ゲマトリア構成員“善性の塊”   作:風見海奈

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ついにEp.10まできましたよ
ここからエンジンかかってきますよ
多分


Ep.10 御守り

 

“いるにはいるけど……例の探し物の件?”

 

「いや、そっちは見つけたし私のやりたいことも終わった。これはまた別件だよ」

 

 ヴェルチュがそう言うと、シャーレの先生はうーんと声を唸らせ、ヴェルチュに問う。

 

“深くは聞かないけれど、依頼の内容を教えられる範囲で教えてもらってもいいかな。彼女たちが自立して立ち上げたものではあるけど、彼女たちだって私の生徒だから”

 

「そうだね、じゃああなたが言ったように深くは言わないけど。娘たちの護衛を依頼したくてね」

 

“護衛を?”

 

 彼の言葉に、シャーレの先生は疑問を持った。当然だろう、ここ最近、護衛をつけなければならないことなど予定にはない。そもそも予定そのもの自体なく、あるとしたら、ミレニアムやトリニティに行くだとかくらいだろうか。

 

“……というか、あなたに娘さんがいたんだ”

 

「なんか言う人みんなに言われるんだよねそれ……四人ほど、アリウスで保護した子たちがね。今はトリニティに通ってるよ」

 

 ヴェルチュはそう、いつものように言うと、急に手をポン、と叩いて言う。

 

「そうだ、あなたにも娘たちをよく見ていてもらいたい」

 

“私にも?”

 

「そうとも。トリニティ総合学園三年の錠前サオリ、二年の戒野ミサキと槌永ヒヨリ、それに一年の秤アツコ。彼女たちが私の愛娘であり、アビドスともう一つ、どこかの組織に護衛を依頼したい子たちだ。シャーレを頼るのは、あなたなら私がいなくともなんとかなるんじゃないかって、そう思ったからだよ」

 

“……どこか、遠くの地へ行く用事があったりするのかい?”

 

 シャーレの先生は気遣ったのか、少し間を開けてからヴェルチュに問う。

 

「いや、そんな用事はないよ。だけど、詳しく話すこともできない。これは私自身の問題であり、私にしか解決できない問だからね」

 

 ヴェルチュの答えを聞き、シャーレの先生は「そっか」とだけ返し、てきとうな紙にどこかへの連絡先を書く。

 

“これ、あなたが求めてる子たちの連絡先。それと、私のも。いつか役に立てるかもしれないから”

 

「……予想外の収穫だな」

 

“どうかした?”

 

「いや、なにも。……そうだ、せっかくならあなたにコレを託そうかな」

 

 そう言い、ヴェルチュは懐から、長方形の巾着のようなものを取り出す。

 

「私の御守り、大きめではあるし対等な対価とは言えないかもだけど、あなたになら託してもいいと思った」

 

“……ちなみに、中を見てみても?”

 

「いいよ、私はその中に何が入ってるのか把握してないけど。私がこの世界で目を覚ましてから、ずっとその御守りを持っていたけれど、中身を見ようとするとどうしようもない不快感と嫌悪感に駆られてしまって。きっと、その中身は私が本能的に嫌っているものなんだろうね」

 

 ラーメンをすすり終えたヴェルチュは、「ご馳走様でした」と言い荷物ををまとめ、代金を支払う。

 

「それ、次私と会うまであなたが持っていていいから。それじゃ、またどこかでね」

 

 シャーレの先生に対しヴェルチュはそう言い残し、紫関を後にした。

 

“……次かあ”

 

 残された先生は託された御守りを見つめ、葛藤をし始める。

 

“見……たいとは思うけど、ヴェルチュさんは不快感と嫌悪感に駆られるって言うし……いいや、どうせなら見てみよう”

 

 魔が差し、結局御守りの中身を見ることにしたシャーレの先生。御守りの口を結んでいる紐を解き、中に入っている、多少黄ばんだ紙にくるまれた「何か」を見る。触ってみると特にやわらかいわけではなく、硬さはアクリルと同じほどだろうか。だが決して曲げれないようなほど硬いわけでもなく、力を入れたら多少は曲がるだろう。

 

“……これは”

 

 恐る恐る、カウンターに置いた「何か」をくるんでいる紙を外す。厳重にくるまれた「何か」は、赤黒いものがこびりついてくすんでおり、それが元々なんだったのかすらわからないほどその「何か」を覆っている。

 少しだけ、割りばしの持ち手の方の先で「何か」を覆っている赤黒いものを削ってみる。すると、赤黒い色が色移りした銀色の表面が見える。また別の場所を削ると、くすんだ銅色をした、角が丸い何かの端のようなものと、先ほど見た銀色の表面が見えた。

 

 そしてこれに、シャーレの先生は見覚えがある。

 

“……クレジットカード?”

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 ぐううううう、という腹の虫の鳴き声が、狭いオフィスに鳴り響く。

 

「……アルちゃん?」

 

「ちっ、違うわよ!」

 

「そこで取り繕っても無駄でしょ……」

 

「うう……だって、ここ二日間なんにも食べてないじゃない!」

 

「す、すすすすみませんアル様、前回の依頼で失敗してしまって……」

 

「別にハルカが謝ることじゃないわよ、失敗は誰にだってあるし、それを糧にしてこそ人は(ぐううううううう)

 

 アル、と呼ばれる赤髪の少女がカッコよく決めようとしたところで、再び彼女の腹の虫が鳴き声をあげた。

 

「あっはは!なんでそこでお腹鳴っちゃうの?おもしろーい!」

 

 アルの腹の虫の鳴き声に対して大笑いをする、白髪サイドテールの少女。

 

 そのとき、オフィスの黒電話に着信が入った。

 

「社長、電話きてるよ」

 

「わ、わかってるわよ!……コホン、こちら便利屋68」

 

『初めまして、便利屋68。依頼の方をさせてもらいたいのだけれど……そうだね、便利屋は全員いるかな』

 

「ええ、全員います。それで、依頼内容の方は?」

 

『簡単なことではある、けど同時に危険でもある。受けるのであれば、全員の了承をしっかりと得てからにしてほしい。それで内容はね、エデン条約が締結される日、トリニティ総合学園の三年生錠前サオリと、二年生の戒野ミサキ、槌永ヒヨリ。それに加えて、一年生の秤アツコ。この四人の護衛を依頼したい』

 

「……エデン条約の、締結日に?」

 

『事情は言えない、ただ護衛をしてほしい。その子たちが戦い始めようとしても、絶対に戦わせないで』

 

「……なる、ほど?」

 

『私が成功とみなした場合、便利屋のメンバー一人につき十万円を支給しよう』

 

「十万円ですって!?」

 

 アルがつい大声で反応してしまい、その声の大きさよりも、その言葉の内容に驚いた便利屋の面々は反射的にアルの顔を見る。

 

「……失礼しました。わかりました、トリニティ総合学園の生徒である四人の護衛任務、確かに承りました」

 

『ありがとう。……それと、もう一つ依頼がある。こちらは必ず依頼に応えてくれると言うのならば、先の十万を前払いにして、報酬として各々に三十万円。どうだい?』

 

「……その、あなたはその金額で本当に『いいんだよ、それだけ危険も伴ってしまうんだから。もちろん、死なせるつもりはないし、死んでもらおうとも思ってない。それで、肝心のもう一つの方の内容なんだけどね』

 

 依頼人は一拍を置いて、アルにその内容を告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私が許可するまで、君たちには私の命令を聞いてもらう』

 

 

 

 




エデン条約読み返してきます 探すならXを見てください


追伸 ブルアカらいぶみにでアリウス新章の追加が発表されたので今後の展開を考え直すために9/18くらいまでお休みします
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