「やぁ、戦友。」   作:rantia92

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――戦闘開始直後。

少年兵風情が、どのように戦術を広げるかと様子見から始めたが

私は彼女らの評価をすぐに格上げした。

 

――指定した敵に向けた弾丸はほとんどがヒット。

ヘルメットを被り顔を隠した少女たちをばたばたと薙ぎ倒していく。

 

――ホルダーからマガジンを抜き、空マガジンを排出。そして装填。

3秒以内には完了し、戦線に復帰する。

 

理想的と言っていいほどに洗練された戦闘技術だった。

ここまで完成された動きをする兵士が、20にも満たない子供だと言うのだ。

彼女らが我々の軍にいればどれほど楽だったか。

思わず目を覆いたくなるほどだ。

 

「次の指示を。先生。」

 

狙撃銃という特性上、すぐ近くのカバーについているのはハスミ。

彼女の狙撃も美しい。

 

「11時方向、道路上のカバーに2人。」

 

「了解。」

 

指示を受けた瞬間。1秒も満たずにバキン、という大きな轟音が鳴る。

この近距離、風の抵抗を気にしなくていいというアドバンテージを抜きにしても

早すぎると言っていい速度だ。

ヘルメットをも砕く一撃の鉛玉を前に、敵の彼女らはひとたまりもないことだろう。

 

「敵、沈黙。」

 

「いい腕だ。」

 

最前線に立つ早瀬、その後方に位置するカバーには火宮がいる。

 

「ユウカさん!エネルギー剤です!」

 

「助かるわ、チナツ!」

 

まるで組みなれたチームのように、各々が足並みを揃えていた。

さすがは銃を常に持ち歩くほどの治安。

経験に裏付けされた凄まじい戦闘能力を感じる。

 

暫く戦闘を続けていけば、優に20を超えていたデモ隊も撤退を始めた。

ひとまずは、こちら側の勝利と言えるだろう。

警戒を解いても問題ない、か?

そう考えていた矢先、一人の少女がこちらに向かってくるのが見えた。

…新手か。想像よりも早い。

 

「人影を把握した。そちらでも確認できているだろうが、真正面だ。」

 

既に狙撃銃を構えたハスミは、射撃を開始せず沈黙を貫いている。

 

「あれは――。先生。」

 

対象が目視でその表情を確認できるほどの距離に近づく。

射撃姿勢で待機していたハスミは、口を開いた。

 

「友軍です。我々トリニティ学園所属の、守月スズミさんです。」

 

「…なるほど。総員、警戒解除。」

 

その言葉と同時に、皆銃を下ろしローレディポジションに変更。

銃口管理まで身に着けている辺り、やはり柔な少年兵ではなかったな。

と独り言ちる。

 

「お疲れ様です、お三方。そちらの方は?」

 

「連邦捜査部シャーレ担当顧問。ラスティだ。」

 

「先生…なるほど。新しく着任された先生でしたか。」

 

「私は守月スズミ。トリニティ自警団所属です。先生がなぜ戦場に?」

 

「あぁ。戦術指揮の役を担っている所だ。シャーレ部室へ向かう道中のな。」

 

「なるほど。首尾、理解いたしました。援護は必要でしょうか?」

 

「可能であれば助力を願いたい。恥ずかしい話だが人手が足りていないのでな。」

 

「了解。残弾には余裕があります。其方の指揮に加わります。」

 

ポイントマンが二人にマークスマンが1人、衛生兵が1人。

悪くはない組み合わせだ。

多少は戦闘に余裕が出来たと言っていい。

 

「会敵に気を付けてくれ。前進を開始するぞ。」

 

 

 

 

 

「連邦生徒会の子犬が現れましたか…」

 

狐の面で顔を覆う彼女はそう呟いた。

 

「あの建物に何があるかは存じませんが。」

 

「連邦生徒会が大切にしているモノと聞けば――」

 

「壊さないと気が済みません。」

 

「久々の、お楽しみになりそうですね…」

 

ウフ、フフフ、アハハ…

ぞっとするような、カラカラと鳴る美しい鈴のような。

声は高らかに。襟を正すような上品を孕んだそれは。

笑顔と言うにはいささか歪だった。

 

 

 

今回の件の首謀者が判明。

名は狐坂ワカモ。学園を退学になった後、矯正局なるものを脱獄したらしい。

今回の件のような事件を起こすのも一度や二度ではない危険人物。

油断はできない相手であろうことは想像できる。

危険な相手だ、気を付けて立ち向かわなければ

いくら私たちとて怪我では済まされない可能性もあるだろう。

 

――シャーレ部室付近。

 

到達と同時、兵が展開するのを目視で確認する。

だがその最奥に見慣れない人間がいる。

今までの敵とは違う、派手な花の意匠の服装。

アレが、首謀者の。

凝視しその特徴を捉えようと目を動かせば。

コンクリートブロックの影、狐の面が揺れた。

発砲音。

 

風を切る弾丸の音が眼前に迫り来る。

 

狙いは私か!

 

アドレナリンが強く分泌される感覚。

視界が一層クリアに広がり、極限まで引き上げられた反射神経が

弾丸の動きをスローモーションで捉える。

心臓部位を狙った狙撃。

右に身を乗り出し、通常の倍以上の力で地面を蹴る。

コンクリートが割れ、バッタの様に思い切り身を跳ね出す。

 

「先生!?」

 

「大丈夫、射撃を続けてくれ。にしても――」

 

いい狙いをする。惜しむらくはそれが敵であることだ。

強く心臓が脈動を続ける感覚そのままに敵を睨みつけるが

見えるのは遠くなったその背中だけだった。

あれだけの狙撃技術を持った人間が、未だ逃げに徹しているだけ。

直接的な戦闘を行おうと云う気を起こさせれば

次はあの程度では済まないだろう。

思わずうすら寒い感覚を覚える。

 

――指示を止めた、少しの合間。

たったその間に敵は入り込む。

 

 

道路を砕き、コンクリートを挽きつぶし――

ギチギチという履帯の金属を引っ張る音。

もはや目視せずともわかる、争いの象徴。

まずい、と思った。

 

「隠れろ!」

 

各々がカバーに入り込み、しかと相手を捉える。

 

「巡航戦車!?」

 

誰が口にしたか…その言葉は

皆の感情を総じて代弁する一言だった。




誤字修正をして頂いたようで、大変ありがたいことで御座います
もしよろしければ今後共々宜しくお願い致します
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