【完結】転生おっさんin公爵令嬢は人型ロボを作って乗る   作:はるゆめ

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第四十六話 侵略国家を討て

 ラーヤミド王国最大の危機と後世で呼ばれる戦役。

 詳細は以下の通りである。

 

 相次ぐ帝国の侵攻。

 反撃の始まりはレイテア・ミーオ・ルスタフ公爵令嬢が大型ゴーレム“アテナ”を操り、ダラド帝国へ進撃。

 

 電光石火の如き速さで帝都へ到達し、皇帝居城にて皇帝の身柄を確保。王国へ帰還。

 

 皇帝は何一つ話さず、沈黙を通す。

 

 一ヶ月後。

 国境マヤオ平原にて停戦交渉へ出向いた王国側の一行が目にしたのは、居並ぶ帝国の大型ゴーレム軍。

 

 それらは一切の交渉に応じることなく、また皇帝の身柄が王国側にあるにも関わらず侵攻を開始したのである。

 それを知った皇帝は高笑いとともに次のように発言した。

 

「ははははっ。そうか。やはりな。あれは次の対話相手を決めたのだ。余はもう皇帝ではない」

 

 皇帝の言う“あれ”とは、戦後明らかになる。古代遺跡で発掘された対話型の鏡。主人と定めた者に対して、多岐に渡る優れた知見を提供する。

 

 それは皇帝が連れ去られた後、次の主人を求め、その場にいた帝国将軍がそれに応じた。

 

 鏡の示した策は『王国滅ぼすべし』。

 それに従い、新しく皇帝となった将軍は王国への侵攻を始めたのであった。

 

 王家直属軍や付近の貴族領軍が出動するも、大型ゴーレム相手では分が悪く、戦線は徐々に王都へと向かう。

 

 アテナも新兵器を大量に使用し、帝国軍を止めるべくまさに獅子奮迅の活躍をした。

 

 しかし兵士同士の戦闘ならいざ知らず、集団戦を避け小規模部隊となってゲリラ戦を繰り返す帝国兵に対して、アテナは戦果を上げられなかった。

 

 アテナは対ゴーレム戦に専念することになったが、それは戦場を俯瞰すれば点でしかなかったのだ。

 

 それでも帝国軍ゴーレムを次々倒していくアテナの姿は、ともに戦う王国兵の戦意を鼓舞するのには充分過ぎる効果があり、遠くから見ている王国民には希望をもたらす。

 

 撃破した帝国軍ゴーレムの数は百体を越え、王国からは“戦乙女”の名とともに賛美の声が上がり、帝国からは“悪魔の巨人”と呼ばれ大いに恐れられた。

 

 一進一退の攻防は三ヶ月に及び、王国は決着をつけるために再びアテナによる帝都急襲作戦を発令。

 

 アテナは前回よりもあっさりと皇帝居城に突入し、鏡を探し当てるも雷撃魔導の攻撃を受け大きなダメージを受ける。

 

『レイテアちゃん、無事か?』

(は、はい。でもアテナが……動きません)

『絶縁加工が間に合わなかった箇所にダメージが通ったな。“考えるスライム”も電気には勝てないか』

(……おじさま?)

『あぁ。“考えるスライム”はダメージ回復のために餌を欲している。ドラゴンの腕に匹敵するようなものを』

(……私も感じます)

 

 男は決意する。

 思えばレイテアの中で意識が目覚めた時。

 なぜさしたる動機もなくレイテアに協力する気になったのか。男にとって王国はどうでもよいし、名乗りもせず、ただレイテアの人生を眺めていてもよかった。

 

今、それに対する答えをはっきりと自覚する。

 

『レイテアちゃん、俺さ、今になって思い出したことあるんだ』

(な、何をですか?)

『俺には娘がいたって言っただろ?』

(はい)

『実は……娘は……事故で死んだってことをさ……思い出したんだ』

(え……)

『それでさ、妻は少しおかしくなってね、治療を受けることになったし、娘をすごく可愛がってた両親もさ、いなくなった孫を失った悲しみにふさぎ込んでしまって』

 

 家族揃って有名な滝へ観光に出かけた時に起きた事故。一部が老朽化していた柵が破損し、愛娘は崖下へ転落した。

 

『咄嗟に手を伸ばしたけど、あと少し。あと少しで娘の手に届かなかった』

(……)

『今でもはっきり覚えてる。夢に出てくるんだ。伸ばした手が届かないのと落ちていく娘の顔を、さ。何度も』

(……)

『妻が“あなたのせい”って責めるんだ。少しおかしくなった頃からね』

 

 そんな生活が一年続く。

 夜は何度も目が覚める。

 

 ある日、出勤途中に男が運転する乗用車は対向車線にいたトラックに正面衝突して大破。

 

 即死だった。

 

 そして男は何もない空間で意識が覚醒する。

 目の前にはっきり視認できないが、圧倒的な存在がいるのを感じ取った。

 

 男はそれに向かって恨み言を言い募る。

 

 なぜ自分の娘だったのか。

 娘の代わりに自分が生き残って。

 そして自分が死んで。

 残された妻はどうなる。

 この世に神も仏もないのか。

 

 その後のことは覚えていない。

 

『レイテアちゃん、俺、こんなことになるのって三度目……それも思い出してきたんだ』

(えっ?)

 

『一度目はさ、王族の一部とつるんだ貴族達に濡れ衣を着せられ、一族ごと殺された上に、魔導の価値があるってんで幽閉されてた女の子だった。その子も公爵令嬢だったよ』

(……)

 

『ここの世界じゃないと思うな。その子はもう心身が擦り切れて廃人みたいだった。だから俺はその子の魔導を使って仇を討ったんだよ』

(……その令嬢どうなりました?)

 

『救出に来た第二王子と結ばれたよ。その後俺は眠ったんだと思う。次も大変だった。急死した気の毒な身の上の公爵令嬢だ』

(……)

 

『とにかく母親である公爵夫人を悲しませたくなくてね。侍女に打ち明けてその娘を演じられるように頑張ったんだ』

(……)

 

『……今になって、これらのことを思い出したのは、レイテアちゃんとお別れの時が来たんだと思う』

(そんな!)

 

『落ち着いて聞いてくれ。これから俺の魂を“考えるスライム”に食わせる。そうすればドラゴンの腕ほどじゃないけど、ダメージ回復ぐらいの効果はある』

(なぜわかるのですか?)

 

『今はわかるんだよ。俺をこんな存在にした何者かの意図……意思か、それが自然とわかるんだ』

(おじさま……)

 

『レイテアちゃん、本来君はゴーレムオタクで、ただ夢見る女の子になってたはずなんだ』 

(……それはわかります)

 

『アテナを通してさ、色んな人と知り合えたろう? ダロシウ王子の本音も知ることが出来た。けどね、あくまでも知り合いになっただけ。これから彼らとは人生を一緒に旅して、色々な思い出を作っていくんだよ。それが人生ってやつさ』

(……はい)

 

『時には喧嘩したり、疎遠になることもあるかも。そしてまだまだ出会いはあるよ。人は人の中でしか生きられないから。その人達と付き合っていく。下手したら引きこもりのお嬢様になりかねなかったレイテアちゃんは、人と一緒に生きていくのさ。ダロシウ王子とも正面から向き合っていこう、ね?』

(……はい)

 

『俺は自分の娘を助けられなかった。今の俺はは世界を渡ってまるで娘みたいな女の子達を助けて回る存在になっている。存外悪くない気分だよ。レイテアちゃん、さよならは言わない。前を向いて!』

(おじさま……)

 

 止まらない涙。レイテアは生まれて初めて声をあげてひとり泣いた。

 

『“考えるスライム”よ、俺の魂をくれてやる。だからレイテアちゃんを助けてくれ!』

 

 長年慣れ親しんだ男の存在感が徐々に消えていくと同時にアテナがゆっくりと動き始める。

 

 こうしてレイテアは鏡の破壊を果たし、新しい皇帝を拘束。

 

 長きに渡る帝国と王国間の争いに終止符を打つことになった。

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