ハイスクールD×F×C   作:謎の旅人

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第22話 私と家族の裸の付き合い

私の意識が覚醒する。どうやら気絶していたらしい。全く情けないことです。この中では一番の年長者なのに、恥ずかしさのあまり気絶してしまうなんて。体を起こし、周りを見ればここが居間だと分かり、みんなはまだ食べているということが分かった。

 

どうやらあれから数分しか経っていないようだ。気絶した私は居間の隅で寝かされていたみたい。

 

 

「あ!! 母様が起きました! 大丈夫でしたか?」

「大丈夫じゃ。心配かけたな」

 

 

私も食べる。気絶した時間も数分だということで、まだ冷めてはいなかった。そして、食べ終わったのは数分後だった。

 

 

「お母様、あと30分したらお風呂に入りましょう。それまではここでゆっくりとしたいです」

「そうじゃな。それまでここでゆっくりするか」

 

 

この家は温泉だ。なのでお湯を沸かせる必要はない。掃除のとき以外はいつでも入れる。それに露天風呂もあるので、明るいときに露天風呂に入ると絶景が見られる。それは人間界の露天風呂とは違う。

 

純粋な自然しか見えない。人工物はなく、見えるのは森や川だけ。自然の中で生きてきた私にとって、この光景が一番大好きです。昔、狐で駆けたことを思い出します。ここにいる咲夜以外は動物になれますし、いつかみんなで走り回るのもいいですね。

 

みんなでだらだらと居間でしゃべり続けていると、時間が来た。つまりお風呂の時間。私はゆっくりと立ち上がる。

 

 

「ほれ、みんな風呂じゃぞ! 話は風呂でゆっくりするぞ」

 

 

みんなもゆっくりと立ち上がり、風呂へと向かう。廊下を歩いているとこの家の世話をしている式紙に出会った。式紙は私に会うと立ち止まり頭を下げた。うう、あんまりいい気分ではない。

 

確かにメイドみたなお世話係みたいに設定したけど、ここまでするようになるなんて思ってませんでした。ちょっとやりすぎたかも。もうちょっと気楽でいいのに。

 

 

「お母様? どうかなさいました?」

「さっきの式紙、見たじゃろう?」

「ええ、見ました。どうかしましたか?」

「私が式紙を作った理由を話したか?」

「一応。自分の世話などをするため、でしたよね」

「ああ、まあ、そうじゃな」

 

 

そっか、母親の私が寂しいからなんていう理由を言えないから、てきとうに誤魔化したんだった。このまま貫き通すしかないから、この悩みは言えないな。でも、私の心の弱さを知っているみたいだし、()()()()()()()()()? 

 

でもダメ。弱音を吐くことなんてできない。私はこの子たちの母親。親が子どもの前でそんな姿を見せるわけにはいかない。

 

 

「えっと、間違ってましたか?」

「いや、あっておるよ」

「それがどうかしましたか?」

「やっぱりなんでもない」

「そうですか。悩みがあったら言ってくださいよ。お母様は私よりも長く生きていますが、私だって数千年生きているんですから。それなりにはお母様を支えることができます」

 

 

フェリは私の頭を撫でてくれる。昔は私がよくしていたのに、今は反対側になっている。でも、フェリが大きくなったんだなと思うとそれもいい。しばらく歩くとようやく脱衣所に着く。

 

大きすぎる家の不便として、移動に時間がかかるということだ。でも仕方がない。その代わり白音と黒歌の部屋があるから。それでよしとしよう。

 

 

「ここが私の自慢の風呂じゃ! いや、温泉じゃ! 一応説明するが、この温泉には効能がある。病気や怪我が治るというものじゃ。他に何かあったような気がするが、忘れた。まあ、入ればいいことがあると思えばいい」

「ちなみにこんな効果がある温泉はここだけです。お母様の力でそういう効果のある湯が湧き出ているんです」

 

 

補足にとフェリが説明してきた。

 

 

「湯の温度は測ったことはないので分かりませんが、熱いくらいです。黒歌と白音は大丈夫ですか?」

「大丈夫にゃ。でも、白音は……」

「すみません。あ、熱いのはちょっと……」

 

 

白音は申し訳なさそうに言った。そっか、そういえば黒歌たちと暮らしていたとき、いつもぬるかった。ちゃんとそういうことに気付けないなんて、ちょっと残念です。白音のことは黒歌には及ばないけど、分かったつもりだった。

 

これじゃあ、まだよく分かっていなかったようだ。ちゃんと分かるようにならないと。家族のことはしっかりと分かっていたい。

 

 

「心配せんでもよい。風呂は3つあるからな。私が最初に言った熱い湯、ぬるい湯、とても冷たい水風呂じゃ。いや~、良かったのう。気まぐれで作ったがまさか役に立つことがあるとは」

 

 

これは本当だ。銭湯とかって水風呂があるよね。ならちょっと本格的にしたほうがいい。作ったら極端に差のある風呂が2つあったので、その中間を作ったほうが気分的にもバランス的にもいい。

 

そういうわけでぬるい湯が作られた。本当に気まぐれだった。結局熱い風呂にしか入らなかったので、作った意味がほとんどなかったけど。

 

 

「あのお風呂って気まぐれで作ったんですか。あまり変なの作らないでくださいよ」

「へ、変なのとはなんだ!! 温度に変化のある風呂を2つ作っただけじゃ!!」

 

 

2人で言い争う。内容は大きいのか小さいのか分からない。そんなレベルの言い争いだ。

 

 

「え、えっと私たちは入りましょうか! 私が案内します!」

「お願いね」

「御魂お姉ちゃんたちはいいんですか?」

「いいです! いつものことですから! さあ、私たちはゆっくりと満喫しましょう!」

 

 

私たちをそっちのけで咲夜たちを脱衣所へと案内していた。だが私とフェリの言い争いは終わらなかった。しばらくすると怖い顔をした咲夜が脱衣所の戸と戸の間から顔をのぞかせていた。

 

覗かしていたのは、すでに服を脱いでいるからだ。戸と戸の間から見える咲夜の肌がちらついていた。

 

 

「母様!! 姉さま!! そろそろ怒りますよ!!」

「「ご、ごめんなさい!!」」

 

 

私たちが入ってこないことに怒った咲夜に怒鳴られ、私たちは頭を下げ謝る。ここに一番下の娘に怒られる母親と長女がいた。とても情けない。

 

怒られ反省した私たちはすぐに服を脱ぎ、すぐに浴室に入った。露天風呂とは別にしているので、肌に来る冷たい外気は来ない。ちゃんと扉で仕切っていた。

 

黒歌たちは風呂の傍で椅子風呂に座り、桶で汲んだ湯を頭からかぶっていた。体を流れる湯は黒い髪と白い髪を濡らしていく。2人の幼いながらの体のラインを通って、湯は流れる。

 

 

「湯の加減はどうじゃ? ちょうどよいか?」

「大丈夫にゃ。ちょうどいいわ」

「私もです」

「そうか。それはよかった」

 

 

私も椅子風呂に座る。フェリと咲夜は私を挟むように座った。フェリは湯の入った桶を私にかける。少し高温の湯が体の表面を濡らす。少し熱いがそれは問題ない。いつもこれだったから。

 

 

「尻尾って9本だと邪魔になりませんか?」

 

 

白音が黒歌に体を洗ってもらいながら聞いてきた。

 

 

「そうじゃな。正直に言うと邪魔になる。じゃが、本数は1本以上なら変えられるので不便はしとらん。それにこの尻尾はふわふわじゃから枕にもなるんじゃよ。ふふふ、寝るときに触ってみるか?」

「い、いいんですか? も、もふもふしてもいいんですか?」

「よいぞ。もちろん枕にしても。黒歌はどうじゃ? 白音と一緒に私の尻尾を触りたくはないか?」

 

 

黒歌を挑発するように尻尾は左右に揺れる。ゆったりゆったりと。黒歌の視線はそれに合わせる。目はポーっとしている。それは餌を目の前にしている犬のようだった。猫だけど。

 

きっと妹と一緒にそういうことをしていいのかなと1人、心の中で戦っているのだろう。だが、そう真剣に戦ってもその対象が目の前で揺れている。そんな状況で生き物は耐えられるのだろうか?

 

それはきっと難しい。犬だって無理。犬に待てと言えば待つが、それは永遠ではない。待てと言われ、それに従えばご褒美がもらえるからやるのである。もらわなければやらない。

 

まあ、頭のいい犬はそれでなくとも従うけど。でも、それはずっとではないはず。私だって多少はがまんするけど、ずっとは耐えられない。

 

 

「ほれほれ。どうした? 触りたいのか? もふもふとしたのか?」

「う、うう……さ、触りたいけど……」

「妹である白音は自分の欲に正直じゃったぞ。お主も正直になったらどうじゃ?」

 

 

にやにやと笑いながら誘った。

 

 

「そこまでです」

 

 

それが聞こえた瞬間、私の体を冷たい水が体の表面を走った。さっきまで熱いお湯を浴びていた体に真反対の冷水。温度の差が冷水をさらなる冷水へと変えた。私の体はびくんと震え、全身の毛が逆立つ。

 

尻尾はもちろん逆立っているため、いつもより膨らんだようになっていた。耳も同じようになっている。私にこうした犯人を見れば、空の桶を持ったフェリが立っていた。

 

 

「なに人を惑わしているんですか? お母様はこの頃調子に乗りすぎです。そろそろ反省したらどうですか?」

「べ、別に惑わしておらんし、調子にも乗ってないわい! だから反省なんてせんもん!」

 

 

すぐに手に持つ桶で湯を浴びながら、フェリに言う。最後の語尾がちょっとおかしかったような気がする。

 

 

「ね、ねえ、もふもふしてもいいの? わ、私もやってみたい……にゃあ」

 

 

私とフェリが話し合っている最中、全く別の反応の声が割り込んできた。それによって話は中断される。

 

 

「くくく、やっぱりもふもふしたかったか。よいぞ。寝るときになれば存分にするがよい。私も昔は枕や布団にしていたときもあった。毛はさらさらとし、櫛で流せば引っかかりもなく通り、もふもふとできるほどのやわらかさ。それが9本。そんな尻尾は私の自慢の1つじゃ。それをお主たちはもふもふと自由にできるのじゃぞ」

 

 

ひとしきり私の尻尾の自慢をし、胸を張った。だがこの幼い体は胸を張ってもなにも強調されない。思えば今の状態とお姉さんモードのとき、どっちのほうが長く過ごしたのだろうか?

 

実際はお姉さんモードのほうが長い。封印をし始めたのはつい数万年前。それまではときどきだったけど、寝ているときに家を壊していた。もちろん家の周りに被害が及ばないように厳重に結界を張っていた。

 

そして、ようやく封印系の研究が進み、ようやく力を封印することができた。これで無意識時に力が具現化することなく、物を破壊することもなくなった。おかげでストレスはなくなった。

 

私がなぜお姉さんモードと今の状態との時間を比べたのか? 今の状態のほうがただ長いようだと思っただけ。他には何もない。

 

 

「母様! 私もやりたいです! もふもふしたいです! あと姉さまの尻尾のもふもふしてもいいですか? 姉さまも立派な尻尾を持っているのでずっと触りたかったんです!」

「わ、私の尻尾を? だ、ダメです! 尻尾は……弱点ですから」

 

 

頬を赤く染め、恥ずかしそうに尻尾を隠す。フェリの言うことは分かる。尻尾はある意味弱点だ。触られたら……き、気持ちいい感覚が襲ってくる。で、でも黒歌たちに触れさせると言ったのは、決してそういうのを求めたからではない。

 

それは本当。うん、本当だから。でもそれとともに強く握られると痛みと力が抜ける。ただ気持ちいいだけでなく、本当に弱点なのだ。

 

 

「へえ、そうなんですか! 姉さまの弱点は尻尾だったんですか! 良いことを聞きました!」

 

 

咲夜が企みのある笑みを溢す。

 

 

「言っておきますけど、もしそれを利用したら……分かってますよね、咲夜。私はそういうのは嫌いです」

「じょ、冗談です! す、するわけがないじゃないですか!」

 

 

本当に冗談だったのか怪しい。現にその顔は引き攣っている。もし、フェリの弱点を使えば咲夜はボロボロになるだろう。フェリは怒ると怖い。親でもある私も怖い。

 

 

「それよりそろそろ風呂に入るにゃ。いつまでも外でいると風邪引くにゃん」

「そうじゃな。フェリも咲夜も入るぞ。いつまでもそうしていると本当に風邪を引くぞ」

「分かりました」

「た、助かりました!」

 

 

咲夜は疲れた顔をしながら、風呂へ入っていく。白音は隣にある私が今入っている熱い風呂と水風呂の中間であるぬるい風呂だった。他はみんな熱い湯。猫である黒歌もぬるま湯かと思えば違う。

 

猫でも熱いのが大好きな猫もいるようだ。白音は隣の風呂から顔を覗かせる。やっぱり1人だと寂しいようだ。

 

 

「そういえば布団はあるんですか? 部屋は選んでも家具がないならどうしたらいいのかなと思って」

「問題ない。布団は間違って多く買ったのがある。本当にたくさんあるから選んでよいぞ。じゃが、寝るのはみんな同じ部屋じゃよ。よいな」

「分かりました。でもなんでですか?」

「な、なんでってそれは……ほ、ほらフェリたちが母親である私と離れて寝るのは、寂しいと思ってな! それで寝るときは家族で寝ることにしたんじゃよ!」

「お母様、私はそんなこと言った覚えはありませんよ」

 

 

私の言い訳にフェリがすかさず言ってきた。なんでそこで言うの! 嘘でもいいからそうなんですとか言ってよ~。ちょっと悲しいです。

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