どっちも書きたくなっちゃったので。
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☆飼い主はこび
「一応聞きますけど、今、お忙しいですか?」
「逆に聞くけど、忙しくないように見える?」
「いえ……すみません……」
目の前には、裸の勝さんが立っている。
ギリギリ全裸ではない。申し訳程度に白衣を羽織ってはいる。
裸に白衣、あと咥えタバコ。インターホンを押したら仕方なさそうにこの格好で出てきた。元々全裸だったところを、応対のためにとりあえず白衣だけ羽織ったという感じ。
恥じらう素振りなどはもちろんない。
「なんでそんな格好してるんですか……」
「なんでって……普通に女の子とイチャイチャしてたからだけど。っていうかアンタは別にこんな格好、自分の家で見慣れてるでしょ」
「うーん」
さすがにそこを一緒くたには考えられない。
確かに我が家にも全裸にワイシャツ姿の子が居るけれど、同じような格好でもナーナと勝さんでは決定的に意味合いが違う。すっぽんぽんがデフォルトのところにシャツを『着ている』ナーナと、白衣以外の服を『脱いでいる』勝さん。同じ格好でも全然違う。
まあ、違うから何だという話ではある。
勝さんの裸を見たところで、べつにウヒョーラッキーとは思わない。思えない。何度でも言うけれど、この人は美しすぎるがゆえに、自分と同じ生物だとは思えない領域に居る。そんな人の裸を見たところで出てくる感想はウヒョーでもラッキーでもなく、どちらかと言えば、ああ美術館にこういう彫像あるよねみたいな気持ちのほうが先にくる。勝さんが妙に堂々としているのも、そんな気持ちにさせられる要因のひとつ。自分の身体に絶対の自信を持っていて、見られても恥ずかしくないと思っているんだろう、たぶん。
この人は口さえ開かなければ、顔にも身体にも一切の隙がない。そういう生物なのだ。
そう考えると、そんな裸の勝さんとイチャイチャできる女の子さん、どんな人だか知らないけれど凄いなと思う。
まあ、私が思うイチャイチャと勝さんの言うイチャイチャに多少のズレがある可能性は否めないけれど。勝さんのことだから『イチャイチャ』と称して調教みたいなことをやっていたとしても不思議ではない。
うん、まあ、そこまで考えて、そういうジャンルの『イチャイチャ』に嬉々として応じそうな人が一人思い浮かんだけど、それは胸に仕舞っておくことにする。
というような思考を『うーん』の間に巡らせた。
「で、何の用……って言うのも野暮ね。その子を診ろって?」
「すみません、そうなんです」
「ほんと断りづらい話ばっか持ってくるわね、アンタ……」
お忙しいところ、たいへん申し訳ないとは思う。でも、このまま帰れと言われても困るのも確か。
なぜなら私は今、怪我人をおんぶしているので。
「目立った外傷はないんですが、気を失っていまして……」
「よく言うわ。どうせアンタが自分で失神させたんじゃないの?」
「あ、当たらずとも遠からず……」
直接手を下してはいないものの、私が原因ではある。
「まあ……なんでもいいけどね。まともな病院じゃなくてわざわざここに連れてきたってことは、何か訳ありの子なのね?」
「あ、はい。あれこれ説明するより見て頂いたほうが早いかと思うんですが……」
「うーわ…………」
その子に被せていた帽子を取ると、勝さんが呻き声をもらした。この人、私と会うたびに『うーわ』って言っている気がする。
まあ今回に関しては無理もないけど。
一目瞭然。
その子には、とても立派な兎の耳がついていたのだから。
☆ナーナだより
さて。
タイミング的にとても申し訳ないことになってしまったけれど、勝さんに兎さんを押しつけた。
当たり前だけど明らかに不機嫌だったので、あとが怖いなあなんて考えながら帰宅すると、ナーナではなく恩納さんが出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ」
「ん、あれ、恩納さん?」
「はい? 何か?」
「ああ、いえ……」
勝さんのところでイチャイチャしてたんじゃなかったんですか、と言おうとして踏みとどまった。ここに居るってことは、そうじゃないんだろうし。
まあ恩納さんの移動速度なら私より先に勝さんのところからここまでくることは可能だろうけど、そんなことをする意味もたぶんない。
それよりも、ナーナの姿が見えないのが少し気になった。
「すみません、お帰りになって早速なんですが、これを……」
「あ、はい」
恩納さんが手に持っていた紙をこちらに差し出した。それは、ナーナがいつも使っているお絵かき帳の画用紙だった。
絵ではなく文字が書いてあるのが、ちらっと見えた。
「ええと、これは……?」
「ナーナさまからお預かりしまして……飼い主さまに渡してほしいと」
画用紙を受けとり、見るとそこには『げんきでね だいすき』と、書いてあった。
「ご自分でお渡ししたほうがよろしいのではとも申しあげたのですが、どうしてもそれは恥ずかしいということでしたので……」
ナーナが書いたもの、らしい。
ナーナなりの最大限の贅沢のつもりか、手持ちのクレヨンの色を無理矢理全部使って書かれているので、ものすごく読みにくい。一文字に複数の色を使ったりしている。自由だ。
それにしても、この文章。
「げんきでね、だいすき……」
「あの、ナーナさまでしたら……」
何かを言いかけた恩納さんに構わず、弾かれたように家のなかを探した。
いつ見てもナーナのおもちゃが転がっている廊下。
お留守番中のナーナがごろごろしていて、よく抜け毛が散らばっているリビング。
ごはんの用意をしていると、ナーナが構ってほしくて必ず邪魔しにくるキッチン。
ナーナに正しい使いかたを覚えてもらうのに、結構な期間を費やしたトイレ。
何度注意しても、ナーナが飛びこむのをやめないお風呂。
そして寝室のドアを開けて、そこでようやく理解した。
ああ、なるほど。
そういうことか、と。
「ナーナが居ない」
ベッドに腰掛け、ため息をついた。
思考を整理する。
「…………ナーナ、どこに行っちゃったんだろう」
わざとらしくつぶやくと、すぐ横でクスクスという押し殺した笑い声が聞こえた。それに合わせて、盛りあがった布団がヒクヒクと動いている。と言うかもう、布団からお尻が出ている。これほど文字通りな『頭隠して尻隠さず』も珍しい。寝室のドアを開けた時点でもうお尻が見えていた。
そのお尻を叩きたい衝動を抑えながら、ベッドに腰掛けたまま身体をひねって布団をめくると、上目遣いでこちらを見るナーナの顔があった。
「いるよ~?」
「わあ、居た居た」
茶番。
たのしい。
「おてがみ、見た?」
「見たよ。ありがとうね、ナーナ」
「うぇへへへ……」
照れ笑いをするナーナ。
可愛いのでとりあえず頭を撫でた。
文章をパッと読んだ時点ではびっくりして肝を冷やしたけれど、あの『おてがみ』にはお別れの意味は込められていなかったようだ。
あれはたぶん、お年寄りに贈る手紙などでよく使われる文言の『いつまでも元気でいてね』みたいな意味なのだと思われる。考えてみれば、ナーナがもしお別れの手紙を書くとなったらもっとストレートな言葉を選ぶだろう。
だからあれは何のことはない、日頃の感謝を伝えるための『おてがみ』だったのだ。
そして恩納さんが言っていた通り、それを私に直接渡すのが恥ずかしいから、手紙を恩納さんに持たせてご自分は布団に隠れた。ということで合ってるはず。
さっき恩納さんが何か言いかけたのは『ナーナさまでしたら寝室にいらっしゃいますよ』とか、そういうことだろう。
恥ずかしい。
不覚にも、早とちりをしてしまった。
「どーん」
「ぎゃー!」
ナーナに向かって背中から倒れこみ、私もナーナの真似をして照れ笑いをした。
「うぇへへへ~」
さて。
ナーナに貰ったおてがみ、どうしようかな。
額縁に入れて飾りたい気持ちもあるし、畳んでお財布に入れて持ち歩きたい気持ちもある。
でも、折り目をつけるのはちょっと抵抗がある。
うーん。
ナーナのお腹に頭を乗せたまま、ぼんやりとそんなことを考えた。
「どーいーてー」
「えー?」
「えーじゃないの! もー!」
怒られたけど、もうちょっとこうしていたい。
ああ、私からお返事を書くのもいいなあ。
後半、最終回はこんな感じの話にしようとぼんやり考えていた内容です。
しれっと次のお話も書くことになるだろうとは考えていますが、ここで最終回にしてしまおうかとも考えています。それを防止するために書いたのが前半のお話でもあるんですが。
こうして書きあげてもまだ迷っています。
25.4.20
ありがたいことに、推薦を書いて頂けたことで読者さんが増えました。唐野葉子さまに、心より感謝申しあげます。
次回のお話に関しては恥ずかしながら、現在、語り出しだけを書いて置いている状態です。ですので少しお時間を頂きますが、書きあがり次第投稿させて頂きます。その際は、よろしければぜひご覧ください。
ムームと恩納さんのお話になる予定です。
ここまでのお話への感想や評価もお待ちしています。
どうか、よろしくお願いします。