男が増え、曇らせは加速する……なんでさ⁈   作:一二三 一八

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CRカップ見ていたら、週があけていました。
今回からアビドス編に入っていきます。

では、どうぞ。


Vol.1 アビドスの夜明け
突撃、アビドス高等学校!


 

 

 

ここキヴォトスに先生としてやって来て、もう1週間ほどたっただろうか。

 

シャーレでの書類仕事も慣れてきて、ほんの数日前まで机を占領していた書類の山も今ではなくなった。途中何度も休憩を口実にしてサボろうと試みたが、毎度アオトか当番でやってくるユウカに見つかっては椅子に拘束される日々だった。しかし、人間というのは目的を失うと急に暇になる生き物であり、絶賛私も暇を持て余しているところだった。

 

何かないかと書類を漁っていると、シッテムの箱が起動しアロナが話しかけてきた。

 

 

「おはようございます、先生!」

 

“おはよう、アロナ。”

 

「先生がキヴォトスにやって来てから、シャーレに関する噂も沢山広まっているみたいですよ?様々な学園の生徒たちから助けを求める手紙も届いてます。」

 

 

「いい予兆です!」と誇らしげなアロナの言葉を聞き、暇を持て余していた私は閃いた。

 

 

“アロナ、生徒たちからの依頼で気になるものとかないかな?”

 

「それでしたら、手紙の中にちょっと不穏な内容が書かれている物がありまして。先生も一度読んでみてください。」

 

 

そうして、彼女が指した手紙を私は手に取り封を切ると内容を読み始めた。

 

 

連邦捜査部の先生へ

 

こんにちは。私はアビドス高等学校の奥空アヤネと申します。

 

 

手紙の書き始めはそんな感じだった。簡単にまとめると、どうやら暴力組織に学校を占領されてしまいそうになっていること、そして先生である私に援助を求めていること。

 

手紙を読み終えると、アロナが簡単にアビドスについて教えてくれた。昔はとても大きい自治区であったが、気候変動などの影響により町が荒れ果ててしまったことや、街のど真ん中で遭難してしまうことがあること。また、アビドスを外敵から守護する番犬がいるとの変わった噂もあるようだ。

 

 

「それより学校が暴力組織に狙われているだなんて……、穏やかではありませんね。」

 

“……そうだね。”

 

 

想像以上の内容に私が難しい顔をしていると、コーヒーを淹れに行っていたアオトがマグカップを両手に戻ってきた。アオトにも事の顛末を簡単に説明した。

 

 

「……なるほどな、アビドスか。連邦生徒会にもちょくちょく援助要請が来てたな……。」

 

“どうすればいいと思う?”

 

「そりゃあ、どうすればいいかなんてとっくにあんたが知ってるんじゃないか?」

 

先生?」

 

 

アオトの言葉を聞き、私はハッとさせられた。

そうだ。私は先生として呼ばれたんだ、困っている生徒がいるのならば手を差し伸べるのが私の役目だ。そうと決まれば……

 

 

“アロナ、アビドスに出張するよ!”

 

「さすが、先生!かしこまりました、すぐ出発しましょう!」

 

「俺も付いていく……っと言いたいところなんだが、連邦生徒会の方に呼ばれててな。俺は明日、アビドスに向かうわ。」

 

“分かったよ。それじゃあ、いざアビドスへ。”

 

 

私は、シッテムの箱と軽い携帯食を持つと部室を飛び出しっていった。

 

 

「あ!それと、アビドスでは迷子に……ってもういねぇし。あいつ何処かで野垂れ死にたりしねぇだろうな?」

 

 

アオトの注意を聞くこともなく、出掛けてしまった私は無事アビドスの子に救出されたことは言うまでもなかった。

 

 

 

ーside シロコー

 

 

いつも通りの日常を今日も送るのだろうと、当たり前のことを考えながら今日もロードバイクを走らせる。ホシノ先輩は寝ていて、セリカはバイト、ノノミとアヤネは校舎の清掃、彼はいつもの場所で空でも眺めてるのだろう。

 

年々、砂漠化が進んでいるアビドスの住宅街を横目に学校に向かっていると人が倒れていた。これをきっかけに、私たちの日常はちょっとずつ変わっていくことになる。

 

道端だ倒れていた大人の人は、シャーレの先生でどうやらアビドスに用があってきているらしい。まさか、飲みかけだったボトルにそのまま口を付けるとは思わなかったが、よほど喉が渇いていたのだろう。体力の限界だった先生を担いで、なんとか学校まで来ることが出来た。

 

 

「ただいま。」

 

 

私が、教室に入るとセリカ、ノノミ、アヤネの三人がいた。残りの先輩組二人はいつもの場所だろう。

 

 

「おかえり、シロコせんぱ……い?うわぁ!何!?そのおんぶしてるの誰!?」

 

「わぁ、シロコちゃんが大人の人を拉致してきました!」

 

「拉致!?もしかして死体!?シロコ先輩がついに犯罪に手を……!」

 

「みんな落ち着いて、速やかに死体を隠す場所を探すわよ!体育倉庫にシャベルとツルハシがあるから、それを……。」

 

 

何やら盛大に勘違いをしているらしい、セリカの発言もラインぎりぎりだろう。ひとまず、誤解を解くためにも先生を降ろす。

 

 

「いや……普通に生きてるから。うちの学校に用があるんだって。」

 

「えっ?死体じゃ、なかったんですか……?」

 

「何、お客さんだったの?」

 

「そうみたい。」

 

 

アヤネが、少しガッカリしてそうだったのは気のせいだろう。降ろされた先生も、体力が回復したのだろう立ち上がり私達を見渡している。

 

 

“シャーレの先生です、よろしくね。本当は、もう一人いるんだけど今日は用事があるみたいで。”

 

 

先生がみんなに挨拶をすると驚いている。それもそのはず、彼こそ最近キヴォトスにやってきて噂になっている中心人物だからだ。

 

 

「わぁ☆支援要請が受理されたんですね!よかったですね、アヤネちゃん!」

 

「はい!これで、ようやく弾薬や補給品の援助が受けられます。」

 

 

連日のあいつらの襲撃のせいで物資が底をつきそうだったから、先生のおおかげで何とかなりそうだった。

 

 

「あ、早くホシノ先輩たちにも知らせてあげないと……。」

 

「委員長は隣の部屋で寝てるよ。私、起こしてくる。」

 

「ん……。それじゃあ私も先輩を呼んでくる、多分いつもの所だから。」

 

 

教室を飛び出しっていったセリカに続き、私も屋上へと向かう。

 

階段を昇り、重そうな屋上の扉を開く。先輩を探すと、今では使われていいない大きな設備を背もたれにし空をボーっと見つめている姿を見つけた。

 

 

「やっぱり、ここにいた。みんなが呼んでる、“クロウ先輩”。」

 

 

彼はゆっくりと私の方に顔を向けると、コクリと軽くうなずき立ち上がった。

 

 

ーside outー

 

 

 

私を学校まで背負ってくれたシロコと、セリカと呼ばれていた子が教室を飛び出しっていった。それからすぐに、足音が聞こえてくるとセリカがピンク髪の小柄な女の子を連れてきた。彼女が、アヤネが先ほど言っていたホシノって子だろう。

 

 

「ふあぁ~……むにゃ。どうしたのさ~、せっかくお昼寝してたのに~。」

 

「寝ぼけてないで、起きて先輩!」

 

「うへ~、もう食べられない~。」

 

 

まだ夢の中のホシノを、セリカが必死に揺すりながら起こそうとしている。それと同じくらいにシロコも帰ってきた。その隣には、藍色の髪で片目を隠し体の所何処には包帯が巻いてある男の子が、その赤い瞳でこちらを見ていた。

 

 

「クロウ先輩も連れてきた。」

 

「これで、全員揃いましたね。それじゃあ、改めて……。」

 

 

ダダダダダダダダッ!

 

 

アヤネがそう言いだそうとした時に、校舎の外から銃声が響いてきた。窓の外を覗くと、ヘルメットを被った集団が銃を乱射し今にもこちらへ襲撃してきそうになっていた。

 

 

「わわっ!武装集団が学校に接近しています!カタカタヘルメット団のようです!」

 

「あいつら……!性懲りもなく!」

 

「おちおち昼寝もさせてくれないね~、ヘルメット団め~。」

 

「すぐ出るよ。先生のおかげで、物資の量は十分。」

 

「はーい、みんなで出撃です☆」

 

 

シロコに続き、セリカ、ノノミ、ホシノも武器を手に校舎から出ていく。教室に残ったのは、私とアヤネ、それとクロウ。

 

 

「私がオペレーターを担当します。クロウ先輩は戦えないのでここで待機しててください。」

 

“私も戦術指揮でサポートするよ。”

 

「はい!お願いします、先生!」

 

 

カタカタヘルメット団との戦闘は一方的なものだった。私の指揮を抜いても、アビドスの子たちは一人一人の能力が高い。特に、ホシノはまだ全力すら出していないだろう。みんなの前に立ち、盾でヘイトを集めることによって他のみんなが立ち回りしやすくなっている。

 

カタカタヘルメット団も郊外へと撤退すると、シロコ達も学校の方に戻ってきた。

 

 

「いやぁ~圧勝だったね。向こうもかなりの戦力従えて襲撃に来たみたいだったけど。」

 

「先生の指揮のおかげ。いつもと戦闘のしやすさが段違いだった。」

 

「これで、またゆっくりとお昼寝ができるね~。」

 

「また寝ようとしないでよ委員長!先生もいるでしょ!」

 

「あはは……先ほどは遮られちゃいましたけど、改めてご挨拶します。」

 

 

そこからアヤネはアビドス対策委員会のみんなを紹介してくれた。

 

 

「そして最後に副委員長の、同じく三年生の鴉冴(からすご)クロウ先輩です。」

 

「……よろしく。」

 

 

ここまで、一言も喋らなかった彼がその時始めて口を開いた。

 

 

「いや~、ごめんね先生?クロウは、ちょっと恥ずかしがり屋さんなんだ。口数が少ないのは許してあげてね?」

 

「ん……、嘘はよくない。先輩は私たちに対してもいつもこんな感じ。」

 

 

どうやら、クロウが無口なのは普段かららしい。彼も、よろしくの一言を言った後は黙り込んでじっと椅子に座っている。

 

そこからは、アヤネが話題を仕切ってくれてアビドス対策委員会について説明してくれた。

 

全校生徒は僅か六人で形成され、アビドスを蘇らせるために日々活動しているらしい。砂漠化の影響により、住民もほとんどが移住し、カタカタヘルメット団などのチンピラに目を付けられてしまう始末。いつまた、カタカタヘルメット団が襲ってくるかわからない状況らしい。

 

そこで、ホシノの作戦で戦力を大幅に削がれた今を狙って、今度はこちらから彼女らの拠点を襲撃することになった。作戦結果は言うまでもなく、無事に制圧成功しカタカタヘルメット団もしばらくは襲ってこないだろう。

 

学校の方に戻ってきたみんなは、一息つくと話を始めた。

 

 

「これで、ようやく重要な問題に集中できる。」

 

「そうね!先生のおかげで、心置きなく借金返済に取りかかれるわ!」

 

 

セリカの口から、聞き逃せない内容の話題が出てきて私は間髪入れずに質問した。

 

 

“借金返済ってどうゆうこと?”

 

 

私の質問に、セリカは慌てて口を塞ぐとやらかしたという顔をしながら黙り込んでしまった。他のみんなも、顔色を暗くするとその質問には黙ってしまった。その沈黙を切り裂くかのようにホシノが話し出した。

 

 

「いいんじゃない、話しても?それに先生は、私たちを助けてくれたでしょ?」

 

「ん……。私も先生を信頼してみてもいいと思う。」

 

「そりゃ、そうだけど……。」

 

 

セリカは、部外者の私が関わるのはまだ抵抗があるらしく納得がいかないように口ごもっている。

 

 

「先生のおかげですぐ解決とはいかないと思うけど、この問題に耳を貸してくれるのはこの人だけかもしれないじゃーん?もしかしたら、すごい解決策が見つかるかもよ~?」

 

「で、でも、今まで大人たちが手を差し出してくれたことなんてあった?!今まで、私達だけで問題と向き合ってきたのに、今更首を突っ込んでくるなんて……。」

 

 

「私は認めない!!」

 

 

セリカはそう叫ぶと、教室を飛び出して行ってしまった。彼女を追うために、ノノミも一言伝えて教室も出ていった。確かに、今まで何もしてくれなかった“大人”がいきなりやって来ても信用してくれないだろう。

 

状況を見かねた、ホシノが代わりに説明してくれた。

 

 

「えーと……、この学校、実は借金があるんだよね~。でも問題は金額の方で……、ざっと5億ぐらいあるんだ~。」

 

「……5億6210万円、です。これが、私達“対策委員会”が返済しなくてはならない金額です。」

 

「2年前くらいはもっと金額があったんだけどね~。どこかの心優しい誰かさんが、うちの学校に振り込んでくれてたおかげでずいぶん減ったんだよ~。」

 

「それでも、私達だけで5億の借金を返せる可能性は限りなく低く、ほとんどの生徒がアビドスからさってしまいました。」

 

“……そうだったんだね。……どうして、借金を負うことになったの?”

 

 

5億の大金なんて、学生の身分であるみんなが稼ぐなんて無理がある。そのため、借金の背景を尋ねることにした。みんなは、時々険しい顔をしながらも質問に答えてくれた。

 

 

「……まあ、そんなつまらない話だよ。借金のことは、先生は気にしなくても大丈夫だよ~。話を聞いてくれただけでも大助かりだし。」

 

「ん……。これ以上は迷惑かけられない。」

 

 

話し終えると、ホシノは表情を緩ませると気の抜けた感じでそう告げた。シロコも、助かったと感謝を伝えてくる。

 

目的の物資の補充は完了し、私がもしこのまま帰っても特に問題はないだろう。しかし、キヴォトスにやってきた時から私は先生なのだ。困っている生徒を見捨てることはしない。

 

 

“ここまで話を聞いて帰らないよ。私にも協力させてほしい。”

 

「……っ!はい、よろしくお願いします先生!」

 

「うへ~、変わり者だね先生。こんな面倒なことに自分から突っ込むなんてさぁ~。」

 

「もしかしたら、先生のおかげで希望も見えてくるかもしれない。」

 

“みんなで力を合わせて頑張ろう!”

 

 

その後は、ひとまず今日は解散する流れになり、私もシャーレに戻ることにした。

 

戻ることにしたのはいいのだが、何やら黒い影が学校を出てからずっとついてきているのだ。隠れ切れていないのか、時々藍色の髪が電柱からはみ出しいる。流石に気になった私は、その影に話しかける。

 

 

“なにか用事でもあるのかな、“クロウ”?”

 

「……」

 

 

私についてきていたクロウが電柱から姿を現した。しかし姿を見せたまではいいが、やはり何もしゃべらない。教室であった時から、その赤い瞳は私を見定めるかのように見つめている。沈黙に耐えかねた私は、彼に質問を投げかける。

 

 

“く、クロウは、包帯を巻いてるみたいだけど……どかか具合でも悪いの?”

 

「(コクリ)」

 

“……そうなんだ。5億の借金なんて、大変だよね?”

 

「……(コクリ)」

 

“……そうだよねー。”

 

 

会話が続かない、先生として不甲斐ない。私が、心の中で涙を流していると……。

 

 

「……あんたは、あの真っ黒い奴と違っていい人だな。……また明日、先生。」

 

 

急にそんなことをしゃべったかと思うと、そのまま何処かに行ってしまった。

 

真っ黒い奴がどんな人かはわからないけど、少しは信用してもらえたってことでいいのかな?少し、嬉しい気分になりながら帰り道を進むのだった。

 

 

途中で迷子になり、アオトに迎えに来てもらった。アビドス、恐るべし。

 

 

 




クロウ君の陰が薄い、無口なキャラって難しい。段々、彼に関わる話も書いていきますのでお付き合いしてもらえると嬉しいです。

早く、“アレ”を登場させたい!

ここまで読んでいただきありがとうございます。
内容のご指摘、ご質問などありましたら遠慮なく感想などに書いてください。
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