【完結】転生おっさんin公爵令嬢は人型ロボを作って乗る   作:はるゆめ

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第五話 大魔導士ポーシェ

 大量のハルミヤ鋼を持ち込むと、大工房の長であるガードさんはかなり驚いたようでした。

 すぐに加工へ入る準備を始めています。

 

『レイテアちゃん、ひとついいかな?』

(なんでしょう)

『ハルミヤ鋼の加工をする前にお祈りっていうか、つまりドラゴンに感謝を捧げる儀式をしたいんだ」

(感謝を捧げる儀式……)

『俺のいた国だと……例えば秋の収穫が済んだら毎年やる祭がある。とれた新米使ったお酒を田んぼの神様にありがとうございますって捧げる収穫祭さ』  

 

 米というのはおじさまに教えていただいた水耕栽培による穀物で、おじさまが住んでいた国の主食だそうです。

 

『誰かに何かを感謝する。俺はそんな文化で育ったからさ。死してハルミヤ鋼となったドラゴン、採掘を快諾してくれた上に、前脚まで切って提供してくれたドラゴンに感謝を捧げたいと思うんだけど』

(ええ、おじさま。やりましょう)

 

 これを話しましたら、ガードさんは『漁師は豊漁の時、海に感謝を捧げると聞いたことがありますな。お嬢様、やりましょうや』と快諾してくれました。

 

 高く積まれたハルミヤ鋼の前に、お父さま、お母さまと(わたくし)、工房で働く職人一同で感謝の意を捧げて黙祷しました。

 

 おじさまが指摘された通り、ここにあるハルミヤ鋼はドラゴンの存在、ドラゴンによる承諾、どちらが欠けても入手出来なかったもの。

 

 こうして感謝を捧げるという精神性、おじさまのいた世界の人々は礼儀を重んじる文化をお持ちです。

 

 (わたくし)も見習いたいと思いました。

 

『骨格はなんとかなった。次は筋肉かぁ……動力と並んで難問だぁ』

(公爵家と縁の深い大魔導士さまに相談しましょう)

『あ……もしかして? 家庭教師に来てた人かい?』

(ええ。大魔導士ポーシェさまです)

 

 森の奥に住む大魔導士ポーシェさま。

 

 ラーヤミド王国が帝国の侵攻を許していないのは、ひとえにポーシェさまの研究成果による所が大きい……この国の貴族、そして国民も全員そう思っています。

 

 (よわい)は百をとうに越えてるけれど、魔導によってとてもそうは見えないお姿をしてらっしゃいます。貴族学院の生徒といっても違和感ありません。

 

 すらっと背が高く透き通るような金色の髪。

 赤茶色の瞳は知性の輝きを放っていて、(わたくし)も思わず見惚れてしまいます。

 

「あら! レイテアお嬢ちゃん、大きくなったわねぇ」

「ポーシェさま、お久しぶりです」

 

『実際に見るとこりゃまたすごいな……妖艶っていうか……』

 

 おじさまの感想が少し変です。

 

「おや? レイテアちゃん、あなた」

 

 ポーシェさまがじっと私を見つめています。

 

『気づかれたみたいだよ、レイテアちゃん。触られてる感じがする』

 

「ポーシェさま。実は……私の中には天の御使(みつかい)さまがいらっしゃるのです」

「珍しいこともあるもんだねぇ……うん、悪いものじゃない」

「それはもちろんです。(わたくし)に全く新しいゴーレムの概念を教えてくださいました」

「今回の要件もその人が関係してるのね?」

「はい!」

 

 私はポーシェさまに人型ゴーレムの構造を説明しました。

 人のように動けるように、骨や肉があり、骨の材料としてハルミヤ鋼を手に入れたことも。

 

「おや、ハルミヤ鋼がたくさんあるんだね。レイテアちゃん、魔導士連中も喜ぶよ。媒体としては上等な部類だからね」

「お父さまに話して公爵家からそちらにも回します」

「助かるよ」

「それで骨格を動かす筋肉に相当するもの、それについての相談なんです」

 

 顎に手をやり考え込むポーシェさま。

 目を瞑っておられます。

 

『レイテアちゃん、この世界にからくり人形ってものがあるか訊いてくれ』

【それあるわよ】

『え?』

(ポーシェさま?!)

【そうそう。一時的に精神を同期させたのよ。この方が早いでしょう?】

 

 頭の中でお話しする人が増えました。

 

『大魔導士……すげぇ』

【からくり人形ってのはサーカス団が持ってるよ】

『サーカス団……あるんだ。それ、どんなやつだった?』

【あのサーカス団は“暁”って名前だったねぇ。そこの売りの一つがからくり人形による演舞でね、見事な曲芸を披露していたよ。紐で操ってるわけじゃないし、魔導も使ってない】

 

 曲芸をこなすからくり人形!

 そんなのは聞いたこともありません。

 一般的なからくり人形は紐を使って動かします。

 

【動きが人間そのものさ】

『それ、ロボットじゃないだろうな』

【そのロボットってのは?】

『えっと、金属とか無機物を使って電気……雷を動力源として人の代わりを務めたりする道具のことかな。こっちで言うゴーレムだな。説明下手ですまん』

【そういう物でもないだろうさ。柔らかい動きをしてたよ】

 

 おじさま曰く、こちらで言う工房が巨大な施設として存在し、そのロボットが稼働。それほど人手を必要とせず大量の品々を作っているそうです。

 

 あの夢で見た“自動車”という走る乗り物もそうやって作られているとか。

 

『他に頼れるものはないから、ダメ元で頼み込んでみるさ。暁サーカス団ってのはどこにいるんだい?』

(おじさま、彼らは巡業で各地を回ってます。入国や巡業の許可は王が出されるので、王城に行けばわかると思います)

『まずは現物を見に行こう!』

【何やら面白そうだね。私もついていっていいかい? ダメって言われても行くよ】

(もちろんです)

『だな。魔導士がいてくれると助かるよ』

 

 こうして(わたくし)達は王城へ向かったのです。

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