SEKIRO: SHADOW DIES AGAIN, in KIVOTOS 作:まーぼーどーふ
お気に入り登録、高評価、感想、推薦文ありがとうございます!
本編生徒は次話くらいから登場する予定です。
※暗い描写の話です。苦手な方はご注意下さい。
永い、夢を見ていた。
何処か遠く、遠くへ旅立ち、
名もなき子らを、喰らい尽くす夢。
流れ着いた地で、生き血を与え、
凡ゆる生を、歪める夢。
神が鳴る地で崇められ、
終には、涙を流す夢。
私が見てきた夢はどれも酷く、血に汚れていた。
◇◇◇
何かが落ちたような鈍い音がして、目を覚ました。
永く、雪の音しか聞こえなかったから、言ってしまえば新鮮で、目を覚ましてしまった。
光も差さず、いつまで経てど薄暗い辺りを見渡そうとするが、何も気力が起きない。
そしてふと考える。
どれほどの時を、眠って過ごしたのだろうか。
だが───ああ、時を数えるのは、もう止めたのだった。
記憶に残るのは、百年という数字。
足に掛けられた枷を、酷く痛めど、深く打ち込まれた楔に繋げられた枷を撫でて、思い出す。
少なくとも百年以上の時を経ても、壊れる事も、錆び崩れる事もない枷と檻を見て、再び眠るにはまた永くかかりそうだと、私は深く後悔した。
───後悔したって、死ぬ事も出来ない。
その事は厭になるほど、自分が一番理解できている。
何もかも、無駄なのだと。
こう言葉を浮かべる事さえ、私にとっては無駄な事だと。
無駄、無意味、無為、虚無。
それでも、人として問わずにはいられなかった。
何故私は死なないのか。
何故私は死ねないのか。
問うたびに、しかし苦しみは増してゆくばかり。
苦しい。くるしい。
蹲り、呻めき、懐に仕舞ったいつかの御守りを握り締め、ほろほろと涙を流す。
涙を流す能だけはあるのかと、己への無力に打ちひしがれる。
幾度も死のうとした。
時に舌を噛み切り、時に繋がれた鎖で頸を絞め、時にひたすら頭を打ちつけ、潰そうとした。
どれも無駄だった。
舌は何年も噛み締め続けど噛みきれず、頸を絞めても吊っても気絶にすら至らず、何万も打ちつけた頭は全く凹む事もなく、どれもどれも唯、暫くの苦痛を残しただけだった。
自分の力が弱過ぎるからかもしれない。
そう考え、いつか、
今まで成した事は何に成就することもなく、ただ孤独と虚空に消えていく。
「だれか、ころしてください」
永遠という絶望に立たされ、絞り出した言葉は、存外にも誰かを縋る言葉だった。
「ぉう"っ」
なんだ、この音───いや、声は?
「……?」
弱く紡いだ言葉に応えるように、先程、鈍い落下音がした方から、いきなり溺れた人の声のような音がした。
狂ってしまった私の幻聴なのか?
そう考える。だが、
「ぅお"」
「────誰か、居るのか?」
気付いた時には、その方へ、岩陰に隠れた場所へ、声を掛けていた。
「いや……誰か、誰でもいい、返事を」
思考もままならず、足枷を引き摺りながら岩陰に向かう。
「……………頼む……だれか、おねがいします…」
どんな人だっていい。
たとえ人でなくても、私を殺せ得る存在を、この時の私はひたすらに追い縋っていた。
徐々に見えてくる───人らしき脚。
「っ……!」
進む程に見えてくる、斃れた様子の、古ぼけた、柿色の装束を纏った男。
人だ。
もはや盲目的に、男の顔に近付く程に見えてくる紅色の液体などに目もくれず、持てる力を振り絞って、遂に男の顔元に辿り着いた。
「はぁ……はぁ………」
息を切らしながら見ると、男は顔を伏せて、ぐったりとしている様子だった。
頭の辺りからが、特に紅く染まっている。
死んで、ないよね。
それでも構わず、男の肩を強く揺すり、生きてる内で一番の大声で呼びかけた。
「っ…おねがい…!!!」
「なんでもいいから、返事してよ!!!!」
「さっきみたいに…なんか、しゃべってよ……!」
もう、殆ど泣きついていた。
そして、いつまで経っても力の入る様子のない男の身体は、私に転がされるようにして仰向けになる。
「ぁっ…………」
男の貌は、孔と血に塗れていた。
生きるという事は、その
惨く貫かれた男の孔は、私には届く筈のない死という現実をありありと突き付けていた。
「……ぁ」
不意に、身体に力が入らなくなり、男の胸元に被さるようにして倒れ込んだ。
その拍子に押し込んだ男の胸骨。
男の口元から、溢れるように黒く淀んだ血が噴き出てきた。
「……っ…っく……うぅっ……」
希望なんぞ持った私が、愚かだった。
大粒の涙で視界が歪む。
私は、この男に何を望んでいたのだろう。
生きている事?
それとも、ただそこに、死んでいてもいいから存在してほしかったのか。
───思えば、この牢に人が入るのは初めての出来事だった。
だから、生きていてほしいと、少しでも私を楽にしてほしいと、愚かしい欲望を、希望を抱いてしまったのかもしれない。
でも、そんな事を考えたって、もう何も意味を為さない。
この男は───きっと、私の最後の希望だった男は既に死んでいるから。夢で見た、雪のように冷たい男の肌が、それを示していた。
ああ、もう諦めよう。
口の中、はたと血が滲む感触がして、身体中に回り切った絶望感に頭が重くなった。
もう、諦めて、夢を見よう。
あの血の夢でもいいから、少しでも苦しくない夢を。
───この人も居たら、きっと苦しくないのかな。
ああ、でもどうせなら、
夢の中だけでもどうか、生き返ってください。
◇◇◇
ひた闇く、死の凍えに満たされた間。
死血に塗れた岩陰からは、舞い桜、その輝きの色が散らされていた。
僅かの間、温かい光が空間を支配する。
再び闇が訪れた刹那、男の指先が小さく動いた。
『変若水』
遥か仙境、
そこから流れ出づる御神水
竜の血が混じった、変若水を求めた者は、
みな人の道を踏み外した
かつてその歪みを見た竜胤の御子らは、
そして遍く、不死断ちを願った
竜胤とは、竜の縁である
それゆえ、彼らは己の血を呪っている
◇◇◇
『不死の契り』
竜胤の御子が人と成す、
回生の力を与える為の儀式
不死の契りを成した御子は、
みな男だった
精は血より生まれ出づる
血をより広めるには、
これより相応しい形はないだろう
本編生徒が死ぬのは?
-
いいよ
-
ダメだよ
-
生徒による