ポケットモンスター in オラリオ   作:ニャース

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いつもよりちょっと長めです。


16 冒険者、ポケモンと協力する

 

 冒険者達は各地を襲撃している闇派閥(イヴィルス)相手に優勢に戦っていた。

 

 事前に襲撃地点をフィンが予測し、駄目押しのラティアスとラティオスの協力もあって、逆に不意打ちができたことが大きかった。

 

 更に闇派閥(イヴィルス)の指揮官であるヴァレッタが元々待機を命じていた。

 アルフィアとザルドから闇派閥(イヴィルス)に在籍していた事を聞かされていたフィンは、ヴァレッタが情報収集のために積極的に行動に出ないと読んでいた。

 事実その通り襲撃者の数はオリヴァスのような暴発した者のみであり、常の襲撃に比べて数は少な目であったことも重なる。

 

 駄目押しとばかりに、冒険者達には新しい力が加わっていた。

 

 これら三つの要素が重なり、もはや一方的な蹂躙となっていた。

 

 

 

 

 

「さあ! いくわよウインディ! 『しんそく』でとっつげきーーーーーーーーー!!」

「わおおおおおおーーーーーーん!!」

 

 ウインディに跨り、アリーゼが闇派閥(イヴィルス)の兵に目にもとまらぬ速さで突っ込んでいく。唖然とする民衆を大きく飛び越えていくその声は、どこか楽しげでもあった。

 

「な、なにか赤い残像が……がああああああああああ!!」

「ぐわああああああああああああ!!」

 

 背にご主人様を乗せ、ウインディはまるで玩具を目の前にした犬のように瞳を輝かせ、兵士達が反応する前になぎ倒していった。

 アリーゼも超速で動き回るウインディに乗ったまま、器用に剣を振るって敵を無力化していく。

 

 出会って数日しか経っていないが気が合ったのか、思考回路が似ているのか、長年連れ添った相棒のようなコンビネーションを披露していた。

 

「どう! 正義は勝つのよ!」

「わふーん!」

 

 瞬く間に目につく全ての兵士を無力化し終えると、アリーゼは剣を掲げて逃げ遅れた民衆にその雄姿を見せつけた。

 ウインディも自慢気に鼻息を荒くしている。

 

「……え? なんだアレ? でかい犬?」

「よ、よくわからないけど、助けてくれたのよね?」

「あ、ありがとう、『紅の正花(スカーレット・ハーネル)』!」

 

 その場のノリと勢いに押され、民衆達が拍手をしてアリーゼ達を褒め称える。

 するとますますアリーゼとウインディはつけあがって自称美しい決めポーズをした。

 

「ああもう、馬鹿団長め! アタシらを置いて一人で突っ込んでんじゃねえ!」

「公園でワンちゃんと一緒にはしゃぐ子供そのものですわね……」

 

 呆れながらも、ようやくライラと輝夜が追いついてきた。

 

「あら? 二人とも遅かったじゃない! もう敵は倒しちゃったわよ!」

「アホか!! ラティオスからの映像と数が合ってないだろ! まだ残ってんぞ!」

 

 暢気に手を振るアリーゼに、ライラの怒りが炸裂した。

 しかし、怒れるライラ相手にアリーゼは全く焦りもせずに答える。

 

「それなら大丈夫よ! ポケモンに乗って突っ込んでいったのは私だけじゃないもの!」

「そういえば、正義馬鹿のエルフも先走っていましたわね」

 

 そういって輝夜が視線を奥に遣る。

 そこには現実ではありえない光景が広がっていた。

 

 バカラ、バカラと激しい蹄の音を立てながら、まるでユニコーンのような美しいポケモンが()()()()()()()()()

 家の壁が途切れれば跳んで()()し、道ですらない道を駆けていく。

 

 窓から恐る恐る外の様子を伺っていたハーフエルフの少女が、口をぽかんと開けて馬のような生き物が駆け抜けていくのを見送った。

 

 その背にはリューが鞍も鐙もなしに騎乗していた。

 しっかりと両足を挟んで身体を固定し、真横を向いていながら軸が全くぶれていない。

 

 道行く人々を避けて通るためとはいえ、壁を走るとはあいつは馬鹿かと輝夜は呆れ顔をした。

 

「ギャロップ! このまま敵の中心に降りて『マジカルシャイン』で薙ぎ払います!」

「ブルルッ!」

 

 あの会合から翌日、ベルから託されていたガラルの姿のギャロップの背を撫でながら、リューが指示を出す。

 足先の毛にサイコパワーを纏わせて壁を駆けていたガラルギャロップが、恐れることなく闇派閥(イヴィルス)の兵の中心に降り立った。

 

 遠くから魔法で攻撃しようとしていた魔導士達が、突然降り立ったリューとガラルギャロップに驚愕した。それでも意識を逸らさず詠唱を終えて魔法を放とうとする。

 

 しかし、詠唱もなしに魔法に匹敵する特殊技を放つポケモン相手には、あまりにも遅かった。

 

 ガラルギャロップから強烈な光が放たれる。

 

「があああああああああああ!!」

 

 なすすべもなく、魔導士達は地面にひれ伏した。射程外にいた兵も、ガラルギャロップから飛び立つように降りたリューの手で意識を奪われる。

 

「ひ、ひっ!!」

 

 突然の急襲に怯えた信者が反射的に『自決装置』に手を掛けようとした。

 更に魔導士達の護衛の兵が、詠唱なしで魔法を放てる魔剣を振りかざそうとしている。

 

 それをリューが見逃すはずもない。

 

「ギャロップ! 『マジックルーム』展開!」

「ヒヒーーーン!」

 

 信者が起爆するよりも、兵が魔剣を振るよりも早く、ガラルギャロップが額の角を天に翳した。そこから摩訶不思議な空間が広がる。

 

 ようやく信者が撃鉄を引くも、『自決装置』は作動しなくなっていた。

 降り下ろした魔剣も、まるで普通の武器のようにただ風切り音を鳴らすばかりであった。

 

「……はあ?」

「ど、どうなっている!?」

 

 呆然とする信者と兵を、ガラルギャロップが死なない程度に次々と後ろ足で蹴り上げて、気絶させる。

 

 ガラルギャロップが使用した『マジックルーム』は、相手の持ち物をしばらくの間使用不可能にする空間を生み出す技である。

 ベルが以前ザルドと共に検証した結果、武器や防具、ポーションは使用できたが、魔剣や魔道具の類が使用不可能になっていた。

 

 その対象は『自決装置』も含まれる。

 リュー達も魔剣の類が使えなくなるデメリットがあるが、今この場ではなによりも自爆を防ぐことが最優先された。

 

 第二級冒険者すら欠片も残さず消し飛ばす自爆の心配がなければ、この場に闇派閥(イヴィルス)の幹部はいない事は確認済のため、リュー達とポケモンの力が合わされば十二分に蹂躙が可能であった。

 

 あっという間に後方の敵を片づけたリューに対し、ライラが呆れて肩を竦める。

 

「アタシらの仕事なかったな……」

「わたくしもベル殿にポケモンをおねだりしましょうかねえ」

 

 どこか羨まし気な声で輝夜が呟いた。

 

 

 

 

 

 本命の施設を破壊する役目を担っていた闇派閥(イヴィルス)は、逆に冒険者に奇襲を受けつつもどうにか立て直し、魔導士が魔法を放とうとしていた。

 

 潰しに行きたいが距離があって間に合わない。対抗してガネーシャ・ファミリアの団員が複数人大楯を構え、後ろの仲間や力なき人々を守ろうとする。

 

 もしかすると、盾でも防ぎきれずに自分は死ぬかもしれない。

 死への恐怖が過るがそれでも団員達は逃げ出さずに、民衆の盾としての役目を果たそうとしていた。

 

「ピピーーーー!」

 

 そんな勇気ある団員の後ろで、大きめの縫いぐるみのような生き物がわたわたと慌てふためいていた。『ようせいポケモン』のピッピである。

 

 ピッピは迫る来る危機に何をすればいいかわからず、こけて倒れそうになる。

 そんなピッピをアーディが支えた。

 

「大丈夫。落ち着いて。前に練習した通りにやればいいから」

「ピピー……」

 

 アーディに背中をさすられ、ようやくピッピが落ち着きを取り戻す。可愛い顔を比較的キリリと引き締めると、敵方の魔導士に顔を向けた。

 

「よーしよし、偉いよーピッピ。じゃあ、『ひかりのかべ』をお願い!」

「ピピピーーーー!」

 

 ピッピが両手を突き出し、団員達の前にその名の通り光り輝く壁を張り巡らせる。

 盾役の団員達が突然現れた壁に驚く中、闇派閥(イヴィルス)の魔導士の魔法が放たれた。衝撃に備えて歯を食いしばる。

 

 …………しかし、予想を遥かに超えて魔法の規模が小さかった。

 大楯は易々と敵の魔法を防ぎ、後ろの民衆達はおろか、盾役の団員達すら目立った傷はない。

 

「ば、馬鹿な!?」

 

 魔導士が愕然としているが、彼らの魔法が弱いという訳ではない。

 ピッピの『ひかりのかべ』と『フレンドガード』で、魔法の威力をほぼ半減されたのだ。

 

 本来の威力であれば少なくない被害が出ていたであろうが、大楯の表面に傷をつける程度で終わってしまった。

 

「す、すげえ……これがポケモンの力って奴か?」

「立ち止まってる暇なんかないわ! 今の内に攻め入るわよ!」

「あ、ああ!」

 

 予想以上に少ない被害に冒険者達は戸惑うものの、すぐに気を取り直して突撃していく。

 

「ぐう……おのれ!」

「信者達を前に出せ!」

 

 闇派閥(イヴィルス)も立て直すのに遅れをとったが、向かってくる冒険者に気づくと『自決装置』で消し飛ばそうと目論んだ。

 

 もし爆発が直撃すれば、例え後ろからアーディに抱き抱えられて後を追っているピッピが『リフレクター』を張り『フレンドガード』と合わせても、レベルの低い者は死んでしまうだろう。

 

 しかし、そもそも自爆させなければ良い話である。

 

 ガネーシャ・ファミリアの数名の団員が、懐から太いピンが刺さった袋状の魔道具を取り出す。

 すぐにピンを抜いて、こちらに近づこうとする信者達に投げつけた。

 

「……な、何かの魔道具か!?」

「ひ、怯むな! どうせ命を投げ出すんだ、進めえ!!」

 

 何かの攻撃用の魔道具かと信者達の身が一瞬竦む。

 だが、例え魔道具で消し飛ばされようと一人でも冒険者の元に辿り着けば勝ちだと、信者たちは恐怖に顔を歪めながらも走り続けた。

 

 そんな信者達の前で袋が突然弾けた。広範囲に中に入っていた粉が広がる。

 すると、僅かでも粉を吸い込んだ信者が次々と倒れこんだ。敵を目の前にして寝息を立て始める。

 

 冒険者が投げた魔道具はアスフィ謹製の『キノコのほうし』が詰められた袋だ。名をそのまんま『胞子爆弾』という。

 フィンに数日で自爆対策の魔道具を作れと無茶ぶりされたアスフィが「作るとはいいましたが完徹しても無理無理、絶対無理! もっと日数をください!」と嘆いているを見かねて、ベルが協力して作り上げた。

 

 機能は単純明快でベルのポケモンに相手を眠らせることができる『キノコのほうし』を提供して貰い、それをピンが抜けたら数秒で破裂拡散させる袋に詰めただけである。

 

 正直にいうと『キノコのほうし』ありきの魔道具なので、アスフィは魔道具作製者(アイテムメーカー)として申し訳なさそうにしていたが、即席としては効果は絶大であった。

 

 自爆を試みる信者達が何もできずに眠っていく。目が覚める前に団員達が手早く『自決装置』を回収し、拘束していく。

「くそっ! 何故こうも簡単に対処される!」

「何処かで情報が漏れたのか!?」

 

 今まで隠し通してきた自爆攻撃を見切られている光景に、闇派閥(イヴィルス)の兵達が歯噛みした。

 

「撤退……いや、ここまでされておめおめと引き下がれるか!!」

「一人でもブチ殺してやる!!」

 

 それでも残された兵が己を鼓舞するために雄たけびを上げた。武器を掲げて冒険者達に挑もうとする。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「はあ!?」

「凄い力で引っ張られ……うああああああ!!」

 

 飛んでいく金属製の武器を兵達が見上げる。

 それどころか白装束の下に金属製の防具を仕込んでいた兵が遅れて飛ばされていってるではないか。

 

 唖然とする兵の視線の先に、両腕が磁石でできた単眼の円盤が浮いていた。両肩にも目がありキョロキョロと周囲を警戒するように動いている。

 

「な、なんだあの妙なゴーレムは!?」

 

 謎の円盤の正体はジバコイルと呼ばれるポケモンであった。

 強力な磁力を操り、闇派閥(イヴィルス)の武器を次々と両腕の磁石に引き寄せている。

 

 遅れて金属防具を着けているが故に磁力に引かれた哀れな兵が飛んでくる。

 

「ひ、ひいいいい! し、死ぬ!!」

 

 このまま先に飛ばされた武器に串刺しにされるかと思われた時、ジバコイルの上に乗っていたシャクティが指示を出した。

 

「ジバコイル、『エレキネット』で受け止めてやれ」

「ジバババ」

 

 ジバコイルが兵士を受け止めるために電気でできた網を張り巡らせる。

 

「た、助かった――あばばばばばばば!」

 

 助かったと気を緩めた兵が、電気に痺れて痙攣する。死ぬことは避けられたが、ショックで気を失ってしまった。

 

「続けて地上で暢気にこちらを見上げている馬鹿共にも『エレキネット』を食らわせてやれ」

「ジバババ」

 

 呆けたままの闇派閥(イヴィルス)の兵に、電気の網が連射される。

 隙だらけであった兵達は容易く捉えられ、次々と痺れては意識を手放していった。

 

「よくやった、ジバコイル。……今まで好き勝手に暴れてきたのだ。感電程度は甘んじて受けろ」

「ジバッ!」

 

 ベルから譲り受けたジバコイルの頭を撫でながら、シャクティが吐き捨てた。

 ジバコイルは真ん中の瞳を細めてご満悦そうにしている。

 

「すげえ、団長のポケモン! あっという間に敵を無力化しやがった!」

「強力な磁力に電気の網……! 闇派閥(イヴィルス)を捕まえるのに持って来いですね!」

「お前たち、喋っている暇はないぞ! エレキネットが消えたらすぐに闇派閥(イヴィルス)を拘束しろ!」

 

 歓声を上げる団員達に、シャクティが気を引き締めさせる。団員達が慌てて拘束用の頑丈なロープを取り出した。

 

 団員達が忙しく動き回る中、アーディが白装束を纏った小さな信者の姿を見つけた。

 顔を覗き込むと、『みらいよち』で見た時の涙と恐怖で歪んだ表情とは異なり、穏やかな顔で眠っている。

 

 本来自分を殺していたはずの少女を見て、アーディは嬉しそうに微笑んで少女の頭を撫でた。

 

「ありがとう、ベル君。君のおかげでこの子を助けられたよ」

 

 別の場所で戦っているであろうベルに、アーディは感謝の言葉を小さく述べた。

 

 

 

 

 

 フィンが率いるロキ・ファミリアは瞬く間にといわんばかりに、速攻で闇派閥(イヴィルス)を無力化していた。

 

 あえて進化させなかったリヴェリアのラルトスが『マジックルーム』を展開し、自爆の危険性がなくなれば後はもう簡単であった。

 

 フィンが新たに仲間に加えた、青い二足歩行のリカオンのようなポケモンが『コーチング』によって、団員達の力と耐久を大幅に強化したことも電撃戦の後押しとなった。

 

 その上人の感情を波動という波の形で読み取り、民衆に紛れ込んで逃げ出そうとした信者を発見することにも貢献している。

 

「……まさかこのロートルの身でここまでの力を出せるとはな。モンスターを引き入れるとフィンが言った時は狂ったかと思ったが」

「存外悪くないもんだ」

「これも時代の移り変わりってもんかねえ」

 

 ロキ・ファミリアの古兵であるノアール、ダイン、バーラが、隣に立つフィンをキラキラした目で見つめるリオルを見てぼやく。

 

「ずいぶんとフィンに懐いているな。いや、あれはもはや懐いているというよりも……」

「ふぃおー?」

 

 何かに気づいてしまったリヴェリアに抱き抱えられたラルトスが、疑問の声を出しながらリヴェリアを見つめた。

 

 リオルが進化するには主人(トレーナー)に懐いている状態で日が出ている事が条件であるが、あの調子だと進化する日も早いかもしれない。

 

 すでに決着はついており、闇派閥(イヴィルス)の兵も拘束され連行されている。

 本来ならば指揮官として忙しい身の上であるフィンは、とっくに退去していていいはずなのだが、あえてこの場に残っていた。

 

 ロキ・ファミリアを褒め称えればいいのか、ポケモン達に困惑すればいいのか、どっちつかずでいる助けられた民衆にフィンが語り掛ける。

 

「皆、聞いて欲しい。僕達が突然モンスターのような生き物を引きつれて困惑しているかもしれない。でも、彼女らは実はモンスターではないんだ。その証拠に嫌悪感を感じないだろう?」

「りおっ!? く~ん……」

 

 フィンが当たり前のようにリオルの肩を抱き寄せる。

 何故かは知らないがリオルは顔を赤らめ、もじもじし出した。バーラが「……女の貌してるねえ」と呆れかえっている。

 

「……あれ? いわれて見れば確かに」

「いやいや、でも、それじゃあ何だってんだ? どう見ても動物には見えねえだろ」

 

 騒めく民衆達にフィンは問いを投げかける。

 

「少し前、オラリオ上空に穴が空いて、白い獅子が出てきた話を知っている者はいるかい?」

「……あっ! 私の友達が見かけたって聞いたことがあります!」

「ありがとう、答えてくれて」

 

 同族の少女にフィンがにっこりと微笑みかける。一族の英雄に微笑まれ、少女は真っ赤になった。

 隣のリオルがむっとし出したのは気のせいだろうか。

 

「アレの正体は異世界からの援軍だといったら、君達は信じられるだろうか?」

 

 フィンの突拍子のない発言に、民衆達の騒めきが最高潮に達する。

 もはや大声で喋っても聞こえにくいくらいの中、フィンは良く通る声で演説を続けた。

 

「簡単に信じられない者が大半だろう。だが、事実だ」

 

 そう前置きし、フィンは本題に入る。

 

「一年前、あの穴と同じものに吸い込まれた一人のヒューマンがいた。名をベル・クラネルという。彼は此処とは異なる世界に飛ばされ、八年もの月日を過ごした。その異世界には人間の他にポケットモンスター、通称ポケモンと呼ばれる不思議な生き物が生息していた。ポケモンは野生動物のように人を襲う事も確かにあるが、向こうの世界の人々と上手に共存し、時にパートナーとなった。僕とリオルみたいにね」

「くおぅ……」

 

 そんな、夫婦みたいだなんてといわんばかりに身をくねくねさせるリオル。

 もちろんフィンにそんな意図はない。あくまで相棒扱いである。

 

「……え? なんだ? どういうことなんだ?」

「テ、テイマーが異世界では主流ってこと?」

 

 ますます混乱する民衆に、フィンは更に混沌をもたらす情報を開示する。

 

「そんな彼が母に会うためにこちらの世界に帰って来た。世界の壁も、辻褄の合わない時の流れすら超越してね。幸いなことに母親とはすぐに再会できた。でも、驚かないで聞いて欲しい。彼の母はかつての最強のファミリアの一員であった、かの『静寂』アルフィアその人だったんだ」

「マ、マジかよ!? あの最凶のヘラの!?」

「ていうか生き残りがいたのかよ!? しかもリヴァイアサンを倒したあの『静寂』が!?」

 

 かつてのヘラファミリアを知る住民が絶叫同然の声を上げる。

 ヒートアップする人々を焚きつけるように、フィンは悪戯小僧のような笑顔を浮かべた。

 

「そう、あのヘラの最後の生き残りだ。それに加えてゼウスの最後の生き残りである『暴食』のザルドもいる。アルフィアは死病、ザルドはベヒーモスの猛毒に侵され、死を待つばかりの身であったが、ベル・クラネルが連れてきたポケモンの力で完治した」

 

 アルフィアが治ったのはポケモンのおかげではなく、母の愛(マザーパワー)とかいう訳のわからない力のせいだが、事情を知らないフィンはザルドと同じくポケモンの力で治ったのだと勘違いしていた。

 例え真実を知っていても、ポケモンを受け入れさせるのに都合が良いように事実を捻じ曲げ同じことを語っていただろうが。

 

「完治したレベル7である『静寂』も『暴食』も、オラリオを追放された屈辱を忘れてくれて、今や僕達と共に闇派閥(イヴィルス)と戦う同士になってくれた。これも、ベルが連れてきてくれたポケモンのおかげだ。それだけじゃない。ベルはポケモン達と共に闇派閥(イヴィルス)と戦い抜くことを誓ってくれた。今も何処かで闇派閥(イヴィルス)の兵と戦ってくれている」

 

「レ、レベル7!? そんな凄い冒険者様が加わってくれたの!?」

「それを治してくれたのがポケモンで、今も戦ってくれている?」

 

 ポケモン達に良い感情を抱き始めている人々に、フィンが駄目押しとばかりに言葉を続けた。

 

「ベル・クラネルには異世界に飛ばされた際、ほぼ全ての記憶を失っている。彼にとってこの世界はほとんど縁もゆかりもない場所だ。それでも彼は献身的に僕達の為に戦ってくれている。僕にこちらのポケモン、リオルを授けてくれたのもその一環だ」

 

 フィンは民衆達に頭を下げる。

 

「だからどうか、ポケモンを怖がらずに受け入れて欲しい。新しいオラリオの仲間として迎え入れて欲しい。今は難しいと思う人もいるかもしれない。でも、せめて石を投げつけるような恩知らずな真似だけはしないでくれないか」

 

 この時のフィンは民衆に対する演技ではなく、本心から願って頭を下げていた。

 ベルの献身に泥を塗るようなことはして欲しくないと、心の底から祈っていた。

 

「いや、いきなりそういわれても……なあ?」

「よくわからないものを受け入れろって……」

 

 人々は頭を下げ続けるフィンに口を噤む。それでもなお、フィンは頭を下げ続けた。

 いや、フィンだけではない。ノアールも、ダインも、バーラも、エルフの王族であるリヴェリアでさえも、この場に残っているロキ・ファミリアの団員全てが頭を下げていた。

 

「フィンが突拍子もないことを言い出して申し訳ない。だが、俺達からも頼む」

「一緒に戦ってみてわかった。こいつらは戦友になれる。だから、どうか友を受け入れてやってほしい」

「付き合ってみると、意外に気の良い奴らなんだよ」

「私からも頼む。どうか恐れないでやってほしい」

 

 エルフが王族に頭を下げさせた事へ卒倒しそうになり、他の種族も困惑する中、一人の勇気ある小人族(パルゥム)の少年が声を上げた。

 

「オ、オレは勇者様のいうことを信じる! だって、勇者様の相棒が、オレが闇派閥(イヴィルス)に切りかかられそうになった時、助けてくれた!」

 

 それを皮切りに、賛同する声が続く。

 

「わ、わたしも! リヴェリア様のポケモンが、転んで擦りむいた膝を治してくれた!」

「まあ、日頃から守ってくれてるロキ・ファミリアにここまでいわれちゃあなあ……」

「あ、ああ……! まだちょっと怖いけど、でも石なんて絶対に投げないよ!」

 

 賛同の声が歓声に変わる中、フィンは顔を上げて心からの笑顔で答えた。

 

「ありがとう! 心優しいオラリオの住民達よ! これからもポケモン達と協力して、君達を守り抜く事を、ここに誓おう!」

 

 フィンの宣言に、民衆達はここ一番の歓声で応えた。

 

 この日、オラリオの民衆に初めてポケモンの存在が認知された。

 

 民衆は予想以上にポケモン達を好意的に受け入れてくれた。

 同時に闇派閥(イヴィルス)にとっての絶望の始まりでもあった。

 

 

 




ポケモン選考理由

リュー・ガラルギャロップ
リューさんのイメージ的にユニコーンみたいな子が似合うなと思って。
なおこのガラルギャロップはベルリュー押し。

シャクティ・ジバコイル
ポケダンでジバコイルが警察官をやっていたので。
能力的にも敵を捕縛するのにピッタリ。

フィン・リオル
勇者にはやっぱり波導の勇者が似合う。
ただし筆が滑って女勇者になってしまった。
将来どこぞのアマゾネス姉と犬猿の仲になる模様。
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