あとタイトルを変更しました。
では、どうぞ。
「悪い、待たせたな。」
「お待たせしました、先生。」
俺とリンがシャーレ地下にたどり着くと、先生は何か不思議なものでも見たかのようにポカンと突っ立ていた。
「……?何かありましたか?」
“……!いや、大丈夫だよ。”
リンの声に気が付くとこちらの方に振り返り、異常はなかったと伝える。明らかに嘘をついている感じたが、特に襲われた様子もなさそうだったため気にしないことにした。
「……そうですか。ここに、連邦生徒会長が残したものが保管されています。」
リンがそう告げると、部屋の中央に進んでいき机の上にポツンと置いてあるタブレットを持ち上げ傷一つないことを確認すると、スッと先生の方へ差し出した。
「……受け取ってください。」
“タブレット端末……?”
「はい。これが、連邦生徒会長が先生に残した物。“シッテムの箱”です。」
彼女がそう説明すると、先生はシッテムの箱を受け取り興味深そうにじっと見つめている。
俺も物の存在こそ知っていたが、俺自身あまり機械に詳しくないせいか先生の言う通り普通のタブレットにしか見えない。リンも先生に手渡した後に、構造のよくわからない代物であると伝えていた。一体、どこでこんな物を拾ってきたんだが……。
「なんでも、これは先生にしか扱えない物なんだとさ。」
「はい。そして、これでタワーの制御権を回復させられるとも言っていました。」
「……では、私たちはここまでです。……よろしくお願いします、先生。」
それだけ伝えるとリンは黙り込んでしまった。実際のところ、後のことは先生に全てが掛かっているため、俺たちは祈ることしか出来ないわけだ。
「邪魔にならないように、離れていますね。」
「俺は万が一のことも考えて、あんたの近くにいるからよ。なんか問題起きたら、まぁ頼ってくれ。」
“……分かったよ。”
それだけ呟くと、先生は改めてシッテムの箱を見つめなおす。ただ、その様子を見ると何処か不安の色を隠せていない。それもそのはず、彼がもしシッテムの箱を起動できなければ、責任に問われるのは先生なのだから。そういう意味では、同じ大人として同情する。いきなり、訳も分からない場所に呼ばれたと思ったら、都市を救ってくれとお願いされるわけだ。俺でも、そんな重荷をいきなり背負わされるのは勘弁してもらいたい。
先生が決意を固めると、シッテムの箱を起動するために操作し始めた。
……すると、不思議な言葉が不意に頭の中に響いた。
(……我々は望む、七つの嘆きを。)
(……我々は覚えている、ジェリコの古則を。)
(「……は。いきなり、なんだ?ジェリコの古則?聞いたこともないはずなのに、俺はこの言葉を知ってる気がする。」)
その直後、俺は急に意識が遠のく感じがすると共に目の前がホワイトアウトした。
段々霧が晴れるように目の前の景色が見えてくると、そこは青空に囲まれた一つの教室の目の前だった。不思議な声が聞こえると思ったら、次は不思議な場所にいる。急な展開すぎて脳の処理が追い付かないと、隣から気配を感じた。
“……あれ?どうして、アオトもここに?”
「い、いや、それはこっちのセリフっつうか。あんたこそ、なんでここにいんだよ。」
“いや~、シッテムの箱を起動したと思ったら、いつの間にかここに。ここで考えても仕方ないしさ、ひとまず教室に入ってみようよ。”
さっきまでの不安そうな顔はどうしたと言わんばかりの先生の平然さに驚きながらも、彼の後に続いて教室の中へと入っていく。
“……?誰か、眠ってるみたいだね。”
先に教室へと足を踏み入れた先生が、一つの机を指さすとそう発言した。
俺も、教室に入り様子を伺うが眠っている人物を見て驚いた。眠っていた女の子は、連邦生徒会長の奴にそっくりだったからだ。
“……?どうかしたの、アオト?”
「いや、何でもない……。」
どうやら動揺したのが顔に出てしまったのか、先生がこちらを心配してきた。
改めて見ても、双子を疑うレベルでそっくりだった。しかし、連邦生徒会長とは明らかに歳も離れてるし、頭にリボンもつけてなんかいなかった。姉妹?それとも、黒ずくめの連中に怪しい薬でも?
ひとまず、連邦生徒会長と目の前の女の子は別人と結論を出すことにした。
「すぴー、すぴー……Zzzzz」
「むにゃむにゃ、カステラにはぁ……イチゴミルクより……バナナミルクのほうが……。」
“ぐっすりだね。甘い物でも、好きなのかな?”
「さあな。ひとまず、その子には悪いが起こすしかないよな。」
“それなら、私に任せて!”
そう先生が自身満々に言い切ると女の子に近づき、彼女の頬をツンと突く。それでも、彼女は起きない。次は、ツンツンと2度突いてみるが……。まだ夢の中のようだ。先生は引かず、今度はツンツンツンと3度突いた。
「……ん~?」
3度目の正直でようやく目覚めた女の子は、寝起きのだらしない顔をしながら体を起こした。
「むにゃ……もう~……ありゃ?」
「ありゃ、ありゃりゃ……?」
段々と眠気が覚めてきた女の子は、こちらの存在に気づくと顔を赤く染めていった。
「あれ?……せ、先生!?ここにいるってことは、ほ、本物?」
“うん。よろしくね。”
「は、はい!よろしくお願いします、先生!」
「……そ、それと、そちらにいる大人の人って……。」
どうやら女の子は先生を知っているらしく、先生自身も彼女に挨拶を交わしていた。……先生との交流を終えると、彼女の意識が俺の方に向きこちらに近づいてくる。俺の傍までやってくると、手を前にもじもじして何かを言いくるんでいるようだった。不意に、何かの決意を固めると俺の顔を見上げ口を開いた。
「……も、もしかして、あ、あなたが……、あ」
「?」
「“アオトお兄ちゃん”ですか?」
「?……??????????????????????????????????????????????」
唐突な告白に、俺は頭は?で埋め尽くされた。
兄?あの、兄か?いやしかし、俺の妹はあの子だけで、目の前の彼女とは初対面なはずなのに。
いや、でも、え?
ーside 先生ー
目の前の彼女のお兄ちゃん発言に完全に魂が抜けてしまったアオト。何度も声をかけてみたが無反応だったため、ひとまず状況を彼女に聞いてみることにした。
「せ、先生!アオトお兄ちゃんは大丈夫でしょうか?」
“まぁ、うん。そのうち治ると思うから、気にしないで。……えっと、まず君は誰かな?”
「あっ、そうだった!自己紹介がまだでしたね。」
「私はアロナ!この“シッテムの箱”に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから先生をサポートする秘書です!」
彼女、アロナは誇るようにそう告げる。そんな、アロナにアオトのことを尋ねる。
“アオトとはどういう関係なの?本当の兄妹だったりするの?”
「そ、そういう訳ではないのですが、兎に角、お兄ちゃんなんです!」
全く説明になっていないのだが、アロナ自身がそう言うのであればそうなんだろう。私は、考えることを諦めた。アロナは、今一度私とアオトのことを見直すと嬉しそうに言った。
「やっと会うことが出来ました!私はここで先生とお兄ちゃんをずっと、ずーっと待っていました!」
“そっか。改めて、よろしくね?アロナ。”
「はい!よろしくお願いします!これからは、先生のこと全力でサポートしますね!」
とびっきりの笑顔を見せるアロナに対しここで、寝ていたことを突っ込むのは野暮なことだろう。
その後は、アロナとは生体認証ならぬ宇宙人とのワンシーンを実演したり、最新型の機械に嫉妬したり、彼女の権限を駆使し何とかサンクトゥムタワーの制御権を取り戻したりした。
再度、目を開けるとシャーレのオフィスに戻っていた。ただ、アオトはこちらでも今だ魂が抜けた状態だった。制御権が戻ったことを確認したのであろうリンもこちらに戻ってきていた。
「お疲れ様です、先生。サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認できました。これで連邦生徒会長がいた頃と同じように、行政管理を進められます。」
「……と、ところで、アオトさんはどうしてしまったのでしょうか?心ここにあらず、といった感じですが。」
“う~ん、ひとまず気にしなくて大丈夫だと思うよ。”
「そうですか。改めて、先生。キヴォトスの混乱を防いでくれたこと、連邦生徒会を代表して深く感謝したします。」
リンは深々と頭を下げると、最後にシャーレの紹介をあらかたしてくれると帰っていった。アオトはと言うと、ひとまずシャーレの部室まで引きずって連れていき、ソファに座らせておいた。
“ふーう。これで、ひと段落かな?アロナもお疲れ様。”
「はい。お疲れ様でした、先生!」
「しかし、本当に大変なのは、これからですよ?これからは先生と一緒に、キヴォトスの生徒たちが抱えている問題を解決していくのです!」
“これからよろしくね、アロナ?”
「はい!キヴォトスを、シャーレをお願いします、先生。あと、お兄ちゃんにも伝えておいてください。」
“分かったよ、じゃあまたね。”
そうアロナに伝えると、シッテムの箱の電源を落とす。ひとまず、アオトが起きるまでは部屋の片づけでもすることに決め、私は重い腰を上げるのだった。
ーside アオトー
瞬間、アオトの脳内に溢れ出した。存在しない記憶。
「そうか。俺は、お兄ちゃんだったのか。」
“やっと起きたかと思えば、何言ってるのアオト?”
先生の声に我を取り戻した俺は、あたりを見渡した。
「ここは……、そうだ!問題は解決したのか?」
“それについても、詳しく話すよ。”
先生はそう言うと、俺が存在しない記憶を思い出していた時にあったことを話してくれた。
「そうか、世話をかけたな。改めて俺からも、ありがとう先生。あんたが居なかったら、この問題は解決できなかった。」
“私は、先生だからね。生徒が困っていたら、助けるのは当たり前だろう?”
先生は、迷いもなくそう告げる。認めたくはないが、やはりこの人は先生足りうる人なのだと思い知らされる。まだまだ、未熟で頼りないところも目立つが生徒を思いやる時の、その瞳だけは真っ直ぐだった。
“アオトは、連邦生徒会に返らなくてもいいの?”
先生のその言葉に、俺は自分の制服のネクタイを締めなおすと先生に向き直る。先生が不思議そうな顔をするが、スルーして話を割り出した。
「改めて、連邦生徒会行政補佐官アオトだ。今日より、シャーレ所属並びに先生の護衛、補佐を務めることになった。よろしく、先生。」
“アオトの仕事って、これのことだったんだね。改めて、よろしくね。”
先生は、よろしくとこちらに握手を求めてきた。
「最初に言っとくが、俺はあんたのことまだ信頼はしてないからな?……ただ、信用くらいはしといてやるよ。」
俺は、ぶっきらぼうにそう答えると、先生の手を握り返した。
“ところで”と先生の顔つきが変わり、俺に何かを尋ねてきた。
「……なんだ?」
“アオトってさ、実は……“ロリコン”だったりする?”
「(#´Д゚)ア゙ァ゙?」
前言撤回。俺は、こいつを今ここで処すことに決めた。俺は……
「俺は、シスコンだ!断じて、ロリコンではない!」
シャーレに、またはキヴォトスに俺は過去一番の叫びをあげるのだった。
「ん……、呼ばれた気がした?」
ー次回ー
第一章 対策委員会編 『アビドスの夜明け』
「クックックッ、そうですね……彼は神秘に脳を焼かれた存在、というべきでしょうか。」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
内容のご指摘、ご質問などありましたら遠慮なく感想などに書いてください。