もしプリキュアと自身の名前を聞き間違えた力士、くりきゅうたがチョッキリ団の戦いに巻き込まれたら……?

 ※この作品はキミプリ一話をベースに話を作っています。キュアアイドル以外のプリキュアは登場しませんし、くりきゅうたの性格や設定に解釈不一致が発生する可能性があります。

1 / 1
 キミプリ1話見た勢いで、くりきゅうたが登場する二次創作書いたら1万文字越えました。キミプリ知らん人向けの説明入れたからってのもあるけど、どうしてこうなった……!?

 一応注意事項。
 作中の相撲関連の描写は基本的に「へー、そうなんだー」ぐらいの軽さで、現実重視せずに流してください。それっぽい事書いて誤魔化してるだけなので。


くりっときゅんきゅん!?くりきゅうた初陣!

 くりきゅうた

 幼少の頃から体格に恵まれ、その才能を活かすかのように相撲の世界へと脚を踏み入れた彼は、一つずつ階段を踏みしながらも着実に階級と言う名の頂点を登りつつあった。

 

 彼は周りから相撲界の伝説(スター)になると期待を持たれているが、どんな人間にも欠点は存在する。当然くりきゅうたにもだ。そんな彼の欠点は、のんびり屋で周りに流されやすい事である。

 

 本来ならば個性や彼と言う人間を生成する性格の一つとして受け入れられそうな部分であるが、彼の場合は少し……いや、とてつもなくその傾向が強かった。

 

 幼稚園では飛んでいる蝶に視線を奪われて先生の話を聞かず、小学生ではクラスメイトが面倒臭がる雑用を流れるように押し付けられ、中学生では受験期間の人生を左右する大事な時期ですら勉強よりも食欲を第一に優先していた。

 

 くりきゅうたは手のかかる子どもであったが、彼の両親は性格を無理矢理矯正させるような行動には出なかった。

 何故ならそれすらも一つの個性として受け入れていたからである。だがせめて……少なくとも、彼自身が大切に思ってる物事に関してだけでも、周りに流されず我を強く持ってほしい。そう思っていた。

 

 そんな両親からすれば、相撲と言うスポーツの世界へ彼が進もうと決意したのはまさに渡りに船だろう。周りが全員ライバルであり仲間である世界ならば、きっと追い付け追い越せの精神で成長してくれるだろう。そのような両親の期待を胸に、相撲界へ脚を踏み入れた【くりきゅうた】は現在───

 

「あの、プリキュアですか?」

 

(…………あ、今名前呼ばれたかな?)

 

「そうだよ」

 

 何一つ変わっていなかった。

 

 

 

★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

 

 

 

 稽古が休みである日の昼下がり。

 キッチンカーでホットドッグと飲み物を買ったくりきゅうたは、偶然隣に座っていた女の子の「プリキュアですか?」と言う言葉に対して何も考えずに返事をしていた。

 

「違いますよね~……ってええ!?」

 

 そんな彼の性格を知らない女の子【咲良(さくら)うた】は、何度目になるのか分からないと様子を醸し出しながら、また違った落胆すると共に、彼の返事を脳内で何度か反響させる。

 そしてくりきゅうたの言葉の意味を理解すると、遅れながら驚いた声を発した。

 

 もしこの場に彼を知る人物。もしくは咲良うたがくりきゅうたについて知っていれば、この勘違いはすぐに訂正されただろうが、それはあくまでIFの話であり、現在進行形で話が起動修正される事は無い。

 

「居たー!?」

 

「居たプリ!?」

 

 咲良うたと、ぬいぐるみらしき存在───咲良うたの声にかき消されて、ぬいぐるみに喋っているのに誰も疑問を思わなかった───は大声を出して、くりきゅうたを驚いたような様子で見る。

 

「あ、あの!」

 

「ん?」

 

「私に着いてきてくれま───」

 

グゥゥゥゥゥ~…………

 

 勇気を振り絞ったかのような言葉は、咲良うた自身の腹の音によって遮られた。

 咲良うたは思わずと言った様子で顔を赤くする。

 

 実は咲良うたとぬいぐるみらしき存在がくりきゅうたに出会う直前。

 咲良うたはキッチンカーで販売されていた、ホットドッグをぬいぐるみらしき存在である妖精の【プリルン】と、半分こにする約束と共に購入していたのだ。

 しかしプリルンは空腹のあまり話を聞いておらず、ホットドッグを丸々一個食べてしまい、咲良うたは空腹なのである。

 

 また買えば良い。そう言葉を掛けるのは簡単ではあるが、咲良うたは中学生である。ホットドッグ以外にも財布の中身を使ったのが原因一つではあるが、それが無くともお小遣い制である咲良うたからすれば、ホットドッグ一個ですら高額食品であり、中々手が出しにくい代物である。

 

 とまぁ長々と話したが、簡潔に述べると金欠である。

 目の前に食べ物があるのに食事が出来ないのは拷問にも等しい苦行である。

 それを再認識した咲良うたの腹は再度、空腹であると訴える音を奏でる。

 

「食べる?」

 

「え、良いんですか!?」

 

「うん」

 

 その音を聞き逃したり、知らないフリをするほどくりきゅうたはのんびり屋でも薄情な性格ではない。それ以前に彼は善人の類いである。

 のんびり屋で流されやすい面が目立つが、それは決して人嫌いであったり、意地悪な態度をわざと取っている訳ではない。ただマイペースなだけなのだ。

 

 くりきゅうたはまだ口を付けていないホットドッグを咲良うたに渡し、席を立ち自分用のホットドッグをキッチンカーで再度購入して席に座る。

 

「わーい! ありがとうございます! それじゃあ頂きま~……ってそうじゃないよ!」

 

 咲良うたは空腹と言う名のスパイスが効いた状態で大きく口を開けてホットドッグを食べようとしたが、何故自分がこの場に居るのかを思い出して、誰に対して言う訳でも無く、ただ一人虚空にツッコミを入れる。

 

 端から見れば奇行と捉えかねない行動であるが、くりきゅうたはホットドッグ一個では足りなかったのだと検討違いな解釈をした。

 最近の子はよく食べるなぁと的外れな事を考え、もし食べきれなかったのなら自分が食べようと、ホットドッグを追加購入しようと腰を上げようとする。

 

「あの、すみません! プリルンの故郷が大変なんです! 着いて来てくれませんか!?」

 

「うん。良いよ」

 

(何処に行くんだろ)

 

 くりきゅうたは話を聞いていなかった。

 咲良うたの「着いて来てほしい」の部分しか聞いておらず、具体的な場所は右から左に流してしまっていた。が、くりきゅうたは特に疑問も思わず咲良うたの案内に素直に従う。

 

 そして案内された場所は河川敷であった。

 桜が舞うこの季節は綺麗な川と、川の流れに従うよう流れる綺麗な桜の花びらが景色として有名であり、SNSでは映えスポットの一種として扱われているこの場には、何故かパックリと真っ二つに割れている桃が置かれていた。

 しかもただの桃ではない。

 

(大きい桃だなぁ)

 

 咲良うたが……もっと言えば、一般的な中学生が抱えて持ち上げる程の大きさの桃が川に置かれていた。

 まさしく桃太郎を彷彿とされるようなモノではあるが、食料としての機能は兼ね備えていない。それどころか、これはプリルンがこの街へ来るために使用した乗り物である。

 

 本来ならこの世界に妖精は存在しない。

 それなのに妖精であるプリルンがこの世界に居る理由は、プリルンの故郷である【キラキランド】がある組織によって真っ暗闇にされてしまったからである。

 プリルンの故郷を真っ暗闇にした相手は【チョッキリ団】のボス【ダークイイネ】であり、キラキラでいっぱいな平和だった世界は一瞬でその輝きを失ってしまった。

 

 プリルンは真っ暗闇になってしまった自分の故郷をどうにかしようと、桃の中に入り川をどんぶらこ~どんぶらこ~と流れ、咲良うたやくりきゅうたの居る【はなみちタウン】へ辿り着いた。

 

 故郷を救う重大な使命を背負ったプリルンと、歌うのが大好きな咲良うたが出会ったのは今日が初日であり、その出会いはまさしく偶然であった。

 

 その出会いは、咲良うたとプリルンがくりきゅうたと出会う数時間前に遡る。

 咲良うたが飼っている犬の散歩をしていると、川をどんぶらこ~と桃太郎の如く流れる大きな桃を見つけた。

 不思議、もっと言えば不審に思った咲良うたは見た目以上の重さに苦戦しながらも、なんとか桃を川岸へと運んで、ジッと観察した。

 

 この桃は何処から流れてきたのか。

 中に誰か入っているのか。

 目の前の不思議な桃に対して溢れ続ける疑問に終止符を打ったのは、その桃から飛び出してきたプリルンであった。

 

 ぬいぐるみが動いたと驚く咲良うたに、プリルンは自分はプリルンと言う名前であり、キラキランドを救ってくれる伝説の救世主【アイドルプリキュア】を探す為にはなみちタウンを訪れたと説明する。

 

 しかし咲良うたはそのプリルンが言う救世主に心当たりが無かったが、プリルンの泣き落とし……もとい、誠心誠意心の籠ったお願いをされて、救世主と呼ばれるプリキュアを探そうと街へ繰り出し、くりきゅうたと出会い今に到るのである。

 

「良かったね、プリルン」

 

「プリ! 行ってくるプリ!」

 

 プリルンはプリキュアが見付かるか不安であった。

 故郷であるキラキランドを救う大役を任されている部分もそうであるが、そもそも伝説の救世主と伝えられているプリキュアはおとぎ話程度の存在である。

 

 いわばUMAのツチノコや、同じように伝説の存在であるユニコーンを探すのと同義である。存在が不明な相手を探すならば、どっこいどっこいの可能性ではあるが、探せば居るかもしれない人の言葉を喋る動物を探す方がマシである。

 

 だがプリルンにはプリキュアに頼るしか無かった。

 容姿は、性別は、性格は、趣味思考は……何もかもが不明で先も見えない。当ても無い。頼れる存在は誰も居ない異界の地でプリルンはプリキュアを探し出す重要な使命を成し遂げたのである。

 

 尤も、目の前に居るのはプリキュアではなく、くりきゅうたでなので人違いではあるが。

 

「バイバイプリ~!」

 

 そうとは知らずにプリルンは、くりきゅうたと共に桃の中へ入り川の流れに逆らって(・・・・)どんぶらこ~と流れていく。

 エンジンを積んでいる様子も、外から誰かが押している訳でも無いのに川の流れに逆らえているのは不思議ではあるが、妖精が存在するのだから、何か特殊な力でも働いているのだろう。

 

 そうして紆余曲折ありながらも、プリルンはプリキュア(くりきゅうた)を連れてキラキランドへ帰っていったのであった。

 

~おしまい~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とはならない。

 改めてだが、くりきゅうたはプリルンの探しているアイドルプリキュアとは全くの別人である。そんな別人をキラキランドに連れていった所で意味は無い。

 現在のキラキランドをどうにか出来る存在は伝説の救世主プリキュアであり、相撲界の伝説(スター)と期待されているくりきゅうたではないのだから。

 

 それにプリルンが気付いたのは、くりきゅうたを連れてキラキランドに帰ってきてからであった。

 

『キラキランドに着いたプリ! それじゃあプリキュア、キラキランドを救ってほしいプリ!』

 

『プリキュア? 僕、くりきゅうただよ』

 

『プリー!?』

 

 時間にして凡そ数分も無かっただろう。

 プリキュアと思った人物が全くの別人であると今更気がついたプリルンは、キラキランドからはなみちタウンへ急いで戻るのであった。

 

「うた~! プリキュアじゃなかったプリ!」

 

 そして桃の中へくりきゅうた一緒に入り、川をどんぶらこ~と流れて1日掛けてはなみちタウンへ戻ってきたプリルン。

 

 デジャブと言うべきか。犬の散歩をしていた咲良うたは、見覚えのある大きな桃がどんぶらこ~と流れてくるのが目に入り、まさかと思い拾い上げると、中からプリルンが飛び出してきた。

 

 泣きながらくりきゅうたはプリキュアでは無かったと話すプリルンに、咲良うたは内心「やっぱり?」と、心の隅で考えていた予想をこぼす。

 

 プリルンの探すプリキュアがどんな人物か咲良うたは知らない。

 知らないが、少なくともネット検索で「プリキュア」の単語が一つも引っ掛からなかった所から考えるに、そもそも伝承として語り継がれているだけの架空の人物。もしくは存在がしれ渡ってないかの二択が思い浮かぶ。

 そんな中、自分から「僕プリキュアだよ」と堂々と返す人物がプリキュアと言われても、本当にプリキュアなのか疑っても不思議ではないだろう。

 

「ねぇ。今更だけど、それなに?」

 

 プリキュア探しが振り出しに戻り、咲良うたの胸の中で悲しみに明け暮れるプリルン。

 その状況を把握出来ていないのか。それとも目の前の状況を把握する以上にプリルンに対する興味が勝ったのか。本当に今更ではあるが、くりきゅうたはプリルンについて咲良うたに尋ねた。

 

「あー……」

 

 くりきゅうたの質問に咲良うたは言葉を詰まらせる。

 正直に「この子はプリルン! キラキランドを救う為に、伝説の救世主アイドルプリキュアを探しに来た妖精だよ!」と言った場合、大騒ぎになるのが目に見える。

 もし一瞬だけ動くのや喋ってるのを見られたのなら、静かにその場を去ったり腹話術などと言って誤魔化せるだろうが……プリルンはくりきゅうたの目の前で普通に動いていし、喋っている。誤魔化すのは至難の技だろう。

 

 どうしようどうしようと頭を悩ますが、そう瞬間的に最適解が思い浮かぶ事は無く、時間だけが過ぎてより怪しく思われるだろう。そして咲良うたは……

 

「喋るぬいぐるみです!」

 

 雑な嘘をついた。

 何処に一人で動いた挙げ句、キラキランドなる場所に案内してくる喋るぬいぐるみが居るのだろうか。現実的に考えてあまりにも有り得ない嘘と目の前の現象を見たくりきゅうたは……

 

「へー」

 

 普通に受け入れた。

 くりきゅうた自身、前のめりになるほどプリルンの正体について興味が沸かなかったのもあるが、一番の理由は「そういうモノがあるんだな」と、目の前の子がそういうなら、そうなんだろうなと周りに流されやすい性格が影響していた。

 

「ほっ」

 

 なんとか危機を切り抜けられたと咲良うたは息をつく。

 そしてくりきゅうたは短いながらも濃い時間を「不思議な事もあるんだな」と、しっかり者が一人でも居れば否定が入りそうな事を考えながら河川敷を後にするのであった。

 

 

 

★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

 

 

 

「うわーッ!」

 

「なんだあれ!?」

 

「逃げろ!」

 

 そこから数時間ほど。

 はなみちタウンでは昼間であるのに何故か空が真っ暗になる現象と共に、謎の怪物【マックランダー】が暴れ始める騒動が起こっていた。

 

 理由はプリルンの故郷、キラキランドを真っ暗闇にした組織チョッキリ団の仕業である。チョッキリ団はキラキランドを真っ暗闇にしただけでは飽きたらず、今度は咲良うたの住むはなみちタウンですらも、真っ暗闇にしようとしていたのであった。

 

「うた! 危ないプリ!」

 

 そんな危険な場所にプリルンと咲良うたは居合わせていた。

 咲良うたはキラキランドを襲ったチョッキリ団が操るマックランダーを止めようと、マックランダーの目の前に飛び出して彼女なりの方法を……『歌』を歌って、相手をキラッキランランに。つまりは心を浄化しようとする。

 

 これは決してふざけている訳ではない。

 そもそもとして、マックランダーとは決して無から生まれた存在ではない。チョッキリ団によってキラキラを奪われ、真っ暗闇にされた人間を核にして産み出されているのだ。

 そして今暴れているマックランダーの核は、咲良うたの知人【絵真さん】である。咲良うたはどうにか絵真さんを救おうと考え、自分の歌でキラキラを届けられれば、助けられると思ったのだ。

 

「♪~♪~」

 

「…………目障りだ。マックランダー、アイツをどうにかするのですぞ!」

 

 しかしその歌はマックランダーには届かない。

 咲良うたの歌が核とされている絵真さんに届き、マックランダーを内側から破って脱出。だなんて奇跡のような出来事は起こらない。

 

 それでも咲良うたは歌い続ける。この歌でキラッキランランになってくれると信じて。

 だが、マックランダーを産み出したチョッキリ団所属の【カッティー】からすれば、その行動はひたすらに無意味で邪魔だと感じたのだろう。

 カッティーはマックランダーへと指示を出し、マックランダーは与えられた指示に忠実に従おうと咲良うたへ攻撃を加えようとする。

 

「ッ!」

 

 咲良うたは歌うのを中断し、マックランダーの攻撃に備える。

 尤も、咲良うたに……ただの中学生に出来る事など、精々心の準備をして攻撃を避ける一択である。

 

「なっ!」

 

 しかしその必要は無かった。

 何故なら誰かが咲良うたの目の前に飛び出し、マックランダーの攻撃から庇ってくれたからである。

 マックランダーの攻撃によって土煙が発生して誰なのかはよく見えないが、少なくとも攻撃を喰らっても吹き飛ばない所を見るに、かなりの実力者。もしくは攻撃を受けても耐えれるほどガッツのある人物だろう。

 

「誰ですぞ!?」

 

「まさか……アイドルプリキュアプリ!?」

 

 カッティーは第三者の乱入に動揺し、プリルンは伝説の救世主アイドルプリキュアが助けに来てくれたのかと、眼を輝かせる。

 そして土煙が晴れた先に居たのは……

 

「プリキュア? 僕、くりきゅうただよ」

 

「「「?????」」」

 

 くりきゅうたであった。

 ついこの前のやり取りを思い出すプリルンと咲良うた、そして全く知らないどころかプリキュアですら無い人物の登場に言葉を失うカッティー。

 

 何故くりきゅうたがこの場に居るのか。

 チョッキリ団が起こした騒ぎに駆けつけたから?

 実はくりきゅうたの正体がプリキュアだったから?

 空腹のあまりマックランダーを食べ物と見間違えたから?

 

 否、どれも違う。

 正解はフラフラと歩いてたらマックランダーが暴れるこの場に辿り着いたから。咲良うたを庇ったのは危険だと感じたからであるが、この場に居る事そのものは偶然である。

 

「……ハッ! マックランダー!」

 

「マック、ランダー!」

 

 唐突な展開に脳が追い付いて居なかった二人と一匹だが、真っ先に正気に戻ったカッティーはすぐさまにマックランダーに指示を出す。

 

 カッティーはくりきゅうたについて何も知らない。

 知らないが、建物を簡単に破壊出来るようなマックランダーの攻撃を受けても平然としている辺り、この場で一番の脅威と考えても不思議ではないだろう。

 

「これなに?」

 

 本来ならば、マックランダーの攻撃を喰らった一般人は簡単に吹き飛んでしまう。だがくりきゅうたは普通とは違った。

 

 何を考えているかイマイチ分からないのんびり屋のくりきゅうたであるが、力士としての実力は本物である。

 これまでの鍛練で鍛え上げられてきた肉体は、これまで数多のライバル達をその身体を受け止めてきたのだ。

 マックランダーの操られている筋肉も心も籠ってない攻撃を身体で受けるなんぞ、くりきゅうたからすれば綿のように軽いものである。

 

「なに!?」

 

 マックランダーの一撃を耐えたのは偶然や幻の類いで無かったと驚愕するカッティーを他所に、くりきゅうたはマックランダーの正体に疑問を持った。

 

 決してくりきゅうたは、核とされている人間の存在に勘付いたり、怪物の存在に恐怖している訳ではない。くりきゅうたにあるのは、プリルンについて訪ねた時のようなただの純粋な疑問であった。

 

「マック……ランダー!」

 

 しかしその疑問に答える存在は居ない。

 代わりにマックランダーはくりきゅうたの周りを攻撃し、くりきゅうたが立っている一面を土煙状態にする。

 

 これはマックランダーが正面からの攻撃は効果が無いと学習したからである。咲良うたを庇うような状態で受けた一撃は痛がっている様子は無く、むしろピンピンとしている所から察するに正面から攻撃しても意味は無い。

 

 ならば絡め手を使うべきだと、くりきゅうたの視界を奪う作戦に切り替えた。これでくりきゅうたは視界が塞がれた。逆にマックランダーからもくりきゅうたを確認出来ないが、少なくとも土煙の中に居ると言うアドバンテージは持っているので一応情報戦では有利と言えるだろう。

 

「ん?」

 

 くりきゅうたが土煙で前が見えないなぁとのんびり考える中、マックランダーは土煙の外からくりきゅうたの頭があるであろう位置に一撃を浴びせる。

 例え予想外の力を持っている人間であろうとも、頭は生物共通の急所である。良くて戦闘不能、悪くともよろける程度の効果はあるだろうと言うマックランダーの行動は悪くなかっただろう。

 

「マックラ!?」

 

 相手が力士で無ければ。

 体格の大きさで遅いと思われている力士であるが、それは相手の攻撃に耐える防御力と、相手に倒すのに必要な攻撃力の二つが兼ね備えた結果である。

 しかし攻撃と防御が高水準だとしても、それを使われる予想外の一撃。つまりは反射神経を鍛えて試合が開始した瞬間に一撃を入れて、体勢が整う前に攻めれば簡単に勝てるんじゃね? と思う人が居るかもしれない。

 

 当然だが、相撲の世界はそんなに甘くない。

 相撲は「はっけよい、のこった」の掛け声でスタートするのだ。わざわざ始まりの合図があるのに、のそのそと動く理由が何処にあるだろうか。そんな遅く動くのなら、相手より0.1秒でも早く動いて試合の流れを有利にするべきだろう。

 

 つまり力士は見た目に反して反射神経を優れている事になる。

 なら力士の一人であるくりきゅうたも当然反射神経が優れている。そんなくりきゅうたがマックランダーの攻撃を素直に受けるだろうか?

 

「んッ!」

 

 当然だがそんな訳は無い。

 くりきゅうたは外から土煙を分けて何が自分に迫ってくるのを肌と耳で感じとっていた。そこからマックランダーの攻撃が迫るまで凡そ0.5秒。1秒の半分の時間しかないが、くりきゅうたからすれば充分な時間である。

 

 くりきゅうたはマックランダーの攻撃を、張り手と見立てて避けずに───避けると自身の後ろに居る咲良うたとプリルンを攻撃に巻き込んでしまうため───、頭を守るかのように顔の前に両手を持ってきてガード。そのままマックランダーの攻撃をキャッチし、突っ張りの要領で押し出した。

 

「マックランダー!?」

 

 マックランダーの大きさを人間のそれを優に越えており、そのざっと7メートルほどだろう。とても生身の人間が立ち向かえる大きさではない。

 しかしくりきゅうたにとって大きさは関係ない。自身より大きい相手とは稽古や試合で何度も戦っている。それによって巨体との戦いによる経験値は、たった今産み出したマックランダーよりも、遥かに上である。

 

 もし相撲ならば、相手も相手で崩されない方法や自身より小さい相手と戦う対策もあるのだろうが、マックランダーにそんな対策なぞ一つも持っていない。マックランダーがくりきゅうたに勝つのは不可能だろう。

 

 しかしくりきゅうたがマックランダーに勝つのも不可能である。

 理由はマックランダーの核が、キラキラを奪われた人間だからである。その人間───今回の場合は絵真さん───にキラキラが戻らなければ、いくらマックランダーの攻撃を防いでもマックランダーは消えず、絵真さんも元に戻らないだろう。

 

「うた! 危ないからここから離れるプリ!」

 

「ちょっと待ってよプリルン! 絵真さんをあのままになんて出来ないよ!」

 

 くりきゅうたが終始優勢ながらも、永遠に終わらない戦いが続く一方で、咲良うたはプリルンに引っ張られるように、くりきゅうたの遥か後ろへ下がっていた。

 今すぐこの場から離れようと提案するプリルンだが、咲良うたは意地を張ってその場から動かない。

 

 子どもの意地と言えばそれまでだが、咲良うたからすれば絵真さんは大切な知人である。そんな相手が苦しんでいるのに、そのままにしてこの場から離れるなんて選択肢は咲良うたに存在しない。

 それに顔見知り程度、もっと言えば少し会話しただけで何も事情を知らないくりきゅうたが、マックランダーと戦っているのだ。自分に戦う力が無いから逃げる? キラキラを奪われて真っ暗にされた絵真さんを放って?

 

「私は……」

 

 咲良うたは過去の思い浮かべる。

 絵真さんに歌を歌っていた時の事を。

 自分の歌で絵真さんが元気になっていた事を。

 プリルンが自分の歌で絵真さんがキラッキランランにしたと語っていた事を。

 

 ならば出来ると心を強く持つ。

 マックランダーにされる前の絵真さんをキラッキランランに出来たなら、また出来るだろうと。真っ暗にされた絵真さんをもう一度、自分の歌でキラッキランランに。

 

「私は……絵真さんをキラッキランランにしたい! 私の歌で!」

 

 その咲良うたの純粋で強い思いに答えたのだろうか。

 咲良うたの見た目が、服装が、何処となく面影を残しながらも不思議な力で変わっていく。それはまるでヒーローのように、プリティでキュアキュアなように。

 

「君と歌う、ハートのキラキラ! 笑顔ニッコリ、キュアアイドル!」

 

 変化が終わり、その場に立っていたのは咲良うたでは無かった。

 彼女の名前は【キュアアイドル】。咲良うたがプリキュアに変身した姿であり、プリルンが探していた伝説の救世主である。

 

 

★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

 

 

 

 その後の話をしよう。

 咲良うた……もといキュアアイドルは、初めての変身に戸惑いながらも無事にマックランダーを浄化し、核にされていた絵真さんにキラキラを返して無事に助け出すのに成功した。

 

 そしてマックランダーが消えると同時に壊された街並みや、真っ暗になっていた空は元の青空を取り戻した。そうしてこのまま一件落着───

 

「ねぇ。今更だけど、それなに?」

 

「えっと、これは……その」

 

 とはならなかった。

 マックランダーの一件で頭がいっぱいになっていたが、キュアアイドルへ変身したのをくりきゅうたに見られていたのだ。

 

 しかし咲良うたの失態は何一つ無い。

 まさか自分がプリルンの探していたアイドルプリキュアで、その場で変身してチョッキリ団からはなみちタウンを守った。だなんて予測出来ないだろうし、今も理解が追い付いていないのだ。

 そんな状態で誤魔化せと言われても、難しいだろう。

 

「早着替えです!」

 

 だから咲良うたの雑な嘘に誰も文句は言えない。

 まだ咲良うた自身も理解が追い付いていない状態のモノに対して、違和感の持たれない嘘をついて誤魔化せなんて中学生以前に、大人でも厳しいのだから。

 

「へー」

 

 そしてくりきゅうたは雑な嘘に納得した。

 街が壊されたり、謎の怪物を目の前にしたのにその反応と返答で良いのかと突っ込まれそうだが、くりきゅうた自身は深く首を突っ込もうとせず、言われた言葉()を素直に信じた。

 

「あっ! 私、用事があるんだった! それじゃあさようなら~! 逃げるよプリルン!」

 

「プリ!」

 

 これ以上はボロが出ないようにと、キュアアイドルは変身も解かずにプリルンを連れてその場を去る。

 

「お腹空いたな」

 

 くりきゅうたはボッーと、走り去る一人と一匹の後ろ姿を目で追いながらボソリと呟く。どうやらくりきゅうたにとって、プリキュアやプリルンの正体については空腹を満たすより優先度が低いようだ。

 

 くりきゅうたとプリキュア。

 たった一度の出会いと思われた名前が似ている人物達は、再び奇妙な形で再開し、チョッキリ団からはなみちタウンを守る為に共闘するのだが……それはまた、別の話である。




 くりきゅうた、今後登場するんですかね?
 もし登場したらダークイイネが「キュアアイドル、キュアウインクキュアキュンキュン、くりきゅうた。うぬら4人か」って言うダイの大冒険っぽいシーンとかあるのかな(アニメ未登場キュアの名前はネタバレ防止の為にモザイク掛けてます)。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。