今日からまた再開していきますのでよろしくお願いします
ホシノはヴェルチュを連れ、ある場所まで案内している道中に疑問を投げる。
「本当に、その仮説はあってるんだよね?」
「三、四割くらいは可能性があるんじゃないかな。ただ残りはどうなるかわからない。ひょっとしたらキヴォトスが滅んじゃうかもね」
「っ……そこまでして、確かめたいの?あなたは『悪いこと』を許さない人なのに、自分から悪事を働くの?」
「もちろんだよ。何せ私は『悪いこと』を許さない人間である以前に観察者であり探究者であり、研究者なんだ。人間誰しも、己の知的好奇心に勝ることなどできないんだよ。ホシノだって知りたいと思わない?死んだ生徒に反転した神秘――恐怖を注入するとどうなるか。その身体に残留した神秘があれば、その神秘は反転するだろうね。そしたらどうなるのか?復活するのか、それともしないのか。復活したとしても自我は残っているのか。『無名の司祭』とかいう人らは現れるのか。また別路線として、そもそも神秘が残留していない場合はどうなるのか。残留した神秘の量によって結果は変化するのか。いやあ、気になって気になって仕方がないね、まったく」
「嫌な大人」
「それはどうも。……と言っても、今言った全ては私の思いつく限りの仮説なだけであって、もしかしたらもっと何か別のことが起きるかもしれない。それが何かは実際に実験しなければわからないし、その実験に生徒の死体を使わなければいけない。キヴォトスで神秘を持っているのは、私が確認した中では生徒だけだしね」
「……酷いことを言う自覚はあるけど、何でユメ先輩なの?他の人たちじゃ駄目だった?」
「もちろん他の生徒でも代用は可能だよ。ただそもそもの話、キヴォトスで亡くなる生徒の数なんてたかが知れてる。それに加え、キヴォトスの生徒は学園を卒業したら外へ行くんだ、その死体を探すのは困難を極めてる。だからこそ、『アビドスに梔子ユメの死体がある』という確定した情報を辿るのが一番手っ取り早いし、私の心を
「……そっか」
質疑応答を繰り返すヴェルチュとホシノ。心なしか、ホシノの声は鯨の亡骸のように沈み続けている。恐らくの感情としては、不安や後悔といった負の感情が大きいだろう。いくら可能性があるとしても、ヴェルチュという頭のおかしい狂った大人に、カイザーや黒服の仲間に、大切な人の亡骸を渡すことに躊躇いや後ろめたさがないわけではない。
「……確認するけど。あなたは私がユメ先輩の身体を渡した後、黒服に協力せずアビドスから離れる。それでいいよね?」
「まあ、私は黒服が今どこで何をしてるのか知らないから全くもって問題はないけど。あー、でもアビドスの子が一人いたほうが嬉しいかな。私ここの土地勘ないし、早く帰らないと家族が心配するし」
「……家族がいるんだ」
「四人の娘がね。孤児で戸籍も何もなかったし悲惨な未来も待ってるけど、せめて幸せに生きてほしいと思って、今は四人仲良くトリニティに通ってる」
「……そう」
その後ホシノは、ユメの亡骸を埋めた場所まで辿り着くまで永遠と
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「ここだよ」
そうして案内されたのは、アビドス校舎から少し離れた、砂をかぶった、もしくは埋もれた墓が多く眠る墓地。その墓群の中に、真新しいように見える墓石をヴェルチュは発見した。
「……あの、あまり砂をかぶってないあれ?」
「……そう」
掘り起こすから待ってて、とだけ言い残し、ホシノは持参したスコップを駆使してユメの亡骸の入った棺を探す。
十数分掘り進めていると、カツン、とスコップに何かが当たった音が鳴る。ホシノはふうと一息吐いたのち、ペースを上げ掘り続ける。そしてやがて、素朴な一つの棺桶が姿をあらわした。ホシノとヴェルチュで協力して棺を地中から地面に降ろし、ホシノは手をつけて足を延ばし休憩する。その間、ホシノは自分のした行動に疑問を抱いていた。
(……なんで、こんな奴の手伝いなんかしてるんだろ。黒服の、悪い大人の仲間なのに。契約を結んだから?アビドスから追い出すにはこうするしかなかったから?それとも――)
「ホシノ」
「うぇっ!?な、何?」
思考を巡らせている合間にいきなりヴェルチュから声をかけられたせいか、ホシノはすっとんきょうな声を上げて反応する。
「仮に実験が成功したら、私はここに戻ってきたいのだけれど……問題ないかな」
「問題ないけど……それだけ?」
「あ、あとさっき言ったけど、帰るときは土地勘がある人が一緒だと嬉し「黒服と帰れば?」
「辛辣だね……」
でも確かに対策委員の子たちに迷惑をかけるより黒服と帰った方が実験の話とかできるしいいか、と、そんなことを考えるヴェルチュだった。
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「――で、私を呼び出したということですね」
「ごめん、研究の邪魔しちゃって」
「いえ、あとはホシノさんを確保すれば良いだけですので、何も問題はありませんよ」
「……早くない?」
「『
「……娘の入学手続きをしたり」「それは彼女が受験に合格してからですよね?」
「……別の研究してたり」「具体的な成果や中間報告はまだ出ていないようですが」
「…………梔子ユメが本当に生きてないかのかくに「『恐怖』を観測した際には既に亡くなっていたことは私が確認済みです。でないと私はアビドスにアテがあるなど言いません」
「………………でも!今回の実験の下準備は入念にしたから!!」「それ、終わらせたのついこの前でしたよね」
「……………………とりあえず車乗ろっか」
「逃げましたね」
張った見栄をすべて切り捨てられていくヴェルチュは、車での移動中黒服からほぼずっと言葉の槍を突き刺されるのだった。
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「酷い目に遭った……」
ゲマトリアのアジトにある自身の研究所に棺を置いてきたヴェルチュは、トリニティ自治区にある自宅へと帰っていた。
「まったく……黒服め、あんな言わなくたっていいだろう。可愛い可愛い娘たちと遊んでて何が悪い!
そんなことを呟きながら、ヴェルチュは目の前の家の鍵を開錠し、扉を開く。
「ただい「うわぁぁぁん!もう会えないかと思いましたぁ!!」「ウェッ」
扉を開けた瞬間、真っ先にヴェルチュの視界に写り込んだのは、千草色の大きなもの。それはそのままヴェルチュに抱きつき、どしんという効果音が出そうなほど勢いよく倒れる。
「ご、ごめんね、帰るの遅くなっちゃって……」
ヴェルチュが頭をなでながらあやすと、玄関の奥の方からもう三人が出てくる。
「別に、今までもこれくらいいなかったことあるんだから普通でしょ……ヒヨリ」
「とか言って、ミサキも寂しそうだったよね。お父さんからの連絡が来るたびにちょっと安堵してたり」
「はぁ!?なんでそこで私の話を」
「ヒヨリ、ヴェルチュさんから一度退いた方が「あと十分くらいはこのままがいいですぅ!!」
「えぇ……」
真夜中に差し掛かろうとしている時刻のトリニティ自治区の住宅街で、少しばかり大きな声で騒いでいる五人*1。その騒動は、寝巻姿の隣人が苦情を入れるまで続いたという。
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