ハイスクールD×F×C   作:謎の旅人

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第43話 私と猫たちの夏のある日の出来事

 季節が夏へと変わり、外をちょっと歩くだけで汗を流すほどの暑さ。外へ耳を傾ければ蝉たちの喧しい歌声が聞こえてくる。草木たちは夏を喜び、草木の手入れをする者たちを嘲笑うかのようにすぐに成長してくる。そんな時期へとなった。そして、それはフェリが通っている学校が夏休みに入ったということだ。

 これでしばらくはフェリと過ごす時間が増えた。それをうれしく思う。

 そもそもフェリを学校へ通わせたのはサーザクスからのお仕事だからという理由もあるが、フェリに学校生活をさせてあげたかったという理由が主だ。

 そう、そうなのだが、やはり家族大好きな私にとっては、フェリともうちょっと一緒に過ごしたいという気持ちが未だに大きいのだ。未だに親離れならぬ子ども離れができていない。

 それで何がそう思わせるのかだが、それはフェリが学校に行っている間はフェリに抱きついたりもできないし、甘えたりもできない。それができないのが不満なのだ。だから夏休みになってうれしく思う。

 で、夏休みになったということでさっそくだが、フェリたちと黒歌たちをさらに仲良くさせよう作戦を発動することにした。

 しかし、この計画を立ててから時間も経つ。

 この間にフェリたちと黒歌たちの間も深まっていた。それは計画を発動するまでもないということを意味しているのだが、私はそれでも発動させる。

 その理由はフェリと黒歌だ。

 先ほどは仲良くなったと述べたが、それは当初より、という言葉が付く。

 私が目指しているのはもう姉妹みたいと思ってしまうほど仲がよくなっている白音と咲夜くらいだ。

 白音と咲夜。

 白音は結構な人見知りのはずなのだが、咲夜という行け行けタイプの前ではあっけなくそんなものは破られて、あっさりと仲良くなったのだ。そうなって以来は二人はどんどん仲良くなっていき、今では互いを呼び捨てで名前を呼び合うようになっていた。

 これは咲夜の性格だけではない。

 歳が近いということもあるからだ。やはり歳が近いというのは仲良くなりなりやすいようだ。それにきっと妹ポジションというのもあると思う。

 はあ……それぞれの妹はこうなのに、反して姉たちは仲が良くない。

 いや、正確には黒歌は仲良くしようとしているのだが、フェリのほうがそうしないのだ。なんだか冷たい感じで対応するのだ。

 私にはその理由は分からなかった。

 理由が分かれば解決できるかもしれないが、きっとフェリは言ってくれないだろう。

 とにかく、私が作戦を開始するのはフェリと黒歌の仲を良くさせるためだ。

 黒歌と咲夜、フェリと白音の仲というのもあるが、それはまあ、置いておく。

 で、作戦に必要なものだが、すでに準備されている。ついこの間、それらをみんなで買いに行った。それらは別に特別なものではなかったので怪しまれることはなく、普通に受け入れて買ってくれた。

 

「ねえ、さっきから何を考えているのかにゃん?」

 

 私が考え込んでいるとすぐ後ろ、私の獣耳のそばから声がした。

 振り返ればそこには幼い顔立ちながらも、そこにはすでにわずかだが大人の色香と美しいという言葉が似合う黒歌だった。

 例の作戦の対象の二人うちの一人だ。

 私は今、居間で黒歌の足の上に座って、抱きしめられているのだ。

 これは別に私がやってほしいなんて言ったわけでも頼んだわけでもない。ただ私がじっと座っていたら黒歌が後ろに回りこんで、私をこうしたのだ。

 こんなことをされて恥ずかしくて最初は抵抗したのだが、黒歌に『恋人でしょ?』なんて耳元で甘い囁きをされて無抵抗になったのだ。それに私は別にうれしくないわけではなく、本当はうれしかった。

 

「ちょっとな」

「内容は何なのかにゃ?」

「残念じゃがまだ教えないぞ」

「んにゃ? まだってことはあとで教えてくれるの?」

「教える。だからそれまで待って」

 

 言う内容はすでに決まっている。

 

「そっか。分かったにゃ」

 

 黒歌はそれで満足したようで、私を抱きしめて色々することに集中し始めた。

 抱きしめられて私の背中に二つの柔らかいものが押し付けられた。

 

「姉さま! 御魂お姉ちゃんに胸を押し付けないでください!」

 

 次は私の下から聞こえた。

 そこにいるのは黒歌の妹、白音だ。頬をぷくーっと膨らませて怒っている。

 白音は私の膝を枕にして横になっていた。

 黒歌が私を自分の膝へ乗せたときに、白音が羨ましがって私の膝を枕にしたのだ。

 で、今の私をまとめると私は二人の恋人にくっつかれてめちゃくちゃ幸せな状態になっているということだ。

 

「別にいいじゃない。だって私と御魂ちゃんは恋人よ? 胸を押し付けて何が悪いの?」

「私も恋人です! で、でも、そ、それは……」

「あら? もしかして白音もやりたかったのかしら? ならやればいいじゃない。背中は無理だけど正面なら空いているわよ」

「うぐっ」

「どうしたの? あっ、そっか。白音の胸は……」

「ち、違います!! そ、そういうのじゃないですから!!」

 

 どうやら図星らしい。

 白音の目は黒歌がわざと私の体の陰からチラチラと覗かせる胸へ向けられていた。

 

「本当は私くらい欲しいんでしょう。あったら御魂ちゃんに私みたいに押し付けてできるもんね」

「ち、違います! 私は……ただ……御魂お姉ちゃんが……恥ずかしがるのを……」

 

 どうやらただ白音はただ私に抱きつくだけを望んでいるわけではないらしい。今黒歌がしているように私に胸を押し付けて、私を恥ずかしさでいっぱいにしたいようだ。

 それにしても白音、私をいじめるようになったの?

 うう~白音のことはちょっと手遅れみたいだし、置いといて木になるのは背中だ。うん、実を言うと黒歌に押し付けられて同性の私でも恥ずかしさでいっぱいなのだ。今はその恥ずかしさを心の中へ止めているところで、ちょっとでも気を抜けばすぐにでも顔に表れるだろう。

 

「で、でも私だって大きくなります!」

「本当にそうかにゃ~?」

「ど、どういう意味ですか?」

「だって私が白音くらいのときにはもうちょっとあったにゃん。今の時点でこれじゃあ、ね?」

「……姉さま、それって喧嘩を売っているんですか?」

「ふふふ、違うにゃん♪ 可愛い妹に喧嘩なんて売らないわ。ただ事実を言っているだけ」

「それを喧嘩を売っていると言うんです!!」

 

 二人はまさに魔力やらを使う喧嘩にでもなりそうな流れだが、私はこれがそうではないと知っている。これは二人のいわばスキンシップだ。

 でも、スキンシップにしてもやりすぎというものがあり、前にやりすぎて喧嘩になったことがあった。

 何とか私が止めることができ、二人は互いに私に謝っていた。

 とにかくそれ以来私はそのストッパーみたいなことをしている。

 

「ふふふ」

「ぐぬぬ!」

 

 二人が睨み合う。

 黒歌は笑いながら。白音は唸りながら。

 

「はあ……お主らは何をやっておるんじゃ。しかも人を挟んで。黒歌、それ以上は止めじゃぞ。白音、黒歌だって本気じゃないんじゃ。許してやれ」

 

 私は呆れながら二人を抑える。

 

「むう……御魂お姉ちゃんがそう言うなら」

「そうね」

 

 二人はすぐにその心を落ち着ける。

 ある意味これって恋人関係じゃなくて主従関係が出来上がっているような気がするんだけど、それは気のせいだろうか?

 ちょっと不安になる。

 私たちって恋人同士だよね? 決して主従ではないはずだ。

 

「……にゃん♪」

 

 と、落ち着いたところで珍しく猫声を出して白音が体を起こして正面から抱きついてきた。

 

「ん? どうしたんじゃ?」

「……甘えたいだけです」

 

 頬を染めながら私の胸元で小さく言う。

 本当に相変わらず可愛い。思わずその首元に牙を突き立てて血まみれにしたいと思うほどだ。でも、吸血するのは我慢だ。ついこの間、私は二人から吸血したのだ。この吸血はすでに数度目となる。

 初めてのときは互いに緊張した。

 で、飲んでみて血液の美味しさを思い出した。その味の感想などを言葉にすることなどはできない! 思わずなんでこれまでずっと血の美味しさを忘れていたのと自分に言いたくなるほどだ。

 

「あの……抱きしめてください、ギュッと」

 

 顔を隠したまま私にそう言う。

 もちろん私にはそれを断る理由すらない。むしろもっとお願いしてもいいよ! というくらいだ。

 私は白音のお願いのとおりに両手で白音の体をギュッと抱きしめた。

 私の両手に白音のぬくもりが広がった。

 

「あ~! 白音だけずるいにゃっ! 御魂ちゃん、私も!」

 

 白音が抱きしめられているのを見て、私を抱きしめる黒歌がそう言ってきた。

 

「お主は私を抱きしめているじゃろうが」

「でもでも、私もやってもらいたいもん!」

「もんって……お主は子どもか?」

「まだ子どもよ」

 

 そうだった。黒歌のスタイルが大人に近づいていたから忘れていた。

 黒歌はとても中学生とは思えないほどの体つきなのだ。

 黒歌が中学校へ行って、学校専用の水着であるスク水を着れば明らかにエロくなってしまって、周りの男子生徒を興奮させるだろう。それほどの体つき。

 

「ねえ、何か変なこと考えてない?」

「か、考えていないぞ」

 

 うん、決して変なことは考えていない。ただ黒歌のちょっと大人びた体を私以外の誰かに見られたくないと考えていただけだ。これは別に変なことには入らないし、黒歌のことを大事にしたい(独占したい、とも言い換えられる)という証拠ではないだろうか。

 ふふふ、黒歌は私のものなんだ。私だけが好きにしていい。私だけがその命を好きにしていい。私だけがその体を好きにしていい。私だけがその精神を好きにしていい。黒歌は、アレは私のだ。誰にも触らせないし、誰にも渡すつもりはない。

 

「み、御魂ちゃん?」

「ん? どうしたのじゃ?」

「な、なんでもない」

 

 黒歌の顔にはちょっとした怯えがあった。

 黒歌にその顔にさせたのは私だ。きっと黒歌のことを考えていて、その心、狂った感情の一部を黒歌が受け取ったせいだだろう。

 

「うにゃあ~」

 

 黒歌のそれに反して私に抱きしめられている白音は、気持ちよさそうな顔をし、鳴いた。

 私は白音を抱きしめ頭を撫でる。

 もちろんのこと白音も同じだ。黒歌と同じく私のもの。白音の全てが私のものだ。

 

「さて、と。そろそろ離れてくれ」

 

 本当はもうちょっとこうしていたかったけど、仕方ないね。

 

「え~、何で? もうちょっとこうしていたいにゃん」

「わ、私も!」

 

 二人は不満げにそう言って来る。

 どちらもうるうるとした瞳で、しかも上目遣いというすさまじい破壊力を持った攻撃をしてくる。

 黒歌はわざとそういうふうにしているのだと分かるので攻撃力は低いが、白音のほうは素でやっているので攻撃力も黒歌の倍以上だ。

 そんな攻撃を受けた私だが、なんとか意識を踏みとどまらせる。

 

「だ、ダメじゃ!」

 

 白音の両肩に手をやって押して引き離し、黒歌が回した腕を振りほどいた。そして、再び同じようにされまいと部屋の隅へと移動する。

 しかし、その行動が二人に誤解を与えたようで本気で二人が目に涙を溜めて泣きそうだった。

 で、でも行動じゃなくて言葉だったら離れてくれないし……。だから仕方なかったんだ!

 

「なんで……ダメなの?」

「私たちが嫌いになったんですか? 本当は好きじゃなかったんですか?」

 

 黒歌と白音が頬に涙を流した。

 それは私の心に刺さるには十分。

 

「ち、違う!! 私は二人が大好きだ!! 愛している!! ずっと一緒にいたい!! だから嫌いなんかじゃないから!!」

 

 恥ずかしいことを口走ったが、二人をこのまま泣かせるよりはましだろう。それに口走ったソレは心に思っていることで、本心を言ったのだ。二人にそれを伝えられたということでちょっとは二人を安心させたのではないだろうか。

 それを表すかのように二人は聞いた瞬間に目を見開き驚き、そして顔を伏せていた。

 顔は見えないが尻尾は左右にパタパタと激しく揺れ、耳はピクピクと動いていた。

 

「う、うう~、御魂ちゃんって本当に恥ずかしいことを言うよね。しかもあんなに大きな声で……」

「本当に、です。き、聞いているこっちも恥ずかしくなります……」

「や、やっぱり私たち、御魂ちゃんに心、奪われているみたい、にゃ」

 

 二人がボソボソと小さく呟く。

 一方の私は恥ずかしさで顔を真っ赤にするだけで思考が停止状態だった。

 は、恥ずかしいよ……! めちゃくちゃ恥ずかしい!

 こんなに恥ずかしい思いをしたのはいつだっただろうか。それはごく最近だ。

 二人と出会って以来、二人が関わるといつもこうやって恥ずかしいことが起きている。これは喜ぶべきことなのだろうか。いや、喜ぶべきなのだろう。何せ私は長く生きてきて生きる楽しさなど忘れていた時期があったくらいだ。そう考えると二人は私の生きる目的になっているので喜ぶべきだ。

 

「と、とにかく私がお主らから離れたのは嫌いとかじゃないからな!」

 

 二人にそう伝えて私は立ち上がる。

 

「ど、どこ行くの?」

 

 黒歌が真っ赤な顔を軽く上げながら聞く。

 

「フェリたちのところじゃ」

「ま、まさか浮気!?」

「なぜそうなる!! フェリは私の娘じゃ!! 確かに愛はあるが家族愛じゃ!! お主らとは違う!!」

 

 全く! 何を言い出すのか。確かに私はフェリが大好き大好きで仕方ないが、それは黒歌たちに持つような意味での好きではない。けれど、黒歌がフェリを浮気相手みたいな風に思われても仕方ないのは分かっている。それくらいフェリのことも愛しているからだ。

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