バッハ「私たちは友達だからだ」   作:ホネホネ

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リハビリがてらの番外編です。

毎度のことながら時系列や本編との整合性についてはあまり考えない感じでお願いします。
本編はもうちっと待ってね。

また、「BLタグは必要か?」のアンケートへの回答ありがとうございました。
いただいたご意見を参考にして、特にタグは追加せずこのままやっていきます。
BLタグ無くても同衾は許される、OK
タグはつけませんが、一部いらっしゃったBLとして楽しんでおられる方も全然そのまま楽しんでもらって大丈夫です(他の人も見るコメントとかだけ気をつけてね)

本編は漠然と3章構成を目指していますが、現在のこの2章がどのくらい長くなるのか全然わかりません。
引き続きよろしくお願いします。



【番外編】お・ま・え・ローテンションボーイ

 

とある時代にとある帝国でとある皇帝の懐刀をしているジークフリードはたいそう暇だった。

 

実際のところ仕事が山積みで全然暇ではないのだが、仕事をしたくないジークフリードは執務室の椅子に座ったまま、目の前の書類の山から目を逸らして(暇だなあ)と思っていた。

 

暇だし、親友を連れ出して城下にでも遊びに行ってしまおうか。しかし前にそれをやった時は皇帝の側近であるハッシュヴァルトにものすごく叱られた。今も鮮明に覚えている。

 

ユーハバッハは仕事をすべて終えるまで執務室に監禁されていたし、ジークフリードは簀巻きにされて中庭の1番高い木から吊るされた。

 

とある部下は助けてくれないどころか、ジークフリードの足元で焚き火を始めて爪先を軽く炙ってきたし、とある部下はハッシュヴァルトに怒られたくないが故に「エーン!」と泣き叫ぶジークフリードのことを見ないフリしていた。薄情者め。

結局、あの時は近くを通りがかった弟子にめちゃくちゃに泣きついて下ろしてもらったのだった。弟子からの(こんなのが自分の師匠か……)という呆れ顔は流石にちょっと悲しかった。

 

しかし、ハッシュヴァルト、出会ったばかりの時はむしろオドオドとしたところのある少年だったのにいつの間にか皇帝も懐刀も関係なくシバけるほどにすっかり逞しくなってしまった。どうしてだろうか。

ジークフリードは困り眉の可愛らしかった小さな頃のハッシュヴァルトをホワンホワンホワンと思い返す。

 

(「ジ、ジークフリード様、あの、お仕事が嫌だからと言って窓から逃げるのはいけませんよ……」)

 

(「ジークフリード様、陛下と一緒にお外に行く時は事前にボク、じゃなくて、私にお伝えください。帰る時間もです。……はい、日が暮れるまでには帰ってきてくださいね」)

 

(「ジークフリード様、アルゴラの部屋の扉に爆竹を仕掛けて遊ぶのはやめてさしあげてください。2段トラップにしてベッドの下にまで爆竹を設置しないでください」)

 

(「ジークフリード様。私闘をした団員を勝手に1ヶ月トイレ掃除係に任命してはなりません。まして団員の制服を「トイレ掃除係」と手縫いされたダサい蛍光ピンクのゼッケンに変えないでください」)

 

(「ジークフリード様、城の中庭に霊子で造ったダチョウとオオカミとコウモリとキリンとヤマアラシのキメラを複数体放たないでください。……耳はヒツジ?だからなんですか。今すぐ回収してください。今すぐにです。早く」)

 

「なーんであんなに厳しくなっちゃったんだろうな〜?」

 

ジークフリードはまるで検討がつかなくて首を傾げた。ちっちゃい頃はあんなに可愛かったのにな〜。今は眉間に皺を寄せてばっかりである。ユーハバッハもだが、整った顔立ちなのだからもっとニコニコとしていればいいのに、と思う。

 

そんなことを思いながら大きな欠伸をしていた時、ジークフリードの執務室の扉がノックされた。欠伸を噛み殺しながら返事をする。

 

「はいはいはいよー」

「ハッシュヴァルトです。入室してもよろしいですか?」

「うぉっあうおい!はぁい!」

 

噂をすればなんとやら。ジークフリードはあわてて適当な書類を掴んで引き寄せると、まるでずっとちゃんと仕事してましたよみたいな雰囲気で背筋を伸ばした。

 

「……? 失礼いたします」

 

扉の向こうから聞こえた変な鳴き声を疑問に思いつつも、金の髪の伸ばした美しい顔立ちの青年──ハッシュヴァルトがジークフリードの部屋へ入ってくる。

彼は机の前に座っているジークフリードを見て、珍しく仕事をちゃんとしていると思ったのか、満足げに一度頷いた。それからすぐに真面目な顔をして薄い唇を開いた。

 

「急に申し訳ございません。早急にお耳に入れていただきたいことがございます」

「緊急か、わかった、聞こう」

 

真面目な話だと思ったジークフリードは流石に真面目な顔をして頷く。ちらりと視線を落とした書類が上下逆さまだったのでさりげなく回転させた。

 

ハッシュヴァルトは一度廊下に顔を出すと、誰かに声をかけて中へ招き入れる。彼が恭しい態度で招き入れたのは、1人の少年だった。

その姿を見てジークフリードは目を開いて固まる。

 

「落ち着いて聞いてください。……ユーハバッハ様が小さくなられました」

 

そこにいたのは子供の姿のユーハバッハだった。

肩にもつかない黒髪、細い手足、どこかアンニュイで知性を滲ませた表情、見たものを虜にするような紅い瞳。

まさにジークフリードと出会ったばかりの頃のような、10歳前後の幼い姿がそこにあった。

 

それを瞳に入れた瞬間、ジークフリードはその場から立ち上がり、瞳を揺らがせながら「ユーフェン……?」と人前では避けている彼のあだ名を口にする。どこからどう見てもあの頃のユーハバッハだった。

 

「体と記憶が幼い頃に戻ってしまっているそうなのですが、これは一時的な魂魄の揺らぎによるものだそうで、数刻程度の時間の経過で元に戻るとの──、ジークフリード様?」

 

顔面を蒼白にさせたジークフリードは大股でハッシュヴァルトの隣に立つ、ユーハバッハの元へ向かう。

 

幼いユーハバッハは今の彼にとっては見ず知らずの男が自分の元へやってくるのを、けれど怯えも見せずにただ黙って見つめる。

むしろこちらへ来るジークフリードの顔を見て、何かに気がついたような表情を浮かべた。

 

ジークフリードはユーハバッハの前にやってくると、素早く彼の前に片膝をついた。

そして彼のまた小さなその掌を掬い上げるように取ると、震える唇で言葉を紡ぐ。

 

「……『捧げよ、銀の紋章・血色の(そら)・泥濘に沈む円環の』──」

「お待ちください、ジークフリード様。その詠唱は恐らくまだ出してはいけないものかと」

 

ヤバめな詠唱を始めようとしたジークフリードに、ハッシュヴァルトも流石に制止する。多分それラストバトルとかに出てくるやつだろ。

 

しかし、目の中をぐるぐるとさせながら顔を青くするジークフリードは「戻さなきゃ、魂……」と呆然と呟いてはぎゅっとユーハバッハの手を握るばかり。

ジークフリードの頭の中で「ユーハバッハが若返る」=「力を失って退化している」という図式である。四重苦の赤子に還る前に彼に力を、魂を戻さなければと考えるのは当然だった。

 

「よし!ハッシュヴァルト!確か少し前に反乱の予兆のある地下組織の人間をいくらか捕まえていたな!今すぐ全員処刑しよう!殺してユーフェンに力を戻そう!俺が殺してきます!自分頑張れます!土は土に!灰は灰に!塵は塵に!」

「落ち着いてください、ジークフリード様。今回のこれはそういった理由のものではありません。数時間程度で解消する二次創作のご都合展開(魂魄の揺らぎ)によるものです」

「……今、ルビがおかしくなかったか?」

「ルビとは何ですか?」

 

混乱するジークフリードとそれを諌めようとするハッシュヴァルト。その間で小さなユーハバッハはただ静かにジークフリードの顔をじっと見つめていた。

 

記憶を失い幼い姿となった今のユーハバッハにとって、ジークフリードとはあの悍ましい屋敷にやってきたばかりの青年だ。

メリダの息子であり、敬虔な宗教の信徒であり、年相応に生意気で気丈で、どこまでも優しい子供。

それでいて生まれ落ちるより前の己が奪わずにいられた唯一の魂。

そんな特別な存在でありながら、いつか己の魂を取り戻すためにその全てを奪わなければならない人。

 

そう、いつかどうせこの手で殺す相手。

今のユーハバッハにとってのジークフリードとはそういう存在だった。

今の彼にジークフリードと共に虚を滅却した記憶はなく、自分のために屋敷の人間を鏖殺する青年が現れることもまだ知らない。

 

それでも目の前で起きている断片的な事象から彼が一体何者なのかくらいは理解できる。

 

呼ばれている名前。

暁のような赤毛。

新緑のような瞳。

それから、こちらを呼ぶその愛称。

 

「……ジーク。ジークフリード・ジンツァー」

 

呟くようにその名を呼ぶ。そうすれば目の前の男は片膝を付いたまま嬉しそうに相好を崩す。

 

「……ああ、ユーフェン」

 

今のユーハバッハの記憶の中のジークフリードよりずっと大人の姿をしている。

それでも彼がジークフリードなのだと己の魂で理解した。

 

大人になったジークフリードの姿をユーハバッハはじっと見つめると、なんとはなしに手を伸ばしてその頬に触れる。抵抗も警戒もない体。ユーハバッハ自身の、魂の破片。不思議だった。どうしてだろうかと思うし、けれど納得するような気持ちも確かにあった。

 

「……嗚呼、そうか」

 

ジークフリードを見つめて、ユーハバッハは呟く。

 

「私はお前から奪わなかったのか」

 

本当はずっと願っていた。

ずっとそうしたいと思っていた。

もしもあの優しい青年からもう何も奪わずにいられたのなら、と。叶わないと知って、なお。

けれどその未来(ユメ)が、今目の前にあった。

 

うまく感情を形にできない表情のまま、ユーハバッハはただ静かにジークフリードの顔を見つめる。そのどこか呆然としたような、不器用な有様にジークフリードは少しだけ笑うと「ああ」と頷いた。

 

「お前が俺から何かを奪ったことなんて一度もねえよ、ユーフェン」

「…………そう、か」

 

微かな戸惑いを胸に抱えるユーハバッハを、ジークフリードは優しく穏やかに見つめる。子供の頃からやけに兄貴面をするところはあったが、まるで本当に兄のような振る舞いだった。

 

そう感じたところで、不意にジークフリードが指先で頰を掻きながらヘラヘラとどこか軽薄に笑う。

訝しげに思った時、ジークフリードが口を開いた。

 

「……なあ、ところでなんだが、ユーフェン」

「なんだ」

「ちょっと抱っこしていいか?」

「は?」

「や、だって、このサイズのお前すごい新鮮……懐かしい……」

「サイズ」

「だってデカくなったお前、見た目に全然可愛げがねえんだもん」

「デカい私」

 

何を言っているんだコイツは。

そう思いながらジークフリードを見つめていれば許可を出していないのに「よっこらせ」と立ち上がりながらユーハバッハの胴を両手で掴んで抱き上げた。当たり前のように腕の中に抱えられればやけに安定感がある。とんとんと赤子をあやすように小さな背中を叩きながら「ちっちぇ〜、かる〜」とジークフリードがはしゃぐのを眺めながらユーハバッハはもう好きにさせた。

 

高くなった視野に周囲を見渡せば、この場にいる唯一の第三者と目があってその存在を思い出す。

ユーハバッハは近くにあったジークフリードの耳を引っ張ると彼の名を呼んだ。

 

「ジーク」

「痛、なんだよ」

「あれは誰だ」

 

視線の先には長い金糸の髪を持つ美しい顔立ちの青年がいた。

ジークフリード同様白い制服を纏ったハッシュヴァルトはユーハバッハの瞳に捉えられて一瞬ひるんだような顔をする。敬愛する陛下とはいえ、今のユーハバッハはハッシュヴァルトにとっては知らない子供だ。どう向き合えばいいのかわからないのも当然だろう。

そんな二人の様子に気がついたジークフリードは「あー」とどう説明すべきか考えるような顔をした。

 

ハッシュヴァルトの言葉を信じるのならば、これは数時間で醒める白昼夢のようなものだ。

問われれば答える気はあるが、滅却師の帝国だのなんだのをこちらから詳しく説明してやる必要も時間もないだろう。

故にジークフリードは端的に答えた。

 

「んあー、えーっと、この子はユーグラムって言って」

「ああ」

「お前の息子」

「………………ほう」

 

相槌を打ちながらも目を丸くするユーハバッハの脳内がNow Loading状態になったことにジークフリードは気がつく。

まあ、目の前に自分よりデカい他称息子が出てきたら驚くのも当然ではある。

 

ましてハッシュヴァルトの髪色や顔立ちはユーハバッハとは大きく異なる。どれだけ見つめても外見から血筋を感じられない。当たり前だ、そもそも血縁関係ではないのだから。

けれどハッシュヴァルトはユーハバッハの息子だ。

ジークフリードがそう思っているからこそ、彼の言葉に嘘はない。故にユーハバッハは嘘の感じられない言葉に微かに困惑していた。どうやら目の前の青年は本当に自身の将来の息子らしい、と。

 

ジークフリードが冗談だと前言撤回しないことを察したユーハバッハはハッシュヴァルトを見つめる。それから再びジークフリードの耳を引っ張ってその耳は向かって言った。

 

「……私が誰かを孕ませたのか?」

「あーもー言い方がボケナス」

「……私が、か?」

 

疑問を抱くユーハバッハだったが、考えても詮無きことと思ってかすぐに意識をハッシュヴァルトへ向ける。それに気がついたハッシュヴァルトは恭しく頭を下げ、それから少しの躊躇いの後に一歩、ジークフリードに抱えられるユーハバッハへ近づいた。

 

「陛下、……ユーハバッハ様」

「……ユーグラム、と言ったか」

「……ええ、ユーグラム・ハッシュヴァルト。あなたの第一の息子です」

 

そう名乗った彼をユーハバッハはじっと見つめる。

見目ではなく、そのさらに奥にあるものを確かめようとするかのように。そしてその果てに少年は息を吐いて理解に至った顔をした。

 

「そうか、お前は私と同じく不全の者か」

 

その言葉にハッシュヴァルトは目を細めて頷く。

微かに眉間に寄った皺は溢れる感情を抑えようとするためのものだった。無意識に胸に手を当てて彼は言葉を紡ぐ。

 

「……はい、その通りです、ユーハバッハ様。滅却師としてはあまりにも不出来なれど、この身はあなたに見つけていただいたことで価値を得ました」

 

己と同じ性質を持つハッシュヴァルトの存在にユーハバッハは微かに瞠目し、しかし納得する。

そのそばでジークフリードはハッシュヴァルトの「不出来」という自嘲の言葉に「そんなことない、そんなことないぞ、ユーグラムはいつも頑張ってる、今日もめちゃくちゃ良い子」と合いの手を入れていた。ユーハバッハは呆れ故に、ハッシュヴァルトは照れ故に無視をする。

 

大人になったジークフリードと、己の息子だというハッシュヴァルト。

ユーハバッハはこの空間を、そばにいる二人を眺めて不思議な感覚に陥る。

 

これが自分の未来だというのだろうか?

無二の親友と、自身と同じ性質の我が子がいる未来。

自分の都合のいい夢であるということを彼は疑えなかった。

 

己は簒奪し、殺害することしかできない悍ましい化け物。

そんな化け物にきっとこんな未来はやってこない。来るはずもない。

だから多分、きっと、これは夢なのだろう。

 

あの青年から何も奪わずに共に生きられたという夢。

他者と真っ当な繋がりを得て、その救いになれるという夢。

誰かに、世界に、この身を受け入れてもらえるという夢。

 

そうであって欲しいと願い続けた果てに見た、下らなくて、つまらなくて、意味のない白昼夢。

だからユーハバッハはこの心地の良い悪夢に身を委ねることにした。

 

こんなもの、どうせ夢だ。

いつかは醒めるだけの、都合の良い夢でしかないのだから、今だけはその残酷で優しい夢に寄りかかったって構わないだろう。

 

ただ唯一願ったのは、夢から醒めた時にこの夢の内容を忘れていたいということだけ。覚えていたらきっと、叶わない現実との落差を思い知るだけだから。

 

「? ユーフェン、どうかしたか?」

「……どうもしない。それより、何か話をしろ、ジーク」

「何かってそりゃあまた漠然とした……」

「どんなことでもいい。お前の話を聞きたい」

 

ジークフリードの肩に手を置いて、そう口にする。視線を合わせれば逸らすことなく見つめ返された。

彼の声も、その声で名前を呼ばれることも、警戒の無い瞳で見つめられることにも深い満足を感じてしまう。胡蝶の夢、泡沫の温もり。

 

須臾と知っても、その心地よさに浸っていたかった。

 

 

 

幼い子供を膝に乗せてソファに腰掛ける成人男性という図は側から見れば事案というか、治安維持部隊(ポリスメン)通報案件だったが、それを観測しているのはハッシュヴァルトだけだったので通報には至らなかった。

 

楽しげに話をする二人を穏やかな目で見つめていたハッシュヴァルトは不意に吸い寄せられるように窓の外へ視線を向けた。

この部屋にやってきた時よりも傾いている太陽に、ハッシュヴァルトは過ぎゆく時の流れに気がついて思わず上官へ声をかける。

 

「ジークフリード様──」

 

と、その時だった。

ボワンと間の抜けた音と共にユーハバッハの体から白煙が上がったのは。

 

驚いたようなジークフリードの声ののち、上がった白煙が段々と消えていく。

その果てにハッシュヴァルトの視界の中にあったのは、ソファの上に腰掛けるジークフリードの上に腰掛ける、ハッシュヴァルトのよく知る大人の姿をしたユーハバッハだった。

 

突然子供の体から2メートルもある大人の体に変化したユーハバッハとソファの間で押し潰されたジークフリードから「み゜」という可哀想な声が漏れた。

その一部始終を見てからハッシュヴァルトはもう遅いとわかっていたが、一応とばかりに呟くように言った。

 

「……お時間です、ジークフリード様」

「言うのちょっと遅かったなあ!」

 

喚くジークフリードの上に座ったまま、ユーハバッハはゆったりと周囲を見渡してから深く息を吐く。

 

「……ふむ、ここ数刻の記憶は無いが状況は察しているぞ、ジークフリード。私のためにわざわざ椅子の役目を買って出るとはな、その忠誠心に涙が出そうだ。座り心地の悪さ以外に文句は無い」

「カラッカラの目でよく言うなあ!つか早く退けって!重てえんだよ!うお!だから体重かけんな!こら!デブ!」

「こんなところにジークフリードの腕がある。キメておくか、関節を」

「あだだだだだだだだ!バカ!ダメな方に曲がってる!今変な音した!バカ!デブ!可愛くない!デカいお前は本当に可愛くない!だだだだだだだだ!」

 

ギャンギャンと騒ぎ立てる200歳以上歳上の彼らを見てハッシュヴァルトは(お二人は本当に仲がいいな……)と(まるで子供と変わらないな……)の二つの感情を覚えた。

それから彼らの仲の良さを尊くは思うが、自分は別に友達とそういう関係を築きたいわけではないな、とも。

 

なんかもっとこう、背中を預け合うみたいな、言葉はもう必要ないみたいな、そういうかっこいいのがいい。関節をキメ合ったりとかは、別にあんまりしたくない。

 

喧騒から意識を飛ばしたハッシュヴァルトは遠い目をしながら、今ここにはいない無二の友へ思いを馳せた。

 

嗚呼、バズ、落ち込んだりもするけれど私は元気です。

…………元気、まあ、元気、か?多分。わかんなくなってきたな。バズ、君に会いたい。

 

バキ!と勢い余った音が聞こえたハッシュヴァルトは、次に飛んでくるであろう耳を裂くような悲鳴に備えて両の耳を掌で押さえた。

 

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