異世界でいっちょ噛みするだけ。   作:ゴリラプリン

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第84話 神の絶望

焼き払われ、同胞の死体に満たされた視界。

 

「なんだ…何なんだこれは…」

 

戦えど戦えど、尽きぬ敵。

 

「誰か!味方はいないのか!クソッ…」

 

そして押し寄せた黒い波は、敵味方問わず全てを漂流物に変えて過ぎ去った。

残るは新たな敵と、絶望のみ。

 

「やれやれ、所詮いくらでも作り出せるような兵隊じゃアテにならんな」

 

「ああ。勝利はこの手で得る。

今まで戦場でそうしてきたようにな」

 

生き残った敵は精鋭ばかり。

疲弊し数も減った兵士たちは、ただ悔しさを苦痛の呻き声として漏らすしかない。

 

「クソ…こんな、所で…!」

 

その時。兵士たちは見た。

 

「……っ!」

 

「何だ…アレは!」

 

「敵か。構えろ」

 

純白の翼を携え、天から舞い降りる神々しき騎士の姿を。

 

「貴様、聖騎士か…!」

 

「……」

 

騎士は答えず、斧槍を横に薙いだ。

傭兵はこれを軽くかわした。

 

「高貴な騎士様は、俺のような野犬と言葉を交わしてくださらんようだ」

 

「汝らは、何故に人の敵となった。

己が欲望と勝利のためか?」

 

傭兵が嗤う。

 

「ああそうだ。俺たちは傭兵、己のためにのみ生きる。

貴様らのように木の根を齧った事が無い者には分かるまい…!」

 

「たわけ」

 

斧槍の突き。先程とは比べ物にならぬ光線のような速度で、傭兵の左腕を吹き飛ばす。

 

「ぐぅううう…ッ!」

 

「命は偉大なる神よりの賜り物。生きる事はその恩に報いる事である。

卑しき生き様で己の命を穢すは大罪なり!」

 

「卑しい、だと…ッ!ほざいたな坊主風情が!」

 

片腕を失いつつも、勇猛に傭兵が飛びかかる。その手には氷で形作られた剣があった。

 

「くぅおおおおおッ!!」

 

聖騎士の斧槍が舞う。

 

「己が事ばかりを重んじ、他者を踏みつけにする。

これを卑しいと言わずしてなんと言う」

 

「か…はッ」

 

氷剣もろとも、胴体を真っ二つにされていた。

 

(な…なんと凄まじき技の冴えか…!)

 

しかしネネル側の兵たちに動揺は無く、なおも聖騎士を取り囲んで殺さんとする。

彼らが信じているのは己の力のみ。自分が勝てばそれでいいのだ。

 

「さすがは音に聞こえしシュハラ教の聖騎士!

だが貴様とて、十神剣の筆頭…【猛撃乱舞】と恐れられしこのバーレイの名を知らぬ訳では…」

 

「知らぬ」

 

首が舞った。

 

「いちいち名乗られるは手間ぞ。まとめて名乗れ」

 

「…【鉄の車輪】ギルフ」「【爆炎師】パルバード」「【棘蛇】」「【狂い鞭】ザーム」「【無限の宝剣】」

 

「そうか。ことごとく知らぬ」

 

刃と光が飛び散り、全ては死に絶えた。

事が済むのに1分足らず。まさしく鎧袖一触である。

 

「ああ…偉大なるシュハーレナよ!感謝いたします!」

 

連合軍の兵たちの心には、その輝きが強く焼き付く。

たった数名の聖騎士によって、城内の戦況は塗り替えられつつあった。

 

「良き心掛けである。さあ、立て。

まだ敵は残っておるぞ」

 

「は、はい…しかし、無念です。

この戦いでは人が死に過ぎました。あまりにも多く…!

同胞の亡骸を故郷に持ち帰る事も出来ないとは…」

 

「墓が無くとも、銘は刻める」

 

「は…」

 

「お主ら生き延びた者たちの心にな。

お主らが忘れぬ限り、その祈りが死者の慰めとなろう。

…だが当然、死人は少ないに越した事はない」

 

「は、はい!聖騎士様がいてくだされば…」

 

その時、激しい揺れと共に天井が崩落し始める。

 

「なッ…」

 

巨大な腕が聖騎士を掴み、持ち上げる。

 

「ぐッ!なんなのだ…コイツは…!」

 

顔の無い巨人がそこに居た。

 

 

 

 

 

「やめろ…」

 

禿頭の男が、突如現れた巨人たちに蹂躙される魔皇城の有様を見て、叫んだ。

 

「やめろぉおおおおおおこの化け物共がぁあああああああッ!!」

 

杖を振りかざし、半狂乱になって叫ぶ。

 

「この城は私が手に入れるものだ!私のものだ!!このメルディゲ・ルグ・ドルゲのッ!!

こんな…貴様らのようなゴミが台無しにしてよいものではないのだぁああああッ!!」

 

巨人の1体が、声に気付いてか気付かずか、メルディゲへと手を伸ばした。

 

「ふざけるなぁッ…ふざけるなぁあああああッ!!!」

 

 

 

 

 

 

「テメェ…何しやがった」

 

「「そんなの、お友達に聞けばいいじゃん。

どうせ僕の話は全然聞いてくんないし」」

 

男と女、2人のネネルが声を重ねる。

 

「分かるか?ナンム…」

 

『…私がこの世界の神じゃないって事は、もう話したよね?

私は前にいた世界で、母神として多くの神を産んだ。その権能を利用したんでしょう』

 

「神を…産む、だと?」

 

『1人じゃ子供は産めないから、男と女に分かれたってとこかしら』

 

「理解できたかな?【神々の創造】はティアマトの神産みを再現した神界魔法でね!」

「今頃、外は僕の生み出した神によって蹂躙されてるだろうね!」

 

「そんな余裕があるのか、あぁ!?

お前は俺らと戦ってんだぞ!」

 

2人は憎らしいほどピッタリ揃った動作で肩を竦める。

 

「余裕?あるでしょ。だってキミら僕を倒せるの?」

「女神の力も無し、余力も無し。ゲームセットだってこれ」

 

「舐められたものだね…」

 

ラスタの拳が怒りに震え、強く握り込むあまり血が滲む。

その悔しさは、ネネルの言葉が正鵠を射ているからこそのものだ。

 

(クソッ…どうやって倒す!?)

 

「いいねぇ、諦めない目。それでこそ勇者パーティだ」

 

そしてもう一つ、彼らの気づいていない、ネネルに勝てない理由があった。

 

(ま、そういう時に奇跡を起こすのが主人公なんだろうね。

だけどそれならそれで、別に僕は困らない。

だって今の僕は殺されたとしても、滅びはしないんだから)

 

ネネルは、自分が仕組んだ()()が上手く働いているのを感じながら、余裕をもって憎たらしい笑みを浮かべた。

 

「じゃあいい知らせも教えてあげる。

生命を生み出す力はほとんど聖女様に削られちゃった」

「だから、今ここで魔族を生み出して操るとかは出来ないよ」

 

低く嘲弄する男声と高らかに嗤う女声が、不快なハーモニーを奏でる。

 

「もっとも、あんな出来損ないの種族なんて、わざわざ生み出す意味ないよね僕?」

「そうだね僕。神と比べれば駄作もいいとこだよ」

 

『…駄作?』

 

ナンムの声が冷える。

それと反比例するように、目つきに熱が入る。

 

「ナンム…」

 

『誰の許しがあって、魔族(あの子)たちを駄作と言ってるの…?』

 

怒りを察したグレンが、仲間と手を繋いでナンムの声を中継する。

 

『子供に駄作も傑作も無いなんて当たり前の事すら分からないの!?

なんでこんな奴が、私の力を…!!』

 

「……」

 

ナンムにとって、神も魔物も人間も我が子だった。

正確に言えば、この世界の人間は彼女から生まれた訳ではないが、だとしても慈しむべき命の一つである事に変わりはない。

声に宿る悔しさが、グレンたちの心に伝播する。

 

「あらら?どうしたの急に黙っちゃって…あ!」

「ひょっとして、妖精さんが喋ってるの?なんて言ってる?」

 

「…テメェは許さねぇとさ」

 

「え?なんで?」「なんでもいいでしょ」

「「で、もう終わり?降参する?」」

 

グレンは答えず、ナンムを見た。

 

「そうだよな。お前も戦いたいよな」

 

『グレン?』

 

「あのさ、前々から俺たちで考えてたんだ」

 

「…ああ、アレか。しかし、アテはあるのか?」

 

「ぶっつけ本番。やるしかねぇだろ」

 

フェリスがハッとして、グレンの手を強く握り直す。

 

「え?アレはてっきり仮定の話かと…!

どうなんだろ、ホントにできるのかな…?」

 

『ちょっと皆、いったい何の話?』

 

「何度も言うようだが、俺たちはお前が死なずに済む方法を探してた。

で、お前と再会する前に、色々話し合ってたんだ。

その内の一つ…机上の空論を現実にしてみようと思う」

 

ネネルは口を挟まず、興味深そうに見ているだけだ。

 

「この紋章は、女神の力を蓄えて魔法として放つ。

ナンム。お前だって元は女神だろ?」

 

『…まさか!?』

 

「ああ。この女神の紋章は、今全部使い切って空っぽだ。

この中に、お前の力を注ぎ込んでくれ」

 

『そんな事っ…できる訳ない!』

 

「なんでだ」

 

『女神って言っても、聖なる女神と魔族の祖である私は相反する力なの!

最悪の場合、紋章が汚染されて二度と使い物にならなくなるかも…』

 

「別にいいだろ、どうせこの城にいる間はもう使えねぇし、アイツ倒したら必要なくなるし」

 

『バカッ…そもそもアンタは聖なる女神の末裔でしょうが!

身体がぶっ壊れるのがオチよ!』

 

「そもそも、今のお前はこの紋章に宿ってる状態だろ?

でも俺はピンピンしてるぜ」

 

『そんなの今出てないだけで、絶対後になって悪影響が…』

 

「残念でした。嫌だって言っても勝手にやっちゃうもん」

 

『!』

 

フェリスは、珍しくいたずらっぽい口調で言った。

 

「別に僕たちも、絶対上手く行くとは思ってないよ。

でもね、よく考えたらそんなの当たり前じゃないか?

やる前から結果が分かるんだったら、こんなに楽な事はないけどさ」

 

ラスタは、あえて軽い口調で言った。

 

『……こ、後悔しないでね!』

 

ナンムは意を決し、グレンの右手に力を注ぎ込む。

 

「うおっ…来た来た…!」

 

「なるべく、全部の力を絞り出すようにしてほしい。

イメージで言えば、自分と魔皇の力を切り離すような感じで」

 

『わかっ…た…ッ!!』

 

禍々しい稲妻が、グレンの手に迸る。

 

「ッ…!」

 

『だ、大丈夫!?』

 

「いいから…続けろ…ッ!」

 

『ああ…もうっ!どうなっても知らないんだから…!!』

 

稲妻はまるで抵抗するかのように激しさを増す。

 

「ぅおおおおおおおッ…!」

 

『これで…全ッ部…ありったけ…!!』

 

紋章が、暗黒に染まった。

 

「っは、ハァ…ハァッ…出来た…!」

 

『し、死ぬんじゃ、ないわよ…』

 

「バカ野郎…ここからが本題だ。死ねるかよ…!」

 

グレンは黒い女神の紋章を掲げ、叫ぶ。

 

「神界魔法!【女神の憤怒】!!」

 

魔剣から炎が噴出する。…魔性を帯びた、赤黒い炎が。

それは血も乾ききらぬ傷口のように生々しく、悍ましくすらあった。

 

「……で、待ってはみたけど。それ意味あんの?

僕の魔皇パワーと同じ性質のもんでしょ?僕に効く訳ないよね」

 

「【女神の落胤】!!」

 

グレンがフェリスに手をかざすと、頭髪の末端が赤いグラデーションを帯び、全身に黒い瘴気を纏う。

 

「【女神の戴冠】!!」

 

そしてラスタはその頭に、血めいた真紅の宝冠を頂いた。

 

「あれっ?いきなり全部使い切っちゃうの?」

「あ~あ。せっかく3回分チャージできたのに、わざわざ仲間を強化するのに使うなんて、ホントにむ」

 

「無駄か?」

 

「「!!」」

 

炎の爆発で急接近し、ネネルたちの間合いへと入った。

 

「…【獄凰】!!」

 

斬撃は赤黒い火の鳥となって飛翔し、2人を焼く。

炎はへばりつくように身体に纏わりつき、執拗に責め苛む。

 

「うん…うんうん…いや熱いけど…」

 

炎はたちまち、体内に取り込まれた。

 

「効かないんだってば。炎は吸収できるし、魔皇の力はむしろ栄養だし。

ねぇ…何がしたいの?もう終わらせていいって事?」

 

「取り込んだな。ナンムの力を」

 

「「……うん?」」

 

「…魔皇は、肉体と魂を同時に殺さないと完全には滅びない。

つまり、魔皇の肉体だけを取り込んだお前は、実質的に不死身だった。

そうだろう?」

 

それが、ネネルにとっての最後の保険。

魔皇を殺した時、魂は取り込まず、肉体の力のみを吸収する。

それによって、ネネルは疑似的な不滅となるのだ。

 

「へえ、気付いていたのか!じゃあこの戦いが無駄だって事も分かるだろ?

もちろん死ねばただでは済まないが、時間さえ掛ければ復活出来るだろうね」

「…待てよ僕。グレンくんの狙いが見えてきた」

 

女のネネルは、得心いったように手を叩く。

 

「気づいたか。

お前が魔皇の魂(ナンム)の力を吸い取った今、お前の中に肉体と魂の要素が揃った!

今のお前を殺せば、完全な形で滅ぼせる!!

…そして、ナンムを殺す必要も無くなる!」

 

『グレン…!あんたらそんな事考えてたわけ…!?』

 

ネネルたちは嬉しそうにクツクツ笑った。

 

「策士だね…グレンくん。不滅だった僕に、弱点を与えるなんて!」

「一研究者として感心するよ!だけどさぁ!」

 

女ネネルの腕が触手に変わり、グレンを弾き飛ばす。

男ネネルが追い打ちで、腐食の吐息を放つ。

 

「「それは僕を殺せる前提での話だろう!?」」

 

「く…ッ!」

 

右から女、左から男が挟み込む。

 

「「神界魔法!【神々の災禍】!!」」

 

波濤と暴風が、同時にグレンを襲う。

一国すら滅亡させ得る神の権能を、惜しみなく躊躇いなく1人の少年にぶつける。

それを何の激しい感情も持たずに実行できる、ネネルの精神こそが何よりの異形。

変化した姿など、内面の歪さに比べれば可愛いものだった。

 

「危ねぇな!!ムキになんなよ、いい歳こいたオッサンがよォ!!」

 

グレンは魔剣の噴炎で飛び上がり間一髪で回避しつつ、炎で波を蒸発させた。

辺りが水蒸気で覆われる。

 

「いやぁ嬉しくなっちゃってね!まだ諦めてないんだってさ!」

「だったらその希望を磨り潰すのが、魔皇の役目だよねぇ!」

「神界魔法【女神の咆哮】!」「【女神の抱擁】!」

 

男ネネルの技、【咆哮】が音波で動きを止め!

続く女ネネルの技、【抱擁】でエナジードレインする!

回避不能の必殺連携である!

 

「グレンく~ん!僕を受け止めて♥」

 

「…俺を集中狙いしてくれてるとこ悪いがな」

 

「?」

 

「本命はそっちだ」

 

女ネネルの胸を、背後から鋭い爪が貫いた。

 

「…っ???」

 

振り向くと、そこには半ば狼に変化したフェリスがいた。

 

「私は人狼。れっきとした魔族です。あなたの言う”駄作”のね」

 

「かはッ…なるほど…。魔族なら、魔皇の力による強化はよく効くか…!」

「でも、させないよ」

 

男のネネルが間に割り込もうとした瞬間、真紅の棘で全身を貫かれ、動けなくなる。

棘はネネルの身体と一体化し、完全に抜けなくなった。

 

「うわわっ!?」

 

「【術種(コード)不明(アンノウン)】…”神を裁く極刑”!!」

 

「僕と同種の力で…むしろ拘束力を高めたのかい…色々考えるものだ…!」

「なぁ僕、これちょっとマズい…」

 

フェリスの爪が、女の首を刈り取った。

 

「あ…っ」

 

「まず1人!」

 

その時、男の方はなんとか拘束から脱していたが、フェリスの速度には追いつけない。

 

「グレンくん以外は敵じゃないと思った?」

 

「思い上がりもほどほどにしたまえよ!」

 

「くッ…この僕が…真の魔皇が!脇役なんかに!!」

 

ネネルの頭が、縦に切り裂かれた。

 

「っぐぎゃぁあああああああ!!」

 

断面から凄まじい血と瘴気が噴き出る。

 

「ハッ、粋がりやがって。最後まで自分しか見えてねぇ奴だったな」

 

「でも…ハァッ、ハァ…全部上手く行ったね…!」

 

「ああ。ナンムも救えた」

 

『……』

 

ナンムは口を開けたまま、一言も発さない。

 

「んだよ…ゲホッ!少しは喜びやがれ…」

 

『…後ろっ!!』

 

「…ッ!!?」

 

グレンの背後。

切り落とされたはずの女の頭が、再生している。

 

「やっほ♥」

 

「なんっ…」

 

女ネネルは軽やかに間合いへと踏み込み、グレンの首を掴む。

 

「グレンくん!」「グレンッ!」

 

「じゃ~ん!…へへ、ビビった?」

「……そりゃ、ビビっただろうねぇ」

 

男ネネルの真っ二つに裂かれた頭も、治りつつあった。

 

「よいしょっと!!」

 

フェリスとラスタを片手それぞれで掴み、持ち上げる。

 

「な、んで…っ!」

 

「あのさぁ、ティアマトは生命を生み出す女神だよ?

自分1人の命なんて簡単に生み出せるってば!」

 

『そ、そんなのありえない!

…私に神を蘇らせる能力なんて無いのに!』

 

「おや、妖精さんも何か言ってるね。やっぱり聞こえないけど。

じゃあ説明しとこう。僕はね、キミと一体化した訳じゃない」

「そう、ティアマト神の権能を取り込み、必要な時に接続する事で力を操ってる。

だから僕自身は、一応ただの人間扱いなのさ」

 

『ただの…人間ですって…!?』

 

角と牙と鱗で身を覆い、雌雄に分かれ、死から容易に蘇ったネネルは、平然と言ってのけた。

 

「人間ドゥロワ・ネネルの取るに足らない命なんて、ティアマト神の力で簡単に蘇生できる。

これぞ神界魔法【女神の新生】!」

「まぁそういう訳で、勝利条件の更新といこう。

…無限に再生・復活する2人の僕を、1秒の狂いも無く同時に殺せ!ってね」

 

「……」

 

もはや、言葉が出ない。

 

「「それからもう一つ!【女神の守護】!」」

 

2人のネネルが、互いに術を掛け合う。

 

「この加護を授けられた者は、授けた神が滅びない限り傷を負わない!」

「互いに授けたから、もうどっちも無敵だね」

「「じゃあ、頑張ろっか!」」

 

神の力を弄ぶかの如き、理不尽な組み合わせ(コンビネーション)

ネネルは自分を封印している間、力をどう使うか思索していた。その研究成果が今遺憾なく発揮されている。

 

「ッ……」

 

「……」

 

「……っ」

 

見よ。勇者たちは、まだ絶望していない。

だが、どれだけ足掻いても勝てる方法が全く見つからない。

 

(考えろ考えろ考えろ…ッ!何かあるはずだ、何か…!)

 

グレンたちは目を血走らせ、ヒントを見逃さぬようひたすらに見つめる。

その必死さを嘲るように、2人のネネルはおどけてみせた。

 

「そんな見ないでよ。何?僕の顔にゴミでもついてる?確認してよ僕!」

「う~ん、どこにも変な所は…変な……変………?」

 

「あぁ…?」

 

グレンたちもネネルも、己が目を疑った。

 

「あの…僕?なんか顔に、ヒビ入ってるけど…?」

「は?何言ってるんだい僕。女神の守護がある限り、僕の身体には傷一つ…」

 

女のネネルが、乾いた土塊のように崩れ去った。

 

「あれ?あれあれあれ?」

 

ネネルは、自身から加護が失われている事に気付いた。

加護だけではない。ティアマトの力が使えないのだ。

 

(権能が失われた訳じゃない。僕の中には確かにある!

なのに…接続できない…!?)

 

『どうかな、これ俺の声も聞こえてんのかな』

 

「ッ!??」

 

頭に響くその声が誰のものなのか、ネネルは気づくのに数秒以上を要した。

 

「え……!!?」

 

『おっ。この声が聞こえるって事は…術は成功したみたいですね』

 

なぜならその声の主は、もう死んでいるはずだからだ。

 

「キルエ…くん…!!?」

 

『はぁ~い!貴方の息子ですよ、ち・ち・う・え❤』

 

〈つづく〉

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