尊大不遜な転生悪役による凌辱ゲーの壊し方   作:全自動髭剃り

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アメリア⑮ 首都ホテル動乱(中)

 †少し前。視点:アメリア

 

 

 彼と別れて、……いや、彼から逃げて、私が向かったのは首都ホテルでした。

 革命前のオルディア王国時代から存在するホテル。

 その昔は王家の所有物だったのですが、現在はクレイトン商会の傘下のホテルです。

 

 一人になれる場所。

 誰にも見つからない場所。

 

 だからここにやってきたのですが……。

 

「……」

 

 ここに来てしまったことを少し後悔してしまいました。

 ホテリエさんに融通してもらった一室のベッドで仰向けになりながら天井を見上げるのですが。

 なぜか心のざわめきは止まりません。

 

 いつもなら、この静かな部屋で嫌なことを忘れて、心地よいベッドの上で眠ってしまうのですが……。

 

「……ッ」

 

 今日は眠れそうにありませんでした。

 起き上がりながら、窓から見える雨空を睨みつけます。

 

 私は……。

 私は、ベリアルのことが嫌いです。

 大嫌いです。

 

 溢れ出す感情を堰き止める気もありません。

 

 口が悪いところも。

 傍若無人な態度も。

 家族に迷惑をかけるところもっ。

 いつも怒っているような表情も……!

 私をめちゃくちゃにしようとしたことも!

 

 私がナイトフォール家にいる間。

 どれほど私が心細かったのか。

 ベリアルは絶対にわかってない!

 どれほど私が怖かったのか。

 だから、大嫌い!

 

 窓を打ちつける雨音に呼応して。

 私の心からどんどんと仄暗い感情が溢れて。

 

 学院のことを私に言わないところも。

 結局私に何もしない嘘つきなところも。

 みんなを騙して陰で頑張ってるところも。

 兄に誤解されても気にしないところも!

 

 なんでそんな格好を付けたがるのか私にはわからない。

 男の子だから? そんなレベルじゃない。

 苦行が好きなだけ? マゾヒストってやつ?

 知らない! 

 全くわけがわからない!

 

 思わず少し上がってしまった息。

 感情の行き先を探して。

 枕をベリアルに見立ててボコボコに殴る。

 

 それでも、気分は全く収まらなかった。

 だからもう一度枕を掴み上げて。

 

 と、そんなときでした。

 

 ――コンコン。

 

「アメリア?」

 

 部屋のドアが開き。

 慌ててそちらを向くと。

 

「え」

 

 そこには久しく見ていない人の姿が。

 

「お母さん?」

 

 このホテルのオーナーが入ってきた――、

 

 

 ――ドカンッッッッ!!!!

 

 直後、下の階から爆発音がしました。

 

 

 †

 

 

 反射神経に従って。

 お母さんは私を守るように抱きしめていました。

 

「大丈夫よ、アメリア!」

 

 耳元で叫ぶ声。

 気づけば、庇うようにして。

 普通なら前後不覚になっただろう私は、母の胸の暖かさの安心感を得ていたところでしたが……。

 

「大丈夫、お母さん。私は大丈夫」

 

 喜ぶべきか哀しむべきか。

 ナイトフォール家に行ってから、私は随分と図太くなってしまったようです。

 それとも、一生懸命私を守るようにするお母さんが、足を震わせながらも私を抱きしめているから。

 逆に冷静でいられたのでしょうか。

 

「お母さん、落ち着いて」

「アメリア……」

 

 か弱い声音に、私はお母さんの背中をさすりながら、できるだけ落ち着いた声で、

 

「私は大丈夫。それよりも、早く一緒にここから逃げよ」

「あ、……うん」

 

 そして私たちが部屋から出ようとしたとき、

 

「お、空いてるじゃねェか!」

 

 茶色のプロテクターをした男が曲剣を片手に部屋に押し入ってきました。

 

『本部から全部隊に告げる。手段は問わない。標的を直ちに発見し、捕縛せよ。繰り返す、即刻標的を捕縛せよ』

 

 その男の腰にぶら下がっていた小型無線通信機からそんな声が。

 エレノア・クレイトン。

 私のお母さんの名前。

 発見し、……捕縛!?

 

「チッ! うるせえんだよ!」

 

 癇癪を起こしながら、その男は通信機を持ち上げて振り下ろし、床に叩きつけたのちに踏み壊しました。

 そしてブスブスと音が未だに鳴り続ける通信機をさらに数度踏み抜き、完全にスクラップになったと確認すると。

 私たちを舐め回すような視線。

 

「エレノア・クレイトンってのはァ、ここにはいねェみたいだなァ! なァ、てめェらもそうは思わねェか?」

 

 血走った目の男は、厭らしく指をくねらせています。

 立ち上がったお母さんは、私を守るようにして男と対峙していました。

 

「何のつもりかしら?」

 

 強い声音。

 でも、どこか震えているような。

 ……いや、そんなことを冷静に考えてる場合じゃない!

 

 悟られないように。

 周りを確認する。

 何か。

 何か、目の前の男から身を守れる武器がないと!

 

「ま、テメエがエレノア・クレイトンだとしても変わらンが……、おい!」

「ッ!」00

 

 叫ばれたことで体がビクッと跳ねてしまう。

 でも、どうやら私の企みがバレた様子ではないみたい。

 

「こんなクソみてェな仕事を、タダ同然で引き受けねェといけなかったのは、マァジで頭に来たンだよ」

「そう? 私が雇い直してあげてもいいわよ?」

「あァ……? ……それも悪かァねェが、辞めとくわ」

 

 ナイトフォール家の鍛錬場とは違い、ここには剣などは置いていない。そもそもホテルの客室に武器は置いてあるはずもない。

 魔導銃もここに入る時に、ホテルに預けてしまった。

 だったら、どうしたら……!

 

「金貨100枚程度なら払えるわよ?」

「違ェ違ェ。金額の問題じゃァねェンだ」

「だったら、何が欲しいのかしら? 自慢じゃないけど、貴方が想像できる程度の富なら準備できるわ」

 

 交渉を続けるお母さんが稼いでいる時間を、どうにか活用しないと。

 焦りながら壁を見回したところ。

 あった! これなら……!

 多少耐久度に不安はありますが……。

 

「金の問題じゃねェつってンだろうがァ!」

「……」

「俺はなァ、一度でいいから――人妻をブチ犯したかったンだよ」

 

 気が狂ったように、口から涎を垂らしながら、曲剣を持った男は下衆な語りを続けます。

 

「娘の前で、号泣する女を、死ぬまで犯すんだよ……。わかるかァ?」

「……わかりたくもないわね」

「ワクワクするじゃねェか。まずはテメエの四肢を折ってやる。指を一本ずつ折ってからなァ! それでそこのメスガキも同じように……いやァ? そのガキは両手両足ちぎってやる」

 

 あり得ない猟奇的なことを口走りながら、頬を赤く染める男。

 考えるだけでも悪寒がするような話をできるだけ考えないようにして、男が隙を見せる瞬間まで待ちます。

 

「それで、お前の眼球を潰して、ガキから千切(ちぎ)り取った手で穿(くり)り出してから◯◯◯をぶち込んでやる!!」

「……随分と素敵なことを考えているのね」

「あァ、そうだろ? ククッ……。ははッ! ガキのハラワタをケツからぶっこぬいて、それでテメエの首を絞めながら孕ませてやるよォ!!」

 

 そう叫ぶと、お母さんに飛びかかろうとする男。

 同時に私も動き出す!

 最短距離で壁に下げてある燭台に手を伸ばし!

 

「ッ!」

 

 勢いよく根本から抜き取る!

 触り心地からして、期待通りの耐久性はありそうな金属製。

 これだったら――!

 

 ベリアルと数週間鍛えていたのは無駄じゃなかった。

 私はもうただの小娘じゃない。

 油断し切った目の前の男くらい、なんとかして見せる!

 

「はぁあああ!!」

 

 叫びながら男の顔――目玉に目掛けて振り下ろす!

 このままいけば、男にただでは済まない!

 

 だけど――、

 

「アメリア!!」

 

 私だけでも逃がそうとしただろうお母さんが、私を部屋の外に向かって勢いよく押し出し――。

 ガッシャン!! と音を立てて燭台は男がいる後ろの地面に突き刺さり――。

 

「あァ?」

 

 私の企みが失敗したことに気づいた男が振り返り――。

 

「――!!」

 

 地面に刺さった燭台を抜き取って、再び抵抗を試みようとした私を――。

 

「おらァ!!」

 

 男は力の限りに蹴飛ばした。

 

「がッは――!!」

 

 壁に叩きつけられ、肺にあった息が全て強制的に吐き出される。

 空気を欲する体が息を吸おうとするも、肋骨の歪みからかうまく吸い上げられない。

 

「ゲホッ、ゲホ……ッ!」

 

 なんとか咳をするのが限界で……!

 

「あーあ。残念だったねェ〜! お母さん守れなかったねェ〜」

 

 そんな声を上げながら、男は私が使った燭台を地面から引き抜くと。

 お母さんに向かって手を振り上げ――。

 

「「予定変更ォ〜。まずはァ、眼球を抉り出してやる、エレノア・クレイトン!!」」

 

 ――振り下ろした。

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 悲鳴が――。

 鮮血が――。




 いつも感想、誤字訂正、本当にありがとうございます! もしもこの作品を楽しんでいただけたら、評価・感想を残していただけると、次話を書くモチベーションになります! よろしくお願いします!

ベリアルくんに難易度を設定してあげてください! 現状はノーマルです!

  • イージー(無双タイムだ!)
  • ノーマル(現状維持!)
  • ハード(血湧き肉躍る苦闘を!)
  • ナイトメア(世界の深淵を覗こう!)
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