ゲマトリア構成員“善性の塊”   作:風見海奈

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少し遅れました、皆様、一番最初に挿入した「本編を読む前に」は閲覧されましたでしょうか
早速で申し訳ないのですが少々更新を停止します
定期考査が……ちけえんだ……!
赤点とって大会行くのだけは避けてえんだ……!!


Chap2.失ったはずのもの、手放さなかったもの
Ep.6 仮説と結果


「じゃあ、行ってくるね」

 

 朝食を食べ終え、いつもの服装に着替えたヴェルチュは、四人にそう言った。

 

「こ、今度はいつくらいに帰って来れそうですかね……?」

 

 ヒヨリはおどおどしながら寂しそうに彼に尋ね、それに対しヴェルチュは優しい声色で返す。

 

「頑張って、一週間くらいで帰るよ。流石に今回みたいに一ヶ月以上開けることはないはずだし」

 

「なるべく早く帰ってきて……ヒヨリがうるさくなるから」

 

「ミサキが寂しくなるからじゃなくて?」

 

「だから!なんで私の話になるの⁉︎」

 

「……くれぐれも、無理はしないようにしてくれ」

 

「もちろんだよ。みんなも無理はしないように、頑張ってね」

 

 朝の賑やかな空気を味わったヴェルチュは、そのまま元気良く「いってきます」とだけ言い残し、自宅を後にする。

 

 

 

 

 

 

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 ゲマトリアのアジト、その研究室。ヴェルチュ専用のその部屋には、多くの管が接続された大きなガラス製のバスタブのような容器と、先日アビドスから運んできたユメの亡骸の入った棺があった。

 

「さて……実験を始めよう」

 

「わたくしたちもご一緒しても?」

 

 格好つけて言葉を放ったヴェルチュの研究室に、そう言いながら二人(さんにん)が入ってきた。

 

「もちろん、歓迎するよ。ゴルコンダたちも共に見届けよう、彼女が再びアビドス(舞台)に戻れるかどうかを。ああ、興奮するなあ……こんな感覚いつぶりだろう……?」

 

 嬉々とした声で一人の世界に入り込んでいるヴェルチュ。身体をくねらせるその姿を、ゴルコンダもマエストロもデカルコマニーも冷めた目で見ていた。

 

 

 

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「……ところで、君らはどうしてこの実験を見ようと?」

 

「なに、そう小難しいものではない。単にそなたの実験というものに興味を示してな」

 

「わたくしもマエストロと似た理由です。もっと厳密に言えば、『テクスト』が変化する瞬間を見ることができるかもしれないまたとない機会ですから」

 

「そういうこった!」

 

 ヴェルチュの問いに対し、二人はそれぞれの意見を返すと、ヴェルチュは実験の準備をしつつゴルコンダの返答に深堀する。

 

「ゴルコンダ、『テクスト』って変化するの?」

 

「『テクスト』そのものが変化することはまずありません。なにせ『世界』を構成する記号、その中の解釈によって導き出されるものが『テクスト』です。確かに人それぞれの解釈は存在しますが……それによって導き出される結果は本質的にはすべて同じものです。ですが例外はもちろん存在します、それは『色彩』の力に感化されたもの、もっと幅広く言えばこの世界(舞台)において、何者かの影響により存在意義ができたもの。それらは元の『テクスト』とは別の『テクスト』を含むはずです」

 

「はずってことは、まだ実例は見たことがないってことだよね?」

 

 バスタブのような容器に謎の液体を注ぐヴェルチュはゴルコンダにさらに質問を投げる。実験室には梅酒のような刺激臭が充満している。

 

「ええ、ですが()()()()()()()()()()()()()()()は見たことがあります。その実例である彼は、自身が現在の『テクスト』に変化する以前の自身を忘れているらしいので本当かどうかはわかりませんが……ですので、あなたの実験を見学させていただき、わたくしのその仮説が正しいかどうか判断したいと思っています」

 

「そういうこった!」

 

「なるほどねー、そりゃ興味深いわけだ。ところで、その『テクスト』が変化した存在って誰?シャーレの先生?」

 

「言いませんよ」

 

「ケチだね……あっ、ちょっとそこどいて、死体ホルマリンに漬けるから飛ぶかも」

 

「ホルマリンに漬けたとて、元々砂漠にあったものだろう?腐敗はしていないのではないか?それに加え成功してもホルマリンによるアレルギー性皮膚炎が発生する可能性もある」

 

「それに関してはすでに解決済みだよ、それを抑える薬品も数種とかしてある。それとこの液体には恐怖も注入してあるから――」

 

 ヴェルチュとマエストロがそのような会話をしている中、ゴルコンダは先のヴェルチュの問いについて思考する。

 

(「テクスト」が変化した稀有な存在であることを言ってしまったら、あなたは自分自身を研究し始めそうですね)

 

 

 

 

 

 

 

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「……よし、これで粗方終わったかな。みんなありがとう、手伝ってくれて」

 

 パンパンと、液体に埃が入らないよう容器に背を向けながら手を払って言うヴェルチュ。

 

「いや、見物するのならその対価を支払うべきだ。だが一つ、根本的な問題と呼べばよいのか、そういった疑問はあるのだが」

 

「?」

 

 マエストロの言葉に疑問符を浮かべるヴェルチュ。次いでマエストロはその言葉を言い放つ。

 

「梔子ユメの死体はただの死体ではなく乾燥死体、俗に言う木乃伊(ミイラ)だ。脂肪組織は縮んでいるうえ皮膚や筋肉も硬化している。さらに言えば内臓も乾ききり硬化したただの筋肉質の塊、そんな状態であるのにそなたは自身の仮説が立証「されるよ」

 

 食い気味に、しかし焦燥感はなくはっきりと、自信に満ちた声で、ヴェルチュは言い切る。

 

「……根拠はありますか?」

 

「ない!勘!」

 

「だろうな」

 

 あきれたように、マエストロとゴルコンダは溜息を吐く。だが、二人とも内心ウッキウキで結果を心待ちにしていることを、ヴェルチュは知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

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「うーん……」

 

 数日経ったヴェルチュの研究室、彼は頭を悩ませていた。

 

「明日には帰らないといけないのに、まだなのかあ……」

 

 ゴルコンダ、マエストロと共に交代制でユメの様子を観察して六日が経過している。驚くべきことに、ヴェルチュの考え通りと言えばいいのか、注入されている恐怖の影響なのか、時間経過するごとにユメの亡骸は生前と変わらぬ見た目をしていた。

 

「私の仮説としてはもうすぐのはずなんだけどなあ」

 

 いつぞやのゴルコンダやマエストロのように、はあと溜息を吐くヴェルチュ。まあいいか、と言い残し、彼はいつ「テクスト」が変化するのかわからないため、ゴルコンダを呼びに行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぃん……ここどこぉ……助けてホシノちゃ~~ん!!」

 

 

 

 

 

 

 すでに「テクスト」が変化していることを知らぬまま。

 

 

 

 




お昼寝中のホシノ「ユメ先輩に呼ばれた気がする」
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