ!?」

 

引き込んだ拳を思い切り叩きつけた。

激しい揺れと共に、隆起した岩壁が崩壊する。

 

「ひーッ、ひいいいーッ!」

 

少年には、紙一重で当たっていない。

それでもその顔には、余波で舞った砂粒がナイフめいた鋭い傷跡を刻んでいた。

 

「あ、あ、危ねぇ危ねぇ。後ろに下がれなきゃ、横にズレるまでだろ」

 

「次はもっと早く避けた方がいい。顔の擦り傷程度では済まんぞ。

…【鉄拳地震】」

 

アルキュオードの両拳が、脇腹の位置までグッと引かれる。

その予備動作を見た瞬間に、キルエの意識にリアルな死の感触が生じた。

 

「【群発】!!」

 

嵐のような連続打撃。

かわした拳が地面に触れるたび、小さな岩山が生成される。

 

「よく避ける!ところで攻撃は諦めたのか?オラァ!!」

 

岩山を叩き割り、破片を散弾のようにばら撒いた。

 

「っっぶねぇなぁ!!」

 

石礫による飽和射撃を、神がかった速度で回避する。

どう避けたのか、もはやキルエ自身もよく分かっていない。

 

「まだ加速するか!大したものだ!

…では足を封じようか!【我流岩柱《がるがんちゅう》】!!」

 

岩が柱となって複数隆起し、キルエの行く手を阻む。

 

「しょっぺえ妨害してんじゃねぇ…」

 

柱の間をすり抜けて後退しようとした瞬間、足元が爆発して吹き飛ばされた。

 

「あぎゃぁああっ!?」

 

「足元には気を付けた方がいい。

【震源地雷】…踏めば地脈の力が爆ぜるぞ」

 

「ハ、ハハハ…意外とセコイ真似すんじゃねぇか!

もしかして、結構余裕ないんですかァ~?」

 

「久々にはしゃいでいるだけだ、許せ!」

 

アルキュオードは自分で作った岩柱をへし折り、槍のように投擲した。

 

「うおっ…それはさすがにはしゃぎすぎっ…!」

 

辛うじてかわしたキルエが、不意に膝をつく。

 

「痛っ…もう限界かよ…!!」

 

プチプチと音を立て、足の筋肉が数本断裂した。

自分より遥かに優れた戦士の技術を真似た事で、彼の肉体は悲鳴ならぬ断末魔を上げ始めていた。

 

「なるほど。どうやらその姿では、体力の消耗も肉体への負荷も段違いなようだ!」

 

(クソがッ…まだまともに攻撃も出来てねぇんだぞ…!!)

 

「よくやった。久々に技を使えてなかなかに楽しめた。

勇者を相手取るにはちょうどよい準備運動になったわ!

その礼に、技で葬ってやろう…」

 

左手を開いて頭上に構え、右手は握ったまま腰ほどの高さへ。

そして両手に力が漲っていく。

 

「ああ、ヤベ…クソッ…!?」

 

立ち上がろうとしたキルエの視界が、真っ赤に染まる。

先程の【震源地雷】で吹き飛ばされた時、頭を打ち付けていた事に今更気付く。

 

(あれ…これヤバいんじゃないの。

よく分かんないけど、危ない感じのぶつけ方したんじゃね…?)

 

意識が揺れて、まともに立ち上がれない。

 

(嘘でしょ…いや、だって、これはズルだろ…!

いくらなんでも、こんなんおかしいじゃん!

こんな…こんな…)

 

ふと思い起こす。

 

(俺、なんでこんな事してんだっけ?

逃げればよかったのに)

 

至極真っ当な疑問だが、問う前から既に答えは分かっていた。

 

(仕方ないよな…ムカつくともう見境なくなっちゃうし。

今もこんなゴミ野郎に殺されると思うと、イラついて仕方ねぇ…!

いい加減、アレを出すか…!)

 

震えて安定しない足を無理やり立たせ、殺意に透き通った赤い瞳で眼前の悪夢を見据える。

 

「いい顔だ。戦士の顔だな。

恐怖で折れてくれるなよ。その面のまま死なせてやりたい!

…【鉄拳地震・地盤落と…」

 

叫んで叩き込むまさにその瞬間。

アルキュオードの頬とこめかみに、鉄の槍が突き刺さった。

 

「……あ?」

 

アルキュオードが、絶句する。

 

「えっえっえっ誰!?」

 

キルエは困惑する。

 

「死ねェええええええッ!!」

 

怒りに満ちた絶叫を吐き出すのは、武装した一団。

 

「…えーと、お知り合いで?」

 

「貴様らか…」

 

槍が突き立ったままの横顔に、一筋の血管が浮く。

 

「お、おい!そこにいるガキンチョ!!今の内に離れろ!!」

 

「殺してやる…この外道が!」

 

乱入者たちは口々に喚きながら、武器を掲げる。

 

「我々は連合軍第124憲兵隊だ。貴様には大量殺人の現行犯で逮捕状が出ている。

大人しく縛につくならば良し、抵抗するなら殺害も許可されている!!」

 

「ホゼ村の保安官だ!

家畜と家が踏み潰されたって通報があったと思えば、まさかあのアルキュオードの仕業だとはな…」

 

「許さねぇ…俺の、娘を…!!」

 

「……」

 

アルキュオードはその声には応える事無く、槍を引き抜いてキルエに向いた。

 

「すまんな。こやつらは、俺の歩く道端に巣を作っていたアリ共だ。

まさか愚かしくも追ってくるのに留まらず、誉れある戦士の闘いに文字通りの横槍を入れてくるとはな」

 

身体中から、おどろおどろしい殺気が滲み出る。

 

(こいつ、ひょっとしてずっと村踏み潰しながらここまで来たのか?

…そりゃ捕まえに来るだろ。横槍とか本気で言ってんのか?

なんだよコイツ。マジで頭おかしいんじゃねぇの!?)

 

キルエは目の前の男に、恐怖を通り越して何か寒々しいものを覚えた。

根本的に、価値観が違い過ぎる。

 

「すまんがまとめて吹き飛ばす。せいぜい上手く避けるがいい」

 

「え。ちょ、ちょっと…!」

 

瞬時に全身の殺気が膨れ上がり、目に見えて輝き始めた。

 

同時に、囲んでいる者たちも殺気立つ。

それぞれに怒りがあり、恨みがある。

 

「抵抗するか!ならばお前をこの場で殺す!」

 

「いい加減観念しろや!」

 

「殺してやる!死ね!!」

 

「ゔらぁあああああッ!娘を返せぇえええッ!!」

 

「囲んで串刺しだ!!原型(カタチ)も残らねぇ肉片にしてやれ!!」

 

一斉に襲い掛かる集団。とはいえ怒りに任せたものではない。

まともな犯罪者なら、即座にひき肉に変えてしまうような猛撃だ。

 

「クズ共め…」

 

…しかしこの巨人にとっては、群がる虫と大差無かった。

拳を例の如く地面に叩き込み、物理的破壊力と神の力で地脈を目覚めさせる。

放たれるは、この日最大の一撃。

 

「……【鉄拳震災】!!」

 

一瞬、拳から波動が大地に広がっていった。

続いて、怒り狂った集団すら一瞬我に返るほどの、激しい揺れが一帯を襲う。

 

「く、な、な、なんだ!?」

 

「クソッ!なんだこの地震は…」

 

「ヤバいヤバいヤバい!!」

 

そして、大地が裂けた。

 

隆起し、沈下し、断裂し、崩壊した。

次々と瓦礫に呑み込まれ、新しく作り出された谷底に落ちていく。

それはまさに、災害そのものとしか言い表せなかった。

 

「うわぁあああああ!!」

 

「こんな…こんなバカな…ぎぇあああっ!?」

 

「誰か…岩に挟まっちまったんだ!

頼むからどうにかし…ぐげッ!!」

 

悲鳴と絶望の呻きに満ちた破滅の中で、アルキュオードは依然怒りに満ちていた。

 

「貴様らごとき虫ケラが、なんだ?

誰が死んだだの、何が罪だのと下らん理由で戦場を侮辱するか!!

貴様らのような戦士足り得ぬ弱卒の命など糞にも劣るわ!!」

 

激情に任せ、隆起した岩壁に蹴りを入れる。

 

「【断層脚】!!」

 

岩壁が爆発四散して、更に大きく割れる。

 

「ぎゃぁあああああああッ」

 

「この程度の破壊に怖気づき、挑む意志すら捨てた豚どもが!

そんなに憎ければ掛かってくるがいい――」

 

暴れ狂う車輪と化したキルエが、回転斬撃で襲い掛かる。

アルキュオードは犬歯を剥き出しにして笑った。

 

「そうだ、やはり貴様は別格か!

足を痛めてなおその速度とはなァ!!」

 

「暴れるしか能の無ぇバカが!

他人よりちょっと力が強いくらいでイキり倒しやがって!

俺お前みたいな奴ホント嫌い!!」

 

「フハハ!いいぞ、その憎しみぶつけてみろ!!」

 

やはりアルキュオードは話を聞いているようで聞いていない。

強者や天才は、常識の及ばない強固な価値観を持つものだ。

キルエはそういうものを激しく忌み嫌う。

根拠のある自信など、自分には全く無いものだからだ。

 

(俺の身体、もうそろそろヤバいな。

あぁ~…こんな低能のカスを殺すために痛い思いしなきゃなんねぇのか)

 

横回転の斬撃で背後から斬り付けつつ、耳元で囁く。

 

「お前さ。自分が圧倒的に最強だと思ってんだろ?」

 

「当然だな。勝利こそが戦場における唯一絶対の真実。

俺が今ここにいる事こそ、俺が最強である事の証左である!」

 

「そりゃおかしい。

自分が誰よりも強いなら、お前にとって戦いってのは弱い者いじめだろ?」

 

「…何?」

 

アルキュオードの表情が、変わった。

初めてキルエの言葉に、本当の意味で耳を傾けたのだ。

 

「テメェがイキってられんのは、負けた事がねぇからだ。

要するに、自分だけは絶対勝てるゲームで好き放題やってるガキだ!違いますか?」

 

「…小僧」

 

「ヒャハハハッ、笑わせてくれますねぇ!

戦士!武人!戦場の真実ぅ!…お前の言葉はいちいち軽い!」

 

「もう黙れ。貴様のような小童に理解できるとも思わん。

ただ痛みで理解しろ」

 

放たれた災いめいた拳をかわし、カウンター気味の刺突を突き立てる。

が、刃は通らず皮膚で止まった。

 

「分かるか?全身を気力を満たせば、そもそも攻撃は俺に通じん。

貴様の武器がその(なまくら)である以上、俺は殺せんのだ!」

 

人差し指を立て、地面に着き刺した。

 

「【地殻点穴】…【憤激孔】!!」

 

断ち割られた地面のところどころが震え、地鳴りが高まる。

そしてその高まりが頂点に達した時、マグマが噴出した。

 

「地の利は常に我に有り!」

 

「やべやべやべっ!!」

 

キルエとアルキュオードは、高い突起の上に飛び乗る。

マグマが足下を流れていく。

 

「貴様はほぼ全ての攻撃をかわしている。

だが、それでも俺は一向に構わんのだ。

貴様の肉体は少しずつ死に近づいている。それを眺めるのもよかろうて」

 

「……」

 

足下から湧き上がる焦熱が、傷ついたキルエの身体を更に追い詰めていく。

 

「どうせ貴様では、この俺に傷ひとつ付けられんのだからな」

 

「…だったらちょっとずつでも削るさ」

 

もちろん、キルエにそんな地道な決意は無い。

あの即死技を狙っている。

13の舞をただ”当てる”だけ』でいい。傷をつける必要は無いのだ。

 

「殊勝よな!だが弱い!!

言葉が軽いだと?軽いのは、貴様のような弱者の言葉だろう!」

 

背後に通り抜けたキルエへ、振り向きざまの拳を打ち込む。

キルエもまた振り向き、拳を受け流して胸を斬り付ける。

 

「効かんなァ!」

 

「クソッ…死ねよ!!」

 

波のように揺らめく斬撃も、蹴りも、振り下ろす串刺しの一撃も、下からの切り上げも、全く通じない。

 

「どうした、もっと俺を怒らせてみろ。ん?」

 

(せいぜい調子に乗っとけ。…乗っといてくださいお願いします!

そうすれば楽に13回命中させられるから!)

 

挑発も、その後の劣勢も全ては彼の作戦。

一度やりこめてから反論させる事で、過剰に調子に乗らせようという事だ。

 

(そうやって攻撃をかわさず受け止めててくれよ?

ククク…バカが。誰がお前なんかとマトモに戦うかっつーの!)

 

全ては、驚くほどスムーズに進んでいく。

 

(足元をスライディングで通りぬけつつ頭上に攻撃!9番目完了!

返す刀で切り返しながら後退!10番目完了!

次、背中から勢いよく突き込む!11番目完了!ここまでくりゃほぼ勝ち!

そしてここで武器を投げる!)

「うわぁああああっ!!」

 

自棄になったフリをして、首狩りナイフを投げつける。

案の定、アルキュオードは面倒そうに手の甲で弾いただけだ。

 

「ハッ!下らんな。もう終わりか。

ただでは殺さんと思っていたが、興醒めだ。

ここで踏み潰して…ぐッ?」

 

弾いたはずのナイフが背中から直撃する。

標的の魔力をトレースして武器が追尾する投擲法、12番目の舞【黒棘魔刑(グラム・トランテカ)】。

 

「フン、今のは面白かったぞ。そこそこな」

 

あっさりとナイフを筋肉で弾き、ゆっくりとキルエに近づく。

 

「ク、クソが…ッ」

(よ~しOKOK!いいよ!そのままカモン!)

 

13番目の舞、相手の核に呪詛を打ち込み二撃目で炸裂させる拳法。【怨邪絶死拳(ジェトゥ・ゴドラングエ)】。

両腕を優雅に踊らせ、近づく巨漢の胸に狙いを定める。

当たればいかなる者であろうと、それが例え神であっても、必ず殺す。

 

「さぁ…終わりだ」

 

(そうだよテメェのな!ほらもっと近づいてこい!)

 

「行くぞッ!!」

 

そしてアルキュオードは……

突然踵を返し、走って逃げた。

 

「……え?」

 

〈つづく〉

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。