アークエンジェルに向けて放たれたタンホイザー。
それをアカツキが弾いた。
そう、ムウが以前アークエンジェルを守った時のように―――。
「アークエンジェルはやらせんっ!」
その途端、ネオの脳裏にムウの記憶がよぎった。
アークエンジェルに乗り、みんなと過ごした時間。マリューへの思い。戦って散った時の瞬間..。
「!!!!」
そうだ..俺は、思い出したんだっ..!!
「終わらせて帰ろう、マリュー」
その言葉は自然と出た、ムウ・ラ・フラガとしてのマリューに向けた言葉だった。
明々と炎をあげて移動要塞が燃え上がり、
これでようやく終わったか、とムウも一息つく。
そこからこちらに向かう機体が2機。
フリーダムとジャスティスだ。
「さ、帰るとしますか」
まだ戦いから解放されたことが、はっきりわかっていないであろう二人に声をかけた。
「え?」
「もうこれ以上の争いは無用だろ。」
「そう..ですね。」
周りを見れば、キラやアスランたちのように、戦いが終わったのかどうかわからず呆然としている生き残ったザフト軍やオーブ軍がいた。
無理もないかとムウも思う。
戦いの終わりなんてこんなもんだろう、
でも..
終わったんだ、これで――――。
ムウは自分に言い聞かせるように呟いた。
平和な未来が訪れるかと聞かれればわからない。
だが、人々はもう一度見つめ直さなければならないんだ。本当の平和を、どうすれば争いのない世界を作り出すことができるのかを。
沢山の犠牲を無駄にしないためにも。
アークエンジェルに戻り、格納庫にたどり着く。
懐かしいなぁ、この感じ。
毎回戦って、ここに帰ってくるたびに、
生きて帰ってくることができたんだと感じることができる。
そして、その先には彼女がいると思うと、生きている幸せを、噛みしめることができるのだ。
(帰ってきたものの…、さぁて、まずなんて言うべき、か。)
怒ってる…よな、やっぱり。
なんて考えながらアカツキのコックピットを開けた。
ライトの光と歓声を一気に浴びる。
ヘルメットを脱ぐと、懐かしい顔ぶれの整備員たちやクルー達の手厚い出迎えにムウは苦笑いを浮かべる。
その中に愛しい人物の姿を探す。
その時、自分の名前をこれでもかというほど大きな声で呼ばれた。
その声の主は、自分が探し求めていた人物、
マリューだった。
目に涙いっぱいためてこちらを見る彼女に、思わずこちらまで涙腺がゆるむ。
ハッチを蹴って真っ先に彼女の元へと向かった。
「泣かれると抱き締めたくて仕方なくなるんですけど?」
「あなただって、..泣いてるじゃないっ」
「あ、ほんとだ。じゃぁ抱きしめて?」
「バカっ!言われなくてもっ..」
そう言って思い切り抱きついてきた彼女を力強く抱きしめる。
「あ~、やっぱり生きててよかったぁ!」
「..許さないんだから。」
えっ、驚いてそう呟く彼女を見ると、涙目で自分を睨んでいる。
「いや、ごめん」
やっぱり怒ってたか、無理もないけど。
「許しません!」
「そこをなんとか!」
少しの間があき、気になって彼女をみると
「ずっと、..ずっと、もう離れないって約束してくれないと許さないんだから!」
か、かわいすぎるっ!
なんて言ったら彼女は怒るだろうから、ニヤニヤしながら密かに思う。
「りょーかいしました。」
そう言うと軽く彼女に口付ける。
それと同時に彼女の目から涙が溢れだして止まらなくなった。
再び力強く抱きしめる。
てゆか、離したくないんですけど。なんて考えていたら
「…ムウ?」
「ん?」
「おかえりなさい」
あぁ、やっぱり生きていて良かった――。
「ただいま」
きっと平和とはこういうあたたかいものなのかもしれない。