ハイスクールD×F×C   作:謎の旅人

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第37話 私たちを認めて?

「お母様? これはどういう状況なんでしょうか?」

 

 

優しい言い方でさっきまでの固まった笑顔が嘘であるかのような満面な笑みだ。もしかして私の予想に反して怒っていない? そう思ったのだけど明らかにそれは間違いだった。だって目が全然笑ってないし、フェリの体から魔力が漏れているんだもん。

 

漏れている魔力は陽炎のように揺らぎフェリの体を覆い、フェリの感情を表しているようだった。なんだか荒々しい。やっぱり怒っているんだ。それを正座をしながら感じていた。

 

 

「聞いていますか?」

「き、聞いておる」

 

 

私と白音はすでに離れていた。さすがにフェリに見られたままいちゃいちゃできないしやりたくない。娘にいちゃいちゃしているところを見られながらなんてどんな趣味。少なくとも私の趣味ではないな。

 

白音と黒歌は私の後ろに並んで私と同じように正座をしていた。白音はさっきの興奮の余韻のせいかこんな状況というのに一人うれしそうににやにやとしていた。チラッと見ているこっちが恥ずかしくなる姿だ。

 

反対に黒歌は隠しているようだが不満だとうっすら顔に出ていた。多分だけど白音だけキスできて、黒歌だけできなかったからだろう。全くエッチなんだから。

 

 

「ではどういう状況なんですか? 朝からキスなんて」

「そ、それは……」

 

 

後ろの二人と恋人になったからと言えばいいのだろうか。ちらりと確認のために後ろを見たが二人はさっきのとおりでこっちを見向きもしてくれない。うう、二人も一応怒られているのになんだか私だけ怒られているような感じになるよ。

 

しょうがない。後ろの二人は頼れないみたいだし、私の独断で決めよう。もちろんその答えは「言う」だ。どうせフェリと咲夜に言うつもりだったんだ。ただそれが今か(あと)かという話だ。ただまさかこんなことで言うことになるとは。ちょっと複雑な思いだ。

 

 

「お、落ち着いて聞いてくれ」

「私は落ち着いています。落ち着いていないのはお母様です」

「そ、そうじゃな」

 

 

私は大きく深呼吸した。それを何度も繰り返して落ち着く。これでいいかな。そう思って言おうとするが、不安がよぎる。フェリは受け入れてくれるだろうかという不安が。さっきは二人に大丈夫と言ったがいざとなって不安となったのだ。

 

で、でも言わないと! それに相手は自分の娘でしょう! 母親が娘を信じなくていいの!? そんなんじゃダメだよ。

 

 

「……………………になった」

「え?」

「二人と恋人になった」

「……………………………え?」

「二人と恋人になった」

「え? え? えっと…………………………………………え?」

 

 

フェリの顔が面白いように固まっていた。結構驚いているようだ。

 

 

「……すみません。もう一度」

「黒歌と白音と恋人になった」

「……お母様、本当にすみません。なぜか一瞬耳が遠くなるようです」

「それは大丈夫か? フェリも歳なのかのう」

「ち・が・い・ま・す! とにかくもう一回お願いします」

「だから黒歌と白音と恋人になったんじゃ」

 

 

さすがにもうこれ以上は言いたくない。言っているこっちは恥ずかしいんだよ。このままじゃ恥ずかしくて死んじゃうよ。いや、死にたくても死ねないけどね。

 

 

「き、聞き間違いじゃなかったようですね。本当に恋人に?」

「ほ、本当じゃ。恋人になった」

「ど、同性ですよね?」

「恋愛に性別は関係ない」

「いえ、年齢はというのは聞いたことがありますが、性別は聞いたことがありませんよ。まあ、同性でというところはとりあえず目を瞑って、お母様とお二人はまだ会ってから一ヶ月とちょっとですよね? 二人は……お母様に命を助けてもらったということで分かりますが、お母様のそれは本当に恋心なんですか? ただ緊張や照れを勘違いしたんじゃないんですか?」

 

 

その質問を聞くに私と二人が恋人になったことを認めないとかではないらしい。話の感じというかフェリの雰囲気から白音と黒歌のためというのが感じられる。おそらく私の気持ちが本当かどうかを確かめて二人を傷つけないようにしているのだろう。

 

もし私の心が間違いだとしたら白音と黒歌はショックで傷つく。でもね、私ははっきりと言える。この気持ちは嘘ではないと。そう心では冷静で色々と判断できたのだが……行動では、

 

 

「ち、違う! これは本当に恋心なんじゃ!!」

「なぜそう言えるんですか?」

「だって、む、昔のときと同じ……なんじゃから」

「同じ? 何がです?」

「だ、だから昔、恋したときと同じなんじゃよ」

 

 

フェリはこの話を知っている。ただドライグたちの名前とか詳しい内容は知らないが。

 

 

「そのときの心を忘れるわけがない」

 

 

そう絶対に。だって私は二人の恋人ができたとはいえ、まだドライグたちのことが好きであるからだ。今でも心の奥で小さく息づいている。小さいが輝く光を持って。

 

 

「そ、そうですか。なら間違いようがないですね」

「じゃろ? だからこの心は間違いではない」

 

 

私はふふんと鼻を鳴らして自慢げに言った。フェリはそんな私の反応にため息をついてあきれていた。あれ? なんであきれるの?

 

 

「さっそくのろけですか」

「ち、違うぞ。のろけじゃない」

「いえ、のろけです。そんな風に恋心を堂々とするのですからね。ちょっと羨ましいです」

 

 

フェリは遠くを見るかのような目で私たちじゃない別の方向を見る。なんだか恋をしたいのにできない感じだな。でも、それもそっか。フェリはもう三千年も生きている。妖怪の一生で考えればフェリは相手を見つける時期はもう終わっている。

 

それに私のせいでもある。私はフェリがいるとき、あまり妖怪と関わらないように生活してきた。私が把握している時間は私が転移に失敗し次元の狭間に飛ばされるまで。その後はフェリから詳しく聞いていない。

 

けれど、私と再会していたときの様子を考えると何か出会いがあったというわけではないみたいだった。本当に遅すぎるけどフェリの将来が気になった。

 

 

「のう、フェリ。お主は誰かと一緒にならないのか? お主はいつも私のそばにいてくれて私はうれしいが、そろそろ自分のそういう相手を見つけてもいいと思う。もし年齢のことを気にするならそれは私がどうにかする」

 

 

私はフェリにフェリ自身のこれからのことを語った。こうして私に二人の恋人もできた。けれどフェリはずっとそういうのがなかった。娘がこの家から出て新たな家族と過ごすのは寂しくもあるのだが、それ以上に娘には幸せになってほしかった。それに孫というのに興味があったりもする。

 

だって孫だもん。孫が可愛くない祖母はいない。し、しかし、私がおばあちゃんか。なんだかこんな見た目だから色々と複雑だ。だってこんな見た目でおばあちゃんだもん。いや、そんなことを言っても意味はないか。

 

あの姿でもどう見てもおばあちゃんじゃないもん。むしろお姉ちゃんって思われても仕方ないほどだ。孫にお姉ちゃんと呼ばれるのはちょっと嫌だ。さて、さっきからフェリの孫について話しているけど、咲夜という娘もいる。

 

でもね、あの子は……ちょっとね。なんというか、あの子にはまだそういうのは早い。色々と経験というか、幼すぎる。あの子、刀としては千年以上だけどそのわりに未だに子どもっぽいからね。実は本性を隠している、という可能性もあるけど、だとしたら私は思いっきり喜ぶだろう。なにせ、私からその本性を隠したんだからね。娘の実力を見誤っていたということでもあるが。

 

 

「いえ、私は嫁ぎませんよ」

「なぜじゃ? 男が嫌なのか?」

「違います。私だって女です。好きだった異性くらいいましたよ」

「いた? 今はいないのか?」

 

ちょっと気になる。まさかいたなんて。私が私がいなくなる前だろうか、後だろうか。後ならまだしも前だったら……。

 

 

「ええ、もう昔のことです。私が愚かだった頃の」

「愚かだった頃? そんなことはあったか?」

「はい、ありました。でも好きだったのはそれよりも私が小さい頃です。そのときに私と同じくらいだった人間の男の子を好きになったんです」

 

 

どうやら私がいなくなる前。それもフェリと親子になってから数年の間のようだ。き、気づかなかったよ。やっぱり人の心って難しい。どうも昔からそうだ。人の心はあんまり分からなかった。

 

でも、娘の心が分からなかったというのはなんとも言えない。本当の娘ではないから、血が繋がっていないから、なんて言い訳はするつもりはない。例えそうでもあの子は偽りでも今になっては本当の娘である。

 

 

「でも、結局はその恋は実りませんでした。実っていたら子どもがいたはずですからね」

 

 

フェリは遠い目で悲しそうな顔をしていた。その顔を見ると本当にその人間のことが好きだったのだなと分かる。きっと私が持つ恋心と同じくらい本気だったのだろう。ああ、もしそのときに私がフェリのその心を知っていたならきっと手伝えたのに。そして、絶対に二人を結ばせることができたはずだ。昔の私に会えたら娘には好きな人がいるって伝えたい。

 

 

「それにその人は私じゃない人を選びましたしね」

 

 

フェリの言ったその事実にちょっとムカッとした。フェリじゃない人を選んだなんて……!! フェリより可愛くて優しい子なんているはずがないじゃん!! こうやってフェリをじっと見ても分かる。

 

どう見ても可愛いじゃない。いや、美人って言ってもいい。髪の色だってそう。私のこの金色の髪と同じく銀色の髪が光を反射する美しい髪を持っている。確かにフェリを育てた地は昔の日本で黒髪しかいなくて、フェリと私は異質だった。

 

けど、私という存在のおかげで異質を受け入れてもらい、追い出されるということはなかった。もちろん妖怪という化け物ということも。だから村の中でフェリを悪く思ったりする者はいない。

 

さらにフェリは髪だけではない。スタイルだってそう。胸は私(お姉さん時)に負けないくらい大きい。体の凹凸だってはっきりしている。つまりボンキュッボンというスタイル。フェリが今の時代でその気になればモデルだってできるだろう。それほどスタイルがいいし、美人なのだ。

 

まあ、私もその気になればモデルになれるんだけどね! けど、なる気はないしフェリにもそんなことはさせない。フェリを変な雑誌に載せるわけにはいかない。

 

 

「あの、お母様?」

「なに?」

 

 

私はちょっと苛立った言い方になった。おかげで素の部分が出た。

 

 

「な、何に怒っているんですか?」

「……なんでもない。気にするな」

「……はい」

 

 

フェリはおどおどしながら返事をした。まるで怯えているみたい。なんで怯えたの? 私、何もしていないよね。

 

 

「それでなんでそういう人を作らないんじゃ? 昔はいたということは別に異性が嫌いというわけではなかろう」

「それは……その昔の好きだった人のときのように好きになる瞬間がないだけです。それにお母様がいますからね。だからあまりそういうのは……」

 

 

フェリ顔を歪めながら言う。

 

 

「フェリ、私のそばに居てくれることはうれしいが、それで自分の幸せを捨てるなら私はうれしくないぞ」

「大丈夫です。私は捨てたわけではないんですから。さっきも言ったようにそういう瞬間がないだけですから」

 

 

フェリの瞳を見るがそこに嘘はない。本当にそういう好きになる瞬間がないからのようだ。それなら仕方ない。私が誰かに関わらせようとしてもそれは意味はないと思う。おそらくフェリが求めているのは一目惚れのようなものだろう。

 

だから、私が紹介したらそういうのがなくなるかもしれない。これはもうフェリに任せるしかない。彼女自身が見つけるしか。

 

 

「そうか。じゃあ、そういう者を見つけたときはちゃんと言うんじゃぞ」

「え? い、言わないとダメなんですか?」

「? 当たり前じゃろう。もしそやつがお主を騙していたらどうする。それに私は遊びで付き合うとか結婚はしないが付き合うなどという交際は許さんからな。だからそんなことをさせんように言ってもらうんじゃ」

「それは……分かっています。私も遊びなどで他人に体を許したくはありません。でも、最初は結婚すると決意しても、別れるかもしれませんよ」

「ふっ、互いに本気ならそうはならん」

 

 

私は信じてそう言った。良いことを言ったと思ったのだが、私を見るフェリはジト目だった。その顔は疑う顔だ。

 

 

「お母様」

「な、なんじゃ?」

「さっきから聞いていましたけど、お母様はまだ交際経験はないですよね?」

「………………」

 

 

何も言えなくなる。だってそうだもん。人生で一度もそういう経験はありません。今回が初めてです。

 

 

「まだ黒歌と白音とそうなったばかりじゃないですか。お母様たちだって別れるかもしれませんよ」

「うぐ、そ、そんなことを言うな! せっかく恋人になれたのに本当に別れたらどうするんじゃ!」

 

 

そうなってしまったことを考えて涙目になる。その姿は母親には見えない。見た目相応の少女にしか見えなかった。

 

 

「ぐすっ、私だって本当だったらずっと昔に交際していたわい! でもでも! ドライグとアルビオンがへたれじゃったからいけないんじゃ! うう……」

「………………………………可愛い♪」

 

 

フェリが頬を染めて小さな声で何か呟いたが、私には聞こえなかった。涙が頬を伝い着ている着物に落ち点々とシミを作る。

 

 

「ごほん、お母様、泣かないでください。私が悪かったです」

 

 

フェリは泣く私を抱きしめた。フェリの胸部分に私の顔が当たる。まるでフェリの胸に顔を埋めているみたいだ。なんだか今の私には胸を利用して挑発しているように感じる。でも、こうやってフェリの体を感じると元気に育ってくれているのだなと感じた。

 

もっともフェリはもうこれ以上体は成長しないので、今思うことではないのだけど。さっきはちょっと挑発されてムカッときたけど、今はちょっとフェリに甘えようかな。そう思って私もフェリの背に腕を回した。

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