溶けゆく想い、彼女とお揃い   作:米粉ぱーん

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第2話

スカイさんとお出かけしてから数日が経ちました

 

私は今、トレセン学園の昇降口で独り、スカイさんのことを待っています

今日は一緒に帰る約束をしていたのですが……

 

「あ……」

 

授業終わりの放課後

昇降口まで出て来てみれば厚い雲が空を覆って、細かい雨が降っていました

 

「降らないって言ってたのになぁ…」

 

鉛色の空を見上げてぽつりと呟く

今朝の天気予報を思い出してみても『雨が降ることはないでしょう』と、素敵な女性アナウンサーがにこやかな笑顔で伝えていた映像の記憶しかない

 

「傘……は」

 

ふとカバンの中を確認すると、今日使った授業の教科書とそれぞれの教科のノートなどの他に両親から貰った折りたたみ傘が1本だけ入っていた

いつ雨にあっても大丈夫なようにと、私に買ってくれたものだ

 

しかし、傘は1本しか入っていない

 

「これだけじゃ一緒に帰れないよね………」

 

ため息をついてしまう

それもそうだ

私の体格に合わせて買ってくれた普通のよりも少し小さめの折りたたみ傘

1本しかないし、仮にスカイさんと一緒に入るにしてもサイズが小さすぎて一緒に入れない

 

自分がきっとまだまだ子供だから…

空模様に気分が引き摺られて、頭の奥と心がずーんと重く沈むような気になる

 

そんなふうに空模様と同じ鉛色の気分に浸っていると後ろから私のよく知る晴れやかな声が聞こえてきた

 

「やっほフラワー」

 

声の主はもちろん私の待ち人で

 

「…あ、スカイさん」

 

いつものように飄々と

私と同じように長さを揃えた前髪を揺らして

手をひらひらと振りながら私の方へ歩いてくる

 

そして私の隣に来ると

 

「……?どうしたの、浮かない顔して」

 

と不思議そうに首を傾げた

 

「えっと…その……」

 

青天のような吸い込まれそうな青い瞳に私は子供らしいわがままを考えていたなんて言えず言い淀む

 

そんな私の様子を見たスカイさんは

 

「ははーん…さては天気予報に裏切られて立ち尽くしてたな?」

 

アゴに手を当てて、心を見透かしたような瞳で、声で私に問いかける

 

…違う、そうじゃない

 

「違います!そうじゃなくて……」

 

考えていた思考は反射的に口に出ていて

つまりそれは貴方の考えを否定してしまうことになって

……どうしよう、失敗したかもしれない

 

びっくりしたのか驚いた表情をした青い瞳の貴方が私を見つめている

 

その瞳の奥に感じる何かに

あぁきっと、この人に隠し事なんてできないと

私は素直に考えていたことをぽつりぽつりと降り続ける目の前の景色と自分の気持ちと重ね合わせて話し出す

 

「雨が降ってるのは良いんですけど傘が…」

 

「傘が…?」

 

「…私がいつも使ってる…折りたたみ傘しか…なくて……」

 

話続けるうちにだんだん顔を上げるのも辛くなってきて俯いてしまう

目の前には空模様と変わらない鉛色のコンクリートしか広がっていない

 

「…それで?」

 

そんな私を包み込むような優しい声で、スカイさんが相槌を続ける

 

「これだと……スカイさんと一緒に帰れないじゃないですか

せっかく約束したのに………」

 

言ってしまった

嘘偽りのない、子供のわがままのような私の本音を

 

「……ごめんなさい…こんな子供っぽいわがままな理由なんです……」

 

こんな私を見て欲しくなくて…

知って欲しくなくて…

 

……貴方に幻滅して欲しくなくて

 

そんなふうに隠そうとしていた本音を溢せば感情なんて簡単に制御出来なって

視界の端から少しずつ涙で足元のコンクリートが歪んでいく

 

あぁ…こんなはずじゃなかったのに……

 

「にゃるほどねぇ……」

 

理由を聞いたスカイさんは自分の顎の下に手を当てて軽く頷く

そして優しい声で私に話かける

 

「ねぇねぇフラワー?」

 

「……なんですか?」

 

溜まった涙が溢れそうなのを手で拭って

必死に隠してスカイさんを見る

 

ニンマリと私の前で笑って

 

「じゃーん!

これ、なーんだ?」

 

と握っていたそれを私の目の前で披露して見せた

 

「え、それ……」

 

スカイさんが握っていたのは…1本の大きな傘でした

 

「ふっふっふー……

実は先生から傘を借りてきていたのです」

 

セイちゃん天才!とドヤ顔するスカイさんに私は呆気に取られてしまっていた

 

どうして、なんで

そんな考えが私の頭の中を巡る

 

固まっていると傘をワンタッチで開いて、

出かけたあの日よりほんの少しだけ伸びた前髪を手で弄りながら私のことを見て

 

「私だってフラワーと一緒に帰りたかったんだよ?」

 

なんて照れくさそうな表情をしてスカイさんは言う

 

「……そんな私の子供っぽいわがままに付き合ってくれますか?

お嬢さん」

 

鉛色の空に差し込む青天のような優しい瞳で

私に向けて手を差し伸べるスカイさんに

 

「……!はい!!」

 

私はできる限りの元気がいっぱいな声で返事をしたのでした

 

ーーーーーーー終ーーーーーーー

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