【完結】転生おっさんin公爵令嬢は人型ロボを作って乗る   作:はるゆめ

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第四十三話 魂のプロレス

 目の前には皇帝。歳は五十代ぐらい。グレーの髪に鋭い目つき、漆黒の瞳。優男なんだけど冷徹なのが顔つき。なんやかんやと装飾だらけの衣装を纏い豪華な椅子にふんぞりかえっている。

 

 アテナが目の前に現れたってのに、やたらと落ち着いてるな。

 ん?

 帝国兵が一斉に引いていく。おいおい、皇帝を放ったらかして何処行くんだと思ったけど、きっと何かの策があるんだろう。よし。迷っても仕方ない。皇帝、拉致させてもらうぜ。

 

『よし。レイテアちゃん、お人形さんを扱う要領で皇帝を摘んでみよう』

(はい)

 

 アテナが一歩踏み出す。

 

 突然湧き上がる猛烈な不快感が俺たちに襲いかかった。

 

『あっががっ!』

(ううっ)

 

 嘔吐感と頭痛、目眩と悪寒をミックスしたような不快感が俺たちを襲う。これは……あの時だ。楔を打ち込まれたドラゴンに取りついた時の! 魂を抜き取り傀儡にする魔導器具の出す不快感。

 

(おじさまっ!)

『レ、レイテアちゃん、あの楔だ! あれの同類がこの近くに仕込まれてる!』

(兵器を居城に置くなどっ!)

『ああ、イカれてやがる』

 

 だめだ!

 まるでこの世から切り離されていくかのような感覚。楔は? 楔はどこにある?!

 

 勘だが……皇帝の下か? あれは効果範囲に制限があるはず。不快感の一番強い場所……皇帝の座っているあたりだ。

 

『レイテアちゃん! 楔は奴の下! 薙刀で!」

(は、はい)

 

 アテナが背中の薙刀を引き抜き、刃先を皇帝の椅子手前に突き刺す!

 

 同時に不快感が一気におさまったかと思うと、

 

(おじさま……)

 

 レイテアちゃんの意識が希薄になるのと入れ替わりに見知らぬ気配が入ってきた。

 

 [何? どういうことだ、まだ魂が残ってるのか]

『誰だてめぇ!』

 

 レイテアちゃんの代わりに現れる謎の意識。

 

 [お、お前は!?]

『うるせぇ! レイテアちゃんを返しやがれ!』

 

 ポーシェさんの仮説通り、俺たちの魂は二人分だから、片方だけは無事ってわけだ。残った俺は抵抗出来るぞ。肉体がない今の状態、もちろん取っ組み合いなんて出来ない……はずなんだが、俺はそいつと揉み合いになる。

 

『おらおらこの野郎!』 

[た、魂がもう一つあるだと!]

 

 こいつ、乗っ取り担当の魔導士だな。驚いてやがる。

 

『やらせねぇぞ! 女の子の身体に入ってくるスケベ野郎! 変態オヤジ! セクハラだぞ!』

 

 ぐはぁ! 俺の言葉がそのまま盛大なブーメランとなって俺に刺さる。いや違うぞ! 俺の意志で入ったわけじゃないからな! 推定無罪だ!

 

『くらえ! 悪霊退散!』

 

 俺は集中する。気がついたらこの世界での覚醒。俺みたいなわけわからん存在をあっさりと受け入れてくれたレイテアちゃん。彼女だけじゃない。ポーシェさんも公爵夫妻もカシアもエミサも。それだけでも大恩だ。

 

 第二の人生、俺はレイテアちゃんを助けていくって決めてるんだ。ダロシウ王子とレイテアちゃんの結婚式を見るまでは死んでも死に切れねぇよ。

 

 レイテアちゃんに戻ってきてほしい気持ち。

 こいつを追い出したい気持ち。

 

『レイテアちゃん! 帰ってこいよ!』

 

 気がつくと周りの景色が変わっていた。夕方の教室。茜色に染まる机と椅子。俺は見知らぬ男に馬乗りになって殴りつけている。灰色の坊さんみたいなカッコした男だ。

 

 ドラゴンさん? 何かしたの? これならイメージしやすい。遠慮なくやらせてもらう!

 高校時代、プロレス好きの友人に仕込まれた数々の技を決めるぜ。まず奴の胸へエルボードロップ!

 

『くらえ!』

 [ぐぼっ]

 

 続いてニードロップ! 

 

 

『どうだ!』

 [……!!]

 

 声も出ねぇか。痛いなんてもんじゃねぇだろ?

 お次は悪役レスラーの定番。椅子を持ち上げ、全力でそいつに振り下ろす!

 

 [……っ]

 

 男の身体が透けるように消え失せ、入れ替わるようにレイテアちゃんが姿を現す。いきなり制服姿で抱きついてくる。

 

(おじさまっ!)

『よ、良かった……』

 

「人の争いごとに干渉するのは、私たちの禁忌なんですが」

 

 全身真っ白の女性、ドラゴンの化身さん。

 

「これぐらいのお膳立ては干渉には含まれません」

 

 にこりと微笑むドラゴンさん。

 

『助かったよ。こうやって身体を知覚出来るとやりやすい』

(感謝いたします!)

「あなた方は私たちにとって恩人ですから」

 

『さあレイテアちゃん、皇帝を取っ捕まえて王国へ帰ろう!』

(はいっ!)

 

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