ギリ、九月だから!
コレ、十月分じゃないから!
あと、オリジナルのラブコメも始めました!
私立文系のくせに彼女が出来たことの無い哀れな男子大学生が同級生のクール系美女とワンナイトしちゃった話
https://syosetu.org/novel/386315/
ちょくちょく投稿してくので、こちらもよろしくお願いします!
数分後、僕とアイズさんは隣合って座っていた。なんなら、机の下でアイズさんと手を繋いでいる。バレたらどうしようとか、色々考えたけど、そんなことがどうでもよくなるぐらいに幸せだから既に受け入れてしまった。机を挟んだ向こう側にはお客様。リヴェリアさんが座っている。それも何だかニコニコしながら。こんな風に言ったら不敬そのものかもしれないけど、リヴェリアさんは物凄くご機嫌だった。もう雰囲気からして嬉しそうで仕方がない。
一方、僕はというと中々に複雑な心境だ。リヴェリアさんは僕とアイズさんの関係を知っている……はずだ。今思えば、黒竜戦直前にリヴェリアさんとした会話。あの時点である程度の予想がついていたのかもしれない。
けれど、それは僕とアイズさん、どちら側の認識に近いのかが分からない。アイズさん側の認識に近ければ、既にお付き合いをしているという可能性すらある。何とか、話を合わせないと不味い。正直言って、僕とアイズさんの関係はちょっとばかり歪だ。いや、だった。
それを僕たちはもう受け入れている。けど、他の人が同じ様に受け入れてくれるのかは別の話だと思う。受け入れてもらえるかどうかはさておき、真実を話すことが誠意だと言われたら、そうだろう。
僕もアイズさんとこれからどうするのかは話して決めないといけないとは思っていた。思っていたんだけど……。早すぎます……!!リヴェリアさん、早すぎです!!心の準備もなにも無いです!
真実を伝えるという誠意、せめて心の準備だけでもさせて欲しいという本音。本当はもう少し時間があったはずだったんだ。ただ、そうはいかなかった。リヴェリアさんは、アイズさんの保護者は今、僕の目の前に座っている。逃げたい。そんなことが出来ない状況なのは分かってるけど……。
そんなわけで、今の僕に求められているのは、現状を切り抜けるということ。何事もなく、リヴェリアさんに不安も抱かせずに帰ってもらう。そうして、アイズさんと今後についての話をする時間を作る。
かけた時間は一瞬。それでも第一級冒険者は伊達じゃない。つい数時間ぶりに発揮された思考の高速化。こんなことに使って良いのか疑わしいけれど、そんなことを言っていられる状況にない。
そんなことを考えながら、チラリと横目でアイズさんを見ると、アイズさんも真剣な眼差しを、僕に投げかけていた。考えていることは同じだ。今の僕たちは過去最高に通じ合っている。不安や混乱に満たされていた僕の頭の中に、そんな高揚感が加わって混沌が極まっていく気がする。
やってやる。僕とアイズさんの二人で、この危機も乗り越えて見せる!決意を新たに眼前のリヴェリアさんに向き直って、切り出した。
「申し訳ございませんでしたぁあぁあああぁ!!!」
「な、何を謝っている!?」
何というか、無理だった。冷静に考えて、無理だった。完全に開き直って、リヴェリアさんを誤魔化しきるのは、無理だった。
リヴェリアさんにとって、アイズさんは愛娘のような存在だ。アイズさんも、口にはしていないけど、リヴェリアさんへの深い親愛の情は、二人と接するようになってまだ短い僕でも、察せる程だ。
そんな人に、いきなり娘さんと結婚しました!よろしくネ!とか、正気で言えるわけない。しかも、関係は悪くないとはいえ、違うファミリアの団長と幹部が、だ。どう考えたって不味い。大丈夫な要素は何処!?なんて叫びだしたくなるけど、必死になって堪える。
それでも、僕とアイズさんは、す、好き合って、結婚したのだ。いや、これからする……のかもしれないけど。兎に角、障害があることは知っていたのだ。その上で結婚するのなら、通すべき筋という物があるだろう。特に
だから、謝罪。いや、ぶっちゃけ気まずくて仕方なかった、なんていう理由もあったりなかったりするかもしれないけど……。そんな僕の心情を察してか、僕の謝罪に驚いていたリヴェリアさんが再び穏やかな笑みを浮かべた。
違和感が凄い……。リヴェリアさんって、こんな笑い方、するんだ。いや、僕がリヴェリアさんのことを知らないだけかもしれないけど、ちょっと、いや、かなり意外だ。
ロキ・ファミリアの副団長としての一面ばかりを見てきたってことなのかもしれないけど、それにしたって、予想外の連続だ。そもそも、こんなに早く来るってことも、普段ならなかったんじゃないだろうか。
リヴェリアさんにとって、それぐらいのことが起きたということなのかもしれない……。なんて考えが浮かんだ瞬間、僕は頭を思いっきり左右に降った。そりゃそうでしょ!黒竜を倒したかと思ったら、アイズさんが結婚するなんて大事も大事だよ!?
「ふむ、このままお前たちの百面相を眺めているのも悪くないが、今日は無理を言ってここまで来たのでな」
言外に、話を始めようとするリヴェリアさん。揶揄っているのか、リヴェリアさんの雰囲気が少し変わったのを感じて、気恥ずかしさを覚えてしまう。隣からもぞもぞと動く気配がした。言うまでもなく、アイズさんだ。
僕以上にいたたまれないのか、最近見せてくれるようになった、幼さの残る表情を浮かべたアイズさんは、言葉を返した。
「それじゃあ、今日はどうしたの?」
こんなに早く来るなんて言ってなかったのに。隣りにいる僕が微かに聞き取れる程度の微かな文句をリヴェリアさんに言うアイズさんは、それこそ本当の
「何、元より顔を出す予定だったのだ。アイズ一人では、看病もままならんだろうし、むやみやたらと他の者を巻き込むわけにもいかん。そうなれば、私が来る他ないだろう。まぁ、ベルの体調も予想以上回復が早いので、実際に看病が必要かどうかは、怪しいところだがな?」
僕、リヴェリアさんに看病される予定だったの!?
「えっと、それに加えて、アイズさんからの連絡があったから、こんなに早くになったんですか?」
「うむ。朝からあんなことを言われれば、顔の一つでも見に行きたくなるものだろう。とはいえ、第一級冒険者が即日、オラリオを離れるということは、まず無理だ」
「それで、無茶をしたの?」
「あぁ、今すぐ私をメレンに向かわせなければ、オラリオ中の
思ってたより、凄い無茶してる!?王族としてふるまう事を良しとしないリヴェリアさんがここまでするなんて……。それだけ、アイズさんに会いたかったってことなんだ。
「コホン。話を戻そう」
そんな声に背筋がピンと伸びる。もしこれで、娘はやらん!とか言われたらどうしよう……。いやな妄想が脳裏をよぎりながらも、リヴェリアさんの声に耳を傾ける。
「アイズ、ベル。結婚おめでとう」
リヴェリアさんの口から出た言葉は、短かった。それでも、たったこれだけの言葉を聞いただけで、僕は胸が苦しくなるほどの、歓喜に身を包まれた。僕たちは今、祝福されている。……本当は無理かもしれない、なんて思ってしまったことだ。
幾ら僕とアイズさんが結婚すると言っても、それを受け入れられない人もいるだろう。それは仕方がないことなんだと思う。揉めに揉めるのは目に見えていて、そんな中で身近な人から否定された時の衝撃は、どれ程なのか。
そんな不安が、瞬く間に消し飛んだ。嬉しくて、嬉しくて嬉しくて、僕は……ちょっとだけ泣いてしまった。そして、それはアイズさんも一緒だった。見なくても、分かってしまう。声を上げる訳でもなく、机の下で繋いだ手に落ちてきた雫は、暖かかった。
「「リヴェリア(さん)、ありがとう(ございます)!」」
◇◇◇
それからしばらく、僕たちは話をした。言うのか迷っていた、僕とアイズさんのすれ違いのことも、結局話してしまった。僕の一目惚れだったことも、二人で秘密の訓練をしていたことも。僕とアイズさんの一年間にあった出来事の多くを、僕たちはリヴェリアさんに話した。
笑みを浮かべることもあれば、沈痛な面持ちで額に手を当てることもあった。お説教もされたけれど、最後には笑って、この家を去っていった。また来ると、暫く二人でゆっくり過ごすようにと言って、リヴェリアさんはオラリオに帰っていった。
「オラリオの方は気にするなって言ってた」
「言ってましたね」
そう。リヴェリアさんはそんなことまで言ってくれた。何から何までお世話になりっぱなしで、頭が上がらない、なんて思いながらもアイズと他愛のない会話を続ける。因みに、今は大きめの長椅子に二人で寄り添い合うように座っている。恥ずかしくも幸せな時間が延々と過ぎていくのを感じながら、そんな時間の流れに流されるままでいた。
「どんな風にするんだろう?」
「うーん、どうするんでしょうか」
分からないね、なんて言って笑うアイズさんは、本当に可愛くて、愛おしさが溢れてしまう。握ったままの手を少し動かして、アイズさんの指をなぞる。ゆっくりと、その存在を確かめるように触れる。
特に、何かをいう訳でもない。言いたいことはたくさんあるけど、ありすぎて困ってしまう。そんな僕の些細な動作がくすぐったいのかアイズさんが、少し身を震わせた。可愛い。とめどなく湧いてくるアイズさんへの愛情が、僕の中を満たしていく。
ちょっとずつでも表面に出していかないと、僕はアイズさんへの想いで破裂してしまうんじゃないか。そんな下らない想像を真剣になって考えてしまう。
「どれくらいここで暮らせるんでしょうか?」
「どれくらいだろう?リヴェリアはオラリオが落ち着くまでって言ってたけど、こんなこと初めてだから、分からない、かも」
「そうですよね、分からないですよね」
「それでも、暫くはここでゆっくりしろって、言ってたから」
だから、大丈夫だよ。そう言ってアイズさんは僕の頭を撫でてきた。普段なら恥ずかしさやらなんやらで飛び上がってしまうような状況なのに、今はそのまま、穏やかな心地良さに身を委ねてしまう。窓から差し込んでくる夕日が、硝子をキラキラと輝かせている。淡い光に包まれていると、次第に瞼が重くなる。
「疲れてるよね。ちょっと遅いけどお昼寝、しよう」
どこか遠くの方から聞こえてくるアイズさんの声は、温かな風にのって僕の深いところまで入ってくるようだった。
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