理由としては仕事が忙しくなったり、劣等生を読み直したりしてたらこの有様です。楽しみにしてくださってた方。申し訳ありません。
では、今回もよろしくお願いします!
森崎達、一科生との小競り合いから一日が経ち、俺は達也と深雪さんは正門で会ったのでそのまま一緒に教室まで行くことと歩いていると
七草「達也くーん」
後ろから七草先輩に声を掛けた。
七草「達也君おはよう、深雪さんと竜胆君もおはようございます」
達也「おはようございます」
深雪「おはようございます」
啓介「おはようございます、七草先輩」
七草「三人共少し話したいことがあるんだけど、今日のお昼に生徒会室に来てくれないかしら」
昼休みとなり、俺と達也は深雪さんと生徒会室前で待ち合わせをし、全員が揃ったところで達也が生徒会室のドアをノックすると
「どうぞ」と言う声が中から聞こえてきたので達也がドアを開けた
達也「失礼します」
七草「いらっしゃい、遠慮しないで入って」
そう言って七草先輩は席に座るように促す。
啓介「では、失礼します」
俺達が席に着くと七草先輩がダイニングサーバーを操作して出てきた6人分のプレートを俺達や他の生徒会役員に渡して、行き渡ったところで生徒会メンバーとの食事会が始まった。
七草「紹介するわ、まずこちらが会計の市原鈴音。通称りんちゃん」
市原「会長がそう呼んでいるだけです」
七草「その隣は知ってますよね、風紀委員長の渡辺摩利」
七草「こちらが書記の中条あずさ。通称あーちゃん」
中条「会長、お願いですから下級生の前であーちゃんはやめてください私にも立場というものが」
七草「あと副会長のはんぞー君を合わせて今期の生徒会役員です」
渡辺「私は違うがな」
深雪「渡辺先輩」
渡辺「なんだ?」
深雪「そのお弁当は自分でお作りになられたのですか?」
渡辺「そうだが、意外か?」
達也「いいえ少しも、普段から料理をしているかどうかはその手を見ればわかりますから」
俺や先輩方が渡辺先輩の手に注目して見てみると手には絆創膏を貼っており、渡辺先輩は頬赤らめながらその手を背中へと隠した。
深雪「そうだ、お兄様。私達も明日からお弁当にしましょうか」
達也「それはとても魅力的だけど二人っきりになれる場所がね」
市原「兄妹というより恋人同士の会話ですね」
啓介「確かにそうですね」
達也「そうですか?まあ確かに考えたことはあります」
深雪「?」
そう言うと達也は深雪さんの方を向き、言葉を続ける
達也「血の繋がりが無ければ…恋人にしたいと」
達也のそんな冗談に会長を除く生徒会メンバーは顔を赤らめる。
達也「もちろん冗談ですよ」
中条、深雪『え!?』
深雪と中条先輩が同時に声をあげる。
達也「ん?」
達也が深雪さんの方を不思議な顔で見ると深雪さんは顔を赤くさせながら静かに俯いた。
深雪「い、いえ、なんでもありません」
啓介(色んな意味でご馳走様です)
俺はそんな二人の会話を尻目にプレートと一緒に出されたお茶を啜りながらそんなことを心の中で思った。
食事が済んだところで七草先輩が話を始める
七草「そろそろ本題に入りましょうか。当校の生徒会長は選挙で選ばれますが、他の役員は生徒会長に選任・解任が委ねられています。各委員会の委員長も一部を除いて会長に任免権があります」
渡辺「私が務める風紀委員長はその例外の一つだ。風紀委員は生徒会、部活連、教職員会から三者が三名ずつ選任するが、その内部選挙によって風紀委員長は選ばれる」
七草「さて、これは毎年の恒例なのですが新入生総代を務めた一年生は生徒会の役員になってもらっています。深雪さん……私は貴方が生徒会に入って下さることを希望します」
七草先輩は深雪さんの目を真っ直ぐ見て言葉を続ける
七草「引き受けていただけますか?」
深雪「あの!会長は兄の入試成績をご存知でしょうか?であれば、兄も生徒会に推薦することはできませんか?」
市原「残念ながらそれはできません。生徒会の役員は第一科の生徒から選ばれます。これは不文律ではなく、規則です。これを覆すためには生徒総会で制度の改定が決議される必要があります」
深雪「……申し訳ありません。分を弁えぬ差し出口、お許しください」
生徒会室の雰囲気が改悪になりそうなことを察したのか七草先輩が話を続ける
七草「えっと、それでは深雪さんには書記として今期の生徒会に加わっていただくということでよろしいですね?」
深雪「はい。精一杯務めさせていただきますので、よろしくお願い致します」
再び頭を下げた深雪に、七草先輩は笑顔で頷いた。
七草「具体的な仕事内容はあーちゃんに聞いてくださいね」
渡辺「ちょっといいかな?」
そう言って渡辺先輩が手を挙げ、俺達の視線が集まる。
渡辺「風紀委員の生徒会選任枠のうち前年の卒業生の1枠が埋まっていない」
七草「摩利……それは今、人選中だと言っているじゃない」
渡辺「確か風紀委員の生徒会選任枠は、二科の生徒を選んでも規定違反にはならない……だったよな?」
その言葉を聞いた途端、真由美が名案を思いついたかのように立ち上がり大きな声をあげた。
七草「ナイス!そうよ!風紀委員なら問題ないじゃない!摩利!生徒会は司波達也君を風紀委員に指名します」
達也「ちょっと待って下さい!!」
そう言って達也は席を立ち、抗議を行う。
達也「俺の意思はどうなるんですか?大体、風紀委員が何をする委員なのかも説明を受けていませんよ」
市原「妹さんにも生徒会の具体的な仕事の説明はまだしていませんが?」
達也「……いや、それはそうですが……」
七草「まあまあ、リンちゃん、いいじゃない。達也君、風紀委員は学校の風紀を維持する委員です」
「……………………………」
達也「……それだけですか?」
啓介(うん、その反応は正しいよ、達也)
七草「はい?」
全く具体的とは言えない説明に呆れた達也は他の生徒会の面々の方を見るが市原先輩や渡辺先輩は説明する様子がなく、中条先輩が狼狽えながらも説明をする。
中条「あ、あの、風紀委員の主な任務は、魔法使用に関する校則違反者の摘発と、魔法を使用した争乱行為の取り締まりです」
続いて達也は摩利に視線を向け話す。
達也「……念のために確認させてもらいますが」
渡辺「なんだ?」
達也「今のご説明ですと、風紀委員は喧嘩が起こったら、それを力ずくで止めなければならない、ということですね?」
渡辺「まあ、そうだな」
達也「そして、魔法が使用された場合も同様である、と」
渡辺「できれば使用前に止めさせる方が望ましいがな」
達也「あのですね!俺は、実技の成績が悪かったから二科生なんですが!」
渡辺「構わんよ」
達也の言葉を遮り、渡辺先輩は続ける
渡辺「力比べなら私がいる。それに…」
渡辺先輩が意味ありげに俺の方を見てくる。
なんか嫌な予感が…
啓介「な、なんですか?渡辺先輩…」
渡辺「啓介君、君にも実は風紀委員に入ってもらおうと思っててな…」
啓介「いやいや!何言ってるんですか!?生徒会からの選任枠は達也に使用したじゃないですか?であれば枠はもう無いはずです!」
渡辺「確かにそうだな、だが、特例があると言ったらどうする?」
啓介「…は?」
そういうと渡辺先輩は机に置いていた封筒を俺に渡してくる
受け取った俺は嫌な予感がしながらも封を切り、中の手紙の内容を読む。
拝見
国立魔法大学付属第一高校校長 百山東様
国立魔法大学附属第一高校次席卒業 竜胆奏は次席卒業生が所持する推薦の権利を行使し、竜胆啓介を風紀委員会に推薦します。
竜胆 奏
啓介「あのクソお袋が…」
俺は呟きながら受け取った手紙を右手でくしゃりと握りつぶしたタイミングで昼休み終了のチャイムが鳴り。
七草「詳しい話は今日の放課後にしましょうか」
こうして、生徒会役員との食事会を終えたのだった。
午後の授業を終え、放課後に再び生徒会室に集まった俺、達也、深雪さんは昼休みと同様に達也がドアをノックし、ドアを開けた。
達也「失礼します」
俺達は中に入ると一礼をする。
達也「司波達也です」
深雪「司波深雪です」
啓介「竜胆啓介です」
生徒会室に入ると、中では各自が仕事を行っていた。
まずは俺ら三人に七草先輩と渡辺先輩が気付き、手をあげる。
渡辺「よっ!来たな」
七草「いらっしゃい深雪さん、達也君と啓介君もご苦労様」
そのとき、奥にいた長身の男子生徒が俺達に厳しい視線を向ける。その姿には見覚えがあった。昨日、七草先輩が深雪さんを生徒会に勧誘していた際に一緒にいた服部副生徒会長だ
「副会長の服部刑部です。司波深雪さん」
服部先輩は俺と達也を無視して深雪さんだけに挨拶をした。
深雪さんは態度に思うところがあったのか、少しムッとしているが抑えたのか一礼した。
俺もその態度にむかついた俺はボソッと
啓介「こんなのが副会長だなんてたかが知れてるな」
と呟いた。
服部「っ!?なんだと!」
俺の言葉に反応した服部先輩は俺に詰め寄ってくる。おっと聞こえるように言った覚えはないんだけどな
服部「おい!もう一回言ってみろ!」
啓介「ええ、何度でも言いますよ。あなたみたいなのが副会長だなんてたかが知れてるって言ったんですよ!」
服部「っ!渡辺先輩!自分はそこの二科生[ウィード]二人の風紀委員入りに反対します!」
渡辺「まあ、落ち着けだが、二科生をウィードと呼ぶのは禁止されている。私の前で使うとは良い度胸だな」
服部「取り繕っても仕方ないでしょう。それとも全校生徒の三分の一以上を摘発するつもりですか?風紀委員はルールに従わない生徒を実力で取り締まる役職です!実力で劣る二科生[ウィード]には務まらない!」
渡辺「確かに風紀委員は実力主義だが、実力にも色々あってな……達也君には起動式を直接読み取り、発動される魔法を正確に予測する目と頭脳がある」
服部「まさか!?基礎単一工程の起動式だってアルファベット三万字相当の情報量があるんですよ!?それを一瞬で読み取るなんてできるはずがない!」
渡辺「常識的に考えればできるはずがないさ。だからこそ、彼の特技には価値がある」
渡辺「彼は今まで罪状が確定できずに軽い罪で済まされてきた未遂犯に対する強力な抑止力になる」
服部「じゃあ、そっちの二科生はどうなんですか!」
そう言って俺を指差す服部先輩
渡辺「服部、お前は昨日の放課後に正門前で一科生と二科生の小競り合いがあったのは知っているな」
服部「ええ…概要だけは会長から聞いています」
渡辺「その際に一科生の一人がCADによる魔法を発動をさせようとしたのを阻止したのが彼だ、しかも魔法を使わずに素手でな。魔法を発動する前に阻止し、取り締まる事を最良とする風紀委員にとしてはこれほど適性能力がある生徒が他にいるというのかな?服部副会長」
服部「っ!ともかく!会長!私は副会長として司波達也と竜胆啓介両名の風紀委員就任に反対します。魔法力のない二科生に風紀委員は務まりません。この誤った登用は必ずや、会長の体面を傷つけることになるでしょう。どうかご再考を!」
深雪「待って下さい!」
深雪さんの方から声が上がる。
深雪「兄は確かに魔法実技の成績が芳しくありませんが、それは評価方法に兄の力が適合していないだけのことなのです!実戦ならば兄は誰にも負けません!」
服部「司波さん、魔法師は事象をあるがままに、冷静に、論理的に認識できなければなりません。不可能を可能とする力を持つが故に、社会の公益に奉仕する者として自らを厳しく律することが求められています。魔法師を目指す者は身贔屓に目を曇らせることがあってはならないのです」
深雪「お言葉ですが私は目を曇らせてなどおりません!お兄様の本当のお力を以てすれば……」
達也「深雪」
深雪さんの言葉を遮り、達也が服部先輩の正面に立ち、言い放つ
達也「服部先輩、俺と模擬戦をしませんか?」
服部「何!?」
その言葉に他の生徒会メンバーや渡辺先輩は驚いていた。
服部「思い上がるなよ補欠の分際で!」
達也「フッ」
服部「何がおかしい!」
達也「先ほど自分でおっしゃっていたではないですか。魔法師は冷静を心掛けるべきでしょう」
服部「このっ!」
達也「別に風紀委員になりたいわけじゃないんですが…妹の目が曇っていないと証明するためならやむを得ません」
服部「……いいだろう。身の程を弁えることの必要性を、たっぷり教えてやる」
啓介「でしたら先輩」
俺は服部先輩に近づき。そのまま胸ぐらを掴み、軽く殺気を込め、言い放つ。
啓介「俺とも模擬戦してくださいよ…実力で劣るだの言われちゃ流派に泥を塗られたも当然なので」
服部「っ!いいだろう、実力の差を見せてやる!」
生徒会役員と俺と司波兄妹は実技棟の演習室に移動し、先に模擬戦を行うことになった俺は服部先輩と演出室の中央に立ち、俺と服部先輩の間に立った渡辺先輩がルールを説明する。
渡辺「ルールを説明する。相手を死に至らしめる術式並びに回復不能な障碍を与えるような術式は禁止。直接攻撃は相手に重傷を与えない範囲であること。武器の使用は禁止。素手による攻撃は許可する。勝敗は一方が負けを認めるか、審判が続行不能と判断した場合に決する。双方開始線まで下がり、合図があるまでCADを起動しないこと。ルール違反は私が力ずくで処理するから覚悟しろ。以上だ」
説明を終えると、俺と服部先輩は5メートル後ろの開始線まで下がり、俺は籠手型のCADを装着した状態で空手に近い構えを取り、服部先輩は左腕のCADに右手に添えて渡辺先輩の合図を待つ。
あたりに沈黙に流れ、数秒が経過し、
渡辺「始め!」
初動を取ったのは服部先輩だった、合図と同時にスピード重視で単純な基礎単一系移動魔法のCADを操作し、素早く入力し、起動式を展開させたタイミングに合わせて俺は一気に距離を詰めようとするが、服部先輩の魔法の方が先に発動し、勝ちを確信したのか服部先輩は笑みを浮かべたが俺は術式を発動しアッパーの要領で左腕を振り上げ、地を這う衝撃波を打ち出す。
啓介「魔神拳!」
服部先輩が発動した魔法に魔神拳の衝撃波をぶつけて相殺した。
服部「なっ!?」
驚く服部先輩を無視し、縮地で距離を詰めた俺は構えを取りながら術式を展開する。
啓介「巻空旋!」
服部先輩を素早く掴むと同時に術式を発動させ、そのまま軽く真上に投げ飛ばす。突然投げ飛ばされた服部先輩は反応することが受け身を取ることもできず地面へ叩きつけられる。
服部「ガハッ!!」
俺は倒れて動けずにいる服部先輩の首筋に手刀を突きつける
啓介「服部先輩、降参してください」
服部「クッ…こ、降参だ…」
渡辺「しょ、勝者 竜胆啓介!」
そんな様子に他の生徒会役員にだけでなく、達也と深雪さんも驚いていた。
俺は倒れ込んでいる服部先輩に一礼をし、はめていた籠手を外して念の為に籠手に破損がないかをチェックをしているところに渡辺先輩が声をかけに来る。
渡辺「なあ、さっきの模擬戦で服部の魔法を相殺させていたあれはなんだ?魔神拳と言っていたが」
チェックを終えた俺は自分のリュックに籠手を入れ、質問に答える。
啓介「あれは拳を振った際に魔法を発動させ、前方に衝撃波を飛ばすうちの流派の技の一つです」
渡辺「なるほど、では服部を投げ飛ばしたあれは身体強化魔法か?」
啓介「いいえ、あれは四大元素魔法です」
渡辺「四大元素魔法だと!?」
俺の言葉に再び驚く生徒会役員と司波兄妹
元素魔法とは魔術において用いられる火・風・水・土の4つの属性のことを指し、現代魔法が発見される前からあったとされる魔法のなのだが現代魔法が主流の今の時代では四大元素を利用した魔法師はほとんど居らず、幻のような存在なのだが竜胆家は体術や武術に元素魔法を取り入れ、暗殺術として利用しており、うちの家系の殆どが元素魔法の使い手なのだ。その中でも俺は風・水系統の魔法を得意としている。
渡辺「じゃあ、君はサイオン量は…」
啓介「ええ、あまりないです。その代わり保有する元素変換式はうちの親曰くとんでもないみたいです」
市原「では、先ほどの投げ飛ばした際に発動した風魔法ですか?」
啓介「ええ、投げ飛ばす際に風魔法を発動させ、投げた際に風を吹き上げて飛ばしただけです。本来であればもう少し高く投げ飛ばしてそこから空中での蹴撃なんかに繋がるんですけど模擬戦なので、落下して行動不能となったところに手刀による寸止めにしました」
渡辺「ちょっと待てじゃあ、啓介君が所持してるCADは…」
啓介「ええ、元素を魔術式に変換するようにチューニングされてます」
俺の回答に渡辺先輩は納得したような表情をする
七草「啓介君、一ついいかしら?」
今度は七草先輩が俺に質問をしてくる。
啓介「なんですか?」
七草「どうして君は体術を?元素魔法であれば属性をそのまま相手に打ち出すことも可能なのに」
俺はため息をつくと七草先輩の問いかけに答える。
啓介「出力のコントロールできないからですよ」
七草「コントロールできない?」
啓介「ええ、たとえば、素手での攻撃時に相手に当たるタイミングで魔法を発動させたり、CADや武器を介してその物体に一定の威力の属性を付与させたりすることはできるのですが、相手に向かって撃とうとすると威力の細かい調整が出来ないんです」
七草「だから、実技の結果がそこまで…」
啓介「俺の魔法は特殊すぎるので試験や実技ではほとんど評価されないですから」
渡辺「そういえば、服部。達也君とも試合するとも模擬戦すると言っていたが連戦になるが大丈夫か?」
服部「ええ、いけます」
渡辺「そうか、達也君は準備はいいか?」
達也の方を見ると拳銃型のCADを取り出し、服部先輩の前に立つ
達也「いつでもいけます」
渡辺「そうか。では、ルールはさきほどと同様だ」
達也は拳銃型のCADを握る右手を床に向け、服部は左腕のCADに右手を添えて摩利の合図を待つ。再び静寂が流れ、数秒が経ったタイミングで
渡辺「始め!」
渡辺先輩の声が響き渡るが決着は一瞬でついた。
渡辺「……勝者、司波達也」
合図された瞬間、達也が服部の後方にいつの間にか回り込んでおり、服部にCADの銃口を向けていた。
そしてその発動された魔法を受けて服部の身体が崩れ落ちたのだ。
服部「な、にっ………」
啓介(なんだ!?いつのまにか回り込んだんだ!?しかも達也のあの足捌き、瞬歩や縮地じゃないとすればあの歩法は一体!?)
あの足捌きだけでわかる、達也も俺と同じで体術を会得している。しかも俺と同等クラスの手練れだ。
達也は軽く一礼した後、CADを自分のケースへと戻す。そのケースには複数のストレージが入っていた。
渡辺「待て」
淡々と自分のCADを仕舞っていた達也を摩利が呼び止める。
渡辺「今の動きは……自己加速術式を予め展開していたのか?」
摩利の問いに倒れた服部を介抱していた鈴音とあずさも耳を向ける。
達也は試合開始の合図直後に既に服部の後方に回り込んでいた。
周りからは瞬間移動と見間違えるほどの速力であった。
達也「魔法ではありません。正真正銘、身体的な技術ですよ」
深雪「あれは兄の体術です。兄は、忍術使い・九重八雲先生の指導を受けているのです」
啓介(そういうことか道理で)
渡辺「あの九重先生の!?」
七草「じゃあ、あの攻撃に使った魔法も忍術ですか?私には、サイオンの波動そのものを放ったようにしか見えなかったのですが」
達也「いえ、忍術ではありませんが、サイオンの波動そのものという部分は正解です。あれは振動の基礎単一系魔法で、サイオンの波を作り出しただけですよ」
七草「しかしそれでは、はんぞーくんが倒れた理由が分かりませんが……」
達也「酔ったんですよ」
七草「酔った?一体、何に?」
首を傾げる真由美に、達也は淡々と説明する。
達也「魔法師はサイオンを、可視光線や可聴音波と同じように知覚します。予期せぬサイオンの波動に曝された魔法師は、実際に自分の身体が揺さぶられたように錯覚するんです。その錯覚によって激しい船酔いのようになったということです」
達也「そんな、信じられない……。魔法師は普段、日常生活でも常にサイオンの波動に曝されて、サイオン波に慣れているはずよ?無系統魔法はもちろん、起動式や魔法式だってサイオン波動の一種ですもの。その魔法師が立っていられないほどの強いサイオン波を一体どうやって……?」
市原「波の合成、ですね」
市原「振動波の異なるサイオン波を三連続で作り出し、三つの波がちょうど服部君と重なる位置で合成して、三角波のような強い波動を作り出したんでしょう。よくもそんな精密な計算ができるものですね」
達也「お見事です、市原先輩」
市原「それにしても、あの短時間でどうやって?それだけの処理速度があれば、実技の評価が低いはずがありませんが」
鈴音の疑問に苦笑で答える達也であったが、彼の手元をチラチラと覗きこんでいた少女が代わりにその答えを示してくれた。
中条「あの~、もしかして、司波君のCADは『シルバー・ホーン』じゃありませんか?」
七草「シルバー・ホーン?あの謎の天才魔工師トーラス・シルバーのシルバー?」
中条「そうです!フォア・リーブス・テクノロジー専属、その本名、姿、プロフィールの全てが謎に包まれた奇跡のCADエンジニア!」
あずさが達也の周りをチョロチョロと動き回りながら、説明する。その姿はまるでリスのようだ
中条「世界で初めてループ・キャスト・システムを実現した天才プログラマー!」
そしてテンション高めに語る。
中条「シルバー・ホーンというのは、そのトーラス・シルバーがフルカスタマイズした特化型CADのモデル名で、ループ・キャストに最適化されているんです!」
七草「でもリンちゃん。それっておかしくない?」
市原「ええ、おかしいですね。ループ・キャストはあくまでも全く同一の魔法を連続発動させるためのもの。それでは振動数の異なる波動を作り出すことはできないはずです」
市原「振動数を定義する部分を変数にしておけば可能でしょうけど、座標・強度・持続時間に加えて、振動数まで変化するとなると……」
市原先輩は見開く。
市原「……まさか、それを実行しているというのですか?」
達也「多変数化は処理速度としても、演算規模としても、干渉強度としても……この学校では評価されない項目ですからね」
生徒会の面々が驚きながら見る一方で、俺も達也の方をじっと見つめていた。
啓介(達也の熟練された身のこなしと殺傷性の少ない魔法を使用して瞬時に服部先輩を戦闘不能にしたあの技術…間違いなく達也は俺と同じで戦闘慣れしている!)
服部「……実技試験における魔法力の評価は、魔法を発動する速度、魔法式の規模、対象物の情報を書き換える強度で決まる。……なるほど、テストが本当の力を示していないとはこういうことか……」
服部先輩が起き上がりながらつぶやく
真由美が服部の顔をのぞきこむように身を乗り出す。
七草「はんぞーくん、大丈夫ですか?」
服部「大丈夫です!」
服部は顔を赤くさせ、慌てて立ち上がった。
服部「……司波さん」
深雪「……はい」
服部「さっきはその……身贔屓などと失礼なことを言いました。目が曇っていたのは、許して欲しい」
そして頭を下げた。深雪さんはそれに対し、
深雪「わたしの方こそ、生意気を申しました。お許しください」
そして後方に立っていた俺と達也の方を見ると
服部「では、会長。私は失礼します
」
服部先輩は七草先輩に頭を下げ、踵を返し、静かに演習場を出ていった。
渡辺「さて、想定外のイベントが起こったが、予定通り風紀委員会本部へ行こうか!」
風紀委員会本部に移動し、ドアを開けるとそこにはおそらく生徒達から没収したと思われる押収品が散乱していた。
渡辺「少し散らかっているが、適当に掛けてくれ」
達也「委員長、ここ片付けてもいいですか?」
渡辺「何?」
達也「魔工技師志望としてはこの状態は耐え難いものがあるんですよ」
そう言うと達也は近くにあった押収品の入った箱を持ち上げ、部屋の隅に持っていく
啓介「俺も同感ですね、流石にこれは片付けたほうがいいかと」
俺も床に落ちてる押収品を拾い、近くの箱に押し込んで部屋の隅へ運ぶ
渡辺「へえ、達也君は魔工技師志望なのか?」
達也「ええ、俺の実力ではC級までのライセンスしか取得できませんから」
渡辺「さて、君達をスカウトした理由は…そういえば、ほとんど説明してしまったな」
啓介「理由はわかりました。ですが、二科生が風紀委員に入ったことで二科生の上級生にしてみれば、同じ境遇の相手、しかも後輩から取り締まられるのですから余計に面白くないと感じる生徒も少なくないと思います」
達也「俺も同意見ですね、下手すると一科生と二科生の関係がさらに悪化することも考えられます」
渡辺「だが、同じ一年生は歓迎すると思うがね」
啓介「どうでしょう、昨日はいきなり俺と達也に認めないぞって宣言してくる生徒もいましたからね」
渡辺「森崎のことか」
啓介「アイツを知ってるんですか?」
渡辺「教職員推薦枠でうちに入ることになっている」
達也「え?」
啓介「は?」
渡辺「君達でも慌てることがあるんだな」
達也 啓介『それはそうですよ』
すると風紀委員会本部のドアが開き、
???「おはよーっす」
???「おはようございます」
???「あ、姐さんいらしてたんですかい」
二人の先輩が入ってきた。その左腕には黒地に赤い盾のようなマークが入っていた風紀委員の腕章を付けていた。
???「委員長、本日の巡回終了しました!逮捕者ありません!」
すると渡辺先輩は姐さんと呼んだ方の風紀委員の方に近づき、持っていた紙を棒状に丸め、頬を引っ叩いた。
渡辺「姐さんって呼ぶな!何度言ったらわかるんだ!お前の頭は飾りか!」
そう言いながら丸めた紙で頭をポンポンと叩く渡辺先輩
???「そんなポンポン叩かねえでくださいよ!」
渡辺「はぁ…」
渡辺先輩の説教が済んだのか説教をされていた先輩の方が俺達の方を見る
???「ところで委員長、そいつは新入りですかい?」
渡辺「1年E組 司馬達也と竜胆啓介。達也君は生徒会推薦枠、啓介君は…まあ、特例で入ることになった」
???「へえ…紋無しですかい」
???「辰巳先輩、その表現は禁止用語に抵触する恐れがあります。この場合二科生と言うべきかと」
渡辺「お前達そんな単純な了見だと足元を掬われるぞ。ここだけの話だが、先ほど二人とも服部が模擬戦をしてな、服部が足元を掬われたばかりだ」
「「え!?」」
そう言って二人が俺の方を見てくる
???「そいつらがあの服部に勝ったってことですかい?」
渡辺「ああ、正式な試合でな」
???「なんと!入学以来負け知らずの服部が新入生二人に敗れたと!」
???「そいつは心強え」
???「逸材ですね委員会」
俺は二人の先輩の反応に唖然とした、それは達也も同じのようだった
渡辺「意外だろう?この学校はブルームだウィードだとつまらない肩書きで優越感に浸り、劣等感に溺れる奴らばかりだ正直言っててうんざりしていたんだよあたしは」
啓介「……」
渡辺「幸い、真由美も部活連代表の十文字もあたしがこんな性格知ってるから生徒会枠と部活連枠はそういう意識が比較的少ないやつを選んでくれている。優越感がゼロというわけにはいかないが、きちんと実力の評価ができるやつらだ。君達にとっても居心地の悪くない場所だと思うよ」
渡辺先輩が話終えると風紀委員の二人が俺達に歩み寄り、渡辺先輩を姐さんと呼んでいた方の先輩が両手を差し出す
「3-Cの辰巳 鋼太郎だ。よろしくな司波、竜胆。腕の立つやつは大歓迎だ」
「2-Dの沢木 碧だ。君達を歓迎するよ司波君、竜胆君」
俺達はその手を掴み握手をする
達也「一年の司波達也です」
啓介「同じく一年の竜胆啓介です」
達也 啓介『こちらこそよろしくお願いします』
風紀委員に配属が決定し、他の先輩方との顔合わせは後日ということになったので家へ帰宅しようと家の前についたのだが
啓介「あれ?鍵が開いてる!?」
朝は確実に施錠したのは覚えている。空き巣や窃盗犯の可能性を疑った俺はゆっくりとドアノブを回し、中に入り、音が鳴らないようにドアのゆっくりと閉め、逃げられないように施錠して明かりのついたリビングへ入り、ドアを開ける
啓介「動くな!」
???「へぇ、わざわざ忙しい合間を縫って様子を見にきたのに随分失礼な態度じゃないの啓」
啓介「あ、姉貴!?なんでここに!」
そこにはソファに寝転がりカッターシャツを着崩し、だらけている長い黒髪を後ろで結った女性。もとい俺の姉の竜胆未香が座っていた。
未香「言ったでしょ?仕事の合間縫って見に来たって。あんたに伝えないといけないこともあるし」
啓介「伝えないといけないこと?親父達からの伝言か?」
未香「違うわよ、アンタ、一高に入学したなら生徒同士の差別が横行してるのは知ってるわよね?」
啓介「ああ、それがどうかしたのか?」
未香「実は一高の生徒同士の差別意識を利用して一高でテロ行為を行う計画を実行しようと組織いるって情報を入手したのよ」
啓介「ある組織?」
未香「反魔法国際政治団体ブランシュよ」
啓介「ブ、ブランシュだと!?」
未香「ええ、ブランシュ日本支部のリーダーの弟は一高生徒よ。かと言って証拠もなしにしょっぴくことも出来ないから対応に困ってるのよ」
啓介「このことは生徒会や教員には」
未香「やめときなさい、最悪、日本支部リーダーの弟が仮に内通してた場合、生徒同士の会話で耳に入る可能性があるからこのことは内密にお願い」
啓介「だよな」
未香「それよりもアンタはテロ行為が起こった際に連中の制圧を頼みたいわ。まあ、起こらないに越したことはないから、もし、テロ行為が発生したらすぐにあたしに連絡して。
啓介「わかったよ」
未香「という訳で今からアンタに稽古を付けてあげるから」
そう言ってソファーから立ち上がり、着崩していたカッターシャツを整えてる隙に俺はリビングを出ようとするが
未香「ちょっと、どこに行こうとしてるの?」
あっさりと捕まり、猫のように首根っこを掴まれ、持ち上げられる。
啓介「い、いや逃げようとしたんじゃなくて夕飯の材料を…」
未香「安心しなさい、材料なら買ってあるから、私は今夜しか時間ないから少し厳しくなるから覚悟しなさいね」
姉貴がこう言った時は大抵少し厳しいなんてレベルでは済まない。昔から姉貴と稽古をしてきたが、今だに姉貴から一本取れたことはないのだ。
俺は背中に冷や汗を感じながらも覚悟を決めて姉貴との命懸けの稽古に臨むのだった。
いかがでしたか?
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