フェリside
「フェリリ~~ン!」
そんな声とともにお腹に衝撃がきます。
な、何が起きたんです?いきなり痛みを喰らうなんて。
目を開け、お腹のほうを見るとそこには満面の笑みで私の上に馬乗りしているお母様です。
「・・・・・何しているんですか?」
「何って起こしにきたんだよ」
「こうする必要はありましたか?」
「あったよ。だって私がしたかったんだもん」
「はあ~、そうですか。では起きるのでどいてください。朝食の用意をしなくてはならないので」
「それなら私がやっておいたよ。だからフェリリンは顔を洗いに行ってきなよ」
「分かりましたが、そのフェリリンは止めてください。怒りますよ」
「冗談だよ」
なんかこのやり取りを昔にした覚えがあります。
私は顔を洗っている間、寝室から
「咲にゃ~~ん!!」
という声ともに「フニャッ!?」という咲夜の声が聞こえました。
居間で朝食を食べます。咲夜は少し不機嫌になっています。
理由は今朝のあれです。誰だってあれは不機嫌になります。
「咲にゃん、お願いだから機嫌を治してよ~」
「・・・・・・咲にゃんて呼ばないでください」
「咲夜。これでいい?」
「・・・・・はい」
「治してくれないの?」
「・・・・・できるだけ早く治します」
こんな一日もいいですね。ですが、今のお母様とは今日でお別れです。
そう思うと少しかなしいです。
「お母様に咲夜。今日はどうするんですか?」
「そうだね。みんなでお買い物をしよう」
「咲夜は?」
「・・・・・それでいいです」
予定は決まりました。私たちは食べた後、早速行く準備をします。
お母様の服はいつもの子供用です。しかし、性格があの性格だけに本当によく似合います。
「なんかこの服、可愛いね」
「はい、似合っていますよ」
「ふ、ふふふ」
咲夜が笑っています。お母様は気づいていないようです。
とにかく早く街に行きましょう。時間には限りがありますから。
私たちは大きな街に行きます。
まずアクセサリーなどの小物ショップに行きます。
「うわ~、本当に色々と発展しているね。私が神様していたときはこんなんじゃなかったからね」
「お母様、あまり騒ぐと周りに迷惑がかかります」
「あ、そうだね。ごめん」
「母様!これなんかどうです?」
「咲夜はいいセンスしているね。気に入ったよ」
咲夜の機嫌も回復したようでよかったです。ずっとあのままじゃ空気が重いままですからね。
お母様のアクセサリーを買った後はお母様自ら服屋に行きました。
てっきり同じく服などに興味がないと思っていました。
「服に興味があるんですか?」
「もちろん!女性なら当たり前だよ」
「ですが私が知るお母様は全く興味がありませんでした」
「おかしいな~。絶対に興味あると思うのに」
「ではなぜなんでしょうか?」
「多分、長い間生きてきたからその欲を忘れちゃったんじゃないかな。いつか今の私みたいになるよ」
「そうだといいんですが」
「母様!こっちにいい服がありましたよ!」
「咲夜が呼んでます」
「行こっか」
「はい」
私たちは服を買いました。その後も色々なところに行きました。
そして周りがだんだん暗くなっていました。別れのときが迫ってきています。
「フェリ、咲夜。そろそろ帰ろう。早く夕食の準備をしなきゃ」
「はい、分かりました」
「はい!」
家に帰り、私はお母様の手伝いをします。
「そういえば昨日の夜、お母様の家族について聞いていませんでしたね」
「そういえばそうだったね。その話は私じゃない私に聞いて。そっちのほうが詳しく知っているから」
「分かりました。お母様はお母様を起こしたあとどうなるんですか?」
「さあね。消えるか、合体するか、残るか、だね」
「怖くないんですか?」
「どっちだと思う?」
「・・・・・」
「正直に言うと怖いよ。でもね、私は過ぎた時間なの。終わった時間がイレギュラーで
こうして存在しているだけ。いないほうが自然なことなの」
「お母様!!そんな悲しいこと言わないでください!確かにそうかもしれませんが、私はお母様がいてくれてよかったです」
「ありがとうね。私も二人に会えてよかったよ。さあ、ご飯作ろう」
「はい」
今のお母様もお母様です。どちらも大好きなお母様です。本当はどちらもいて欲しいです。
ですが、どちらかしか残れません。それが現実です。
「ほら、ぼーっとしていると指を切るよ」
「すみません」
私たちは無言で作りました。
「さあ、食べよう」
「「「いただきます」」」
これが今のお母様との最後の食事です。
「どう?おいしい?」
「はい!おいしいです!」
「・・・・・・」
「あれ?フェリ?」
「・・・・・・・」
「フェリ、おーい」
お母様に肩を揺さぶられ、気を取り戻します。
やっぱり悲しいのでしょう。いなくなることが。
「すみません」
「どう?おいしい?」
「はい。おいしいです」
「そう。よかった」
本当は味なんて分かりません。お母様はそんな私に気づいていたようですが、優しく微笑んでくれています。
やっぱりお母様は優しいです。
それから風呂に入り、布団に潜り込みます。
「あ~あ、もう終わりか。でも私が身内思いになる理由が分かったよ」
「ぐす、うぅ・・・ひぐ、ひっぐ、えぐ・・」
「うえぇぇぇぇん・・・ひぐ・・わあああぁぁぁぁぁ」
「二人とも泣かないの」
「ですが、ですが!お母様が・・」
「それ以上はだめだよ。私が君たちと別れができなくなる。それは君たちのお母さんが
いなくなることだよ。それは嫌でしょう?それに私は色々満足したからね」
「母様~!」
「私の可愛い娘たち。そろそろ寝なさい」
「はい」
「・・・はい」
お母様は私たち二人の額にキスします。
私たちはだんだん気が遠くなっていきました。そんななかで最後に見たのは
泣きながらこっちを見て別れを言っているお母様の姿でした。
「さよなら、二人とも。ちゃんと君たちのお母さんは起こすからね」
薬信御魂side in 心
私は娘に別れを言った後意識を潜らせます。深く深く潜らせます。
そこにはベッドで寝ているもう一人の私がいます。全く、娘が心配しているのにいつまで寝て
いるのでしょう。とりあえず起こします。
ドカッ
ベッドを蹴り飛ばします。
「ひゃっ!!」
そんな可愛らしい声とともに本体が起き上がります。
「何をするんじゃ!!」
「いつまでそうしているつもりなの?フェリや咲夜が心配していたよ」
「フェリ、咲夜」
「そう、君の娘でしょう?なら起きなさい」
「そうじゃな。じゃが、私は起き方を忘れてしまった。そんな私はどうすればいい?」
「さあね、君は起きたいの?」
「分からない。色々な物が混じり合いすぎて何も・・・・」
「早く決めないと、私が君を取り込んじゃうよ?」
「それでもいいかもしれないな」
パアン!
私は本体の頬を叩きました。
「何を言っているの!!そんなんでいいの!?娘たちは君の帰りを待っているんだよ!」
「もうなにも分からん」
「バカ!!」
私は神力の刃を出します。
「さあ!君も出しなさい!私がその根性を叩きなおしてあげる!!」
「・・・・いいじゃろう」
本体も刃を出します。その瞬間私たちの姿は消えます。
キンッキンッキンッキンッ
空間に刃のぶつかる音が響きます。
「どうしたの!その程度!」
「お主こそその程度か!!」
私は神力弾を放ち、本体は魔力弾を放ちます。互いの弾がぶつかり巨大な爆発を起こします。
ですがその爆発の中を私たちは互いに互いへ向かって突っ込みます。
互いの刃がぶつかり拮抗します。
「ふふ、あはははははは!!ここまで私と戦える者はおらんかった。やはり私とここまで戦えるのは
私以外におらんかったか!」
「どうしたの?あなたはそんなに争うことが好きなの?」
「違うわい。私は殺し合いが好きなんじゃよ」
「へえー、なるほどね。ちょっと聞くけどあなたはどんな存在?」
「私は吸血鬼じゃよ」
「私は争いは嫌いだよ」
「そうか。それは残念じゃ」
本体は魔力弾を放ちます。私はそれを避け、近づきます。互いの戦闘能力は互角です。
勝つ確率も五分五分です。ですが、娘たちのためにも負けるわけにはいきません!
私と本体の攻防が続きます。しかし、戦闘能力では互角でも戦闘技術は本体のほうが上です。
「ハハハハ!!どうした!だんだん押されてきたのではないか?」
「うるさいです!」
「ククク、そろそろ勝負がつきそうじゃのう」
確かにそうです。。勝負はつきます。
私たちは再びぶつかります。私は本体の攻撃を防ぎ続けます。
「アハハハハハハ!」
本体の攻撃は私の防御を抜け、体にさらに傷がつきます。体の傷はすぐに回復します。
しかし精神はそうはいきません。私たちは肉体ではなく精神を倒すために体を傷つけます。
キイィンッ、ザクッ!
私の刃が弾かれ、本体の刃が私に刺さります。
「うっ!」
「終わりじゃな。楽しかったぞ。この戦い」
「い・・・・いえ違い・・・ます・・よ。私の勝ちです」
私は刺さった本体の刃から本体に私の意識を流し込みます。このまま融合します。
取り込むのではなく融合なので以前の本体に戻るはずです。本当はやりたくはなかったんですがね。
「や、やめろ!!」
「そう・・・はいき・・ま、せん。私たちの娘が・・・・待っているんですから!!」
「娘・・・・」
「そうです。私たちの娘です。いくらあなたが殺し合いが好きでも、娘のほうが好きですよね?
思い出してください!!娘たちとの思い出を!!」
「ぐっああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
本当は戦えばすべて解決になると思っていたんです。ですが、そうはならず吸血鬼の闘争本能を
起こしてしまいました。その結果このようになり、強制的に融合させることになりました。
それに加え、いくら争いが好きでも同じ私なので心のどこかで娘のことが大切に思っているはずです。
それを刺激し融合することへの抵抗をなくしさせようとしています。
「な、舐めるな!!」
「!!」
融合が解除されました。まさか、そんな!こうなるなんて思いませんでした。
「ぐぅぅ、はぁ・・・はぁ・・・はぁ。この・・程度で・・・・やれると・・・思ったのか・・・・」
本体が膝をつき、肩で息をしています。さっきのでかなり弱っているようです。
「お主を倒す!!」
本体が私に斬りかかります。私はそれを刃で受け流します。
今回の本体の攻撃に違和感を感じます。さっきよりも殺気などの感情がこもっていません。
攻撃にも力がこもっていません。
「どうした?」
「・・・・・・」
「私は無傷じゃぞ?さあ、来い!!」
「・・・・・・」
「なぜ、来ない!!さあ、来てくれ!!」
「・・・・・・」
「答えろ!!」
「・・・できない。私には今の君を攻撃できないよ」
「なぜじゃ!!」
「だって、君、泣いているもん」
「! な、泣いてなどおらん!!」
本体はたくさんの涙を流しながら言います。本当は本体に戦う意志なんてもうなかったんです。
ただ戦いによる負けを望んでいたんです。それはおそらく娘のため。
「お願いじゃ・・・・。戦ってくれ・・・・」
「いいよ。この一撃で最後だよ」
私と本体は刃を構えます。勝負は一瞬です。
「「はああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」
二人の叫びが響き二人は衝突します。
その衝撃で衝撃波が生まれました。
「ぐはっ・・・」
「・・・・私の勝ちだね」
「そうじゃな。私の負けじゃ」
私の刃は本体の体に刺さり、本体の刃は私の腹の横を通りました。
「さあ、私たちの娘たちのもとへ帰ろう」
「そうじゃな。帰ろう」
私たちの体が光になっていきました。
薬信御魂side
私は目を覚まします。私の横には二人が眠っています。あれから数時間しか経っていないようです。私たちの戦いはそれ以上の時間でした。現実と意識内では時間の経ちかた
が違うみたいですね。
今は夜の4時です。今日は土曜日なのでフェリの学校はありません。
今日は朝食を先に作って脅かしましょうか。時間にはまだ余裕があります。掃除などでもしておきます。
現在、7時です。そろそろ二人が起きてくるはずです。
その頃には朝食ができるでしょう。ふふ、どんな反応するか楽しみです。
おや?起きてきたようです。
バタバタバタ
そして
「お母様!!」「母様!!」
ほら、やっぱり慌てて来ました。私は微笑みながら二人を見ます。
「二人ともどうしたんじゃ?慌てて」
「どうしたじゃありません!!」
「そうです!!私たちは心配してたんです!」
「私ならもう大丈夫じゃ。さあ、朝食を食べよう」
「お母様~~!」「母様~~!!」
二人が私に向かってきます。私は両手を広げます。まさに感動的なシーンです!
さあ!二人とも私のもとへ!
ドカッ!バキッ!ドコッ!
「あべしっ!?」
私はフェリたちに殴られました。な、なぜ?
ここは三人が抱きつくところでしょう。なのに!
「すみません、一発殴っておこうと決めてましたので」
「私もです!」
「じゃがじゃが!ここは抱きつくところじゃろ!?」
「心配させておいてそこまでしてもらうなんて、都合が良過ぎなんじゃないんですか?」
「そうです!これくらいされて当然です!」
「ぐすっ」
「さあ、咲夜。お母様をほっといて朝食を食べましょう」
「はい!」
確かにそうですが、それでも感動的なシーンにしてもいいでしょうに。
「さ、咲夜~、フ、フェリ~」
「ふふ、冗談です」
「はい!」
フェリたちが抱きついてきました。やっと触れ合うことができました!
といっても、今の私はあの神の存在が融合している存在です。つまり記憶があるのです。
「朝食を食べましょう」
「はい!」
「そうじゃな」