「……ほんとに、ユメ先輩なんですか?」
疑心暗鬼になりながらも、今にも泣きそうな声を振るわせホシノは問う。
「うん、……ごめんねホシノちゃん、勝手にいなくなっちゃって」
「……謝らないで、ください。ユメ先輩は、なにも悪くなんて……」
「それでも、私のせいでホシノちゃんに一人で無理をさせちゃった。……きっと、つらかったし、大変だったと思う。だから……」
ユメはホシノに近づき、優しく抱きしめ、ゆっくりと頭を撫でる。
「頑張ったね、ホシノちゃん。これから先は、私もいるからね」
「――――――!」
ユメにそう言われたからか、それとも失ったものをもう一度手に入れることができたからか、ホシノはたまっていた涙腺が崩壊し、ユメの胸の中で赤子のように泣きじゃくる。それをユメはしっかりと手放さぬよう、ぎゅっと抱きしめながら撫で続けるのであった。
(……これ、私お邪魔虫だな)
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「ありがとう」
一通り泣き止んだホシノはユメの抱擁から離れ、ヴェルチュにそう言った。
「あなたのおかげで、ユメ先輩と会えたこと。実験を成功させてくれたこと。本当に感謝してる。だから――ちょっとだけ、大人を信じてみることにする」
「感謝されるようなことじゃないよ、私は私のやりたいことのために君たちを巻き込んだ、しがない悪い大人さ。だから私を信頼するなんてやめといた方がいい。シャーレの先生のことだったら、いくらでも信用も信頼もしていいと思うけどね。……あっ、黒服は信用も信頼もしなくていいよ」
「それ、仲間のあなたが言うんだ」
「私は信用信頼尊敬全部してるけど、それは私が私であるから。私たちみたいな悪い大人は基本信頼しない方が得策だよ」
「……やっぱり、優しいんだね」
「まあそれは認めるけど……そうだ、君がそれでも私のことを少しでも信じたいんだったら……私の方から、お願いごとをしてもいいかな」
ヴェルチュの依頼に対し、ホシノは若干首をかしげて、その内容を聞く。
「――――――、――――――――」
その後、ホシノはユメが定期的に検診を受けること、その検診を行うゴルコンダとデカルコマニーをアビドス旧校舎に滞在させることをヴェルチュに伝えられ。対策委員会の部室へと戻っていった。
「……さて、紫関でも食べに行くか」
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「はいよ!特製味噌の炙りチャーシューともやしトッピングお待ち!」
「いただきます」
盛られたもやしにレンゲですくったスープを流しかけ、口に運ぶ。その後紫関特有の太麺を
勢いよくすすりながら、ヴェルチュは思考する。口はどこだよというツッコミはご愛敬。
(エデン条約の締結まであと一か月ほど……それまでに皆を守る方法を考えなければ……アツコをベアトリーチェに引き渡し、サオリやミサキ、ヒヨリが探しに行かぬよう私が探しに行くフリを……ダメだ、愛娘たちにそんな酷いことはできない。そもそもベアトリーチェが崇高に至るために、本当にアツコそのものが必要なのか?いや、それは間違いない。アツコはロイヤルブラッドの血筋だ、崇高へと至り、『色彩』の力を手に入れるためにはそれほどのことをしなければ不可能なんだろう。ベアトリーチェは恐らくエデン条約の締結を阻止するはず、アビドスに協力を仰いだけど、果たしてホシノや他のみんながそれに応じてくれるかどうか……それにベアトリーチェだって馬鹿じゃない。自身のできることなら全てやってくるだろう。それこそ、マエストロに『複製』を借りて無数の軍隊をつくったりだとか、ETOを支配するだとか……幸い、アリウスでかなりの戦力だったであろう皆は私が保護してる。ただ、エデン条約が締結されるところを襲撃すれば、間違いなくあの子たちはアリウスと戦うこととなる。それ即ち、ベアトリーチェが私たち家族を始末することと同義。いかにしてあの子たちとアリウスを戦わせないかが最初の問題になってくるな……)
そう考えていると、隣に誰かが座ったようなので、ヴェルチュは一度思考することをやめ、麺をすすった際に隣の人に汁が飛ばないよう注意しようと思い、紙ナプキンを取ろうとし、顔を上げて気が付いた。
「……奇遇だね、シャーレの先生」
“一週間くらいぶり……だよね、ヴェルチュさん”
まさかこんなところで出会うことになるとは、そう思うヴェルチュの頭に、ふと電撃が走った。万が一に備え、それを聞いておいた方がいいだろう。
ヴェルチュは先生の方へ向き、話を切り出すことにした。
「急にこんなことを聞くのもなんだけどさ……」
「依頼すればなんでも引き受けてくれる強い生徒っていたりする?」