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モチベになりますので気に入ってもらえたらよろしくお願いします。
ベル・クラネルはポケモンである。トレーナーはまだいない。
その真実が暴かれた時、オラリオでベルきゅんを捕獲してモノにしちゃおうぜブームが巻き起こった。
オラリオに住む数多の神々は熱狂し、実益と悪ふざけを兼ねて全力でベルを追い掛け回した。一部の冒険者達も兎狩りに血眼になった。
キビキビの代価を得られなかったロキがこの絶好の機会を逃すはずもなかった。
フィンもクソガキみたいにワクワクした顔をして団員を引きつれ、ルンルン気分でベルの捕獲へと勤しんだ。
ボールだけでなく麦わら帽子と網を装備したその姿は、まるで『虫取り少年』のようであった。
アイズだけは『チーゴの実』でも食べたみたいに顔を顰め、冷めた目で兎狩りに熱意を上げるまるで駄目な大人達を見ていた。
フレイヤは兎さんを捕獲してアレやコレや邪な事をしようと口元から欲望汁を垂れ流していた。眷属達は血涙を流しながらも女神の神命に従い、ベルの捕獲に嫌々ながらも参加した。
ヘルンはそんな女神の暴挙を見て、自らの手で変態兎を捕まえ血祭りに上げんと激怒した。
変態なのはフレイヤ様では?(名推理)
アスフィは散々悩んだ。悩みに悩んで悩みぬいて、結局自分の欲望に負けてしまった。
ベルを捕獲すれば異世界の知識や道具が手に入れ放題。眼鏡が怪しく光り輝き、口元が醜く歪んでいた。
闇落ちした
ヘルメスはその場にいなかった。いたら全力で止めていただろう。
そんな地獄のような状況を、正義の使徒であるリューが見逃すはずがなかった。彼女はベルを保護しようと奔走した。
――片手どころか袋いっぱいにモンスターボールを詰め込んでベルを追いかけていたが、疚しい気持ちは欠片もなかった。
何故なら自分は正義だから!
自分の欲望に負けた悪とは異なり、ベルを捕まえ保護して可愛がる権利を持っているのだから!
ガラルギャロップもそうだそうだと気ぶっていた。
……アストレア様が
「そんな地獄絵図を生み出さないためにも、私がベルを捕まえる必要があるんですよ! 私はリオンが悪の道へ走るのを見たくありません! だから認めてください、(ベルの)お母様!」
「お前に義母親呼ばわりされる筋合いはない。そもそもお前が捕まえる必要はないだろうが。ベルの『親』になるのは母親であるこの私に決まっている」
「ちょっと、なんでいきなり僕を捕まえようって話になってるの!?」
あり得る未来を想像し暴走するアーディ。それに対抗しておかしな事を言い始めるアルフィア。
ちょっと言葉のマルマインを投げ込んだだけなのにこの始末である。ベルは泣きたくなった。
ザルドはアーディの妄想が現実になっても、そんな馬鹿騒ぎは起きないだろうなと確信していた。
何故なら可愛い『しろうさぎポケモン』の背後には、世にも恐ろしい伝説を超えた
ベルを狙う輩は滅尽滅相 ! オラリオが滅亡する未来が見える見える。
「ポケモンになってるって言ったけど、同時に人間でもあるから! ヒューマンだから! 流石にモンスターボールで僕を捕獲は出来ないよ!」
ベルが埒が明かないと自分に空のボールを当てて何も起こらない事を立証しつつ、涙ぐましくも場の混乱を収めようと試みた。
「ほら、大丈夫! ただの杞憂だから、二人とも落ち着いて――」
しかし、ザルドが悪げなくポロリと言葉を洩らしてしまう。
「いやあ、でもなベル。レベルが上がるほど順応度上昇って書いてあるから、そのうちボールに入れるようになるんじゃね?」
「やっぱりそうなんだ! だったら絶対に私がベルを捕獲しなきゃ」
「いい加減潰すぞ小娘。ベルの『親』は私だ」
「ちょっとおじさん、余計な事を言わないでよ! またややこしくなった!」
せっかく場が落ち着くと思ったのにひっくり返されたベルがとうとう怒った。
「次やったらてょわわわぁ~んの刑にするからね!」
「なんだよてょわわわぁ~んって。…………あん? なに震えてるんだ、アルフィア?」
「――てょわわわぁ~ん? なにそれ?」
何故かアルフィアが顔を伏せてぷるぷるし出したため、ようやく混乱が収まってきた。アーディもてょわわわぁ~んという謎の単語に気を取られ、落ち着きを取り戻している。
「……ごほん。つまり、だ。【
ようやく思考停止から復帰したシャクティがベルに尋ねる。
その後ろでガネーシャがぴかーんと進化の光のようなものを放っているが、シャクティは他人の振りをして見ないようにしていた。
「はい、おそらくそうだと思います。レベルが上がればそのうち【Zワザ】とか【ダイマックス】とかもできるかもしれないですね」
ガネーシャに『かわらずのいし』を投げつけつつ、さらっととんでもない事を交えてベルが疑問に答える。
あっ、ガネーシャが光るのが止まった。……マジでポケモンに進化しようとしてたの?
「ぜっとわざ? とかはよくわからないが、とりあえず現状何ができるか検証してみないか? 《スキル》の実態はわかったが、どんな事ができるか詳細はわからんしな」
「それもそうですね。ひとまずポケモン用の使えそうな道具を色々試してみましょうか」
そういってベルが背負ったリュックをひっくり返すと、どう考えてもリュックに収まり切らない量の道具がこれでもかと出てきた。
「…………んん? なあベル。これほどの量のアイテム、どうやって収納していたんだ? どう考えても物理的に無理な量が出てきているが」
「ああ、これですか? パソコンに道具をデータ化して預ける技術を応用して、リュックに再現してるんですよ。頭で考えるだけで欲しいものが出てきて便利ですよ」
「ぱ、ぱそこん? でーた?」
「分かりやすく説明すると、どんな物でも999個まで入るリュックです。自転車とかでっかいテントやキャンプセットなんかも余裕で入ります」
「なんてものさらっと見せつけてるんだ」
またもや『テレポート』並みに冒険者にとっては垂涎の物を平気な顔で紹介するベルに、シャクティは頭痛を抑えきれなくなった。
「――ベル。もしやそのリュック、複数持っていたりするのか?」
「えっ? ブティックで色々なリュックや鞄を買いまくってるので、配り歩けるくらい持っていますけど」
「やめるのだ。むやみなばらまきはサポーターの生活を破壊してしまうぞ」
「んん? よくわからないですけど、ガネーシャ様がそう言うのであれば」
あやうくポケモンになって神様をやめそうになっていたガネーシャが、先ほどの醜態などなかったかのように真顔でベルを諫める。
下界の子供達を守る神として、ちょっとこの劇物は見過ごせなかった。
「与太話は後にしろ。検証の方が先だ」
「だな。ポケモン用の道具はヤバいものばかりだからな。早く確かめた方が良い」
「ヤバいって、そんなに凄い物があるの? 正直『かいふくのくすり』とかでも十分に凄いと思うんだけど」
人間にも効果があった数少ないポケモン世界の道具を挙げて、アーディが疑問を浮かべる。
「ああ。ブッチギリでヤバいものがな。具体的には冒険者でいう『基礎アビリティ』を飲むだけで上昇させるドリンクがあったり、【ランクアップ】みたいに急激に強さを増加させるアメがあったりな」
「………………あああっ!? そういえばそんなのあるって言ってた!!」
ザルドの言葉で「けいけんアメをひたすら舐めさせた後、ハーブをキめてドーピング漬けにしました」と笑顔で語っていたベルを思い出して、アーディが絶叫する。
「でもあれ、確か人間には効果がなかったんだよね?」
「ああ。ロキのとこでついこの間【ランクアップ】したばかりで、【ステイタス】がほぼ0の餓鬼がいたからドーピングの人体実験……もとい検証に協力させたが、どれも効果がなかった。他にも色々なアイテムを試したが、結局ポケモン世界の物で『人間に』良い効果があったのは、回復効果のあるアイテムや木の実だけだ」
どこからともなく「酷いっす……」という声が聞こえきたが、ザルドは俺だって人身御供にされたんだ、漢なら我慢しろと無視した。
ヨクバリスが肩を叩いて木の実を渡して労ってあげた。
「という訳で、人間だけど実質ポケモンにもなった僕なら効果があるかもしれないから、とりあえず試してみるね。いざ、実食」
「躊躇ないな……」
義父親譲りの豪快さを受け継いだベルは、物は試しと一気に『インドメタシン』を煽った。ヤバいものに手を出す葛藤とかないのかとシャクティが少し引いている。
そうしてこまめに【ステイタス】の更新をして、ガネーシャの指を穴だらけにするという犠牲を払いつつも、各種ドーピングアイテムや『ふしぎのアメ』等の検証をしていった。
その結果が以下の通りである。
ベル・クラネル
Lv.1
力 :G252
耐久:G252
器用:G252
敏捷:G252
魔力:G252
《魔法》
【】
《スキル》
【
・指揮下のポケモンに全能力値の補正
・補正値はレベルにより上昇。
・偉業の継承
【
・ポケモン世界への順応
・レベルが上がるほど順応度上昇
・技スロット『テレポート』『』『』『』
【
・絆を結んだポケモンを覚醒させる
・覚醒ポケモン『ソルガレオ』『』『』
「うわあ……。本当に飲んだり食べたりしただけで【ステイタス】が上がっちゃったよ」
「上昇値1200オーバーだと? 信じがたい数値だな……」
冒険者の常識を覆すベルの【ステイタス】の結果に、ヴァルマ姉妹が驚嘆の声を上げた。
一時間も経たずにこれほどの【ステイタス】を得られたなんて知られたら、ほぼ全ての冒険者に嫉妬の炎を燃やされるだろう。ちょっかい掛けたら後ろのお母さんに消されるが。
「力や敏捷、魔力は予想通り『タウリン』『インドメタシン』『リゾチウム』がそれぞれ効果あり。『マックスアップ』『ブロムヘキシン』『キトサン』は全部耐久に回って、器用に当てはまる『えいようドリンク』はなし、と」
ベルが検証結果を声に出しながら、メモ帳に書き記していく。
「加えて『ふしぎなアメ』でも【ランクアップ】するのは不可能。でも、『けいけんアメ』系が全ての『基礎アビリティ』を満遍なく上げる効果があったから、今後は『えいようドリンク』よりもこっちを使った方が良さそうで――」
ベルがひたすらメモを取っていくのを後ろから覗き込みながら、ザルドが疑問を投げかけた。
「【ランクアップ】はしなかったが、成果としては十分過ぎるな。だが、『基礎アビリティ』がどれも252までしか上がらなかったのはなんでだ?」
「ポケモンの努力値は252までしか振れないからかな。でも、僕は冒険者でもあるから510の合計値の壁を超えて全ての能力を252まで上げられたんだと思う」
「お、おう。よくわからんが、アイテムじゃ『基礎アビリティ』を252までしか上げられないということか。……いや、それでも破格の《スキル》じゃねえか」
ベルが第一級冒険者になるのも遠くはないなとザルドは考えているが、それでもまだ考えが甘すぎた。
ザルドは知らないが、ポケモン世界の道具には『がくしゅうそうち』という戦闘で得た経験値を、戦闘に参加していないポケモンにも半分与える事ができる破格のものがある。加えて持っているだけで獲得経験値を1.5倍にする『しあわせたまご』もある。
更にもしポケモンに感染し、得られる努力値を2倍にする『ポケルス』がベルにも感染するようになれば。『ポケルス』が『基礎アビリティ』の上昇にも効果があるのならば。
ベルはどこかの【
とはいえ【
「ううむ……ちょっとこの結果は刺激が強すぎる。流石のガネーシャも色々疲れたぞ。指も滅茶苦茶痛い……」
まだまだ爆弾を隠し持っている事を知らないガネーシャが、穴だらけの指を舐めながら珍しく弱気な声を出す。隠した真実を知ったら胃が爆散するかもしれない。
「まだまだ検証する事はあると思いますが、一旦中断しましょうか」
「あっ! だったら【
「おい、アーディ」
「………………んんん! 構わん! ガネーシャはこれくらいではへこたれない!」
ガネーシャを慮ったシャクティに対し、アーディが最後に残った《スキル》を挙げる。
場合によってはまたとんでもない事実が判明するかもしれないとシャクティが諫めようとするが、ガネーシャは強がって胸をどんと叩いた。
「よーし、なら早速。ベル、この覚醒に心当たりってある? すでにソルガレオの名前が乗ってるのも気になるんだけど」
主神の事を気にせずあっけらかんと訪ねてくるアーディに、ベルが苦笑しながらも答える。
「あはは……あるにはあるよ。ポケモンってトレーナーに懐けば懐くほど、瀕死になる攻撃を耐えたり、状態異常を自力で治したりする事があるんだ」
「それが覚醒って奴?」
「ううん。友達や家族同然に可愛がっていれば、誰にでも出来る事だから違うと思う。僕の手持ちのポケモンも産まれたばかりの子以外は皆そうだし」
話を聞いていたアルフィアが、ベルが暗に込めた意味を読み取った。
「――そうか。つまり、その先があるという事なんだな」
「うん、お母さん。特別な絆を結んだポケモンは、普通じゃ絶対にあり得ない事を可能にする力を持つことがある」
チャンピオンや四天王クラスのトレーナーなら、誰でもそういった『特別なポケモン』を切り札にしている。ベルはその中でも一番印象に残っているトレーナーを挙げた。
「例えばとある最強のトレーナーの相棒であるピカチュウは、普通のピカチュウより種族値が高くて『特別な技』を覚えてる上、場に出る前に『じゅうでん』することができる。普通ポケモンはボールの中で技を繰り出すことができない。なのにそのピカチュウは不可能を可能にしたんだ。…………そのせいで僕のルギアがワンパンに……それ以外にも手持ち全員が滅茶苦茶やってきて……うっ、頭が…………」
「……ベル? おい、ベル大丈夫か?」
かつて
急にレイプ目になった息子に慌ててアルフィアが身体を揺すると、ベルは正気を取り戻した。
「……はっ! …………ごほん。まあそんな感じで、僕のソルガレオもあり得ない事を可能にしたポケモンなんだ。たぶん【
レッドなどの一部例外を除けば、トップ層でも『特別なポケモン』は一体しか持っていない。その一体すら持つことが困難なのに、《スキル》欄を見れば後二体も追加する事ができる。
「正直言って、破格のスキルだ」
真剣な顔でベルがそう言い切ると、周りの者は息を飲んだ。
他の二つの《スキル》も非常に強力なのに、ベルがはっきりと【
「――ベル。お前のソルガレオは、一体何が出来るっていうんだ?」
ザルドが『今の』自分が一対一で戦っても苦戦は必至の『規格外のポケモン』に対し、武者震いをしながらも訪ねた。
「…………どう言葉にすればいいか。とても強大で、おっかなくて――よっぽどの事がない限り進んで使いたくない、『怖い力』とでも言えばいいのかな」
必要なら『レベル7』以上の『
そんなものをソルガレオが隠し持っている事実に皆が戦慄を覚える中、ガネーシャはベルを入団させた事を後悔――は微塵もしていない。だが、もうちょっとこう、手心を加えて欲しいと思っていた。
普段のガネーシャならば「お前もガネーシャだな!!」みたいなノリで流して、気にも留めてなかっただろう。
だが、アルフィアの手で『アイアム・ガネーシャ』のシンボルというべき巨大ガネーシャ像を破壊された心の傷が、ガネーシャを弱くしていた。
なにより可愛い
きりきりと胃が締め付けられる。『
「ガ、ガネーシャは負けない!! 俺は、俺はガネーシャなんだああああああああああ!!」
幻影を振り切るように叫び声を上げる。胃薬必須の身体になんてなったりしない!
しかし、
ザルドおじさんがソルガレオとタイマンすれば、戦いは長引きますが『ポイズンヒール』のおかげでおじさんが勝ちます。
事前に上位のモンスターを食べてたら苦戦もしません。
ただし、切り札を使えば――。
ちなみにレッドさんはベルとのバトルを「楽しかった」と口にしてくれたそうです。
キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!